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第8話 アーダリは借金で苦しんでる娼館を見つける

アーダリたちは、中央大通りから遊郭へと向かいます。

遊郭は昼に観光地化されているので、アーダリたちが訪れる事が出来ます。

ただ、恩を売るような、借金や経営難の娼館が簡単に見つかるとは思っていません。

再び『中央大通り』の電停から市電に乗り、遊郭の最寄りの『大門通り口』で降りました。


「最寄りと言いましても、歩くと20分かかるようです」


アメリーは電停近くにある、遊郭への案内板を見てこう言います。


「市電はあえて遊郭の近くを通らないようにしたと聞きましたが、

単に中央大通りに市電を通しただけですよね」


市電の電停は遊郭から離れた所にありますが、意図的に離れた場所に市電を通したのではなく

旧市街へ続く中央通りに敷設したため、自然と遊郭の近くを通らなかっただけのようです。


「どうでもいい知識ですね。それより、食事をしましたら既に14時30分ですから、さっさと行きますよ」


アメリーはわたくしの言ったことを流し、わたくしの手を取ります。

そして、このまま遊郭に向かい始めました。


「アメリー、手を離してください」


わたくしがこう言いますと


「さっきのお返しです。アーダリさんが手を引きますので、周りから注目されましたから」


と返します。


(それはアメリーのメイド服が目立っているだけでは)


と思いましたが、余計な事を言うのは今はやめておきましょう。


 わたくしはアメリーに手を引かれたまま、遊郭に到着しました。

遊郭は周りを高い壁に囲まれ、娼館やそれ以外の店や住居が立ち並んでいます。

夜の街ではありますが、昼は300年の歴史ある地区ですので、昼は女性や子供も訪れる観光地です。

そのため、観光客や住民を相手にしたお店も多い……と大門の説明に書いてあります。


「観光地である事は知ってはいましたが、実際に訪れますと人が多いですね」


大門を行き交う人たちは多く、女性も多くいます。


「そうですか、わたしは何度か来た事はありますよ」


アメリーの口から意外な言葉が出ましたので


「え、まさか、夜に……」


と言いますが


「夜に女性は入れません。法的には禁止ではありませんが、大門の所でちゃんとチェックされますので」


と毎度のごとく呆れた口調で返します。


「冗談ですよ。ノエミが近くに住んでいますからね」


「アーダリさんもわかってるじゃないですか。美味しいお店がありますから、師匠に連れて行ってもらいました」


「はい、わかってて言いました」


わたくしはわかってて、アメリーをからかいました。

なお、ノエミはアメリーのメイドの師匠で、実家のメイド長をしていました。

5年前に結婚を機に、メイドを辞め、現在は遊郭の近くに住んでいます。


「わたしの話は良いのです。時間がないので早く行きますよ、もう15時ですし」


とアメリーは懐中時計を確かめますと、1人で大門をくぐります。


「待ってください」


とアメリーの後を追いかけました。


 大門を入りますと、まずは遊郭を管理する遊郭組合の建物がある

その前には遊郭に似つかわしくない、おしゃれなカフェとレストランがあります。


「ここは観光客向けですね」


アメリーがこう言いますが、確かに王都の住民というよりは他所から来た雰囲気の方が多いです。


「ここは見る必要がありませんので、とにかく一通り娼館を周りましょう」


「そうですね」


時間もありませんので、娼館がある一画を歩きますが、昼は歴史ある古い町並みです。

ただ、看板はいかにも夜の街といった雰囲気がありますが、不思議といかがわしい感じはしません。


「ところで、娼館を買い取ると言っても簡単に買い取れるものなのですか?」


アメリーが聞いてきますが


「普通は無理です。借金があったり、経営難のところを探すのです」


と答えます。


「意外とまっとうですね。元公爵令嬢の力を使うかと思いましたよ」


とアメリーが言います。


「元ですから力は使えません」


「わかっています冗談です」


アメリーはわたくしをからかいます。


「公爵家の力があったとしましても、そもそもそのような娼館が無ければ無理ですよ」


いくら公爵家でも、相手が売ると言いませんと買い取ることは出来ませんし、借金があったり経営難の娼館なんて

そう都合よく見つからない事はわかっています。


「それでは何しに来たのですか」


アメリーはまたかという風に聞いてきます。


「買い取りはあくまでも、おまけです。

まずはわたくしと仲良くなり、お話してくださる方を探しています」


「なんでしょう、アーダリさんがまともな事を言ってます。

先ほど食べた中に、アーダリさんがまともになる良い物が入っていたようです」


アメリーはこう言いますが、口調からからかっているのでなく、本気で言っているようです。


「わたくしはまともです。そう簡単に娼館を買い取れるとは思っていません。

まずは、娼館の経営者や娼婦の方にお話が出来れば良いのです」


まずは娼館の方と知り合うことです。


「それもそうですね。借金などで困っている娼館なんてそうありませんし」


「そう……」


わたくしが「そうですよ」と言おうとした時です


「借金をとっとと払ってもらうぞ!」


と言う男性の声が聞こえました。


「アメリー、今の声を聞きましたよね」


わたくしがアメリーに聞きますと


「はい、聞こえました」


と答えました。


「こんなに都合よく、借金に困っている娼館なんてそうありませんので、急ぎますよ!」


わたくしはこう言って、アメリーの腕をつかみ、声をした方向へ行きます。


「アーダリさん、痛いです」


「すぐそこですから、我慢してください!」


強引にアメリーを引っ張り、声がした辺りに来ますと

いかにも(とわたくしが勝手に想像する)借金取りの男性2人がいました。


「いいから、まとめて払え!」


「だから、全部は無理ですと言っています。半分なら、払えます」


「うるさい!いいから払え!」


男性の声が娼館の中から外へ聞こえてきますが、わたくしが想像していた場面に遭遇したようです。

どうも、払う額で揉めているようです。


「払う額で揉めているようですね」


「そのようですね。つまりわたくしの出番ですね」


「つまり、恩を売るのですね」


アメリーははっきり言いますが、今回はアメリーの言う通りです。


「はい、恩を売ります。では、行きましょう」


「わかりました」


わたくしとアメリーは身なりを整えると、揉めている娼館の前に立ちました。

お読みいただきありがとうございます。


遊郭は昼は観光地となっているますが、娼館以外の店や遊郭内に住む人たちの住居があります。

入口には漢顧客あいてのレストランがありますし、アメリーも師匠のノエミと

遊郭内にあるレストランに行った事があります。


ノエミはアメリーの師匠で、元ポメラリア家のメイド長でした。

今回は名前だけです。


都合よく借金に困ってる娼館が見つかるのはお約束です、はい。


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@shiizu17

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