第5話アーダリは自分の趣味を生かす仕事がしたい
家を出て、3か月経ちました。
ノクターン版ではあっさりだった、アーダリの報道について少し具体的にしました。
あと、ノクターン版ではまだ始まっていない、ラジオ放送は既に始まっています。
ホテルに来て、早くも3か月経ちました。
ホテルに住みはじめた4日後、ラジオとニュースで正式に沙汰が発表されました。
内容は『わたくしがポメラニア家を追放される』でしたが
アントニー様との事は伏せられていました、
かわりに
『王城内で国王陛下の侍女と行為に及んだのち、他の侍女目撃され国王陛下がお知りになった』
と発表されました。
ただ、以前アントニー様の侍女に手を出しているので、まったくの間違いでもありませんが。
この事は国王陛下には話しておりませんが、まさかこの事も知っておられたんじゃ……
いや、侍女に手を出すのは、わかりやすく、それらしいからでしょうね。
それはともかく、わたしが宰相家のポメラリア家を追放された事は騒ぎになりました。
しかし、侍女(アントニー様)に手を出した事に対して、平民たちの反応は
『うん、知ってた』
という程度で、怒るどころか、むしろやっとか!っという感じだったとか。
その為か、3日ほどで新聞での扱いもほぼなくなり、1週間で話題は終息しました。
また、このホテルは記者の取材に対して非常に厳しいのあり、父がこのホテル
を選んだのは、そのためであります。
記者の取材自体もほぼ来なかったと、ホテルのボーイが話していました。
もっと騒ぎになると思いましたが、そうでもありませんでした。
街中で女性に声をかけていましたので、わたくしが女性に
手を出している事はみなさん知っておりました。
たまにホテルを出て、通りを歩きますと普通に挨拶をしてきますし
こんな物なものなんでしょうかね。
ただ、騒ぎがこれで済んだのは、父が平民に人気がある
お陰でなので、父には素直にお礼を言います。
「意外と騒ぎは小さかったらしいですね……うはぁ……」
と間もなくお昼になりますが、わたくしはベッドの上であくびをしています。
「3か月経ちましたし、新しい話もありませんので、みな飽きた頃ですね」
と、アメリーは部屋の中を掃除しながらこういいます。
「そうですが、なんでしょう。もっと騒ぎが大きくなり、王都を追放されるのかと思いました」
わたしは家だけでなく、少なくとも王都からも追放されるかと思いましたが
お父様が用意した、高級ホテルの部屋で悠々と暮らしています。
「そもそも、王女に手をだしたら、追放だけで済みませんよ」
アメリーはこう言いますが、わたくしがもし男性でしたら、その場で首と
陰部を切り落すと、国王陛下がおっしゃっていましたからね。
本来はそれぐらいの罪なのです。
しかし、わたくしが女性であった事、他にも罪状があったのでこれで済みましたが。
「しかし、王女様にまで手を出すと、流石アーダリさんです」
アメリーはこう言いますが、アメリーもわたくしに手を出しています。
「アメリーも、わたくしに手を出していますよね?女性を好きになったのも、アメリーのせいですし」
わたしがアメリーにこう言いますと
「わたしはフリードリッヒ様に雇われ、夜のお相手も頼まれていましたので。
なので、アーダリさんと違い、手を出した訳ではありません」
と言い返します。
「アーダリさんは、王女様の夜のお世話まで、任されていませんよね?」
と、アメリーはさらに続けますが、これを言われたら何も言い返せません。
「アメリーの言う通りです」
わたくしは、素直に負けを認めました。
「負けを素直に認めるのは、アーダリさんの良い所ですね」
アメリーはわたしを褒めますが、無駄な事をしないだけです。
「無駄な事をしないだけです。それより、アメリーは何故、掃除をしているのですか?」
ホテルの部屋はアメリーが掃除をする必要はありません。
なのに、アメリーが掃除をしています。
「何を言っているのですが、掃除不要と言えば、ホテルは掃除をしないのです」
とアメリーは答えました。
「そうなんですか?」
わたくしが聞き返しますと
「ホテルは宿泊客がいない間に、掃除やベッドメイキングを行うのです。
普通に考えればわかると思いますよ?」
とアメリーは言いますが、昔からアメリーはわたくしに対してこう言う話方をします。
「わたくしも、全てを知る訳ではありませんので、ありがとうございます」
実際にわたくしは知りませんでしたので、アメリーにお礼を言います。
「わかれば良いのです。それより、いつまでここに居るのですか?」
アメリーはこう言いますが、思ったより騒がれないと言いましても、
発表2週間後、ホテルを出ましたら、記者が張り込んでおりました。
なので、さらに1か月程待ち、完全に落ち着くのを待って物件を探し始めました。
しかし、わたくしに合う物件は見つからず、気づいたらさらに2か月近くが経過しておりました。
「出来るだけ、早く、ここを出たいのですが、なかなか良い物件が見つかりません」
「そうですか?良さそうな所はいくつかありましたよ」
アメリーは返します、わたくしは広すぎても、狭すぎても、好きではないのです。
現在、売りに出ている物件を、一通り見ましたが、一番多いのは平民の一戸建て。
平民の家は一戸建ては、木造が多く、売りに出ているのは傷みが酷いのばかりです。
さらに部屋も狭く、何よりもトイレは合っても、お風呂がありません。
なので、平民の家は話になりませんでした。
他には借金の方で押えられた、下級貴族の屋敷です。
ここまでになりますと、2人で暮らすには広すぎです。
下級貴族と言いましても、平民の一戸建てと比べましたら数倍の広さがあります。
実家と比べましたら、4分の1程度ですが、人を呼ぶ事もそうありませんし。
呼んだとしましても、わたくしの寝室のベッドで共に寝ます。
ただ、来客用の部屋があれば1室あった方が良いですかね。
なので、アメリーとわたくしの部屋、来客用の部屋があるのが条件。
さらにリビングとダイニングがあれば良いですかね。
ただ、この条件に、アメリーは
「これで狭いと、何言ってるのですか?」
と何故か言われましたので、ダイニングとリビングは兼用で妥協します。
「アーダリさんの条件に合う家なんてありませんので、ご自分で建てた方が早いですよ」
とアメリーは言います。
「先日、そう言って、見積もりをしたではありませんか。
そうしましたら、100万アニーの費用と数年の工期がかかると、言われたじゃないですか」
と答えます。
これを聞いたアメリーは
「それが現実です。お金を出して、時間をかけるか、既にある物を選ぶかですよ」
と呆れて首を振りますが、さらに続けます。
「それに、いくら一生暮らせるお金と、値上がっている株を受け取りましても、そろそろ働いてください」
と言います。
「8歳から現在の21歳までずっと働いたのですよ。3か月ぐらい休んでも良いと思います」
「そうですが、それでもです!人前に出ないせいか、最近、胸とお腹のお肉が増えていますよ」
アメリーはそう言って、わたくしに近づくと、お腹の肉をつまみました。
「今までは、こんなお肉はありませんでしたよ。胸はまだいいですが、お腹のお肉は不要です」
と言いますが、何で知っているかは、言わなくてもわかると思います。
「そういわれましたら、仕方がありません。体型維持のためにも、お仕事を探しましょう」
アメリーがうるさいですし、人前に出る事を意識して、体型を維持してきました。
なので、体型維持も兼ねて、お仕事を探す事にします。
「やる気になりましたか。それで、どんなお仕事にしますか?」
アメリーはどのお仕事にするか聞きますが、すぐに思いつきません。
ただ、ここ3か月間、アメリー以外の方とベッドを共にしていません。
なので、少々飽きていました。
かといいましても、あの事件の後ですし、3か月経って落ち着いたと言いましても
記者がなにか狙っていると思います。
なので、以前の様に街で女性に声をかける訳にはいきません。
だから、女性からわたくし来て、お金を出してくれるのが良いですね。
「そうですね、女性からわたくしの所に来て、わたくしが色々とサービスをし、お金を受け取れる仕事ですね」
わたくしがこう言いますと
「何を言っているのですか?」
とアメリーは呆れています。
それに対して
「よく考えてみてください、男性には春を提供する遊郭、ショーやお酒を提供するキャバレーがあるじゃないですか。
でも、女性にはないのはおかしいですよ」
わたくしがこう説明します。
これに対して、アメリーは
「仕事を探すより、医者を探しましょうか?」
と今度は真剣な表情でいい、本気で大丈夫かと心配しています。
「わたくしは大丈夫です!ただ、遊郭や娼館は歴史が古いではありませんか。
なのに、女性のためのそのような施設がないのは、よくよく考えたらおかしいと思いませんか?」
わたくしがこう言うと、アメリーは少し考えて
「確かにそうですね。女性も男性と同じ事をしてもらいたいですね」
とアメリーも、わかって来たようなので続けます。
「さらに、わたくしのように、女性が好きな女性だと、先ず出会いが大変ではないですか」
わたくしがこのように言いますと
「身分を考えないで、手を出してきた人がそれをいいますか?」
とアメリーは呆れながら返します。
「いちいち、呆れないでください。要は、わたくしのように奔放でない
同性が好きな女性が集まれる場所を作るのです!そして、それを利用したお金を頂くのです!」
わたくしがこう言うと
「今度は珍しく、ちゃんとした事をいうのですね?それはそれで、大丈夫ですか?」
とアメリーは笑いながら言うのでした
お読みいただきありがとうございます。
性的な部分は抑えていますが、アーダリは自分のやらかしで
家を追い出され、平民になっても相変わらずです。
モデルの時代(1920年~30年代)からしたら、女性向けのサービスはありませんからね。
なので、アーダリは自分の趣味のためにも、女性向けのサービスを考えました。
新たな家探しですが、これもノクターン版ではあっさり流した部分ですが
何がダメなのか、具体的に書きました。
自分は控えめアピールをしていますが、アメリーからしたら「何を言ってるんだ?」となりますよね。
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