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第16話 アーダリとエルリカの話し合い その1

ヘルマが紅茶を運び、和やかな雰囲気でありますが

アーダリとエルリカの話し合いが始まると、空気が変わります。

「ありがとうございます」


わたしはヘルマさんが運んだお茶を取ろうとしますと


「アーダリさん、これはわたしの役目ですから」


と言って、お盆からティーカップを取りました。


「わざわざアメリーさんが取らなくても、わたしがお配りしましたのに」


ヘルマさんは取らなくても、配ると言いますが


「これはアーダリさんのメイドとしての役割ですから」


とアメリーはここでメイドぶりをアピールします。


「アメリー、わざわざメイドぶりをアピールをしなくてもよいと思いますよ」


わたくしはアメリーのメイドぶりはわかっていますので、こう言いますと


「メイドの仕事をしただけですから。アーダリさんこそ、何を言っているのですか?」


となぜかわたくしの方がおかしな言い方をします。


「アメリーと言い合っても意味がありませんので、これ以上は言いません。

みなさんの元に、お茶が配れましたのでお話しをしましょう」


わたくしはアメリーとの話をやめ、話し合いを始めます。


「そうですね。買い取りの件ですが、立て替えていただきました1万2000アニーもありますので

返却する事を考えますと、買い取っていただき、買い取り額から1万2000アニーを引くのはいかがでしょうか」


エルリカさんは初めから具体的な提案をします。

買い取り額がいくらかわかりません。

3日間ありましたので、少し調べたのですが、娼館の値段は通常の取引されない物件です。

ですので、相場がありません。


 過去の買い取り額(50年前の記録ですが)は、土地と建物で50万アニーから60万アニーとありました。

遊郭の物件は、居住用の建物が通常の売買をされていますが、現在の値段で10万アニーとなっています。

また、遊郭周辺の物件も1軒あたり30~40万アニーが相場です。


 遊郭周辺はかつては王都の市街地から離れた場所ではありました。

現在の中心部は、市電の『中央通り』の電停となりますが、新市街と言われています。

その新市街が王都の発展と人口増加で、市街地が広がって行き、遊郭周辺も市街地になっていきました。


 遊郭の近くの地価は初めは安かったですが、それに目を付けた富豪や大商人が目をつけ

安く広い土地を買い、自分の屋敷や分譲住宅を作ったのがきっかっけで土地と建物が値上がり。

今では高級とまで言いませんが、王都としては値段が高い地域となりました。

 

 ですので、周辺の相場から考えて、30~40万以上すると思われます。

50年前の50~60万アニーは現在の60~72万アニーにあたります。

つまり、周辺の倍の値段となりますが、これに付加価値……娼館としての価値と

滅多に売りに出されない希少性から、数倍から十倍になると思います。

60~72万アニーの数倍ならば出す事が出来ますが、10倍となりますと流石にわたくしでも無理です。


「もちろん、売値から1万2000アニーを引くのは構いません。

ただ、娼館と言うのは相場がありませんし、滅多に売りだれませんので希少性もありますので」


わたくしはエルリカにこう伝えますが


「確かに、娼館の土地と建物は通常の売買されませんので相場はありません。

しかし、遊郭内での売買は頻繁に行われていますよ」


とエルリカさんが答えます。


「そうなのですか?」


わたくしは意外だったので、正直驚きました。


「はい、現在は経営権を持つ経営者と土地と建物の所有が別なのは普通です」


エルリカさんは微笑みながら教えてくださいます。


「そうでしたか」


わたくしは土地と建物は経営者の所有だと思っていましたので、初めて知りました。


「昔は土地も建物も所有していましたが、わたしのように代々娼館を受け継ぐ事は珍しくなりました」


エルリカさんは代々受け継いでいると言いますが、この娼館はとても古いようですね。


「代々受け継いでという事は、この娼館は古いのですか?」


わたくしはエルリカさんにお聞きしますと


「はい、250年前からあるそうで、わたしが8代目となります」


と教えていただきましたが、エルリカさんは8代目だそうです。

つまり、遊郭の300年の歴史が始まった早い時から続いているということです。


「そうでしたか。しかし、8代も続いてますなら、土地と建物を売るのは気が引けませんか?」


わたくしは少し意地悪な質問をします。


「もちろん、手放したくありません。ですが、土地と建物がなくても経営権がありましたら途絶えることはありません。

それに、アーダリ様なら土地は買い取っても、名義は変えずわたしの所有のままにすると思いますので」


とエルリカさんは笑顔で答えます。


(こう来ましたか……)


わたしはこう思いますが、買い取ってもエルリカさんがそのまま経営すると考えていました。

しかし、名義は流石にわたくしに変更するつもりでしたので、これは意外です。

エルリカさんは名義を変えず、売ったお金を受け取り、立て替えた1万20000アニーも返すと言う算段だと思います。


(悪い方ではありませんが、この辺りはしたたかですね)


丁寧な対応で勝手に娼館の経営者ぽくないと思いましたが、エルリカさんもしっかりしていますね。


「エルリカさんはわたくしのことをわかっていますね」


わたくしはこう言って、笑いますが


「ただ、娼館を買うかはまだ未定です。わたくしの一番の目的は、女性を好きな女性が

気兼ねなく集まれるサロンを作ることです。なので、本来ならば娼館の買い取りは不要なのです」


と一番の目的は、あくまでも女性が好きな女性のためのサロンだということを伝えます。


「そ、そうですか。ところで、そのサロンはどこに作る予定なのですか?」


エルリカさんは一瞬、困った表情をしましたがサロンをどこに作るか質問します。


「あくまでも、同じ嗜好を持つ者同士が集まり、お話をしたり、悩み事を相談する場です。

なので、遊郭の外であまり目立たない場所を考えています」


と答えます。


「そうでしたら、なぜ娼館にいらしたのですか?」


エルリカさんはさらに尋ねます。


「実は夜の相談もする……と言えば、娼館の方ならわかりますよね」


わたくしはこれで『察してください』と言う表情をします。


「そういうことですか、わかりました」


エルリカさんも、これで理解した様です。


「なので、夜のお仕事をなさっている、いわば経験と知識がある方に助言をして欲しいのです」


わたくしは、あくまでも助言をして欲しいと言います。


「わかりましたが、娼館を買い取る必要はありませんよね?」


エルリカさんは何故娼館を買うのか疑問に思います。


「その疑問はわかります。もし可能ならば、娼館に女性をご紹介したいのです」


とわたしはエルリカさんに答えました。

お読みいただきありがとうございます。


エルリカはのクター版よりもしっかりした正確になっています。

ノクターン版だと、実務はしっかりしてても気が弱い所があり、優柔不断だったりしますが

こちらではアーダリと対等に話が出来るぐらいしています。

ただ、ノクターン版でも結構はっきり言うタイプで、やはりしたたかな部分はあります。



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@shiizu17

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