(2)タイミング2
目が覚めたのか、まだ夢の中なのか。
クリーム色の霧の中にいるような感覚で、身体がふわふわしている。
なぜか、この先にいくつもの道があることが分かるような、不思議な感覚だった。
「夢か? ただ、前に進まないといけない気がする」
そんな風に感じて一歩足を踏み出そうとした時、なぜかこのままではいけないという感覚がして、足が止まった。
「果たして自分は、このまま何も考えずに進んでいいのか?」
その瞬間、ぼんやりしていた道筋が少しだけはっきりとし、それぞれの行先が赤や青などの淡い色で染まり始めた。どれかの色を選ばなくてはならないという脅迫観念のようなものが、頭の中に広がり始める。
「行かなくては……」
私はそのまま、自分の好きな青色の道に進もうとした。
しかし、ふと虹色に輝く道が目に入り、なぜかそちらに足を向け直した。
「なんとなく、天国に行けるかな」
そんなことを考えながら道を進んでいく。
しばらく進むと、急に肌寒さを感じ、道を間違えたかと思い後ろを振り返ると、そこにはもう既に道はなく、ただの暗闇が広がっているだけだった。
仕方がないので、そのまま進むことにした。
肌寒さはやがて強烈な寒さに変わり、再び意識が遠のくような感覚がした。なんとか意識を保とうと気を強く持ったが、無駄だった。
そして私はそのまま、闇の中へと意識を落としていった。
「大丈夫かね。しっかりしないとあかんよ」
長いのか短いのか分からない時間の中、寝ていたような感覚で徐々に覚醒しつつあった。
「電車で寝すぎたかな……」
「旦那様、このお方はだいぶ雪の中におられたようで、身体が冷えすぎておりますわ」
耳に名古屋弁の話し声が入ってきた。
「すごい名古屋弁だな。でも、雪って……?」
そんなことを考えながら目を少しずつ開けると、ぼんやりとした視界の中に二人の人物が見えてきた。
「旦那様、気がつかれたようですわ」
「おお、よかった、よかった」
どうやら板の間に寝かされているようで、背中に少し痛みを感じる。身体には、家を出た時に着ていたダウンジャケットがかけられていることにも気づいた。
少し頭痛がするが、起き上がろうとすると、
「まだ起き上がったらあかんわ、もう少し寝ときゃ」
と言われ、そのままの体勢を保つことにした。
そして気づいた。二人とも着物を着ていて、男性は総髪、女性は長い髪を後ろで束ね、頭には手ぬぐいをかぶっている。まるで時代劇の中に迷い込んだかのようだ。
自分は今、どこにいるんだ?
頭の中は疑問だらけだった。確かに出社するために地下鉄に乗り、寝不足気味だったので少し居眠りをして、この状況になっているが、どうしても考えが追いつかない。
確かに何か夢を見ていた気もするが、体感では10分程度しか経っていない。
色々と考えていると、
「まぁ、気がついたなら、しばらくは大丈夫だろう」
と男が言い、
「そうだね、暖かいし、しばらくこのままにしとこう」
と女が応えた。
「まぁ、ゆっくりしとってや。わしらはちょっと席を外すもんで」
そう言って、二人は腰を上げて部屋から出て行った。




