迷子になったお月様
闇夜の王様には、とても綺麗な お月様という娘がいました。
闇夜を照らす 明るいお姫様を、王様は大変可愛がりました。
表情をコロコロ変え、東から西へと おてんばなお姫様です。
ある日 王様は、お月様の姿が見えないことに気づきました。
「月姫や、どこにカクレタのかな?そろそろ 出て来ておくれ」
王様が 闇夜の隅々まで聞こえる 大きな声で 言いました。
それでも お月様は あの明るい笑顔を出してはくれません。
いったいどこに行かれたのでしょう?みんな心配しています。
そのころ月姫様は、太陽の王様の世界に迷い込んでいました。
勢いあまって 闇夜を突き抜け、昼間の世界に出てきました。
いつもの町並みが 色とりどりに美しく、月姫は びっくり。
いつもの闇夜では 一番美しく輝いているのは、お月様です。
でも 昼間の世界では、見えるか見えないかの 儚い姿です。
太陽の王様は とてもまぶしく 直接見ることが出来ません。
青空の うす雲モヨウの様な 月姫に 誰も気がつきません。
月姫は なんだか 影の薄い自分が、惨めに思えてきました。
そして、とうとう、こらえきれず、泣き出してしまいました。
「うえーん、今すぐお父様のいる、闇夜のお家に帰りたいよー」
月姫は 誰かが見つけてくれる様に 大きな声で泣きました。
すると、自転車の後ろに乗った 男の子が空を見上げました。
「あれ、お母さん、見てごらん、お月様が迷子になっているよ」
「どこどこ、あっ本当だ、気付かなかったわ。よく見つけたね」
二人は自転車を止めて、しばらく お月様を眺めていました。
月姫の心に、わずかな希望と、少しの勇気が湧いてきました。
月姫は 一所懸命 いつもより 綺麗に輝く努力をしました。
すると、月姫のすぐ後ろに ダイヤの様な星が 現れました。
「お母さん、見て!今度は一番星だ。金色のダイヤモンドだね」
あちこちで 一番星を見つけた人が、お月様にも気がついた。
だんだんと 元気を取り戻した月姫は、輝きを増していった。
一番星が、闇夜の仲間に知らせて、続々と応援が駆けつけた。
気がつくと太陽の王様は隠れ 闇夜の王様が立っていました。
「こらっ 心配したぞ!・・・怪我は無いか?無事でよかった」
闇夜の王様の顔は 怒ったり、泣いたり、笑ったりで大忙し。
月姫は反省しながら、今までより明るく闇夜を照らしました。
「この暗闇の中で、私は、より多くの人を見つけてあげるんだ」
お空を見上げてごらん。今日の月姫様はがんばっているかな?