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悪霊 Evil spirit ――異世界死生 編――  作者: ナ・ココ・なご
黒魔術師・災呪の穢れ
65/98

65話 朝日を背にして、素材を求めん!



 ノインは照り付ける朝日に起こされ、早朝の透明な空気をいっぱいに吸い込む。

 昨日に皆で採取した素材は、指定数を上回る量だった。全くもって素材採取の初日としては上々の出だしだといえる。

 ペルンとユリは朝食の準備をしていて、ノインもそれに加わるのだ。だが、ソラだけは地鳴りのようないびきを響かせていた。


 朝食の匂いに誘われてテントから顔を出したソラは、一直線に朝食にむしゃぶりつき食べ干してしまう。


「ソラさんは、朝から元気良くて素材採取の情熱がみなぎってますね!」


 ユリはソラの勢いを評して、自らも素材採取を頑張る! と気合を入れている。それを横目にしながらペルンは「ただ、食い意地が張ってるだけだべ」と言うのが聞こえていた。

 朝食の後片付けも終わり、出発の準備を始めた頃。ペルンは皆を見渡して、ルートの変更を伝える。


「んだら、ちぃっとばっかし道順の変更をしてもらうべ。山岳ルートの南方に湿地帯がある。そこで羅果の実を採取すんべよ」


 地図を広げてペルンは湿地帯を指差す。その地図はソラ特製の採取地図。ノインもその地図を覗き込んで湿地帯と殴り書きされている部分を見やる。その場所は未だルートが切り拓かれていなかった。


「この湿地帯でしたら、僕が観た飛蜥蜴の記憶にもありました。もしかして羅果の実をつける木って、大きな葉を生やしている木のことではないですか?」

「お! それだべ。それが羅果の木だ。しかし、記憶を探れるってのは便利なもんだなあ」


 ペルンがノインの背中をぱんと叩いて、「んだら、おめえが先導しろや」とノインに案内を指示した。


「ルート変更、了解っス! 多少の回り道は全然構わないっスよ。オイラも指定の素材以外にも、色々見つけたいものが盛沢山っスからね。それに地図作成も出来て一石二鳥っスから」


 美少女ソラは書き継ぐっている浮島の地図を凝視して、ノインが記憶で見た内容を聞き出して変更ルートの洗い出しを行っている。「ん! 分かったス。この道順で行くと近道になるっスね」と頷いていた。

 野営の後始末をした後ノインは飛蜥蜴と共に皆を先導する。羅果のある場所を目指してノインたち一同は歩き出した。その道中で得意満面のソラから各種の素材の見つけ方や取り方をノインは教えてもらっていた。



 昼前に目的の沼地に到着した一同は、周囲を見渡す。


 その一帯は広い湿地帯となっており倒れた木々が沼地に沈んでいた。所々に頭を出している倒木を足場にして羅果の実をつける巨樹のもとに進んでいく。


泥濘でいねいが酷いっスね~、足を入れたらそのまま沈んでいきそうっスよ」

「ソラさん。倒木の表面に苔がついていて滑りやすくなっています。皆さんも足元に気を付けて進みましょう」


 ユリが倒木を見て、ソラの足元に注意を喚起している。


「大丈夫っス。落ちたら沈む前にそのまま泳いでいくっスから!」

「それでも気を付けなければなりませんよ。滝つぼとは違って、視界の悪い泥なのですから。それに魔獣も潜んでいるようです」

「じゃあ、オイラ行かないっス。ここで待ってるっス。じゃあ、ノインっち、その先導役の魔獣をここに置いて行って下さい。オイラの壁役に飛蜥蜴は不可欠っスよ!」


 ソラはそう言って湿地帯の岸辺まで堂々と引き返していく。その後を飛蜥蜴が追う。ソラの清々しいまでの後ろ背を見ながらノインは「ぞくぞくします」と、彼を尊敬して止まない。



 湿地帯の中央部に目的の木が群を成していた。


「あれが飛蜥蜴の記憶域で観た羅果の木。到着ですね」


 ノインは羅果の巨樹の根元からその頭上を見上げる。その枝葉にはノインの頭と同じぐらいの実が成っていた。「この実を17個‥‥‥持ちきれるんでしょうか?」ノインの呟きが彼らの背後を付いてきていた荷車魔動器を彼の側に引き寄せた。


「ほれ。ちゃっちゃと実を摘むぞ」


 ノインは背嚢から採取ナイフを取り出す。目の前の大樹の手近な枝を見つけて跳躍する。次から次に枝を飛び移って目的の羅果の実の有る枝先に行き着く。その実を片手で触ってみると十分に表皮は固く、このまま沼地に落としても割れる心配はなさそうだ。


「ノイン様、そのまま切り落として下さい。こちらで羅果の実は受け取りますから」


 樹木の根元にいるユリが大手を広げて合図を送っている。ノインの隣の枝ではペルンがさくさくと実を切り落としていた。ノインも落とす合図を送り羅果の実を枝付きで切り落とす。ナイフ捌きも刀の練習をしているおかげなのか、一発で切り落とすことが出来た。このまま切り落としていけば、すぐに採取は終了するだろう。


「少し多めに採取してもいいかもしれません」


 ノインが規定数以上の羅果の実を切り落とそうとしたとき、何か違和感を感じたのだ。



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