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悪霊 Evil spirit ――異世界死生 編――  作者: ナ・ココ・なご
さいきょーの従者
29/98

29話 強さ。語るべくもなく。

 本当に冗談のような存在だ。召喚された存在は六律系譜・水属序列2位のリヴィアタン。どの文献にもその名前は登場している。リヴィアタンとは天地開闢とともに世界に君臨する最強の古き聖霊の一角だ。そして、その実存強度に愕然とする。存在する実存段階が『1.000』から『2.000』となればエーテル量は1,000倍、そして『2.000』から『3.000』となれば100万倍に跳ね上がり、実存次元が『4』ともなれば、もはや想像をすることでさえ無意味なものとなろう。


 その実存次元『4.000』が、眼前に現れていたのだ。


 その彼女が両手に集めているエーテル量によって召喚魔動陣が軋みはじめていく。そのエーテル量が魔法として具現化したならば、この島など一瞬で蒸発するなど容易に想像がつく。


「リヴィア様。お戯れを」


 ユリがリヴィアの前に進み出て片膝をつき頭を下げる。そのユリの頭上にリヴィアの忌々し気な言葉が落とされた。


(アレはこの世界に存在してはならぬもの。お主は守り目―――いや、巫女といった方が正しいか?アレは穢れそのものじゃぞ?)

(・・・承知しております。しかしながら、彼の原典者はココでございます)


 リヴィアはココと呼ばれた少女をじっと見澄ます。それは少女の魂の底までも射貫く鋭い眼光だった。

 リヴィアは息をもらし天を仰ぐ。「皮肉よな」そう呟くとリヴィアは両手に集めていたエーテルを霧散させ、ココに向かって歩こうとする。が、魔法陣に囚われていたために陣の外に出ることはできない。陣を出るためには陣を壊すか、契約を進めなければならなかった。


「よかろう、少年。汝との『契約』を認めよう」


 ノインに契約継続の言葉を渡すが目線はココを見つめたままだった。リヴィアに見つめられているココは、ユリの服の裾をぎゅっと握って大きな瞳でリヴィアを見つめ返している。


「少女よ。そちの名は何というのじゃ?」

「ココ・ニ―ベルっていいます!」


 ココは気圧されてしまっている自分の心を奮い立たせるように腹の底から声を出す。相手は六律系譜の序列2位であるリヴィアタンなのだ。天異界の中央に坐する強者を眼前にして足は震え、体は強張る。


 でも、だからといってユリの後ろに隠れるわけにはいかない。自分は系譜原典者なのだ。ノインの主人として、ペルンのまとめ役として、彼らを守らなくてはならないと必死にリヴィアタンに向けて声を張る。

 少女の不安そうな態度とは裏腹にココの透き通った声が大きく響いてリヴィアのもとに届く。少女の必死な頑張り様にリヴィアは口元に微笑をためた。リヴィアは目を細めて遠い記憶の欠片を、その懸命に自分の体を奮い立たせている少女の姿に重ねていた。


「そうか、ココか。良い名じゃ」


 ココの名前を聞くとリヴィアはノインに振り返り、冷たく言い放つ。


「どうした?少年。早く聖霊契約を締結させよ」


 そう言われたノインはどうすればいいか分からずにユリに助けを求めた。


「契約対象者であるリヴィア様に意識を集中させてください。ノイン様が契約を認識できれば聖霊契約の完了です」


 ノインは言われたとおりに進める。するとリヴィアを捕えていた召喚魔法陣が消えていった。同時にノインの意識の中にリヴィアの存在が感じ取れるようになっていく。


「リヴィアさん、よろしくお願いいたします」

「よい。を召喚した褒美として汝との契約を許す」


 彼女はノインとの契約を許諾し、足早にココに向かって歩いていく。そしてリヴィアは、自分をじっと見つめているココの手を握り、抱き上げたのだ。


「ココ、お主があの少年の原典者じゃな」


 ココは六律系譜の守護者であるリヴィアを目の前にして緊張してガチガチだった。でも、リヴィアが笑いかけたことがココの表情を柔らかいものにした。


「うん!こちらこそ、よろしくです」


 ココの笑顔にリヴィアは「良い子じゃ」と頭を優しく撫でる。そして、自らの聖霊契約を確認した。聖霊契約は片方の意思でいつでも契約破棄ができる。ただ、聖霊から破棄する場合は器をもらう量が減少するし、逆に契約提起者が破棄を実行すれば器を捧げる量が増加するといったペナルティが生じる。しかし、先ほどから破棄を試みてはいるが、ノインとの契約破棄は不可能であった。契約はリヴィアを捕らえて放さない。この契約破棄が不可能であるのは『連樹子』が関係しているのであろうと、彼女は推測する。噂で聞いていた程度ではあったが、直接に体験してみると「まさに、異物よな」と独りごちる。


 リヴィアは優しくココの髪を撫でつけていると、彼女が先ほど放った衝撃波でなぎ倒された木々の間からペルンが息まいてやってきた。彼は、あさっての方向に向いてしまっている自分の左腕を力任せで元に戻しながら、リヴィアに向かってそのぐにゃりとした左腕を高くかかげた。


「おうおう態度がでかいウナギだべ!脚が生えただけの魚類が、俺の畑をめちゃくちゃにすやがってよお、水槽にぶちこんで躾けてやんべえ!」


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