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文化の違い

作者: 木こる

俺の転校先には奇妙な風習が根付いていた。

男女問わず、下着はふんどし一丁という地域だった。

小学生とはいえ思春期男子の俺にそれは当然受け入れ難く、

染まるものかという思いで今まで通りに過ごそうと決めた。


ある夏の日、事件が起きた。

同級生の女子のふんどしが盗まれたと大騒ぎしたのだ。

水泳の授業中、トイレに向かった小林が疑われたが彼はシロだった。

男子全員が疑われ荷物をくまなく調べられたが、

彼女のふんどしが見つかることはなかった。


それもそのはず、彼女は最初からふんどしを締めていなかったのである。


一時限目に水泳の授業があるからと制服の下に直接スクール水着を着用し、

替えの下着を用意してこなかったという、しょうもないオチだった。




それからしばらくして俺は中学生になり、

フンチラ(ふんどしがチラッと見える現象)などにも出くわしたが、

俺の心はときめかずにいた。


どちらかといえばラッキースケベなのだろうが、

それを認めてしまえばこの地域に染まってしまう気がした。

やはり下着といえばパンティーだ。それだけは絶対に譲れない。




そんなふうに過ごしているうちに、気がつけば高校生になっていた。

両親をはじめ、味方だった妹までもが今ではふんどしを締めている。

おそらくこの地域でふんどしを締めていないのは俺くらいなものだ。


俺は少し不安になってきた。

この反抗に意味はあるのだろうか。

ふんどしは日本の伝統的な文化じゃないか。

否定せず、受け入れてしまえば楽になれるはずだ。


俺は葛藤し、何度もふんどしを購入しそうになった。

しかしその度に踏み留まり、なんとか一線を越えずに済んだ。

ここより先は修羅の道。俺にその覚悟は無い。




その後、俺はギリギリの精神状態で大学に通い、

友人や彼女も作らずに学業に専念したおかげなのか、

なんとか一流企業の書類選考に通過することができた。


俺の目標はただ一つ、この奇妙な地域から離れることだ。

10年以上住んでそれなりに愛着はあるが、やはりふんどしはいただけない。

あれは祭事などの特別な場面で身につけるものという概念を捨て切れない。

21世紀のこの時代に、日常的に着用するのは何か間違っている気がする。

彼らにとってはそれが普通なのだろうが、俺には到底受け入れられない。


文化の違いというやつだ。


もしふんどしが下着だというのならば、

祭りの日にふんどし一丁になるということは、

下着姿で公共の場を闊歩していることになる。

彼らはその矛盾に気がついているのだろうか。

それとも知った上での行動なのか。


どちらにせよ、俺にはもうどうでもいい些細なことだ。


これから向かうは面接試験。

合格できればここから抜け出せる。


俺は気を引き締め、勝負パンティーを履いた。

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