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【Dead-bed】~アフターマン・ライフ~  作者: TAITAN
~アフターマン・ライフ~
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第2話「捜査」


『―――関東一円まで近付いて来た近頃起こっている連続殺人事件の続報です。茨城に端を発した連続殺人の連鎖は何処まで続くのでしょうか?』


『夜半から未明に掛けて殺されたと思われる被害者が実に今回で12名に及んでおり、各県警及び警視庁は警戒を強めています』


『被害者達にはまったく関連性が無い事が発表されており、無差別連続殺人事件として合同対策本部が設置される運びとなり―――』


 ネットニュースの多くが連続殺人事件のプロファイルで盛り上がっていた。


「どうして今回のお仕事がコレなの? これって警察のお仕事なんじゃ……」


「実は公安から来ていた案件です。治安維持や警邏を増やすと労働時間と夜勤関連の予算が圧迫されるので早めに対処して欲しいと」


「公安が?」


「ええ、何でも警察のドローンが何度か現場で敵を捕捉し、機動隊用のドローンが複数接敵したのですが、全て破壊されたそうです」


「えぇ……それって普通の殺人犯じゃないよね?」


「ちなみに最終的には複数機のガルムを投入して狙撃で仕留めようとしたらしいのですが、ガルム4機が全滅。敵OPはスペシャル・ユニットと思われます」


「ガルムが全滅? 狙撃し返されたとか?」


「いえ、電子戦と隠蔽能力に優れた強襲機体だと思われます」


 画面が映し出される。


 どうやらガルムの複数機が連携して作った現場情報らしい。


 複数機の狙撃が始まって数分後。


 目標と思われる外見がCG補正でも朧な敵は撃破出来ず。


 いきなり、一機の機能が停止。


 更に一機。


 もう一機。


 最後には全てのガルムが機能を停止していた。


 奇襲されたガルムを映した映像には何も映っていない。


 全天候量子ステルスすらも使われた形跡が見えない。


 全ての映像が欺瞞されていた。


「これって山間部での戦闘?」


「ええ、現場に幾つか高精度の監視カメラを持ち込んでいたそうなのですが、ハッキングを受けていないにも関わらず敵の形を捕捉出来ず。黒い靄に覆われた何かという事しか分かりませんでした。これは恐らく隠蔽機能の一種です」


「つまり、電子戦が強くて、電子的にも物理的にも隠蔽力が高い奇襲用機体……何か有ったっけ? そんな機体……」


 考えて見ても絞り込めなかった。


「恐らくは個人が作ったオリジナルだと思われます」


「カスタム機じゃなくてフルスクラッチ?」


「はい。ちなみに公安からの事前情報では闇夜に紛れて山間部の街で人を殺し、機体で逃げている様子です。殺し方は普通にサイレンサー付きの銃で撃ち殺すだけなのですが、当人のデータは電子戦用の機体があれば、改竄されている可能性が高い為、参考程度ですね」


 犯人の人相はマスクで分からないが、各地の目撃者からの情報を統合すると凡その人物像は男性30代後半身長183cm痩せ型で筋肉質。


 という軍人みたいな感じらしい。


「ちなみに殺された人達に関連性って一切無いの?」


「それは有ります。事前調査で調べてみたら、誰も彼もとある計画の関係者でした」


「とある計画?」


「40年程前に日本政府のプロジェクトの一つとして起ち上げられた計画の一つです」


 ウィンドウがホログラムで出されて、内部には【零号計画】と記されていた。


「ゼロゴー計画?」


「元々はアメリカの【アフターマン・プロジェクト】という遺伝子関連のプロジェクトから派生した人類進化の道筋を量子コンピューター上で計算して現実に創る事を目的にしたものです」


「アフターマン?」


「人類が数百万年から数千万年先に生き残っていた場合に予測される人類の後に続く知的生命ですよ。現生人類が猿を祖とするように、現代人類を祖とする生命体の事です」


「へ~~」


「この【零号計画】では一定域内で無差別に被験者の遺伝子情報を募って、それを元にして日本人の未来の肉体と精神を構築する事を目的に計画が進められていました」


「それって……」


「はい。今回の事件の被害者達は遺伝情報の提供者達です。凡そ50代から80代の人々ばかりで若年層が混ざっていません」


「計画はどうなったの?」


「発足から約4年で打ち切られました。表向きは人類の進化先である日本人の生命体を量子コンピューター上で確定し、発表して実物を造らず終了されました」


「裏向きは?」


「表向きとしては計画の中身はアメリカの予想計画の二番煎じくらいの感覚で頭部が大きく体が貧弱になって目が肥大化した宇宙人みたいな感じのモデルを出しただけでしたね。裏向きは……まぁ、おいおいお話していきましょう」


 ディスプレイに映し出された宇宙人模型は頭でっかちな大きい瞳の灰色の肌の人型で横にはリトルグレイ(想像図)と出ていた。


「宇宙人……宇宙人?」


「ああ、リトルグレイと言っても分かりませんか。こんな感じです」


 小さな灰色の宇宙人とやらがウィンドウに表示された。


「こんな感じなんだ。へ~~」


「まぁ、実際には何らかの事故が起こって計画は打ち切られたようですが、表向きは予算が降りなくなった。学術的な価値が低いという理由にされています」


「事故?」


「ええ、それも紙媒体だけで情報を残して政府の情報保管庫に厳重に詳細が隠匿されているらしく。当時の映像情報を漁っていますが、まだまだ出て来ていません。しばらく、多くの人々には真相も分からないままでしょうね」


「今回の事件を起こした人はその計画の関係者?」


「はい。ですので、当時の関係者に当たって見ましょう。公安から正式に警察の共同業務従事者用のパスが送られて来たので捜査権限はあります」


「おぉ、警察官ごっこ出来る?」


「あくまで警察の代わりに仕事を手伝うものですが、聞いてみましょう」


 周囲に3人の人達が映し出される。


「天文学者の真白博人ましろ・ひろと教授88歳。考古学者の古賀明憲こが・あきのり准教授77歳。物理学者の三島一成みしま・かずなり研究員66歳。これが現在生き残っている関係者の全てです」


「そうなの? というか、みんな遺伝子研究に関係無い人達ばかりなんだね」


「ええ、彼らはあくまで遺伝子を提供した被験者として記録されていますが、現実にはどうったものか……」


「どういう事?」


「計画の研究者のリストがサーバー毎抹消されており、特定出来ません。そして、関係者は皆殺されているか老衰で死去しています。かなり早死にしているようなのですが、彼らは傷病を負った際の延命や治療を断ったとか」


「何かあるって事?」


「はい。そして、最後に残っているのは彼らのみ。襲われる可能性がある」


「それって警察に知らせた方がいいんじゃ?」


「知っていますよ。恐らくは……そして、公安からは殺人鬼の捕獲もしくは処分をお願いされています」


「じゃ、行こっか」


「機内で彼らの情報も幾らか調べて来たのでお渡しします」


「うん。エーミール。マヲン。今日は11時には寝るんだよ~」


「はーい」


「マヲー」


 2人はソファーで仲良く座ってイグゼリオンを見ていた。


 1期の後に作られた2期【イグゼリオン・アフター】第14話「輝ける星」は泣けるお話だとネットで言われていたので今度見てみようと決めている。


「全員都内なので私服に着替えてから向かいましょう」


 こうして殺人事件の捜査のお手伝いをする事にしたのだった。




 *




 ―――1時間後。




 スウェットにパーカーを着込んでテディで都内の端を廻る事になつていた。


「誰もお家にいなかったね」


「ええ、確認してみましたが、全員が電子機器や監視カメラを組み込んでいない住宅に住んでいる上、郊外や森などに居を構えていた為、足取りが追えません」


「これってもしかして逃げてるのかな?」


「ええ、可能性は高いかと。ご丁寧な事に車は今時レトロな数百年前のガソリンエンジン。しかも、原始的な電子部品しか積んでおらず、特定する事も監視カメラ映像以外からは不可能という……」


「相手の電子戦能力を知ってるって事?」


「そう考えるのが妥当かと」


 テディに乗って都内の端を廻るような形で自然が多い地区を生身のシラヌイと順々に見て回ったが、誰も捕まえられなかった。


 全員が独身な上に今はネット業務が主でPCそのものも家屋の電子機器と繋がっていないし、その機能も無いものばかりで通常はオフラインでコードも繋げられていない様子らしいとくれば、徹底した電子機器の保安を行っていた事になる。


 三人目の三島さんの家は区の森林造成特別区というところに隣接していて、奥まった団地の端にあった。


「暗いね……」


「解体中の団地です。今後、この一帯には大深度利用しないテラ・クローザー系列の技術を用いたシェルター街が立つそうです」


「へぇ~~」


 一軒家で平屋。


 それが団地の寂れた場所にポツンと置かれている。


 此処に来るまでも省エネの為に街灯もセンサーが反応していなければ、付けられる事もなく。


 道路を走っているとポツポツと上を照らして、消灯されていく。


「現代社会に必須の端末も完全に電源を落としているようですし、電子マネーも使わず現金を使われていたら、監視カメラ映像以外だと追えませんね」


「どうしよっか?」


「ですが、可能性が無くはありません。戦闘態勢を取って下さい」


「来た?」


「ええ、11時の方向。解体中の団地の建造物の上です」


 そちらを見やると確かに黒い靄に覆われたOPがこちらを観測していた。


「あのモヤモヤって何? 煙幕じゃないよね?」


「はい。恐らくは金属化合物を空気中に浮く程に細粉化した代物でしょう。磁力があの周囲だけかなり高いので空中で引き寄せ続けているようです」


「チャフみたいな感じ?」


「第五次大戦期に同じようなものがありましたが、かなり電力を食うのでもしかしたら小型核融合炉入りかもしれません」


「小型核融合炉ってこの間みたいな?」


「ええ、小型核融合炉の殆どは採熱伝導用の超重元素の素材が作れて初めて運用が可能になる製品なのですが、OPに入れるには高コスト過ぎる為、G9以外の殆どの国家では実用化されていません」


「アレ日本のじゃ……無いよね?」


「実用化されている場合もありますが、日本では表向き作られていません。米国と欧州の一部、大国の大隊や連隊規模の指揮官機に運用されるかどうかというところだったりします」


「そうなんだ……殆ど聞いた事無いけど」


「最重要機密の類ですので。動きました」


 モヤモヤの機体がこちらに跳躍してローラーダッシュで近付いて来る。


「敵の音源を感知。ノイズが多いですが、これは……日本の現主力機JPDE-0066【八千代】です」


 すぐに情報が周囲のウィンドウに出る。


「全方位観測に切り替え」


 映像が周囲を完全に見渡せるものに切り替わる。


「ヤチヨは第9世代型のハイ・フォーマット基準機。実質、先進国主力機の中では最強に属する高資源性OPの代表格です」


 こちらのテディがヤチヨから遠ざかるように車輪で加速する。


「ええと、確かネットだと米軍の最新型のデータ取りに使われたって言ってたけど、殆ど詳しい情報は出てないんだよね?」


 CGで合成された無着色の白い機体はハバキリに似ていたが、問題はその体が一回り細くて軽いのに全てのデータがハバキリを上回っている事だろう。


 6mとダウンサイジングされた機体は小型に見えるが、中身は先日のハバキリをカスタムしたカルトのものよりも先進的で間違いない。


 人型のフレームがそもそも旧来のものとは違ってより人間の骨格に近付いた。


 従来のOPの構成素材の7割を占める炭素が9割に到達し、殆どカーボン製というのだから驚きだろう。


 だが、防御力は上がっている。


「敵のモーター音から察して新型機の部品が使われたフルスクラッチだと思われますが、日本で最新機体の部品が流出するのはかなり考え難いですね」


 理由は超重元素製の素材と超重元素を用いた新型の装甲や部材であり、ミルフィーユみたいな多層構造の外部装甲は金属の頑強さと熱量に強い耐熱性を併せ持ちながら恐ろしく軽い。


 今時の戦車だって30トンを切る軽さであるが、ハバキリの公式の標準での重量は装備込みで13トンと言われている。


「ヤチヨはハバキリをホッソリとさせているような外見ではありますが、殆ど中身は別物なのです」


「そこまでのものなの?」


「ええ、日本の技術力と叡智を用いたハイパーカーボン系の最新素材が機密である超重元素と共に使用されており、軽く硬く柔軟な動きが出来る」


 黒い靄に包まれた機体が少しずつ、こちらとの距離を詰めていた。


「全ての駆動系で最新の常温常圧超電導技術と液体金属、カーボンを用いた一体成型モジュールを使用しており、伝送系は光量子通信と光学ファイバーを二つ用いている為、現行の電磁波を用いる攻撃はほぼ効きません」


「そうなんだ? それにしても超電導、液体金属、カーボンの三重構造で駆動系を全部賄うなんて……」


「はい。現在、アメリカですら製造不能の世界最先端の材料工学が無ければ作れないモジュールですから」


「スゴイ……」


 アメリカに作れないと言う事は世界の何処にも作れないという事に等しい。


「西側の最新のOSたるハイ・フォーマットを用いた操作性は殆ど脳を直結して使っていた第四次や第五次の最新鋭軍用機OSと変わらない反応速度です。その癖、細か過ぎる操作の大半は慣らし運転を終えた10年もののAIプログラムで補佐している為、戦術面での判断も迅速です」


「シラヌイがべた褒めって珍しいね」


「そうせざるを得ないのですよ。アレは我々【Dead-bed】に現行で最も近い機体の一つですので」


「ちなみに短所は?」


「軽過ぎて近接戦でのパワー負けくらいでしょうが、中近距離の武器の攻撃力というのは未だに上がり続けています」


「あの黒いのに突っ込むのはダメだよね?」


「勿論。アレが自在に操作可能だった場合は結合した刃が襲って来たり、機体の駆動系に介入されて破壊される可能性もあります」


「それがもしかしたら小型核融合炉を積んでるかもしれないってなったら、パワーまで負けちゃう、よね?」


「ええ」


 正直に言えば、かなりマズイのだろう。


「あの黒い靄は先日戦った【バーバヤーガ】で言うところの加速粒子の装甲と概念的には同じようなものでしょう」


「そうなんだ?」


「同じく磁力を用いるところも似ています。攻撃と防御に使える無尽の攻防一体の武器となるのがあの靄と推測してよいかと」


「テディ形態じゃ勝てない?」


「94%の確率で撃破されます」


「逃げた方がいいんだけろうけど、逃げられる?」


「交番のある市街地まで残り300m、270m」


 高速で公的な施設のある場所まで逃げていると途中から相手が立ち止まった。


「マズイ。左に8°傾けて下さい」


 操縦桿を操作した刹那だった。


 機体の頭部を何かが掠めた。


 それと同時に僅かに機体が振動する。


「何今の? レールガン?」


「いえ、レールガンではありません。超音速の礫です。解析中……周辺に転がっている瓦礫や石の類を断熱圧縮するレベルで加速させている模様」


「それって……」


「当たれば、普通の装甲なら数発は持ちますが、相手がコンクリート片などを無尽蔵に叩き込んで来たら、持たないでしょう」


「交番まで持つ?」


「後15秒……予測完了。トレースして下さい」


 ディスプレイの指示通りに機体を動かす。


 すると、テディの右脇腹と左足が被弾したものの。


 コックピットは無事なままで何とか交番の監視カメラがある付近まで抜けた。


 すると、相手が全天候量子ステルスで消えていく。


 だが、それにはどうやらドローンの力が必要らしく。


 虚空に浮いた常温常圧超電導による浮遊型の正方形型ドローンが4機。


 消える一瞬前に黒い靄の周囲に見えた。


「人気のある市街地まで戻りました。警戒を継続中」


「傷は修復した?」


「はい。カメラに映る寸前に修復は済ませました」


 映像を解析結果が小さなウィンドウで次々にリプレイされていく」


「目下解析中ですが、ドローンからの映像では恐らく戦術小隊くらいの威力がある機体であると思われます」


 テディの周囲には必ず護衛のドローンが複数張り付いているが、基本的には数百m離れた場所から解析用の情報を取得しているのが殆どだったりする。


「戦術小隊って新型機のテストとかするところだよね?」


「ええ、日本政府管理下の防衛軍が民間機を襲うとも思えませんし、これは調べてみる必要があるでしょう……」


 シラヌイが沈黙しながらネットに接続しているのが解ったのでしばらく待ちながら、サブアームで背後から出されたカロリーバーを齧る。


「どう?」


「防衛軍のアーカイヴに同型かは分かりませんが、プランらしきものを確認しました」


「プラン?」


「あの黒い靄のようなものは恐らくですが、砂鉄と磁石の関係を現代風にしたものですね」


「砂鉄と磁石?」


「空中での操作性の高いマイクロレベルの超重元素合金製の細粉を用いて様々な用途の道具を作り出す統合磁界制御システム。磁力で操れる物質を精密操作出来るようです」


「今までこういうのは無かったの?」


「ありました。ありましたが……此処まで強力なものは【Dead-bed】以外では見た事がありません。割に合わないのですよ」


「コスト的な問題?」


「ええ、高い資源性に見合った自由度は出せますが、これを一つ作るよりは従来の最新鋭機の装備を作った方がパフォーマンス的には良い。ただし、対策しない限り、実態弾や電磁波、電流、磁力で左右出来る兵器類は相手に利きません」


「相手がそれだけスゴイ磁力を使えるって事?」


「ええ、何ならあらゆる物質を超磁力を無理やり掛けて浮かばせ、加速させる事も出来る。殆どの生物に有効。殆どの回路を破砕する事も容易でしょうね」


「そうなんだ。へぇ~~」


「磁気浮上や固定化の様子から見て、常温常圧超電導の上に超重元素入りのバルク磁石。しかも極限まで緻密化された理論最大密度……いえ、もしかしたら超重元素を用いた合金の系に発現する重過ぎる故の空間の歪みを用いて概念密度単位の磁石すら使われているかもしれません」


「何かスゴイ?」


「はい。何となくスゴイ可能性が高いです。現行の最新科学では宇宙空間で35万テスラを発現させる実験が火星域で行われていましたが……先程の事象を全て可能にするには推定で恒常的に爆縮機構を用いずに14000テスラ以上を精密制御……あれ一機で大型船すら浮上させられるかもしれません」


「船まで持ち上げちゃうんだ……」


「磁力の支配者……防衛軍の計画では大岩を動かした神の名を冠して【タヂカラオ】とシステムを呼んでいたらしいですね」


「でも、計画だけじゃないの?」


「よくある事です。横槍が入ったり、面倒な政治的理由で造られなかったり……今、関係者を確認してみます」


 テディを出来るだけ人目のある場所を通らせて撤退しながら、シラヌイが数分で関連資料を表示してくれた。


「この人誰?」


「この人物が設計したはずです」


 白い髪をアフロにしたニヤリとした老人だった。


 細身で鼻が高くてサングラスを掛けているが、筋肉質な肉体が御老人にしては遺伝子操作で健康そうに見える。


「【石田星羅いしだ・せいら】……超重元素を用いた磁石研究の第一人者でタヂカラオの設計者です」


「この人が連続殺人鬼なの?」


「まだ解りません。ですが、何らかの関係があるのは間違いないでしょう。私的な記録を漁っていますが、ネット情報や端末らしきものを確認出来ません」


「え? どういう事?」


 シラヌイに調べられない事は殆ど無い事は今までの生活でも身に染みている。


 だとすれば、相手はよっぽどに電子機器と縁の無い生活をしているか。


 または軍隊が使うような情報処理システムで防諜している事になる。


「……今時、紙ですか。なるほど、偏屈なマッドの見本みたいな人物ですね」


「マッド?」


「天才という事です。どうやら、今回の教授達と同じ大学に勤めていたらしいですが、3年前に失踪……以後の足取りは公的なシステムに無し」


「それって生きられるの?」


「ネット通販をせず。公的料金で電子決済を偽装するか、役所まで騙して偽名で決済するか。あらゆる情報を電子媒体に依存しない生活をしていれば」


「でも、それじゃあ、あんな高性能な機体作れないんじゃ……」


「誰かが匿っていたか。パトロンが必要ですね」


「何か複雑そうだね」


「今日のところは帰りましょう。これは一筋縄には行かないようです」


 こうして今日のところは帰る事にする。


 事件の捜査は最初から色々と困ったことばかりのようだった。

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