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【Dead-bed】~アフターマン・ライフ~  作者: TAITAN
~楽園のネズミ達へ~
28/41

最終話「日常への呼び声」


―――土曜日東京某所OP競り場。


『木曜夕方より発生したカルトの一斉蜂起の収束から1日が経ちました。総じて12時間程で全国での鎮圧が終わり、現在は蜂起したカルト信者の取り調べが行われており、警視庁は今回の事件を国家転覆罪として見るべきかどうかを―――』


 ラジオが切られる。


「お~~今日は大量だぁ」

「ほ、ホントだ!?」

「すっげー!?」

「これなら良いパーツが見付けられそうですわ」


 何万点もありそうなOPの様々なパーツがOP毎のブースで展示されており、競りに向けてパーツを品定めする人達が物凄い数で野外の会場を埋め尽くしていた。


「アズ!! ねぇってば」

「うん。小さいのはもう売ってる?」


 会場の大型パーツは競りに掛けられる為に午後になる前に競り場に運び込まれるらしかったが、他の伝送系や基盤の類は既に売られていて、ジャンク品も大量に流れていた。


 今日はカナン女子の部の全員でお買い物になった。


 あの騒動は日本中を騒がせていたけれど、結局加わった信者は数万人程度と信者の全体の数で言えば、1割にも満たなかったらしい。


 カルト信者の人達は警察に検挙されて鎮圧され、凡そ全国で事件の負傷者が3万人近く病院送りになり、鎮圧時の衝突で250人以上が亡くなった。


 一般の人達も毒物などの散布で犠牲にはなったものの。


 殆どは警察との抗争中に巻き込まれた形となっていて、数十名の犠牲者で収まり、万単位の人間が行動を起こした割には被害は最小限だった事が明らかになった。


 そして、報道はカルト側が全面的に悪いと訴える事にしたらしい。


『今回の事件の調査が行われていますが、殆どは軽微なものであり、被害者は多いですが、死傷者は鎮圧時の信者が主であり、それも300名以下であった事から治安維持用のドローンによる早期対応の効果が大きかったと―――』


 爆破予告や殺害予告、警察署の襲撃は3時間程で実行部隊が殆ど鎮圧検挙された事から警察は襲撃に加わらなかったカルト信者達には犯罪を犯していれば、今なら自首する事で刑が軽くなり、やり直す事が出来ると全国放送した。


 結果として事態が起こって12時間程で先鋭化した信者による蜂起は内部告発もあって完全に潰され、現在はその数倍はいる犯罪に加担していたものの、今回の件に加わらなかった信者が自首して来ているという。


『未だ謎の多い本事件ですが、カルトの一部先鋭化した信者達の犯行であると見られ、トワイライトカルト本部の内部抗争時に発見されていなかった実行部隊の隊長【倉見彦】容疑者が教団内部の実権を握る為、教主を亡き者として―――』


 骨振動性のスピーカーには今も色々なネットのニュースから他の情報まで色々と届いていた。

 結局、あの逃げ果せた隊長さんという人はもう国外に向けて脱出できたらしい。

 案外高性能だったらしいドローンは日本海側まで移動後に戻って来た。


 日本国内から海外への違法渡航業者をシラヌイが隊長さん名義で用意していたのですぐに国外脱出出来たのだ。


「ねぇ、聞いてる? アズ」

「あ、うん。ハインラインのパーツが欲しいんだよね?」


「そうそう。ウチの部にもう一機増やしたくてさぁ。アズが良いなら、ハバキリだけじゃなくて今の民間主力OPで勝率高いので送り出したいねって」


「ハバキリは日本固有だからなぁ。西側の国際規格とはいえ。それでもやっぱりカスタムパーツの数や汎用兵装の数だと欧州のハインラインに負けるんだよ」


「ですわね。ハバキリの武装も左程多くありませんし。汎用武装を持たせるとどうしても固有の良さが埋もれてしまう感じが……」


「それならハバキリ用の武装を造ればいいんじゃない? レギュレーション内ならどんな装備を持って行ってもいいんじゃなかったっけ?」


「あ~~~そっすねぇ。今までは乗るヤツがいなかったから、基本操縦者依存になるそういう新兵装は見送ってたんすけど、アズがいるなら……」


 七人がガヤガヤし始める。

 すると、後ろから視線を感じた。


「あ、デンネだ」

「馴染んでんじゃん。良いパーツ見付かった?」

「うん。アレとアレとアレとアレとアレ」


 一応、目星を付けて置いたパーツを指差す。


「……目利き出来るわけね。はいはい」


 何か呆れたような顔をされる。


「今日は競り場に詰めるって言って無かった?」


「それはウチの部の使わないジャンクパーツの商談してたから。もう終わった」


「そうなんだ?」

「それにしても、あっち見て来た方がいいよ」


「?」


「あっちでアンタの保護者が無茶苦茶やってるから」

「シラヌイが?」

「あの美人が古い中古パーツをしこたま買い漁ってた」

「そうなの? じゃあ、ちょっと見て来るね」


 皆に少し見て来ると言い置いて示された方角に向かう事にした。


 *


「デンネ部長。早かったっすね」


「今回のカルト連中の件で何処も民間OPの在庫とパーツが品切れだから、簡単に売れたわ」


「はえ~~~さすがです。それでアズの保護者って?」

「慇懃無礼な美人。年齢誤魔化してる感じの」

「へ~~アズって結構良いところの子なんすね」


「今回、パーツは狙い目だけ買えばいいから。資金に余裕出来たから」

「え? そんなに高く売れました?」

「高品質の完品に近いOPパーツがさっき格安で大量に出回ったばっかりよ」


「ええ!? き、気付かなかった……」

「それを一杯買った、と?」

「そういう事……」


 デンネが溜息を吐く。


 シラヌイと呼ばれた女がスーツ姿で大量の中古パーツをバイヤーを仲買としてネット決済で売り出したのだ。


 現場に居合わせたので必要分の部品を彼女は全て目敏く買った。


 これで今後5年は部品に困る事が無いという量を定価の3割近い値段で買ったと言えば、その安さが解るだろう。


 そして、そんな彼女や大勢のバイヤーが払った資金で旧いジャンクパーツや中古パーツを山のように買う背中を彼女は呆れて見ていたのだ。


 あれほどに大量の高品質のパーツが今にもボロボロで罅割れそうなジャンクパーツの山になって、しかもホクホク顔で不良品を買い漁る変な奴。


 しかも、恐らくはその最新パーツの出所は先日、バックヤードの依頼のついでに叩き潰したカルト連中のものだろう事が彼女には予想出来ていた。


(それにしても何十機分の部品をどうやって運んだんだか……あの事件の最中って言っても公安を欺瞞し果せたとすれば、バックヤードさえ持ってない最新の諜報システムを持ってる事になる)


 デンネにとって正しくカルトなどよりもシラヌイと少女に呼ばれる女の方がよっぽどに怖ろしいと思えた。


「さっき、アズが示してたパーツ全部買ってやんな。金は余ってる」


「やった!!」

「こ、これで魔改造出来る!!」


「ふ、ふおおお!! 日々、パーツのやりくりで部品の摩耗度合いに頭を悩ませてたのが嘘みたいだ!!」


 部員達が喜ぶのも束の間。


 次々に一番古い一山幾らと呼べるような部品のジャンクパーツが会場職員達によって次々に掃けて何処かのトラックに載せられて輸送されていく。


 彼らにしてみれば、大量の完品な摩耗の殆どない部品を売ってくれた上にゴミに近い代物を買ってくれた人物は神様レベルの上客だろう。


「競り場のVIPルームは取ってるから。アズには後で連絡入れとく」


『うぇーい!!』


 安っぽいジーパンや作業着姿で今日も来ていたお嬢様達はこうしてホクホク顔で競り場にルンルン気分で向かっていく。


 そして、その日の夜には満足した表情で帰宅する事になる。

 彼女達にとって夢のようなパーツに困らない日々が始まろうとしていた。


 *


「ねぇ、シラヌイ。そんなにパーツ買ったの?」


 競り場近くのジャンクパーツ売り場で端末でネット決済しているシラヌイを見付けて、2人で近くのお祭りに出る屋台傍のベンチに座っていた。


「はい。先日のパーツは全て海外のダミー企業を大量経由して国外に移送した扱いにしました」


「ええと、それを此処で?」


「ええ、同時に今回買ったパーツは全て、その企業のパーツ輸出時のおまけとして別の時代の新しいパーツとすり替えて額面よりも良い商品という体で捌いたので脚も付かないでしょう」


「そんなにジャンクパーツ買ってまたレストアするの?」


「ええ、現代式の部品の製造工程は全て大企業の登録していないパテント、知財込みで情報は集めてありますので」


「その技術でレストアする原料を買ったって事?」


「そういう事です。ザッと10tトラック4台分ですが、地下工房でリサイクルして、最精錬、再加工すれば、必要量で残るのは10分の1も無いですね」


「そんなに急いで使うものなんてあったっけ?」


「例のフレームを現在、基本原料まで還元してから再構築しました」


「あ、アレってもう出来たの?」


「ええ、ただ予備機にしようと思っていたのですが、エーミールが空を飛びたいと言っていたので飛行用の機体にしようかと」


「ええ……でも、フライト・ユニットがとっても高いって聞いたような?」

「そのフライト・ユニットの原料でもあるフレームが手に入ったのでこうして……」


「え? それって……」


「あの機体のフレームの能力は正しく現在の最新鋭飛行OPの数歩先にある力という事です」

「あ、もしかして。だからあんなに盾一杯やノッポでも軽やかだったって事?」


「ええ、フレーム自体が常温常圧超電導の素材であり、同時にフライト・ユニットのコアとなる超重元素なので」


「そういう事だったんだ……でも、エーミールは兵隊さんにはならないんじゃないかな」

「それは勿論。なので、独立飛行可能な機体を二機体作る予定です」


「フレームを入れ替えて使うって事?」


「はい。片方はエーミール用の大型フライト・ドローンのガワを被せます。もう片方はマーナガルム用の私が搭乗して非常時にはコックピットとフレームを退避させる事も出来る可変型でドッキング機能を持つ飛行OPとして……他にも今回のような敵に対応する為の追加兵装も建造中です」


「だから、あんなにジャンク品を買ってたんだ……」


「ドローンよりもさすがに時間は掛かりますが、地下構造を増やしたので一月程で完成するでしょう」

「あの……それって大丈夫? 東京の地下って凄く一杯色々なものが通ってるって聞いた気がするけど」


「幸いにもあの周辺は地下利用制限が少ない土地な上でカナン女子が大深度まで利用している手前、地下利用を妨げるものを作ろうという者が多くないので多少部屋を増やしてもバレません」


「ほどほどにね?」

「勿論です。プロフェッショナルですから」


 キランッと今日は仮面を付けていない生身のシラヌイはスーツ姿に眼鏡を輝かせて頷いた。


「そう言えば、エーミールは?」

「そろそろ来る頃かと」

「あ、おねーちゃーん」

「マヲヲー」


 マヲンを抱いたエーミールが一緒になって歩いていた。


 その猫の手には屋台で売っている大きなフランクフルトというソーセージが刺さった串が複数入った紙袋が抱かれている。


「エーミール。どう? お祭り楽しい?」


「うん。あっちにね!! 沢山、食べ物屋さんがあるんだ!! マヲンが食べたそうだったから、買って来たの♪」


「マーヲ」


 マヲンが紙袋の棒をこちらに差し出してくれる。


「ありがとう。マヲン。エーミール」

「えへへ~~」


 一本貰って食べながら、みんなでお祭りが出来て楽しくて、何だか胸が一杯になった気がした。


「あら? アズールさん」


 聞き覚えのある声に振り返ると其処にはメルさんと妹さんがいた。


「メルさん?」

「アズール。あの人誰?」

「あ、エーミール。この人はメルさんて言うんだよ」


 エーミールにメルさんの事を説明している間にシラヌイが挨拶をしていた。


「ああ、貴女がアズールさんの保護者の方ですか」


「はい。シラヌイと申します」


「メルと言います。どうぞお見知りおきを……こちらは妹のイーリです。イーリ……御挨拶を……?」


 メルさんが怪訝そうな顔で横を向くと何やらフルフルしているイーリさんがエーミールの傍まで凄く驚いた様子で近付いてプルプルしながら、最後にはダバーッと大粒の涙を流して泣き始めた。


「え? イーリ?!」

「あ、あの、えと、その……ど、どうぞ。ハンカチ!!」


 エーミールがポケットからハンカチを出して妹さんに渡す。


「ふ、ふぐぅぉおぉぉぉぉ!? う、美しい!! き、君!! ワタシとお友達にならないか!?」


 びっくりした様子のメルさんが思わず目を見開いていた。

 どうやら妹さんのこういう姿は珍しいらしい。

 けれど、妹さんが見ているのはどう見てもマヲンだった。


「マ、マヲ?!」


 ヒシッと紙袋毎両手?を取られたマヲンがビクッとしている。


「き、君の美しい遺伝子に感動した!! ワタシの事、親友って呼んでいいよ!?」

「い、一体何を言ってるんですの!? イーリ!? そっちは猫さんですわよ!?」

「取り敢えず!! 飼い主さんが良ければ、連絡先交換してくれませんか!?」


「マ、マヲ?」


 自分を指差すマヲンが言葉を理解している様子を見て、さすがのメルさんも普通の猫ではない事が解ったらしい。


 不可解そうな顔をしながらもエーミールと連絡先を交換する妹さんを見て、げっそりしたような顔をしていた。


「ごめんなさいね? この子、珍しい遺伝子のモノには目が無くて。ああ、黒猫さんもウチの妹が暴走して迷惑を……」


「マ、マヲー?」


「可愛らしいですわね。ふふ、でも、貴方のような高等知能生物型のペットはよく狙われるものらしいですから、どうか気を付けて? ウチの妹はそういうのとは無縁ですけれど……無縁よねイーリ?」


 思わず真顔でメルさんが訊ねる。


「ひゃい?! おねーに誓って!?」


 ビクッとした妹さんがガクガクと震えながら高速で首を縦に振る。

 メルさんの片手が妹さんのお尻に伸びていた。

 どうやら抓られたらしい。


「驚かせてしまったわね。わたくし達はお祭りという事で今日は来ていたのだけれど、今日はこのくらいで退散しておきましょう」


「え、いや、おねーぇぇぇえええっっっ?!?!」


 またお尻を抓られたらしい。


「それじゃあ、また学校で。アズールさん」


「あ、はい。メルさんも……お祭り楽しんで行って下さい。まだ連絡した事ありませんでしたけど……今度、時間があったら是非お茶に誘って下さい」


「っ……ええ!! 勿論ですわ」


 何故か。


 メルさんが笑顔になって、ブンブン手を振りながら、妹さんを引っ張るようにしてお祭りの中に消えていくのだった。


「マヲン。お友達出来て良かったね♪」

「マ、マヲ……?」


 エーミールに言われて何か釈然としないような顔になったマヲンは額に汗を浮かべながら『とも、だち?』と言っている気がした。


 *


―――バイオン・インダストリー本社。


「レリア君。君が連れて来た例の傭兵だが、随分と活躍しているそうだよ」

「CEOに褒められるとはあの子達が良い仕事をしてくれたようで何よりです」


 重役会議が終了した東京を一望出来る巨大なビルの最上階。

 会議室という名の戦場の跡にはドローンの掃除が欠かせない。

 未だに葉巻だの煙草だのを吸う者もいれば、紅茶を零す輩もいる。

 その天望を見やる上座に座る男が背中を向けたまま。

 大パノラマを独り占めしていた。

 その顔は夕暮れ時の窓から差し込む光に溶け込んで見えない。

 硝子を遮光するでもなく。

 男は眩しそうに目を細めている。


「一つ聞きたいと思っていたのだが、あの子を雇ったのは君の遺伝子が囁いたからなのかね?」

「CEO……それほどに私がロマンチストなら、この地位にはいませんよ」


「はは、その通りだ。だが、それにしても今回は欧州にも借りが作れた。良い仕事だった事は間違いない」


「例の新型機の倒し方ですか?」


「ああ、欧州戦線の一部ではもう投入されていてね。軍の基地と戦力に結構な被害が出ていたのだが、今回の戦法を真似させて貰ったら1機数百億の機体を鴨打ちよろしく全滅。しばらくはユーラシア・ビジョンも大人しくしているだろうとの事だ」


「それで欧州連中の機嫌が良かったわけですか」


「まぁ、対策されれば、次もそう上手く行くわけではないだろうが、そこからは最前線に詰めている連中の仕事だ」


「でしょうね……」


 男がふぅと息を吐いた。


「……君にアフリカから戻って来て貰ったのには訳がある」

「仕事を途中で放り出せと言われるとは思いませんでした」

「アジア圏で新しい仕事だ」

「今のアフリカの地盤固めよりも、ですか?」


「ああ、そうだ。第五次の亡霊と諸島国家群の対立で内戦が始まろうとしている。今回の仕事は他に回した。君には現地の亡霊と対話して欲しい」


「対話? 商売ではなく?」


「何も武器を売るだけが商売じゃない。彼らが未だに国家なんてものを求めているのか。それとも単純に滅びる前に燃え上がる炎として全てを燃やし尽くしたいのか聞いて来いという事だ」


「後者の場合は?」


「永い戦争は始まったばかりだ。気長に見ていたまえ。その内に亡霊が何故に亡霊なのかも分かるだろう。それだけの力を未だ彼らがどうして持っているのかも……」


「……左遷と言われた方がしっくり来ますが」

「そんなわけもない。今回は君に三個大隊を与える」

「ッ―――」


「そんな顔をするな。何も君を貶めようというのではない。単純に必要だから、必要な戦力を与えているだけだ。好きに使い潰したまえ」


「そこまでして何を見ろと?」


「我らが第五次以降にバイオン・インダストリーとして引き継いだものの中にはどうにも手に余るモノが多過ぎるのだよ」


「……具体的には」


 思ってみなかった言葉にレリアの瞳が細められる。


「亡霊もその一つだ。当時、我が社に吸収された企業の一つが彼らに力を与えてしまった。それは今も健在だと確認されている」


「力……ウチの前身が核弾頭でも売りましたか?」


「はは、それならば、どれだけ良かったか……君は【Dead-bed】という言葉を知っているかね?」


「いえ……」


 レリアが首を傾げた。


「一言で言えばだ。破滅だよ」

「破滅……広域破壊可能なシステムか何かでしょうか?」

「それよりも性質が悪い。地球が物理的に消し飛ぶ代物だ」

「―――さすがにそれは……」


 眉唾な話にレリアの瞳が半眼になる。


「まぁ、第三次大戦期に作られた代物だからな。今じゃ知っている者も少ない。その上、第五次大戦末期までに多くの国家がコレのせいで振り回されている」


「それ程のものが、その亡霊とやらにあるわけですか……」


「端末となるOPのフレーム名なのだがね。繋がっている先のシステムは今の人類の技術力では如何ともし難いというのが本音だな」


「そこまで言うならば、具体的な被害が?」


「人類最大の核汚染地帯を生み出した元凶であり、同時に地球上の汚染問題そのものを瞬時に解決出来る優れものだ。欲しそうな国は幾らでも思い付くだろう?」


「夢物語のようにも聞こえますが、CEOが言うなら本当なのでしょうね」


「彼らが切り札として持ち出したOPを見掛けたら、確保ないし完全破壊してから回収してくれたまえ。手段は問わないが穏便に済ませられれば、諸島が最悪崩壊しても構わない」


「了解しました」

「さて、私も仕事だ。日本政府に今、呼び出されていてね」


 椅子を立ち上がった男が伸びをした。


「例のカルトですか?」

「ああ、実はカルト連中がウチが死蔵してた【Dead-bed】を持ち出したらしくて……」


 その言葉にレリアが呆れた様子になる。


「持ってるじゃないですか……」


「はは、生憎とウチの前身企業が当時造っていた廃棄品だよ。貴重なサンプルとして一番安全そうな保管場所で使っていたら持ち逃げされた。今、日本政府と対応を協議中だが、行方が分かっていない」


「カルトの連中に?」


「その可能性が高い。まぁ、研究が終了したものだから、失っても惜しくはないが、御守りみたいなものだったんだがなぁ」


「CEOにも神頼みという概念があったんですか?」

「私は日本人だよ。君」


 振り返った男が微笑む。


 その体を薄っすらと光沢を放つ全身メタリックなサイバネティクスで覆う男の顔にはお面ではないハバキリを模した頭部フレームが使われている。


 いや、模したというのは間違いかもしれない。


 バイオン・インダストリーが今はハバキリの民間の補修部品を作っているのだから、小型化したというのが正しいだろう。


「相変わらずですね。いい加減生身に乗り換えては?」


「こう見えても敵は多くてね。毎回毎回狙撃される身にもなってくれ。自動車や航空機を使う度に何処かの誰かが狙ってくるんだから、こうもなるだろう」


 肩を竦めたレリアがその変人CEOと名高い男に一礼する。


「それではこれで」

「ああ、君の活躍はいつでも期待しているよ。ウチの息子によろしく」

「外で待ってる本人に言ってやったら如何です?」


「アイツはそういうの嫌がるだろう? この歳になって変態の父親なんざ持った覚えはねぇ!! とか」


「エーズに同情しますよ。切実に……」


 本社ビルの廊下で待っていたおばさん2人に青年が2人。

 部隊の隊長であるおじさんが1人。


 その丸聞えの会話に青年の1人が心底嫌そうに顔を赤くして、それを周囲は苦笑しながらニヤニヤと見守っていたのだった。

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