第22話「日常と依頼」
―――数日後。
『今日も現地の捜索が行われていますが、新興宗教【真元法】の本拠地とされる通称【楽園】の跡地では次々に証拠品が押収されており、様々な違法薬物や軍用OPの部品、不法活動の実態をファイルしたデータなどが―――』
『本案件を公安調査庁は新興宗教の皮を被ったテロ組織の内部抗争だと断定し、現在死亡した信者の身元の照会を行うと共に全国で様々な企業に入り込んでいた信者達の一斉検挙が始まり―――』
『次々に明るみとなった新興宗教【真元法】の違法活動の実態が暴かれるに連れて、彼らの恐るべき計画が明らかになっています。政府転覆を狙っていたという噂もネットでは囁かれていますが、俄かに現実味を帯びて来ており―――』
『全国での一斉検挙によって次々に拘留された元信者達ですが、既に提携していた弁護団は解散の意向を固めており、今後は国選弁護団が結成される運びに―――』
『いやぁ~怖いっすよね。宗教って……しかも、楽園とか言って兵器を沢山日本国内に運び込んでたんでしょ? テロリストじゃん』
『一般信者の扱いに関しては公務員や国の重要産業などに関わる場合は新しい政府からの方針で人事の内部調査が徹底される事になり―――』
数日前からネットニュースは第六次大戦を横において国内のトワイライトカルトの中枢壊滅と信者の一斉検挙を伝えていた。
「ど、どうやったのコレ!?」
今日もお昼時にカナン女子OP技術部にお邪魔していた。
毎日、汎用OPの戦闘時の詳細な設定を造ったり、色々なシチュエーションで戦闘をシミュレーターでやったりしながら、ご飯を食べて帰る日々だ。
仲良くなった七人の子達は毎日来ているせいか。
よく話しかけてくれるようになっていた。
「アズ!! この機動パターン!! これどうやったか教えて!?」
「あ、うん」
「こっちにも教えてくれないかしら?」
「このOPの極端な設定の意味が分からないんすけど」
「お昼ご飯食べてからでいい?」
全員が勿論と頷いてくれた。
カナン女子の学食には色々な料理が並んでいるのだが、テイクアウト出来るものの中で一番手軽に食べられるのがサンドイッチというパンで具を挟んだ料理だったのでシミュレーター近くのソファーでコーヒーを出して貰いながら食べる。
周囲のディスプレイにはネットニュースが垂れ流されていて、あちこちで違法な研究や活動が行われていた形跡が発見され、教団は解体される事になったらしい。
「あ、それで何だけど、次の土曜日に民間OPのパーツの競りがあるんだ。アズ。一緒に行かないか?」
「セリ?」
「ああ、知らない? モノの値段を高く付けて、一番高い値段を付けた人がモノを買えるって形式の商形態なんだけど」
首を横に振る。
お金は全部シラヌイが管理しているので近頃はまったく使っていない。
新しく造ったマーナガルム形態の為に今はシラヌイも専用装備に掛かり切りできっと口座を殆ど動かしていない。
食料は基本的に一ヵ月に一回ネット通販で大量購入して、生鮮食品も長期保存出来る大きな専門的冷蔵庫に入れっ放しだから、日常的には何も買うものが無いのだ。
近頃はおやつに関してもシラヌイが食べたいものをネット検索したエーミールやマヲンからおねだりされて、生身の体で調理している為、買う機会も無いとか。
「……OPのパーツって昔の軍用パーツとか?」
「あ、そこは知らないんだ。ええとね。軍用は一部の年代が過ぎたものから民間でも解禁されてるんだけど、民間用OPのパーツは最新のものが手に入るんだ」
「へ~~」
「でも、高いからお金持ってるところ以外は大体数年おきに型落ちを中古市場から買うんだけど、民間OPとはいえ、凶器にもなるパーツをネットで買えるようになると政府が困るからって店舗で買う事が義務付けられてて……」
「それを買いに行くの?」
「そうそう。良い商品を少しでも高く買って欲しいって事で実店舗を持つOPパーツの取扱い協賛企業が毎年日本各地で競りを開いてて」
色々とみんなが説明してくれたので民間OPの日本での現状にはネットだけでは分からない事情にも詳しくなった気がする。
「みんなで行くの?」
「うん。毎年、この次期はパーツの争奪戦にもなるから。全員で行って、手分けして買い集めて来るんだ。個人用に買う事もあるし」
「みんなも個人用のOP持ってるの?」
「一応、1人1機はね」
「そうっすねぇ。民間競技場だけじゃなくて民間演習場で乗ったりするし。ま、何だかんだ言って、みんなOPが好きなんすよ」
他の子達がその言葉に少し恥ずかしそうにしながらも頷いた。
「おう。アズール・フェクトいるかー」
「あ、デンネ=サン」
「あのなぁ? さん付け止めろよ。いい加減……」
「?」
「いや、どうして? みたいな顔するな。ちょっとヘッドから話があるって。来い」
「あ……」
周囲を見るとみんなが笑って頷いてくれた。
「後で時刻送るっすよ。もし良さそうなら返信お願いします」
「うん。それじゃあ」
急いでサンドイッチを食べて、デンネに付いて行く事にする。
誰もいない通路に出て歩き出すと横からデンネがこっちを見ていた。
「すっかり馴染んだみたいだな」
「そうかな?」
「アズって呼ばれてただろ」
「うん」
「ダチは大切にしろ。これはバックヤードじゃなく、個人的な忠告だ」
「?」
「何も分かりませんみたいなツラして……ウチらみたいな世界の人間とあいつらが同じなわけないだろ?」
「………」
「解ってるならいいよ。でも、あいつらをこっちに巻き込んだら、死ぬやつだってきっといるんだ」
「デンネ。本当は優しい?」
「はぁ?! ちょ、何だよ!? 本当はって!? あたしは優しいよ。最初からな!!」
「ふふ……」
「っ、冗談も言えるようになったか。はぁ……」
「?」
「まぁいい。ヘッドが呼んでるからさっさと行くぞ……アズ」
「っ、うん」
2人でドローンの山がある体育館に向かうともうオギさんが座って待っていた。
「ようやく来たか。テメェもカナンに慣れたみてぇだな」
「オギさん。どうかしたの?」
「テメェ……いや、お前に依頼したい仕事がある」
「依頼?」
端末を出すように言われて出したら、何やら情報が送られてくる。
「ウチのシマでOPの窃盗事件が数件起きてる」
「警察に言えばいいんじゃ?」
「馬鹿。違法な民間OPって時点でアウトだ」
「登録されてない?」
「ああ、そういう事だ」
チラリと情報を見やると民間用のテディ2体、更にブラッツが2体、更にミヤシマが3体、中には最新のライン・チュースが1体混じっていた。
「こんなに……全部、バックヤードの?」
「そうだよ。OPの違法賭博があってな。そこに参加するチームを組んでるんだが、都内で大量にそういう違法OPが盗まれてる」
「そんなに?」
「聞いて驚け。ウチらが調べた限りだと140体だ」
「……みんな鍵掛けてない?」
「ちげぇよ!? 相手が軍用OPと軍人らしいんだ」
ジロリとオギさんに睨まれる。
「軍人?」
「しかも、手際が良過ぎる。その上、重火器まで持ってる。殆どの連中は持ってて豆鉄砲。あっちは自動小銃だ」
「殺されちゃった?」
「いいや、脅されて縛られて適当に転がされてる。あちこちで警戒を強めてるが、1日前にようやく事件が起きなくなった。それまで連日だったのにな」
「それって……」
「予定数が集まったのか。あるいは公安辺りからのマークがきつくなったかだな」
都内の地図に次々に集められたOPの移動経路が示されていた。
「これ……一か所に集まってる?」
「公安は都内のカメラを全部使えるが、全てのカメラが全天候量子ステルスを見破れるような高性能じゃねぇ。その抜け穴となるカメラのルートと夜半の移動時、車両から出る駆動音を人の足で聞いて回った」
「公安の人もそうしないの?」
「連中が持ってるOPの数知ってるか? ガルムで200機はある。民間OPを幾ら集めても8倍以上の機体差が無けりゃ殲滅だ。ついでに駆け付けて来る時は都内に航空規制敷いて一気に30機以上は投入出来る」
「負ける要素が無いから、無暗に行動を起こさないって事?」
「ああ、そういう事だ。警察の方はそこまでの戦力も無いが、そもそもの話として違法なOPってのは殆どが民間機だ。軍用も100年以上前のものばかり。最先端の制圧装備持ってる警察はその気になれば、10機単位のOPなら殺さず制圧出来る」
「おぉ……優秀なんだね。日本の警察って」
海外では警察は賄賂を貰って犯罪者を見逃すお仕事だったりする事も多い。
「だが、問題が発生した」
「問題?」
「違法移民違法難民の排除を進めてる日本政府への反発で今、集められてるOPのある再開発指定区域。要は外人スラムってヤツは危険地帯だ。ついでにデモも頻発してる。国連から睨まれない為には国外の難民デモ鎮圧みたいな強硬手段は取れねぇ」
「それって警察が介入出来なくなったって事?」
「そういう事だ。公安もそれは同じだ」
「でも、何か大きな事を起こしたら……」
「勿論、大義名分があれば動けるだろうよ。その代わり、移民難民連中は死傷者多数だろうが……」
「OPを取り返せばいいの?」
「犯人の生死だの、OPの物損は構わねぇ。とにかく、あの地域にOPが無くなればいい。それをお前に頼みたい。アズール・フェクト」
「……えっと」
こういう時、シラヌイはどういう風に交渉するのだろうかと思っていたら、端末のホログラムからシラヌイが出て来た。
『初めまして。バックヤードの皆様』
その言葉に全員が一瞬驚いていた。
「テメェがコイツの後ろ盾か?」
『はい。シラヌイと申します。主に代わり、今回の依頼に付いて幾つか交渉を行う事に致しました。我が主はまだこういった事には不得手ですので』
「まぁ、いい。で? この依頼に付いて尋ねたい事があれば、聞こう」
『3つ程』
シラヌイが虚空にウィンドウを複数枚出した。
その内部には幾つもの写真が映し出されている。
「まず一点。盗まれた違法OPの総数は本当に140機ですか?」
「都内じゃな。他は調べてねぇ」
『……なるほど。そういう』
「あん? 何だ? 何か知ってやがんのか?」
『ええ、先日のトワイライトカルト絡みで日本各地で信者達が違法OPを都に向けて終結させつつあるという情報を掴んだもので』
「はぁあ!? ちょっと待て!? ネットの噂だろそりゃ!? 今更、カルトの連中が政府相手に喧嘩売るってのか!? 鎮圧されて終わりだろうが!?」
『いえ、それがそうでもなく。色々とまだあの教団は持っているらしいです。しばらく、我が主には首都から離れて貰おうかと考えていたくらいには……』
「ヘッド。こいつの話、今ちょっと調べてみたけど、何かウソには思えない」
デンネが虚空を指で叩きながら、ネットの検索に乗り出していた。
「本当か? デンネ? マジか? マジなのか?」
「まだ、確証はないよ。でも、リアルタイムで集められた情報をAI複数使って解析してたら、確かに日本中から首都圏に違法OPの移動した痕跡が掴めてる」
「えぇ……洒落にならなくない?」
ノバラが呟き。
「うっそぉ……」
ビコが渋い顔になる。
「何だ? つまり、違法OPの盗みはこの動きと連動してるってのか?」
『恐らくは……まぁ、偶然の可能性もありますが、何事も最悪を想定しておくべきでは?』
「……取り敢えず、後に回すぞ。他に聞きたい事は?」
『二つ目。本当にソレは違法OPですか?』
どういう事かと首を傾げる。
違法じゃなかったら、正式に登録されたOPという事になるからだ。
それなら普通に盗難届を出してもいいはずで。
「どういう意味だ?」
『バックヤードが保持する賭博用のOPの数は把握していますが、民間用ではなく軍事用OPも所有しているはずです。それも恐らくスペシャル・ユニット級のカスタム機があったはずですよ』
その言葉に周囲がシーンと静まり返る。
「テメェ。あんま潜ってると壊すぞ?」
オギさんがジロリとシラヌイを睨む。
『国外からの注文で日本国内に持ち込めば重罪であるカスタム機を日本に輸出したらしい。そういう噂のある企業のデータを偶々持ってただけですよ』
その言葉にグッと何かを堪えた様子でオギさんが溜息を吐いた。
仕方なさそうな顔になる。
「……持ってたよ。ああ、テメェの言うようにな」
『それも盗人に?』
「クソ忌々しい事にな。倉庫番にしてたドローンが全部壊されてた」
『成程。つまり、今回の依頼はスペシャル・ユニットの抹消。もしくは奪取という事でよろしいですか?』
「ああ、そうだよ!! クソがッ、デンネ!! 情報くれてやれ!!」
「はい。ヘッド」
端末に機体のデータが送られてる。
『ほう? 欧州の最先端機。それも横流し品ですか? 北欧の国も難儀ですね。今更、EV相手に蝙蝠外交も何もあったものではないでしょうに』
「どういうこった? 何か知ってんのか?」
『この機体。元々はEV側の技術で造られてるんですよ』
「はぁ!? ちょっと待て!? 海外ディーラーはそんなの一言も言って無かったぞ!?」
送られて来たデータにあるOPの外見はまったく見た事の無い代物だった。
何処か大昔の粗末なロボットという感じに思える両手両足が完全に棒状の形態で関節部やマニュピュレーターは現代式に見えるのだが、やせっぽっちの骸骨みたいだし、背骨のフレームから骨盤部分までの殆どが機械よりも人間の構造に近い。
『ああ、何というか。戦争の起爆剤ですか』
「何だ? どういう意味だ!?」
思わずオギさんが怖い顔になる。
『これを買う時、ディーラーはかなり安くしてくれたのでは?』
「それがどうした?! 殆ど装甲が無いからだって聞いたぞ!?」
『この北欧製の【スケレット】なのですが、近年ロールアウトしたばかりの出来立てホヤホヤです。こんなのが市場に流れているわけないでしょう』
「……まさか?!!」
何かにオギさんが気付いたらしい。
『あの国は現在、EVと秘密協定を結んでおり、今大戦に不参加という話があります。ついでにその確約としてEVの技術を一部渡されたとか』
「―――」
『この機体ですが、登録番号は抹消済みでしょうが、恐らくブラックボックス内にはEVのOP製造を引き受ける国有企業の刻印が入った部品が積まれています』
「何だと!?」
『ついでに言うとブラックボックスを開けた途端に現在地を送信。日本との戦端が切って開かれる。かもしれませんね』
「どういう事!?」
ビコが何だか大事になったのに驚いた様子で訊ねて。
『簡単ですよ。コレは最先端の軍事技術盗難事件であり、戦争中の国の技術が盗られたとなれば、国際問題。戦争中の国にとっては大義名分であるわけです』
「あのディィイイイラァアアアア!!?」
激怒したオギさんが拳を廃ドローンに叩き付ける。
『まったく、EVの諜報機関も面倒な仕掛けが好きなようで』
シラヌイが肩を竦めた。
「えっと、つまり?」
『北欧に渡されたEVの技術で造られた品が、その当事国にとってはまったく認められない形で流出し、その国は欧州で爪弾きになって、EVは日本に正式な宣戦布告に値する大義を得られる。という手品です』
「うわぁ……」
思わずこれは酷いという言葉を呑み込んだ。
知らない人は良い迷惑だろう。
自分が戦争の引き金を引くだなんて考えた事すらないのは誰だって同じはずだ。
「ヘッド……」
ノバラがさすがに拳を痛めただろうオギの手を優しく持っていたらしい簡易の治療キットから取り出したスプレーで消毒したり、絆創膏を巻いたりしていた
「済まねぇ。ノバラ」
「ヘッドの体が第一だから……」
ようやく落ち着いたらしいオギが忌々しそうにシラヌイを見た。
「それが真実だと仮定して、今回の件にどう関わって来る?」
『今回の件がもしも最初から仕組まれていて、教団がEVと繋がっていた場合、かなりマズイ事になるでしょう』
「教団が?」
『日本側が参戦すれば、欧州勢は嬉しいでしょうが、米国は激怒するでしょうね。第六次大戦の勢力図が複雑化したり、大陸の統一政府が乗り出したら、日本も東南アジアも再び大戦争です』
「それを教団が狙ってたって言うのか? そもそもどうしてEVが日本を参戦させたがるんだよ!?」
『貴方達にはまだ早い大人の事情が沢山の人にはあるのですよ』
「大人の事情?」
『あちら側にすれば、今回の件を起こすのは戦争に勝つ為です。一件不可解に思えるでしょうが……ああ、そうなると今回は日本国内に潜伏しているEVの国際諜報部隊も関わっているかもしれませんね』
「本当にEVの工作員がいるってのか?」
『盗人が軍人だったのですよね? この日本で政府の目を盗んで活動するにはかなり公安と拮抗する情報戦が出来るシステムと人員が必要です』
「……盗人は連中か」
『ええ、繋がりましたね』
「で? もう聞く事は? 率直に聞くが、やる気あるのか?」
オギさんがこっちを見る。
「シラヌイ」
『何でしょうか?』
「次の土曜日にみんなでOPの買い物に行きたいんだ」
『分かりました。金曜日までに片付けましょう』
「うん!!」
何故か、周囲がまた静かになっていて。
「お前は……そうか。そういうヤツか……仕事は引き受けるって事でいいんだな?」
「あ、代金は……」
『今回の代金は不要です。3つ目に聞こうと思っていたのですが、代金の代わりにこの地域での営業を認めて貰いたいのですが、どうでしょう?』
「営業? 何か始めるのか?」
『ええ、表向きは雑務で人材派遣業。裏向きで荒事屋。まぁ、傭兵稼業でもと思っていまして』
「傭兵……それが、それがお前の仕事か。アズール・フェクト」
オギさんに頷く。
「うん。兵隊さんになるのが昔からの夢だったんだ」
「はは、この平和な日本で傭兵かよ。まったく、狂ってやがる。だが、今はその力が必要そうだ。どんな仕事でも受けるってわけじゃねぇんだろう?」
『勿論です。プロフェッショナルですから』
シラヌイの仮面が眼鏡型になる。
「いいだろう。取引だ。バックヤードがお前の事業を全面的に認めてやる。好きにしやがれ」
「あ、うん。ありがとう。オギさん」
『では、さっそく、仕事に取り掛かりましょう。国内の違法OPの輸送ルートを特定して、各地の倉庫を公安に抑えて貰いましょう。これで戦力は半減するはず。後は140機とスペシャル・ユニットの捕縛もしくは破壊。首都圏の信者の動向だけそちらで追って共有して貰えますか? 人にしか出来ない諜報活動は不得手でして』
「デンネ」
「うん。任せて。ヘッド」
「ビコ。当日の怪我人の避難態勢と病院への搬送大勢を整えておけ。恐らく、沿岸で戦争になる」
「任せて下さい。父にも少しだけ事情を話して、スタッフを動員しておきます」
「ノバラ。あの周辺に動員出来る兵隊を集めろ。防弾装備を支給出来るだけでいい。それとあちこちの連中に首都で火種になりそうな連中がいないか見回りをやらせろ。南と西にも自分のシマでカルトに好き勝手されたくなきゃ真面目にやれと伝えておけ」
「了解。ヘッド」
『よろしい。では、こちらはこちらで準備を整えましょうか。ああ、前から思っていたのですが、そのドローンの山は使わないのですか?』
シラヌイがオギさん達が座っているドローンの山を見てニコリとする。
「あん? コイツか? 校内で生徒会連中を足止めするのに使ってたら、いつの間にかこの山だ。最安の大陸もんをデンネに仕入れさせたからな。腐る程あるが、撤去費用の方が高く付くんだよ。このご時世」
『そうですか。では、そのドローンの山と貴方達が当分使う在庫以外を撤去費用と相殺で引き取れませんか?』
「……大陸製の220年前の骨董品だぞ? しかもメンテ用の部品なんぞないんだが、いいのか?」
『素晴らしい。こちらにしてみれば、宝の山ですよ。正しく時代からの贈り物と言える』
「変な奴だな。テメェ……デンネ。構わねぇか?」
「い、いいですけど、ヘッドが言ってた通りで。しかも動く以外は殆ど障害物にしか使えないと思うけど……」
『今時のドローンには出来ない事が出来る。それだけで十分に価値があるのですよ。日本が物持ちの良い国で助かります』
こっちに背後にスゥッと蜘蛛型のドローンが数機現れる。
「な―――カナンの防衛システムは最新だぞ!?」
オギさんがさすがに驚いて天井を見る。
そこにも数機が尻尾から伸びるワイヤーでぶら下がっていた。
しかし、何らかの反応が返ってくる事は無かった。
『この子達は持っているモノにもステルスを効かせられます。さっそく始めましょうか。まったく、今日は面白い日ですね。ふふ……』
唖然としているバックヤードの面々の前で次々にドローンを自分の上に山と積んだ蜘蛛さん達が消えて、足音も無く。
その場から消えていくのだった。




