第18話「トワイライトカルト」
夏の海で黒猫さんを拾って来て数日。
「マヲー」
小さな猫とは思えない健啖家なマヲンは朝食からしてバクバクと箸を器用に肉球で挟んで普通に御茶碗を使ってご飯を食べていた。
(やっぱり、私よりもお箸の使い方上手いよ……)
食べている最中、明らかに体積が増えるマヲンは食べたらデブ猫と世間で呼ばれるような姿になるが、全然苦しそうどころか。
余裕の表情でおかわりの白米をお茶碗3杯平らげ、飲み物は器用にストローで啜って食後のデザートまでしっかり頂くのだ。
「マヲヲーヲヲマ!!」
「マヲン。今日も美味しかったって。おねーちゃん」
「それは良かった」
アレ以来、マヲンが家にいる事でエーミールは更にニコニコするようになった。
シラヌイにデブ猫状態で地下に連れられて行くと1時間くらいで普通の体系になって戻って来るのでシラヌイの生身の体も順調に造られているらしい。
「じゃあ、学校に行ってきます。エーミールの事よろしくね?」
「マヲー」
マヲンは任されたと言わんばかりに胸を張る。
太った体は今にも突けば、色々なものが出てしまいそうなくらいにデップリしているのだが、まったく機敏な動きで手を振られ、しっぽをユラユラされる。
「猫ってこんな感じなのかなぁ?」
何か違うような気はしたのだが、ネットでの猫の飼い方はまったく当てにならないので初日に見てから検索していない。
猫は爪を研ぐし、トイレにも行くし、お洋服も着るし、ご飯はしっかりしたペットフードだし、オヤツも必要だと言うけれど。
生物兵器(猫型)であるマヲンは洋服を着ないし、オヤツもシラヌイが作ったケーキとかクッキーとかを普通にフォークで食べているのである。
(それに訓練後に呑むお薬が良くなったせいか。評価ちょっと高くなってきてるし……普通の猫さんに出来る事じゃないよね)
学校に登校している最中。
ビルが立ち並ぶ朝方の道には別の学区に向かう同じ年頃の子達が歩いていた。
こっちの制服を見掛けると何故かヒソヒソ噂されているようだ。
車で登校していないのはかなり珍しいのかもしれない。
カナンは大抵が敷地内の寮に住んでいるか。
もしくは周辺の地域から車両で登校しているのが殆どで外に制服姿で見掛けるのは稀なのだとカナンに付いて検索していると色々情報が出て来た。
どうやらお嬢様学校だけあって、情報の多くは規制されているらしく。
外で見掛けたら幸運に思われているとか。
『あん? テメェ、何してんだ? こんなところで? まさか、徒歩で登校してるのか!?』
後ろからバイクの走行音が止まって、振り返るとヘルメット姿の女子生徒が1人。
「ええと、オギさん?」
「そうだよ。はぁぁ、テメェか。近頃、噂になってる馬鹿は」
「馬鹿?」
「まぁいい。取り敢えず乗れ」
「……いいの?」
「構わねぇよ。こんなとこでカナンに面倒掛けられても困るんでな」
赤と白のストライプ。
たぶん軍用バイクの改造品の後ろに跨る。
「しっかり掴まれよ」
「う、うん」
そのまま急加速したオギさんの腰に捕まると時速120kmくらいで急加速した機体が1分くらいで校内に続く車両用の地下駐車場入り口に入った。
周囲では運転手さん達が待つ簡易の宿泊施設や娯楽施設が地下に置かれていて、こっちを見た大人の人達が次々に頭を下げて来る。
機械式の駐車スペースに入れて降りるとバイクがヘルメットと一緒に置かれた台座毎、地下に沈んで格納されていった。
「行くぞ」
「あ、うん」
付いて行くと地下から外に出る通路に入った。
周囲に人影はない。
殆どの車両登校の人達は校内の専用入口付近で降ろして貰うからだ。
つまり、此処から校内の外に向かう者はきっと殆どいないという事になる。
「で、何で徒歩で登校なんて真似してるんだ? 新入り」
「家が近くだから……」
「はぁぁ、あのなぁ? カナンの人間が誘拐されたりしたら大事だぞ? 何かの車両に乗ってるならまだしも……」
思わず額に手を当てたらしいオギさんが溜息を吐く。
「車両ならいいの?」
「普通は適当な高級車だ。それが嫌なら個人で乗れる装甲在りの軍用車を公道用に改造したもんを使え」
「近くなのに……」
「テメェの家が歩いて5分だろうが何だろうが、5分あれば、余裕で誘拐が起きるのは分かり切ってるだろう」
「そうかな?」
「そうなんだよ!?」
いつも公道を歩く時はシラヌイお手製の蜘蛛型で全天候量子ステルス機能が付いたドローンが3機同時に周辺展開しているから、そういう危ない事は無いと思うのだけれど、日本では違法らしいので黙っておく。
「大物というか。何というか。本当にどっから来たんだテメェ? 日本の常識をもっと学びやがれ」
「えっと、今コレで」
端末を取り出して、今見ている日本の常識や諸々の習慣に付いてのシラヌイのお勧め本をホログラムで出して見る。
「何だコレ? 今時のハウツー本でもないし、日本戦史、日本経済史、日本大衆文化大全? いつのだよ!? はぁぁ!? 20年前!? お前、歴女か?」
「レキジョ?」
「解んねぇのか。はぁ……仕方ねぇなぁ」
端末を取り出したオギさんが何やら検索して情報を投げてくれる。その本はどうやらここ最近出たばかりの日本の歩き方を紹介するものらしい」
「首都歩くならそれを読んどけ。それで大体は解る。それとコレ」
新しい地図のデータが出て来た。
「これは?」
「今、あぶねー連中が何処にどれだけいるかの分布図だ」
「首都の地図?」
「小さなグループから大きなグループまで分類出来る限りの非合法活動や学生グループ、トワイライトカルトや国外マフィア、違法難民違法移民の分布、犯罪発生率や地域の特色毎のもんを細かく色分けして数値化してある」
「貰っていいの?」
「ウチのバックヤードお手製だ。国外お嬢様向けの商品だが、今回はただでいい」
「ありがとう。オギさん」
「それ見て、行っちゃならねぇところとか。行ったらあぶねぇところとか確認しておけよ。此処は一等地だから治安もいいが、道は何処も公道なんだ」
公道は危険地帯と変わらないというのは国外での常識だ。
しかし、日本でも一応は危ないらしい。
「今じゃ監視カメラが無い場所を探す方が難しいとはいえ。巻き込まれてあっと言う間に殺されるなんざ。まったくよくある事だからな」
「外国みたいに?」
「そうだよ。特に首都圏や大都市圏の沿岸部、逆に山岳部に近い場所ってのは一度都市化されてから再開発が進んでない場所もある。そういうとこには不法居住者が大勢居たり、カメラが無かったりだ」
「うん。気を付けるね」
「今、政府がそういう場所の再開発と不法居住者の摘発を進めてるが、そのせいで抗議活動が大きくなってる場所もある」
確かに近頃はそういうネットニュースが沢山動画サイトでも並んでいたりする。
「普通の日本人つーのはデモなんぞしねぇからな。そういうのを見たら絶対近付くなよ? 解ったか? 新入り」
「はーい」
「解ってるんだか、解ってねぇんだか。もういい。オレはこれから学徒会なんでな。失礼するぜ」
オギさんがカバン一つ持って、通路の先に消えていった。
「……オギさん。実は良い人?」
答えは帰って来ない。
けれど、端末で聞いていたシラヌイ辺りは頷いてくれそうな気がした。
*
―――放課後。
「新しいお仕事を持ってきました」
今日も先進国の最精鋭部隊にボロボロに負けて、死亡回数が10回を超えた夕方。
マヲンが玄人向けのキーボードとマウスという前時代的なネットサーフィン環境でゲーミングチェアに座って、マウスをカチカチしながら、専用のディスプレイで何やら調べものをしていた。
こうして見るとまったく人間と変わらないように見えるし、時折欠伸もしているので何だかおかしくなってしまう。
「あ、これだよ。これ」
「マヲー?」
エーミールがその横で同じ椅子に座って何やら一緒にネットで探し物をしている様子なのに何故か笑みが零れてしまった。
「よろしいですか?」
「あ、うん。ごめんね。2人とも何探してるのかなぁって」
シラヌイがお仕事前なのでスーツ姿で周囲に情報を展開していた。
「今はどうやら2人でプレゼントを探しているようです」
「プレゼント? 誰への?」
「それは明日になってからのお愉しみにしておきましょう。話を戻しますが、こちらをどうぞ」
シラヌイがホログラムのウィンドウで目の前に情報を渡してくれる。
「ええと、新興宗教【真元法】……もしかして、今日本で問題になってるって言う新しいトワイライトカルト?」
「ええ、その通りです。一応説明しておくとトワイライトカルトというのはただのカルトではなく。大戦期に発生する世界滅亡論者達の中でも理論化して生き残る為の自己防衛手段を教えるという話で人を釣り、軍事力となる兵隊を集めて教練する。言わば、軍事力を持つ過激派集団です」
「殆どが民間人なんだよね?」
「ええ、ですが、新興宗教の構成員となった場合は政府からのブラック・リストに乗る為に公共の福祉や諸々の国家インフラへのアクセスに制限が掛かります」
「そうなんだ?」
「ええ、昔はそれに乗った人々がかなり過激な活動で被害を出した事もあり、トワイライトカルトの制限が各国で立法化された経緯があるのです」
「へぇ~~」
「今時は全ての資金の流れが可視化されていますので、政府の目から隠れるには独自の資金源と海外の隠し口座などがかなり必要になるのですが、彼らの手口はそういった現物を造る人々をターゲットにしている事もあり……」
「お金が無くても現物で取引してる?」
「はい。それも食料や兵器すらも自給する始末です。何処かの工場の社長や社員を取り込んだりして使う手口も近年は増加していて、その隠れ信者の規模が大きくなっても日本の警察はちゃんとした証拠が無ければ、動けません」
「でも、一斉捜査とかすればいいんじゃないの?」
「では、一斉捜査の映像をどうぞ」
映像が目の前に映し出される。
そこでは警官を圧し留めようとした人々が悲鳴を上げて倒れ込んでいた。
しかも、死んでいるようにも見える。
警察は大慌てで、数人の人々を運んでいた。
「これって?」
「死人の盾と呼ばれる戦法です。体が弱くて今にも死にそうな人々を取り込み。彼らに警察の捜査を妨害させて、死人が出たらすぐに騒ぎを大きくする」
「え、でも、これで捜索は止められないんじゃ?」
「こういう場所がダミーも含めて数多く用意されており、警察が捜索で死傷者を出したと騒ぎ立て、弁護士団を結成。逆に警察を訴えるまでありますね」
「な、なるほど……」
「世論はさすがに死者が出ると騒ぐ報道関係者が多いので。これで世論を気にせざるを得なくなった警察が萎縮している間に証拠も隠し果せるという寸法です」
「ええと、手口の巧妙化? って言うんだよね。確か」
「はい」
シラヌイが頷いて、情報のウィンドウを増やす。
「【真元法】はこの20年で急成長した国内最大手のトワイライトカルトです。宗教法人格は取得していませんが、フロント企業を複数持っており、税金も納めています」
「宗教ではないって事?」
「宗教法人に課せられる政治的なコストが極めて高いのですよ。ただし、現物で違法なものを大量に備蓄し、あらゆる手段を駆使して隠匿しています」
あちこちの映像では船や港から大量のコンテナが運び出されている様子が映っており、そのコンテナには【真元フロンティア】と書かれていた。
「物流会社から監視カメラの製造会社。他にも社会基盤を造る企業を続々と買収して肥大化しており、その中で独自のコミュニティーを生み出し、公的機関にも信者を多数送り込んでいるのです」
「な、なるほど……国家の乗っ取り?」
「そのようなものです。これを問題視した与党が今回の依頼者です。【真元法】は違法な人事で自分達の乗っ取ろうとしている企業や公的機関で勢力を拡大しているのですが、彼らが一斉に集まる催しがありまして……」
ウィンドウに情報が出される。
「これって……チャリティー?」
「はい。表向きは【真元法】によるチャリティーコンサートを主軸とした慈善活動と言う体ですが、その場所は日本の山岳部に新設した本部のお披露目と持ち込まれた武器弾薬の再分配だと思われます」
「それこそ捜索したらいいんじゃ?」
「目的地に向かう道がありません」
「え?」
「全て、航空機や航空輸送ドローンで向かう上に現地一帯全てが私有地。ついでに内部には電子端末を持ち込めないという厳重さで極めつけはネット環境からの断絶です。基地局の類は周囲に無いので盗撮もかなり難しいですね」
「ハッキングすら出来ない?」
「それどころか。監視衛星を欺く為の大規模光学迷彩用の設備を完備しており、内部を覗けません」
「もう要塞じゃない? 作るのを地方自治体とかが許可したりするの?」
「ええ、知事その人が彼らの仲間だったらしく」
「かなり入り込まれてるんだ?」
「ええ、このままでは国政に多大な支障が出ると危惧している政治家も多いとか。更に私有地近辺に住まう人間がそもそも教団員が多数。もう軍閥化して乗っ取ってますと言った方が解り易いですね」
「う~~ん。今回の目標は?」
「一般人はいませんので。その場に集まった幹部と信者全てです。山岳戦用の違法改造OPが多数部品単位で搬入されていたらしく。その数は推計で70機」
「基地二つ分くらい?」
「もしかしたら、それまでに搬入していた分も含めると100機よりも多いかもしれません」
「そんなに……」
「敵主力は日本の150年前の主力機である【ハバキリ】の改造機です」
ウィンドウに出たのは昔の日本で使われていたOPの主力機だった。
大きな特徴は特徴が無い事と言われるスタンダードなタイプの人型だ。
胴体や駆動系回りは現代の標準的OPの基礎となったとも言われるくらいの標準中の標準でこの機体より細いか太いかで大抵のOPは軽装甲か重装甲かが決まると各国に言わしめた。
中でも一番目を引くのは平地と山岳部で使う為の足回りで大火力の火器を持つ駆動系のパワーとバランサーは秀逸。
更に各種兵装を1機種に装着して運用するアタッチメント方式は今では各国の標準方式として何処でも採用されている。
「正式名称はJPDE-0012【羽刃斬】。大戦時に使われた時は山岳部に置いた機動砲台を死守する為に10万機投入され、生産数の3分の1を大戦終了までに失いましたが、殆どの大陸側からの部隊を全滅させた事から、大陸側では“死の山岳兵”の異名を取っていました」
「確かコレって山岳部で高速機動する為の機能が沢山付いてるんだよね?」
「ええ、プログラム周りから始まって駆動系におけるアシスト機能は当時の米国の主力機と比べても遜色がありません」
「ええと、傑作機って事?」
「はい。生存率が高い強固なコックピットブロックと軽量ながらも山の斜面を自在に動き回れる足回り。そして、アタッチメント方式による各種専業化した機体を部隊運用し、総合的な軍隊としての能力が極めて高く、実績も申し分ない」
4種類の装備が映し出される。
どれも背後から背負うタイプのアタッチメント式の装備だった。
「ECM、ECCM特化の電子戦兵装である背部レドームが特徴のD型。前衛の防御力重視である追加装甲と大盾、肩部腰部の迎撃用マイクロミサイルポットを積んだC型。中核戦力である高精度対物ライフルと追加バランサーシステムを搭載した7km先の標的を仕留めるB型。敵の攪乱、陽動などを行う主力であるA型」
「これが連携して護ってたって事?」
「はい。しかも、全て日本製の高精度の部品を細部にまで使った国外ならフルチューン相当のものです」
「高そう……」
「当時の米国と同数の模擬戦では惜敗でしたが、敵の半数以上を行動不能にしており、明確なキルレートの差を付けられなかったという逸話もありますね」
「それが100機以上……さすがに1機とドローンだけじゃ無理なような?」
「いえ、これは完全展開された場合です」
「あ、そっか」
おじさんも言っていた。
どんなに機器が高度化しても、どんなにドローンが戦場で活躍しても、戦うのはその背後の人間に過ぎない。
「ええ、彼らトワイライトカルトが普通のカルトよりも厄介なのは大戦で生き抜くという生存本能に訴える戦略で布教している事です。でも、だからこそ、彼らの多くは弱者なのですよ」
次々にカルトメンバーの構成員の分布をシラヌイが出してくれる。
殆どは一般人。
いや、元一般人だった。
「彼らの9割以上は元一般人。残りの1割は代えの利かない技能職。ですが、その中でOPを扱える人物は本当に極一握りの限られた者しかいない」
「しかも、部隊にする程、そういう人がいたら、取り調べで解っちゃうよね?」
シラヌイが頷く。
「ええ、なので、極一部の指揮官を数名育成し、後は全てドローン化していると見て間違いありません。事実、彼らの機体部品の一部が押収された事があるのですが、コックピットブロックに使う部品は一つも見つかっていません」
「人の乗らない無人機部隊。ドローン化したから高性能ってわけじゃないよね」
「そもそも判断ミスを回避出来る程のAIや実戦データは組織が余程に大きくなければ、単独で賄い切れません」
「確かに……今は何処も兵装周りは領土的利害の無い国との共同開発だもんね」
「ええ。米軍が今も最強なのは彼らが連綿と集め続けた実戦データに裏打ちされ、単独で開発する技術力と資金を有しているからに他ならないわけで……」
「それは日本も同じ……なら、戦いようはあるね」
シラヌイが当時の警備環境予測を出してくれた。
各種の監視機材は一般のハイグレードなものしか使われておらず。
日本国内で取引禁止の軍用品は一切見当たらない。
「その通りです。敵は最初から完全展開する理由などありません。そもそもOPなど存在していてはいけないのですから」
あくまでチャリティーという名目で集まったのにその後に弾丸が周囲で見つかったりしたら、困るのは相手なのだ。
「彼らが使うとしても殆どは最初から格納庫内。要塞化した本部敷地内部でのパレード時くらいでしょう。そして、警備は人間とドローンです」
「破壊工作して格納庫を爆破。指揮官機となる有人機を破壊……」
「ええ、その上で基地機能がネットに繋がっていないのならば、光学迷彩で隠し切れる、外部に観測されない範囲での武装しか使われていないと見るべきです」
「これなら何とかなりそうだね。シラヌイ」
「ええ、このチャリティーに集まっている多くの人々はトワイライトカルトの熱狂的な信者として知られる信者ランクA以上。要はカルトの狂信者です」
「信者ランクとかあるんだ……」
人を救うのが目的の宗教なのに信者を分けてしまっては現実の厳しい階層社会と全然変わらない気がした。
「第六次世界大戦中です。これ以上彼らが大きく為れば、日本国内においては最大級の火種の一つ。米国と違って日本はこういった点では脆弱な面を抱えており、無視していては問題化も必至です」
「今回は新しい本部が出来ちゃったから問題にされたの?」
「ええ、正確に言うと本部内に本来は国しか扱いを許されない一世代前の小型核融合炉が使われたからですね」
「え、それってバイオン・インダストリーの?」
「はい。どうやら研究資料を目で盗んだ研究者の信者達が作ったそうで。このままでは何らかの大電力使用が前提のドローン師団まで使われそうとなったら、そうもなるでしょう」
確かに最もだ。
人間は道具があったら使いたくなる生き物。
というのはおじさんの言葉である。
「装備は?」
「1週間後までには用意出来ます。チャリティーが10日後。まったく余裕で間に合いますね」
「うん。じゃあ、それまでに戦術と戦略を覚えておけばいいの?」
「ええ、明日からシミュレーションルームで訓練を開始しましょう」
頷いているとエーミールとマヲンが何故か手に手を取り合って、何かを見付けた様子になっていた。
一体、何を見付けたんだろうと思いつつも、シラヌイから武装や戦術に付いて説明があったので後で聞こうと決めて今は情報を読み込む事にした。




