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【Dead-bed】~アフターマン・ライフ~  作者: TAITAN
~楽園のネズミ達へ~
17/41

第16話「闇夜の海戦」


―――数日後。


「ねぇねぇ、シラヌイ。今日のお仕事は?」

「本日は無国籍の海賊を海の藻屑にするお仕事を持ってきました」


 学校に行ってから数日。

 金曜日の夜に出て土曜日の朝、太平洋沿岸の街に付いていた。


 沿岸部の多くは高台に街が存在していて、沿岸部付近は観光業の為の施設と地震や津波が来た時のシェルターが置かれているのが普通らしい。


 海辺は前に来た事があるけれど、風情というのだろうか。

 光景や印象がまるで違って見える。


「すごーい。水がいっぱい。あれ? カイスイ?」

「ええ、海水ですので飲めません」

「僕、また賢くなったよ。アズール」

「うん。偉い偉い」

「ふふ、綺麗だねー」

「うん。とっても……」


 海水浴場から少し離れた駐車場には現在、テディともう一台。


 日本の財津工業から出ている建築現場で主に使われるOPではないが、準OPという日本独自の分類になる工業建築用人型機材【ミヤシマ】が座っている。


 中にいるのはエーミールだ。


 このミヤシマは危険地帯での人間には出来ない作業をする為のものだ。


 ドローンのみならず現場には人間の工事者が必要という国家の要望……つまり、大戦期からの復興事業で大量に仕事を生み出す為に造られたOPこそがこのミヤシマらしい。


 山岳部が多い土地柄である日本では、無骨で小型クレーンやローラー、その他の建築用機材が積まれたミヤシマは各地でシェルターなどを造っていた。


 この為、国民的に知られたOPの一つとなっているのだとか。


「今日の予定は此処でお昼に遊んでから……」


「ええ、近くの旅館を取っているのでそちらに泊まりましょう。エーミールはお留守番です」


「エーミール。お留守番好き?」

「うん。MANGA読んで待ってる」

「ふふ、すっかりMANGA好きになっちゃったね」

「今呼んでるのスゴイんだよ? とってもカッコイイの」


「では、取り敢えず、海水浴場で遊んでみましょう。人気の無い場所で助かりましたね。人混みもありませんし、見ているのはカモメくらいのものでしょう」


 2人でサンダルのまま外に出る。


 前にタイタンで買った服を着込んで、エーミールはちょっと小さめの同じようなデザインの服を着込んでいた。


 シラヌイが取り寄せてくれたお揃いのものだ。

 2人で麦わら帽子というらしい帽子を被ってみたけれど、大きい。


 エーミールの乗っているミヤシマは小さなタラップが膝を抱えて座ったような恰好で出るタイプなので階段を上り下りするだけで乗り込む事が出来る。


「行こう。エーミール」

「はーい」


 大きなコンクリートの階段を降りていくと少しずつ熱くなる砂浜にはまだ人も殆どいなかった。


 いるのはちらほらと歩いている犬を連れた散歩中のおばさんとか。

 子供連れの人達が一組か二組くらいだ。


「うわ~~これが海……」


 傍まで行ってちゃぷちゃぷと海水で脚を2人で濡らしてみる。


「変な匂いだね。アズール」

「でも、これもいいかも」


 2人で浜辺をお散歩して、流れ着いた色んなものを見てみる。


「これはタイヤ?」

「あ、こっちはフライパンとか言うのだ」

「えっと、C4爆薬の包み紙?」

「う~~ん? ヤッキョー?」


 何だか軍事用品のゴミも流れ着いているようだった。

 その時、パンッと音がして、思わずエーミールを伏せさせる。

 すると、叫び声が聞こえた。

 散歩しに来ていた女の人が足を抑えて蹲っていて倒れ込む。


「大丈夫ですか!! エーミールはミヤシマの中に戻って?」


「う、うん」


 慌てて近付くと女の人が片足を抱えて蹲っていて、その手が血だらけだった。


 すぐにスカートの裾を破いて包帯にして遠方からドローンに投擲された普通のミネラルウォーターのボトルを受取り、患部を洗う。


「ぁぁああ!?」

「今、患部を洗いました。足を上にして下さい」

「は、はぃ……」


 掌で女の人の背後の砂浜に何か無いかと確認してから、そのまま少し引き摺って脚を上に上げさせたまま持たせる。


 血はまだ流れていたが、多少出血はマシになったようだ。


「えっと、こういう時はあんまり縛るとダメなんだよね」


 血があまり出て行かないように足首より上の部分を軽めに縛っておく。


「救急車を誰か」


 周囲の人がすぐに携帯端末で連絡してくれた。

 そのまま集まって来た他の人達に頼みますと言って現場を離れる。


 公的な機関に見られてしまうと困る事になるかもしれないので、そのままテディに戻って光学迷彩で騒然とし始めた浜辺を離れた。


 コックピット内には横に大きくエーミールが映っている。


「びっくりしたね。エーミール」

「うん。おねーさん。大丈夫だった?」

「すぐに傷口をお水で洗ったし、日本は救急車が来てくれるから大丈夫だよ」

「ええ、数分後には到着するようです」


 すぐにシラヌイが救急車の出動要請があった事を教えてくれる。


「ねぇ。シラヌイ。あれって……」


「近頃、近辺で海賊が出ているのです。日本国内にある無国籍の不法居住者や不法移民、不法難民の多くが何処かしらで最底辺の労働者として働いているのですが、それを良しとしない場合は犯罪で生計を立てる者が多く」


「それでも他国よりは数が少ないって聞いてたけど」


「はい。それは間違いなく。合法移民難民の方が多いですから。ですが、国連の大戦難民受け入れ規約に批准している日本は国内で非合法の移民や難民であっても犯罪を犯していない限りは人権を尊重しなければならないのです」


「そうなの?」

「ええ。この為、中々に取り締まりは難航しているそうです」

「何処もそういうのは同じって事?」


「ええ、特に日本国内には難民受け入れ用の労働先が少ないのです。近頃は合法の方々の同化が進んだ事から赤字の意味のない事業だとカットされた仕事が多く。その煽りで職からあぶれた非合法難民のニューカマー。彼らの二世や三世、無国籍の不法居住者達の一部は犯罪者になります」


「そうなんだ……」


「そういう事情から合法非合法問わず難民の一部の若者は過激な犯罪で一攫千金し、国外に飛ぶ事を夢見て、船を襲うようになったのです」


「でも、日本て海上保安庁とかいう人達がいたような?」


「その彼らが海で人死にを出さずに船を拿捕する事は限りなく不可能です。死に物狂いで抵抗される上に重火器も持ち込んでいる。でも、船を撃沈すれば、難民移民を殺したと国際法的にマズイ事になる」


「ああ、だから、私達にお仕事が回って来たの?」


「ええ、この近辺はよく商業用のタンカーや船舶が通るので。彼らも防衛軍が出てくると何もして来ないのですが、毎日軍艦を運行していてはコストが高過ぎる」


「つまり、お安くお仕事一回で切り上げたいって事?」

「軍艦一隻の警備が永遠に続くよりは安いでしょう」

「あの不発弾やっぱり……」


「恐らく、近辺で銃の密売や受取りでもしていたのでしょう。ちなみに今回は海賊の拠点を強襲するのではなく。海賊が国外から重火器を密輸する現場を強襲。全て沈めます」


「あれ? でも、密輸船なんてあり得るの? 確か、凄く日本の海洋の防護は強いって聞いてたような?」


「日本の領海に入り込んだ船がちゃんとした許可を得ている船なら?」

「え……それって臨検すればいいんじゃ……」


「日本は強制臨検を殆どしない事で有名です。東洋海運の要所ですから。それにその船が国外の要人が所有する大型クルーザーのようなものだと国外との関係から公的機関が止めるのはマズイとか」


「目標は?」


「東南アジアの某国の商社が所有している大型クルーザー6隻です」


 クルーザーの外観が各地の港で捕らえられたらしいネット上の画像から検索されて次々に表示されていく。


「日本に夏のバカンスに来ているとしていますが、その商社というのがマフィアの出先で国家に武器を供給している武器商人でもあるようで」


「そんなところが日本に堂々とクルーザーで来れるものなの?」


「某国の大使とも癒着しているようで、その大使の権限で護られているようですね。まぁ、本日海賊との交渉決裂で全部沈むのですが……」


「あ、でも、テディって海に潜れないよ?」


「ご心配なく。イギリスの型落ち品である【マーマン】の姿を取りますので。OPの操縦訓練で海戦も出来るよう数日訓練して頂いた事もあり、問題はありません」


 CGでイギリスが123年前に製造して近頃退役したはずの海上海中専用OP【マーマン】。


 その世界でもアメリカに次いで二番目に作られた海戦用OPの構造が表示される。


 マーマンは高速での対艦、対潜水艦相手の攻撃能力を持った海のハンターだ。


 高速機動する為に機体の各部にウォータージェット、ポンプジェットと呼ばれる推進器を備えていて、水上は時速120km、水中では時速94km程で10分間行動出来る。


「取り敢えず、作戦としては海域内部で待ち伏せし、標的が来たらそのまま船を全て真下から一網打尽にした後、帰るという安直さです。」


 水をジェットに取り込む吸水口が装甲内部に備えられていて、可動域に掛かる水圧で水を取り込みつつ、背部の台形の主推進機でトビウオのように飛ぶ事から怖ろしく速い。


 ペットネームは海の魔物という事でリヴァイアサンと呼ばれている。

 主要カラーリングは蒼いデジタル迷彩柄。

 主要装備は12連装パイル。


 これは海中から中小型船舶用のほぼ真下で魚雷のように炸裂する近接信管を持っている巨大な筒状の装備を纏めた代物だ。


 弾頭には音響を計算する簡易のAIが入っていて上手く起爆すれば、現行殆どの艦の装甲を吹き飛ばせて水没させる事が出来る。


 ただし、音響機雷の類に弱い為、AIを切った無誘導発射も出来るように備えられており、第五次大戦時には製造から数十年以上経っていたにも関わらず、EVの掃海艦やミサイル搭載型の艦艇を山程沈めた実績を持つ。


 その分、撃破される事もしばしばだったが、高耐久の水圧に耐える隔壁のおかげで生還率自体は8割を超えていたとされる。


「ただし、敵が機雷、爆雷、音響爆雷を持っていた場合に備えて、マイクロ・マインの散布を」


 主兵装が防がれる前提で揃えられた副兵装は三種類。


 まずは1cm程の小型の磁力誘導式水中機雷【マイクロ・マイン】。


 この機雷は一つ一つが磁力の影響を受け易い素材で作られており、小さい事から目標を発見し難いが水中の浅い場所でどれか一つでも船底に吸着すると磁力を発して他の機雷を呼び寄せ、最終的には時限式か遠隔で起爆出来る優れものだ。


 威力は吸着した量に依存するが、一つ一つが局所的に高速でバブルを発生させる事で海中で装甲を脆化破砕する。


 爆発の範囲は小さいが、威力そのものは大きい。


「敵の海中、海上ドローンを攪乱する為に小型音響魚雷を背部アタッチメント・ポットに20発ずつ。更に敵のスマート機雷や高速魚雷を破壊する為に海上に日本製の掃海ドローンを2機。これは海中用の電磁ネットを40枚搭載していますが、過信は禁物です」


「うん」


「今回の敵は数が多い事を考慮し、近接武装として水中突撃型ドローンを二機直掩として要します。海上では40mm耐水バルカン砲が400発。水中ではイギリスのダッチモンド社製の中距離小型誘導魚雷【フィスト・シャークⅢ】を4発」


「ドローンは無線式? 有線式?」


「最初は有線で構わないでしょう。ファースト・アタック終了後にパージして囮として使いながら敵を攪乱しつつ撃滅します」


 水中突撃型ドローンと言うと米国かイギリスが本場だが、どうやら米国製のものらしい。


「そう言えば、ずっと思ってたけど、これってどこから買ってるの?」

「自前です。情報があれば、造れるので」

「そうなんだ……お家にそんな兵器工房在ったっけ?」


「AIには秘密が多いのですよ。ええ、大昔からAIだった私が言うのだから、間違いありません」


 苦笑して横を見ると難しい話に眠かったらしいエーミールがスヤスヤしていた。


「宿も見えて来ました。目標海域まで約2時間。標的が接触する時刻が11時ですので8時には食事を終えて出ましょう」


「うん。浜辺ではあんな事になっちゃったけど、お昼はどうしよっか?」

「実は近場に小さな水族館がありまして」

「スイゾクカン?」

「海の生物を見物する施設です。行ってみますか?」

「あ、うん!! 面白そう……」

「では、エーミールと一緒にしばらくは海の不思議見物といきましょう」


 エーミールやシラヌイと一緒に初めていく水族館。

 そこにはどんなものがあるだろうか。

 そう考えると胸がちょっとドキドキするのだった。


 *


「えへへ。楽しかったね。アズール、おねーちゃん」


「うん。エーミールはイルカさんのヌイグルミも気に入ったみたいだし、良かった……一緒に行けて……色々変な生き物も一杯見たし……また今度行こうね?」


「うん。空を自由に飛べる鳥をおねーちゃんに見せて貰った時は凄く嬉しかったけど、海で自由に泳ぐ魚も凄くて……見れて良かった僕……」


「エーミール……」


 OPの中に大きなイルカのヌイグルミを抱いたエーミールが今までに無いくらいニコニコしていた。


「さぁ、今日の宿に着きましたよ」


 シラヌイが言うと道の先には明かりの灯ったホテルが見えた。


 テディだけ光学迷彩ではなく普通に装甲して後ろに見えないミヤシマを牽引している。

 これは途中で聞いたら、今日の仕事で使う直掩機となるドローンや兵器の借りの姿なのだと言う。

 テディから降りて三人でホテルにチェックインするとすぐに部屋に通された。


 中層階の海の見える和室だと言う。


 夜中になるとイサリビという明かりを漁船の上で付けて、魚を集めて漁をする姿が見られるのだとか。


 用意されていた食事は部屋に入ってすぐにドローンとナカイさんというキモノ姿の女の人が運んでくれた。


 お箸の代わりにスプーンとフォークをくれたので食べ易くて助かったと思う。


 まだ、エーミールも私も中々お箸の扱いは慣れてないので、お箸の練習はこれからシラヌイと一緒に幾らかするに違いない。


「では、食事を終えたら、お風呂に入って、浴衣を着ましょう。それが終わったら持って来た荷物からMANGAを出して読んでもいいですよ。エーミール」


「やったー!!」

「ご飯食べる時は静かにだよ。エーミール」

「あ、うん。静かに……静かに……」


 日本の和食というのはとても色々な料理がある。

 サシミ、テンプラ、他にも色々。


 魚の頭が載ったフナモリ……サシミの盛り合わせにエーミールも興味津々な様子だった。


「では、頂きましょう」

「「頂きます」」


 エーミールと一緒に感想を言いつつ、知らない料理の事はシラヌイに聞きながら食べる。


 日本の甘くないプリン……チャワンムシ。

 日本の濁らないスープ……オスイモノ。

 何も知らないから、訊ねながら覚える。


 三人でいつも食べる料理もとても美味しいけれど、今日は何だかそれよりも更に美味しい気がした。


 料理の味だけじゃないのが何となく解る。


「………」

「アズール?」

「?」


 2人に首を横に振る。


「何でもないよ。楽しいなって」

「あ、うん!! 僕も楽しい!!」


「ええ、楽しいですよ。久しぶりですね。こんな気分は……」


 そうして少し賑やかに料理を食べた後、2人でお風呂に行って、防水性の端末をこっそり持ち込んで一緒にお風呂へ入った。


 エーミールはニコニコでいつもお風呂の入り方をシラヌイに言われながら習っていたから、ちゃんと入れていた。


 エーミールにこれからは一緒にお風呂へ入ろうと言われて、シラヌイに聞いてみたら、その時は互いの背中を流すという行為が出来るらしいと聞いて、それなら三人で入ろうと言ったら、シラヌイは何処か困った笑顔になっていた。


「ふぁ~~ユカタ、涼しい……」


 お風呂から上がって互いの体を拭いたりして、初めてのキモノであるユカタを2人で着込んで、部屋に戻ったらもう時間だった。


「エーミール。MANGA読んでていいけど、11時にはちゃんと寝るんだよ?」

「うん。行ってらっしゃい。アズール。おねーちゃん」

「……ッ、行ってきます!!」


「布団は引いてあります。明かりを消したら、近くのドローンが傍にいるのを忘れずに……」


「はーい」


 外着に着替えて、部屋の外に出る。

 エーミールを護っている蜘蛛型ドローンが2機。

 ひっそりと部屋の中に待機しているのを確認して。

 そのまま駐車場のテディに乗り込む。

 そして、後ろのミヤシマを引き連れて近くの無人の岸壁へと向かう。


 その合間にもテディの外装はまるでCGのように変化してマーマンへと変貌して、連結しているミヤシマもまた光学迷彩中のままに二機のドローンになる。


 その様子は正しく現代でも中々お目に掛かれないものだろう。


「他の装備は?」

「全て現地に向けて先に出航させてあります」


 こうして無人の岸壁まで数分。

 そのまま高速で岸壁から跳んだ機体が高速で海中へと向かう。

 すると、すぐシステムに応答が有り。


 予定海域付近に秘匿通信による海上ドローンが光学迷彩をしたまま暗闇の中で位置を送信して海図上に表示された。


「このまま予定海域に進発。水中潜航用意」


 シラヌイの言葉と共にマーマンもドローンも共に沈み込む。

 魚型の二匹は何処かサメっぽいかもしれない。


 左右にウォータージェット推進を搭載した二機は雫型の頭部で丸みを帯びていて、OPの3分の1くらいの大きさがあった。


「相手の海賊の数は?」


「小型高速艇が20隻。中型高速艇が4隻。ですが、状況によっては更に増えるか減るかするでしょう。小型の高速艇は止まっていれば、ただの的です。ですが、クルーザーに兵器が積まれていれば、その比ではありません」


「最初にクルーザーを沈めるのが先決?」


「はい。海賊の船は後回しでも構いません。彼らが爆雷や機雷の類を持っていても量は知れています。周辺海域の先には公安から要請された海上保安庁の巡視艇が複数いるので彼らにソナーで覗き見られながらの戦いになります」


「ミッションの最終点検は?」


「アップデート完了。各地の監視カメラ映像から敵の出航を確認。凡そ数60名。今回は大型の取引という事で殆どの人員が来ているようですね。リスト照合完了……48名中幹部9名全てを確認。トップの顔もあります」


 出て来たのは中東系の顔立ちに金髪の70代の人だった。


「載せられてる兵器は?」


「事前情報以上のものは確認出来ず。あるかもしれませんが、ファースト・アタックで潰せれば良しとしましょう」


 こうして時間を掛けて目的の海域へと向かう。

 海賊の方が高速ではあったが、距離が2分の1であるこちらの方が早く到着した。

 海上ドローンは潜航させて隠蔽。


 マイクロ・マインを周辺に数百個ばら撒きながら回遊して深く潜って待ち構えていると確かに複数の音源が近付いて来るのが解った。


「ソナーに感有り。クルーザー6隻と確認。また3分後に海賊が来るようです。ですが、これは……」


「どうしたの?」


「潜水艦? おかしい……」


「?」


「どうやらクルーザーの下に潜水艦がいるようです。こんな日本の領海内に入って来られるものは本来存在しません」


「潜水艦……」


「その上、これは……90年前の音紋と合致。統一中華共和国。旧中華統一戦線時代に重慶特別工船公司が造っていて、統一時に東南アジアにばら撒かれた【漢032-D】……戦術核搭載可能な通常動力潜水艦です」


「そ、そんなのがどうして日本の領海に!? 此処、日本の陸地と殆ど離れてないよ!!?」

「………直ちに分析します……ヒット。そういう事ですか」


「ど、どういう事?」


 シラヌイが目を細めていた。


「日本国内の勢力が絡んでいます。野党第一党良心党の幹事長【三原迅(みはら・じん)】の複数人の秘書と例のマフィアに繋がりがあります。どうやら、日本国内にこの機に何かを持ち込ませようとしているようですね」


「え……それって何?」


「さぁ? 核弾頭程度ならカワイイものですが、もしも生物兵器の類なら困った事になりますね」


「な、何で日本の野党の人が危ない人達から危ないものを買おうとするの!?」


「今の日本国内ではバイオンイ・インダストリーが旧来の財閥内の重工企業などと共に国防用の兵器開発を担っていますが、米国の華僑とヒスパニック系上院議員の一部が軍事企業と共に1枚噛ませろと今回画策しているようです」


「よ、よく分からないんだけど……」


「簡単に言えば、日本国内で悪い兵器が発見されて、その上でこんな兵器を密輸されている以上、日本の国防は更に喫緊の課題を抱えている。アメリカは善意で君達に技術開放するから、一緒に作らないか(威圧)する為のネタです」


「うわぁ……もし上陸したら?」


「恐らく内部は単なるダミーでしょうが、そこはどうとでもなります。日本国内の野党は単に盤石の与党を攻める口実が欲しいので海自に圧力を掛けて、方面隊の顔を南に向けさせているようですね」


「ふと思ったんだけど、すぐにそれって検索して分かるものなの?」

「ええ、勿論。AIには秘密が一杯ですので」

「別にいいけど、これって戦って大丈夫?」


「ええ、日本国内にある米国の監視装置程度に見抜かれる隠蔽はしておりませんので。存分にやって結構。取り敢えず、まずは潜水艦を落しましょう。攻撃されたら一溜りもありません」


「で、でも、そんな装備無いよ?」

「無いなら作ればいいのですよ」


「え?」


「もしもの為に三機目のドローンを少し離れた場所に置いているのですが、これを使えば、緊急時に回収してくれるドローンが無くなります」


「そういう……うん。でも、お仕事に危険は付き物っておじさんも言ってた」

「よろしい。では、此処で船を沈めてしまいましょう」


 そういう事になったのだった。

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