第12話「初仕事」
「此処が日本でのお家……何処のお部屋なの? シラヌイ」
『いえ、此処です』
「……ええと、だから、何処のお部屋なのかなって……」
『いえ、此処がこれからアズール・フェクトの居住地となります』
「此処が?」
『はい。此処が……』
端末から出て来ていたシラヌイと一緒に見上げる。
それは都内の端にある長いビルだった。
円柱状で全面ガラス張りだった。
「とっても大きくない?」
『はい。全高80m程の15年もののタワーマンションです。広さは―――』
「ちょ、ちょっと待って!? 大き過ぎるよ!?」
『大丈夫です。内部は清掃ドローンによって定期的に掃除されており―――』
「いや、そうじゃなくて!?」
言っている間にもマンションの入り口のドアが開いた。
そして、恐る恐る入ると誰もいない通路の壁が明るくなっていく。
『20階建てで中層部にはボイラー、浄水施設、電源施設が……その上層階からはVIP用の遊興施設が当時の設備をそのままに置かれています。最後に最上階から計3階層あり、下2階は特殊な宿泊施設。最上階が通常の居住施設となります』
通路の先の少し広めの開けた場所にはエレベーターがあった。
それに乗るとすぐに最上階が迫って来る。
『全ての施設が使用可能ですが、使用する場合は維持費が掛かる為、基本的には最上階だけ使っていればいいかと』
「あの、シラヌイ」
『何でしょうか?』
「維持出来るというか。使って大丈夫なの? 此処」
『はい。元々は日本のマフィアが使っていたものだそうですが、羽振りが良かった事を根に持たれて抗争で全滅。後は売りに出されてレリアさんの手に渡ったとか。基本の維持費を支払うのは問題ありません。年間の税金もあちら持ちですので我々が払うのは清掃用ドローンと電力水道の維持費くらいでしょう』
「う、うぅ、それにしても大き過ぎる気がする」
『先程、成田を出たので数十分で合流出来ます。地下格納庫にはOPのハンガーもありますし、武装保存用の部屋もあります。最上階の居住区ではトレーニング用施設が完備されており、そちらで兵隊になる為のトレーニングも出来ますので心配要りません』
「う、うん。後でレリアさんに感謝のメール送らなくちゃ……」
着いた最上階の通路は一つしか無くて。
10m先の扉が勝手に横にスライドして開いた。
そこから内部に入って吃驚する。
全ての外壁がガラス張りで内部にはリビングとダイニングが一緒になっていて、ソファーやディスプレイも置かれていた。
「うわぁ……スゴイ広いよ!!」
『はい。硝子は全て内部を探査出来ない特殊な防諜硝子で防音は元より外から内部の光景を一切見せませんし、振動も通しません。ディスプレイでもある為、壁一面に映像を映し出せます』
「ス、スゴイ……」
『寝室とバストイレは隣接していてネット用の設備は多少旧いですが、一世代昔の市販用スパコンが4台。調べものをするには十分でしょう』
「外には出られないの?」
『屋上に出るのは中心部の階段から可能です。屋上にはヘリポートとバーベキュー用のスペースがあるようですね』
「バーベキュー?」
『屋外レジャーの一種であり、広義では屋外での飲食やスポーツ、レクリエーションを楽しむ事です』
「そうなんだ。う~~ん」
『何かお困りごとですか?』
ソファーに取り敢えず座った。
でも、フワフワ過ぎて頭がクラクラしてる気がした。
「いいのかな。こんなにスゴイところに住まわせて貰っちゃって」
『時折、使いに来る所有者が良いと言えば、良いでしょう』
「う、うん……」
『では、先に店に頼んでいた屋内作業用ドローンが届いた様子ですので、こちらで内装や屋内の改造はお任せ下さい』
さっそく硝子の壁に外の映像が映った。
どうやら、お届け物が沢山届いたらしい。
配達員らしき人達が制服に帽子姿で玄関先に一礼してから下がると。
複数台のトラックの荷台から十台近いドローンが降りて来て、地下駐車場に続く通路に降りて行った。
「そう言えば、シラヌイはハンガーにいるの?」
『はい。専用スペースは確保してこれから改造するかと』
「ご飯は一人で何か買って来ればいいかな?」
『いいえ、衣食住はこちらで全て用意します。幾ら日本国内が夜間に女性が1人で歩けるような治安と言っても、一人で出歩くのは推奨出来ません。ネットで頼んで、屋上に直接。もしくは玄関先からドローンに受け取って貰いましょう』
「うん。解った。そう言えば、シラヌイってご飯作れるの?」
『勿論です。家事用のドローンも買い込みましたので』
「そうなんだ……」
シラヌイは料理とか出来るのか分からなかったのだけれど、どうやら動かせる調理用ドローンがあれば、可能らしい。
『はい。その内にアップグレードして人型にしますので、それまではそちらで』
「人型のドローンて高いんじゃなかったっけ?」
『サイバネティクスが一般化した【ストーン・アース】頃からのものは産業系以外のドローンを人に偽て造るには税金が掛るようになりましたので。まあ、あくまで企業体に対してのもので個人に掛かるものではありません』
「そうなんだ。でも、シラヌイって確か何でも造れたような?」
『色々と制約があるので。此処でならば、汎用躯体を創るのも可能です。日本はこの分野では最大手ですし、個人作製のガイノイドが高額で取引される事も多く。オーダーメイド品は高額ですが、お金で手に入ります』
「お金で?」
『ええ、米国と同等の精度が出せる機材機器が揃っており、各種の部品自体も他国ならば軍産複合体が作るようなものが安く手に入る。有名な工場に頼めば、値は張ってもそう長くない時間で納品されるでしょう』
「それってスゴイの?」
『第三世界では信じられないような事ですね』
「……おじさんの祖国ってスゴイんだね」
『今日のところはドローンの設定後、すぐに夕食の準備を。食事まではネットニュースもしくはいつもの学習教材をどうぞ。落ち着いたら、貰った書類の続きを一緒に読みましょう』
「うん。ありがとう。シラヌイ」
『いえ、どう致しまして』
こうして壁のディスプレイにネットを繋げて見る。
ニュースには今日も第六次世界大戦の行方が大々的に報道されていた。
どうやら西側諸国はEV……ユーラシア・ビジョンへの追加制裁を発表したらしい。
これに反発して欧州では戦闘が激化していて、ドローン師団が各地で本格的な戦闘に突入しながらユーラシア・ビジョンを押し込んでいるとか。
また、核弾頭が使われる可能性が考慮された結果。
何処のシェルターも満員のようだった。
誰もが早く戦争が終わればと言っているけれど、終わる気配は微塵もないとの事。
「戦争。早く終わるといいな……」
故郷は今、本格的な戦闘に突入していないみたいだったので少しだけホッとした。
このまま暗い気分になっていても仕方ないと日本語学習の為にもちゃんとアニメを視聴する事にしたのだった
*
お家に来てからバタバタしながら準備をしていたら3日も経っていた。
内装はみんなシラヌイがしてくれて、使い易いように家具の配置も変えてくれた。
寝室は花柄の壁紙にしてくれたり、外界の光をディスプレイじゃなくて光ファイバーの採光で取り入れてくれたりもした。
天井から射し込む朝日はポカポカと気持ち良くて。
フワフワの寝台は半分くらい体が沈み込んでしまうので何処かに落ちていってしまいそうに思えてちょっと怖いくらいだ。
「シラヌイ。おはよう」
『はい。おはようございます』
壁一面のディスプレイの一部には今日もシラヌイが映っている。
今は朝食を作っているようだった。
前は買った服をそのままずっと着込んでいたけれど、今はパジャマを着込んで眠るようにしている。
白いネグリジェをシラヌイがネットで買ってくれたのだ。
タイタンで買った洋服はクローゼットに入れて、普段着はシラヌイが選んだ目立たない今の若者風で上下のスウェットにパーカーなどが揃えられた。
私の姿は日本だと未だに目立ってしまうのだと言う。
管理社会化した西側諸国において今や元々の人種というのは左程重要視されないようなくらいの混血率になって来ているそうなのだが、日本は例外で未だに日本人以外との混血率が2割に満たないのだとか。
大戦を何度も経験していながら、移民や難民に厳しい基準を設けていた為、自力での復興には大抵自前のドローンが使われた弊害というか利点とシラヌイが言っていた。
実際、多くの観光客が来ている首都にも関わらず。
歩いている人達の8割近くは日本人の顔立ちをしているのでそれは事実なのだろう。
祖国だと誰も彼もが美醜の基準では平均以下の顔立ちにならないように遺伝調整。
世代を重ねても綺麗な顔立ちが殆どだと聞いていたけれど、日本は高額所得者でないとそういった遺伝調整や世代間を跨ぐ有用遺伝子活用はされていないらしい。
「ん~~」
歯を磨いて顔を洗ってシャワーを浴びて髪と体を洗剤で洗って、ドローンに体と髪を乾かして貰って、シラヌイに貰った黒い下着を着てから外出用の目立たないスウェットにパーカーを着込む。
兵隊さんはどうやら目立ってはいけないらしいのだが、兵隊さんらしい服装は逆に目立つので安物で単色で体のラインが出ないもので路地裏をウロウロしてそうな恰好が良いらしい。
お出かけする時にはタイタンで着ていたような服が良いとの話だけれど、普段使いはこっちがいいとの事。
(シラヌイが改造?してくれたって言ってたし、着心地も良いし、何だか落ち着くからしばらくはこれでいいかな)
「朝食が出来ました」
「はーい」
シラヌイに呼ばれてダイニングの椅子へ腰掛けに行く。
朝食は3日同じだ。
目玉焼きとトーストとサラダと低糖質の野菜スムージーだとか。
どれも健康に気を使ってくれてのものだとか。
日本式の和食や家庭料理、創作料理も今度作ってくれるらしい。
「いただきまーす」
『食べながら聞いて下さい。今日はようやく体制が整いました。本日の予定は初仕事でテディによる強襲戦です』
コクコク頷く。
トーストはカリッ、モチッとしていて、それでいて甘いハチミツとバターが掛かっていた。
目玉焼きは香辛料が沢山降り掛けられていて複雑な香りがして目が回りそうな感じだったけれど、美味しかった。
昨日とは違う香りなので香辛料は変わっているみたいだ。
『本日は廃墟化した山の跡地に向かいます』
サラダはさっぱりしていてオレンジみたいな果実の匂いがして爽やかでスムージーとか言うのはちょっと苦かったけれど、飲み易かった。
どれも無汚染の食糧でよく低汚染ペーストやパテ食が出回っていた国とは違うのがよく分かる美味しいものばかりだ。
『現地は元々が有名なすぐに登れる山として有名だったらしいですね』
確かに日本は美食の国という異名の通りなのだろう。
保存料と添加物が今世界で流通する食料の7割では総重量の5%以上使用されている。
『ですが、第五次の時に戦術核がECMによる攪乱で目標を喪失して途中で墜落。現地は壊滅』
超長期保存を可能にする国際食料安全基準法とか言うのに合致しているから問題無いと多くの人は言うけれど、平均寿命が150年が基本になった昨今。
低汚染食料が出回る地域では平均寿命が1割以上縮んでいるというし、添加物を大量に入れているバー食、ペースト食、パテ食を日常的に食べている国の平均寿命は更に2割以上低いという結果が出ている(とニュースでやっていた)。
『以後、復興までに40年掛かったのですが、現地に人が戻って来た時にはあちこちにスラムが出来上がっており、山を要塞化している者達もいたようです』
それに比べれば、殆ど添加物を入れない加工前食品ばかりで造る食事はきっと殆どの国の人にとっては奇跡みたいなものだろう。
今の時代、安全で美味しいものを食べたければ、お金持ちになるか。
もしくは食品を自前で作る農地で高い苗や種を使って農業をするかである。
全部、ニュースの受け売りなのだけれど、世界の食糧事情は昔から大変なのだ。
ただ、飢えないだけの食事は味気ないと今ならよく分かる。
『殆どの正規居住者はスラム街の難民移民を畏れて居住を諦め撤退。以後、スラム化した場所は【TKO山】と俗称されているそうです』
「美味しかったよ。シラヌイ」
『それは良かった。お粗末様でした。ちなみに今回の仕事はそのTKO山で行われている麻薬の製造販売元である組織の殲滅です》
「現地の治安維持組織はどうしたの?」
『どうやら勝てなかったらしく』
「勝てなかったってどういう事?」
思わず首を傾げる。
日本は先進主要九か国G9で経済的な序列はアメリカに次いで2位なのだ。
その国の治安維持組織となれば、物凄くお金の掛かった装備を持っているはずである。
『日本国内の治安維持用戦力は決して海外のように軍隊基準ではないのです。しかし、相手は第五次の時の兵器を大量に日本国内に戦後持ち込んでいたらしく。並みの軍閥規模の戦力があるようで』
「じゃあ、軍隊が潰せばいいんじゃない?」
『いえ、日本国内での防衛軍の出動は国家的な危機などに限定されるそうで軍備の増強もそうですが、軍事行動そのものも政治的な要因から難しいと』
「お困りなんだね」
『はい。公に民間人扱いするように国連から言われている難民移民、不法居住者を軍で攻撃すると対外的な面でも困るとか』
「ええと、つまり組織だけ潰せばいいのかな?」
『はい。現在のリアル・ドラッグというのはかなり精密な精製手法と高価な機材が無ければ作れないものなのです。TKO山内部にあるドラッグ精製工場と現物が置かれた倉庫。更に要塞化した内部の居住区を全て破壊すれば、後は周囲に広がる地域の摘発は公安の方で行うと』
「うん。じゃあ、やろっか」
『ちなみに現地でリアル・ドラッグが燃えた場合の煙などは極力吸い込まない方が良いでしょう。OPに載っている限りは問題ありませんが、脳の報酬系を劇的に混乱させる代物であり、効果はとても高いのですが、使う量を間違うと一気に脳死状態になってしまう代物らしく』
「怖いお薬なんだ……」
『今、日本国内のみならず近隣国で蔓延している薬の最終加工前の原料を作っているので。麻薬汚染を防がないと日本も亡国まっしぐらですね』
「初めてのお仕事。頑張ろうね? シラヌイ」
『了解しました。武装の準備は万端です。ラッシュアワーが終わった頃には向かいましょう』
「頑張るぞー」
『おー』
こうして初めて2人でのお仕事をする事が決まったのだった。
*
全天候量子ステルス。
光学迷彩は日本国内だと使うだけ無駄なものだったりする。
というか、日本国内の殆どの監視カメラは光学迷彩を見破れるらしいのでテディ形態のままシラヌイで近場まで移動する事にした。
現地の車両免許は持っていないので運転は全部シラヌイ任せになってしまうのだけれど、2人で仕事の為に出掛けるというのは初めての体験だったし、日本の外の景色はとても新鮮だった。
「何か第三世界みたいだね。シラヌイ」
『ええ、未だに数百年前の街並みが残っている先進国の首都圏は此処くらいでしょう』
「お金は一杯持ってるのに不思議じゃない?」
『それが日本の美学や哲学というものなのでしょう。外観は旧く見えますが、中身は最新ですしね』
何処までも続く都市圏はメガロポリスと昔は呼んでいたらしい。
世界大戦のせいで各国が汚染に苦しんで復興が遅れている最中。
逸早く復興した日本は各電子機器、先進科学分野の素材を供給するバイオケミカル・プラントと言われて、大量の対放射線技術を仕込んだ復興資材を各国に供給した。
そのおかげで各国の各種生活に必要な食糧以外の物資についてはかなりの量を今も海運で流しているらしく。
その物流拠点としてはアメリカや欧州に次ぐ地位にあるのだとか。
実際にそう言われるだけの街並みが今も此処にある。
とにかく都市圏が広いのは見れば解った。
「何処まで行っても本当の田舎みたいなところ無いね」
『しばらく走行すれば見えて来ます』
市街地周辺には他の先進国と同じように3D式のホログラムによる看板やARによる電子公告が溢れているが、それが地方に行っても同じようにある。
市街化されていない地域に向かうまで随分と掛かったし、そこにも当然のように世界でならば最新と呼べるだろうネットワークのハブが気軽に使える場所として広がっていたようだった。
『最新のネット環境が国土全域にあるのは日本くらいなのですよ』
「他の国は違うの?」
『お金の問題です。首都圏に全てを集約した管理社会国家の大半は地方が完全に無人になる程に廃れていますが、日本は今や6000万人程しか人口を有していないにも関わらず、各地の都市で廃棄された場所は殆どありません。今はその状態で人口減少にも歯止めが掛かっています』
「一億人切ってるの?」
『ええ、ですが、その生活は他国に比べれば、天国でしょうね。この人口爆発期の地球上において少数でありながら、未だ国家を持ち、人々の生活水準が国土全域で等しく保たれているなんて言うのは奇跡と呼ぶのですよ』
「スゴイんだね。やっぱり……おじさんの国」
ロンドンやニューヨーク、ワシントン、パリなどのG9の首都クラスの都市は地殻を刳り貫いて都市基盤を掘り下げ、巨大な2km以上の建物が地下と地上で乱立するような場所となっているし、他の第二首都圏や第三首都圏を持てるような国家は第四次大戦末期から【巨大閉鎖都市構想】によって生活圏全てを箱庭型の完結した領域に移行している場所も多い。
けれど、日本だけは何故かこの例に漏れているようだ。
高層ビルはあるが、今の技術ではもっと高く造れるのに造らず。
地下の利用も岩盤を刳り貫いて巨大な地下都市圏を建設していない。
生活圏を縮小し、近距離に全ての機能を集約するような集約型都市を乱立させていないのは恐らく地球上で此処くらいなのだという。
その上、ビルの建材や形の違いはあれど、数百年前から街並みの規格は殆ど変わっていないとされていて、何なら地方都市は西暦2000年代と左程変わらないとさえ言われるほどに古めかしいようだ。
『日本の歴史は学べましたか?』
「うん。シラヌイが纏めてくれたから読み易いよ」
『それは良かった。生活する国の事を学んでおくのは基本的な事ですから、これからも逐次情報は学んで頂ければ』
一種のレトロさが漂う街並み。
それを時折眺めながら、シラヌイに渡された情報を端末で読み進めていく。
『……そろそろ見えて来ましたね。左手を見て下さい』
高速道路上から横を見ると数百mくらいの山の半分が欠けて、窪地に沢山の戦車やOPのドックらしい場所が並んでいるのが見えた。
「アレがTKO山?」
『はい。あの周囲一帯3km圏内がスラム化しています。殆どは大陸側から流れて来た第五次大戦期の不法難民不法移民ですが、輸入された当時の国外マフィアが現地を仕切るようになってからは他国のスラムよりはマシくらいの感じで地下経済を基盤にして周辺地域に勢力を拡大しようとして警察に摘発され続けているというのが現状ですね』
「今まで放っておかれてたの?」
『警察が一斉検挙したら、警察署の人間に嫌がらせや軽犯罪をし続けて、家族を拉致したり、強姦したり、誘拐したり、やりたい放題で潰したようです』
「ちなみに組織の人達って今は集まってるの?」
『丁度良い事に組織の長が今日の夜に誕生日会を開きます。身内だけの代物らしく。普段は周辺に散らばっている関係者を全員集めて盛大にドラック・パーティーにするらしいですね』
「なら、一網打尽? に出来るかな」
日本語時点で学んだばかりの単語を使ってみる。
『ええ、一応関係者以外がいるか確認しましたが、日本は人身売買に厳しいので彼らもさすがにそちらには手を出していないようです。ですが』
「?」
『誘拐拉致した人間同士を掛け合わせて出来た子供を使ってスナッフ・フィルムを造るやら、性的暴行を楽しむ予定らしく。創造意欲は高いようで』
皮肉げにシラヌイが肩を竦めた。
「……そういう子達って助けてあげられる?」
『どうでしょうか? 確認してみましょう』
次々に映し出されたのは国外でならば、よくありそうな非合法活動の映像データや画像データが一杯だった。
苦しむ子供を虐める画像なんてネットではよく転がっているのだけれど、どうやらこの日本でもそういう事を愉しむ人達はいるらしい。
『親世代は全滅していますね。生き残っているのは……近頃大量消費され、一人しかいないようです。どうやらお気に入りという事のようで』
「お気に入り?」
『はい。組織の長が人体改造に熱心らしく。気に入った者は家具にしたり、性欲処理の道具にしたり、他にも機械を組み合わせたりして消耗品として使っているようです。そのせいで数十人いた誘拐された人々の一族は全滅したらしいですね』
「ふ~ん」
『まぁ、こちらの手に掛かれば、死んでいない限りはどうにかしましょう。人体の置き換えや復元は今やスタンダードな医療技術ですしね』
「ありがとう。シラヌイ」
『どう致しまして。では、先に単独潜入任務でもしますか?』
「いいの?」
『はい。これも経験です。OP乗りがOPを降りた途端に殺されては困りますから』
シラヌイはすぐ作戦を提示してくれるのだった。




