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第14話 終わりへ

 熱く汗ばんだミアの震える背中を撫でながら、緑の原っぱを歩き馬車に戻った。


「あ! ロイ、ロイよかった! 誘拐されてたらどうしようって、急いで探しに行こうと思って、ってあれ!!? ミア、ミアどうしたの!? お、お医者様! お医者様にを呼ばなくちゃ!」


「落ち着けスイ! とりあえずその果物を置け! どっから持ってきやがったそんなもん!」


「え、あ、え、馬車の人が、くれて、あぁ、どうしようロイ!」


 スイが馬車から飛び降りたと同時にずっこけ、何とか転ぶ前に抱きとめたはいいものの俺の脳天に臭いがキツいことで有名な果物が叩きつけられた。ぐっちょり、と臭いのキツい果肉が俺の頭から滴り落ちる。


「きゃああ!!どうしよう、どうしようロイごめんなさい! ごめんなさ、臭っ!」


「落ち着け俺……他所様に迷惑はかけてないんだ、怒るようなことじゃない……スイに悪気はないだろ、耐えろ俺……」


「……臭」


「てめ、ミア! ようやく喋ったと思ったらそれかよ!」


「仕方ないな、ロイ。とりあえず脱いで筋肉のつき方を見せてくれるかい?」


「見せるかこのド変態貴族」


 危険人物が3人になると一気に疲れがくる。これで俺のパーティメンバーは危険人物4人と俺なのだから、本当に笑えない。


「あ、あ! そうだ、そうだロイ! 水の魔法で流せばいいんだ! うん、そうだ! 私急ぐね、ロイ!」


「あ、ちょっと待」


「【水よ、猛き」


 ばさぁーーん、と、大量の水がダンジョン1階層分ほどの高さから落ちてきた。その直撃を受けた俺は、水が滴る痛む体を見下ろした。ぽたぽたと髪から水が滴る。ちなみにミアはいち早く腕から抜け出し腹黒貴族の方へ逃げていたので無傷。


「きゃああああ!! どうしよう、どうしようロイごめんなさい! 私、私またやっちゃった! 詠唱の途中で、しかもロイにいっぱい水かけちゃった!」


「落ち着け。よし、もう色々流れたから結果オーライだ。スイ、慌てるなよ」


「う、え、あ、うん。ろ、ロイが言うなら、慌てないよ!」


「よし、深呼吸してみろ」


「すうーーーーーーーーはあーーーーーーー」


「どうだ、落ち着いたか?」


「……あ、うん。すごく気分がいいよ……あは、は……」


 ばたん、と倒れたスイを受け止める。よし、今度からスイの対応はこれにしよう。随分楽な方法を編み出してしまった。一年前に知りたかった。


 倒れたスイを馬車に乗せ、ジェラルドとミアの向かいに座ってずぶ濡れのまま馬車に揺られることしばらく。


「ロイ、これからしばらくどうする気だい? 君のパーティの残りの2人なら、まだあの街にいるよ」


「んー……とりあえず、顔見たら解散すっかな。金も払ったし」


 ミアが、隣できゅっと拳を握った。


「ということは、前払いの王都の未踏破ダンジョンはまたソロで挑むのか。さすがロイ、この国最古、最大規模の未踏破ダンジョンに1人で挑むとは、やっぱり私の推し冒険者だ」


「さすがに潜る時にはパーティ組むわ! わかってるだけでも20階層あるバケモンダンジョンにソロで挑めるかボケナス!」


「君ならいけそうな気がするんだがね」


「お前は俺をなんだと思ってんだ……」


 馬車はやっとド田舎から離れ、外にぽつりぽつりと家が増えてきた。街が近い。


「女性にフラれた程度で高レベルダンジョンソロクリアを達成する、最速最強の男だね」


「フラれた程度って言うな! 1年も付き合ってたんだぞ!? 結婚したっていいと思ってたのに!!」


 またざっくり心の傷口が開いた。未練がましいと笑いたきゃ笑え、本当に好きだったんだマリアのことが。あと俺は結婚して家庭を築きたいんだよ。


「……ん」


「へあ?」


 唐突に、ミアが膝に乗って俺の胸に顔を押し付けてきた。だから傷に響……かないだと!? こいつ本当にミアか、ミミックかなんかの擬態モンスターじゃないのか。


「……見る目ない女は、忘れて」


「いや、むしろ突っ立ってただけの俺の速さを見抜いた見る目ある人だったような」


「それに中々の美人だったね。金髪に豊満な胸部、ロイと並ぶと彼女はより美しく見えたよ」


「お前マジで黙ってろよ」


 俺の心を傷つけて何が楽しいんだ腹黒貴族。


 ぱから、ぱから、と穏やかに進む馬車が、我がパーティの危険人物2人の待つ街へ向かう。


 我がパーティの解散へ、向かう。

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