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24 ベッド問題勃発

 その後、部屋まで案内してくれたのはアマリアの知らない少女だった。だがレオナルドとは顔見知りのようで「あっ、お久しぶりです」と気楽に声を掛けていた。聞いてみたところ、彼女は八年前に孤児院に預けられ、二年前から修道院のシスターとして働いているそうだ。


「アマリア様は、以前こちらでお暮らしになっていたのですよね? 申し訳ありませんが、当時のお部屋は既に別の者が使っておりまして……客室を使っていただきます」

「ええ、ありがとうございます」


 レオナルドも、傭兵になるために孤児院を出たときに自室を返却していたらしいので、客室を使うことになる――のだが。


「さあ、こちらをどうぞ」


 少女は満面の笑みで、部屋のドアを手で示す。そこは廊下の一番隅にある客室で、アマリアも昔何度も掃除に入ったことがあるのでよく分かっている。


(えーっと……確かこの部屋は――)


「……あの、ここって確か、大きめのベッドが一つあるだけでしたよね?」

「まあ、よくご存じで! おっしゃるとおり、ここはご夫婦用の客室です」


 少女は満足そうに頷いた。


(もちろん知ってますとも! でも……夫婦用……)


 アマリアはユーゴと一緒に寝るのだから、少し大きめのベッドの部屋だとありがたいと思っていた。だが、この部屋のベッドは明らかに大人二人用だ。ユーゴくらいの子どもなら、一緒に添い寝して三人で使うこともできる。


 ちらと、レオナルドを見る。アマリアと違って客室の掃除をしたことのないレオナルドは最初こそ不思議そうにしていたが、アマリアたちの話を聞いて事態を察したようで、表情が固まっている。


(た、確かに私たちはお付き合いしているし、ユーゴは私の息子ということになっているけど。部屋二つよりもダブルベッド一つの方が、掃除も楽で孤児院側も助かるというのも分かるけど!)


 これまでの道中も、アマリアたちは部屋を二つ借りていた。だから、レオナルドと一緒に寝るということは一度もなかったのだ。


 院長先生としては、交際している二人が同じ部屋で寝泊まりするというのは不思議なことではないのだろうし、同じ家で暮らしているのだから「今さら」とさえ思っているのかもしれない。だからこの部屋を割り振った院長先生を恨むことはできない。


「……えっと、レオナルド。ここで、いい?」

「えっ!? あ、はい、僕はなんでもいいです!」


 動揺したのか声をひっくり返しつつ、レオナルドは早口で言った。少女もそれを聞き、「では、ごゆっくり」と言ってさっさと行ってしまった。


「……」

「……」

「ママ、レオナルド、入らないの?」

「え? あ、ええ、入るわ」

「う、うん。荷物も解く必要があるし……入りましょうか」


 ユーゴに不思議そうに問われ、アマリアたちはようやく我に返ることができたのだった。












 部屋は、なかなか快適そうだ。

 アマリアは修道院勤めのシスターたちに挨拶する必要があるそうなので、レオナルドとユーゴで荷物運びを行うことになった。ユーゴが魔法を使えばあっという間に作業は終わるのだが、それを他の者に見られるわけにはいかないので、地道で時間は掛かるが二人で少しずつ荷物を持って上がることにした。


「……おい、レオナルド。なに動揺しておる」


 部屋に運んだ木箱から衣服などを出していると、ユーゴが声を掛けてきた。いつも通り、レオナルドと二人のときはぞんざいな物言いをする竜の子である。


 ユーゴの言いたいことがすぐ分かり、レオナルドは肩を落とした。


「……仕方ないだろう。まさか、アマリアさんと同じ部屋で寝ることになるなんて……」

「仕方ないとはどういうことだ? よいではないか。そなた、未だにママと同衾しておらんだろう。これを機にしっぽりと仲を深めればいいだろう」

「しっぽり、って」


 自分の男物コートをハンガーに掛けたレオナルドはしばし瞑目し、首を横に振る。


「ユーゴ、君の提案や申し出はありがたいのだけれど、さすがに旅先で羽目を外すわけにはいかない。さっきのアマリアさんを、君も見ただろう? 僕と同じベッドに寝ると考えて、すごく驚いていた様子だったじゃないか」

「それはそうだが、我もそなたと一緒に寝るのはやぶさかでもない。せっかくなのだから、我を挟んで三人で寝ようではないか」

「いや、それじゃあ熟睡できないかもしれない。ソファがあるから、そこで寝ればいいじゃないか」

「なるほど、あいわかった。では、我がソファに」

「どうしてそうなるんだ」

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