表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

空は暖かい

作者: 朝霧千景

お久しぶりです。朝霧千景です。

小説活動から離れておりました。

今日は電車に揺られながら書いた小説です。

短いお話ですが香ばしい珈琲でも飲みながらお読みください

足が重たい。生きるってことはきっと背中に何百キロもの重りを背負っているのだと私は思う。


朝目が覚めて顔を洗う。なんて醜い顔なのだろうか。まだ高校生だと言うのにとても高校生とは見えない窶れ。なんとなく、10歳くらい歳を取ったような。「鏡は見たくないわ……」逃げるように洗面所を出た。さて、お腹がすいた。昨日はマカロンをひとつ。それきりだったことを思い出す。

消化するものがなく泣いているお腹を抑えながらキッチンへ向かった。

カウンターに置いてあるパンを焼いて香ばしい匂いが部屋に漂った。その匂いを閉じ込めるように卵を焼き、焼いたパンの上に置いた。

同時進行で沸かしておいたお湯。ぶくぶくとふつふつと。レトルトのコーヒー粉をお湯にとかして朝ごはんの完成だ。

「いただきます」

誰もいない部屋で私は自分で作ったパンを食べ

珈琲を飲んだ。1口2口少しずつ大切に

焼いたパンに珈琲の匂いが漂う中、部屋着を脱いで高校の制服に着替えた。

また誰もいない部屋に「行ってきます」と声をかけた。

朝日が眩しい。私の気分とは裏腹に煩く蝉が鳴いている。たった1週間の命。子供を残すことに意味はあるのだろうか。風が吹いて緑が揺れる、川が流れ亀が泳ぐ。私も風が吹くままに動きたい。

ただ1人で学校に向かう。そんな毎日

いつもの三番ホーム。3両目の扉の前

同じ学校の制服の人が電車で楽しそうに会話をしている。

好きな俳優の話、昨日のテレビにゲームの話、そして遊びに行く話。私は1人で電車に揺られる発車の慣性でふらついて。

まるで、体を誰かに乗っ取られたかのように足が重たかった


学校の最寄りについてそこから徒歩15分くらい。長く緩やかな坂道を登る。暑い夏には汗をかく

「夏なんて消えちゃえばいいのに」

誰にも聞こえないように私は呟く。


学校のチャイムがなり授業が始まる。誰も聞いていない授業を先生は必死に黒板に書き込んでいく

ノートに板書するも英語なんて日本人にわかるわけが無い。あー、ゲームしよ

怠惰に時間は流れ、16時になった。

「起立、気おつけ、さよなら」

夕陽が教室に流れ込み、まだ煩く蝉が鳴く

人が教室から消え廊下からは声が消えた。

何時間私はこの教室にいるのだろうか……

時計を見るような元気さえなかった。

ただ言えることは

まだ帰りたくない。

そのまま眠りについてしまった


「ん……寝てた……?」

ぱっと時計を見ると7時。大して長い時間眠っていた訳では無いみたいだった。

立ち上がり鞄を持ち帰路に着いた。

帰りの電車は人ひとりいなかった。



「ただいま」

暗い部屋に木霊する声を聞いた。

電気をつけて手を洗い、シャワーを浴びた。

水を浴びてる時だけ私は涙を流せる

別にどこで泣いても誰も見ないだろうけど

私は水を浴びてる時だけ涙を流す。

「ねぇおいでよ」

ふとそんな声がした。

「……。」

私は返事をせず静かに泣いた。

シャワーを浴びて





何も食べずに私は布団の中に潜り込む。

「今日も疲れたね」

スマホの中の写真に語る。

昔の親友。今はもういないけどね。

空の上行きたいな……


気づけば私は外を歩いていた。

夜風に吹かれ心地よかった

暗い街なので星や月が見えた。

「この街の綺麗な所は空だけだな」

好きな歌を口ずさみ、フードを深く被りポケットに手を入れた。


私には父親がいた。母親がいた。

優しかった

毎日暖かいご飯を3人家族で食べて

家族が休みの日には遊びに出かけた。

幸せだった。誰かの幸せじゃない。誰かの作った愛情じゃない。ただそこには3人の愛があった。

だけど蒸し暑い夏が全部をひっくり返した。

キャンプに行く途中だった。

車から降りて道の駅で休憩してる時だった。

運が悪かったのだろうか。精神を病んでしまった人は何をするか分からない。

たまたま居合わせたその人は瞬く間に私の目の前を赤く染めあげた。

それからはもう思い出せもしない

他に親戚もいない私は施設に預けられるはずだが

逃げた。

息苦しい所は嫌だから。


どこへ行こうか。まだ、短針が9時を刺し、長針が短針を抜かした頃。

電車に揺られ10分程度

都会に出た。

「ねぇおねーちゃん、この店よってかない?」

そんな声ばかり。繁華街。

鮮やかな見た目。どす黒い人間。

似合わない。

私はこんなものを見る為にここに来たのかな。

(分からない何も。)

まるで私は透明人間のようで誰かに見られ事も無い気がした。きっと見られても私を見ていない。もっと違う何かを見ている気がした。

1人で映画を見た。同じ高校生の恋愛物語。そんな感じの。主人公は家を出て、規律正しい子だった。だけど好きな女の子のために犯罪を犯してまで救った。泣いてしまった。

羨ましかったここまで誰かを愛せる事が。

自分の座っていた椅子の温もりから離れたくなくて少しそこにいた。



ふらついた足で家に着き、布団で眠る。

そして朝が来る。部屋に朝日が差し込んで

誰もいない部屋で

私は息絶えていた。

体の周りには空になった睡眠薬の瓶

少女の顔はどこか幸せそうで朝日に照らされ、

きっと寂しかった少女は

空の上で愛を探しているのだろう


最後までありがとうございました。

特に何もない小説ですが、貴方は一人ぼっち。

友達も家族も居らず、誰にも見られず、ただ意志に反して動く体を

いつまで生かすことが出来ますか?

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ