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大器晩成のレギンレイヴ  作者: 長靴を履きたい猫
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27話 シヴァ(前編)

「と、言いたい所だが…」


グサリと三又の槍が少年に刺さる。


「え?」


瞬く間に槍が捻られ、致命傷が与えられる。


「その人はなにもっっ!」

「…」


なぜかシヴァは周りにいた高校生達全員を殺そうとした。


「守れっ!」


教会関係者達の手に余るのは目に見えている


「なにやってんだよバカヤロウ!」


「…」


ゲイルさんに話しかけられても尚、何も答えない。


あっという間に高校生5人が殺された。


自分は何をすべきか…


「何をやってるんですか!?」


シヴァに対抗できるのは自分だけだろう

鍔迫り合いをするのなら、単純に力で見て間違いなく勝てるだろう。


「チッ…また会おうエル…」

「グッ…」


足にナイフが刺さり、力が抜ける。

毒が塗られているようだが、化け物ステータスのおかげか直ぐに動けそうではある。


とはいっても、もう逃げられてしまった。


「奴を追いかけろ!門を閉鎖しろ!奴を絶対に逃がすな!!」


これまで静観(というよりかは驚きで動けなかったのだろう)していたパーティーメンバー達が動き始める。


「一体全体なんなんだっ…」

「もう何が何だか…」

「…」





「さて…2人逃しちまったなぁ…どうしたもんかね…」

「それにエル…とも敵対しちまった…」


「はぁ〜どうすっかな〜…」




一方エルリディア


「はぁ〜どうすっかな〜…」


(信用してたシヴァさんもなんか闇堕ちしたし…これからどうしよう…)


「2年くらいは一緒にやってきたが…あんなのは初めてだ」

「えぇ…」

「……」


「私はパーティーから抜けるわ」

「どうしてだ?」

「パーティーメンバー皆、指名手配でしょ。1人の方が身軽だわ」



なるほど一理ある…とはいっても、今現在教会のホテルに居るんだが…


「僕も……」


めずらしくシルバさんが喋った。

それほど、この事態は深刻な話なのだろう。


「つい先日入ったばかりで何が何だか分かりませんが…」



「何もしていない子達まで殺すのはどうかしてる!理由も説明しないということは、やましい何かがあるということ!」



「私はシヴァさんを追いかけて、話を聞きます!」


(なんかのフラグやろ…絶対追わないと…)





28話 シヴァ(中編)



「シヴァさんはどんな人なんですかね…」

「そうだな…自分勝手だが正義感はあると思っていたな」

「具体的に何をしてきたとかありますかね」

「そうだな…数年前なんだが、ある少女が居たんだ。それはそれは不思議な子だったよ」


正に昔話といった導入である


「ティル・ナ・ノーグの片田舎の村に出る魔物を狩るというクエストを受けたんだが、その村の下宿先にいた子でな」

「ええ」

「目が見えないのだが魔力で周りを把握することが出来たんだよ。だがそれを使おうとしなかった」

「どういうことです?」

「そのまんまさ、不自由なく生活出来るのに、敢えて目が見えないまま母に介護されていたんだ」

「それを母は?」

「あぁ…もちろん魔術師じゃない、ただの農民だからね、気付いちゃいなかったよ」


「だけどある日、急に居なくなったんだよ」


「そして数日かけてやっと、村人を襲う魔物を見つけて倒したんだ」

「はい…」

「その魔物はレーシェンと言われている木の魔物で、生物を養分にし成長するんだ」

「では村人やその子も養分に…?」

「あぁ、そうだと思っていたんだがあの子だけはいなかったんだよ」

「は、はぁ…その話とシヴァさんになんの関係が?」

「あ、あぁすまん、本筋はこれじゃないな…印象に残っていたもんだから…」


「とにかく、その時に養分にされた村人達を見て悔しがっていたよ。あれは本当の涙だと思うんだ…一体なんでこんなことをしたのか…」


(本当に悪い人、という訳では無さそうだ、にしても目が見えない子の行く末が気になるなぁ…いやぁ、気になる…)


「少し、旅に出るよ。このパーティーも実質解散したしな…」

「え、あ、はい」


味方が一気に居なくなった。


(どうしようか…シヴァを追いかけると啖呵をきったものだから、とりあえず情報を集めるか…)


その後、大々的に指名手配がなされた。

(これで俺も立派な犯罪者だよ。中学生のタバコ自慢がアホらしく思えてくる)


とりあえず酒場のマスターに聞いてみる。


「ウィスキーを」


(やっぱ情報通といえば…)


「シヴァのパーティーのティル・ナ・ノーグでのクエストの話なんてないか?」


言ったと同時に金貨を出す。

マスターの眉がピクリと動いた。


「クラナ村の話かね?」

「詳細は知らないが、レーシェンを討伐した時の話だ」

「なるほどな。ではもう2枚程頂こう」


意外と高くつくもんだな、まぁ他にあてがないし仕方ない。金貨2枚を差し出す。


「長話になる、1時頃にまたここに来い」



約束の1時となった。



「シヴァについて聞かせてもらえるか?」

「来たか、そうだな…まずは目の見えない少女の話からしようか。」

「あぁ頼む」

「生まれた時から周りが見えなかったが、村で数少ない子供だったから、村人たちにとても良くしてもらっていたんだよ。しかしまぁ、他の子供は気にいらなかったんだろうな。大人の目を盗んでその子を森に置いてきたんだよ。魔物の出る森にな。」


なんとも胸くそ悪い話だ。かくれんぼで置いていくのとレベルが違うぞ。


「そんでな、不思議なことに周りが見えないはずなのに何故か平然と戻ってきたんだよ。」

「魔法を使えたと聞いたが」

「あぁ、そうさ、魔法を使って戻ってきたんだ。しかし魔法のことなんか知らないただの子供達はまぐれだろうと思ってた訳だ。ちなみに村の大人にこっぴどく叱られたそうだ。それで更に腹を立てて、もっと遠くへと連れ出した。」


なんともやるせない話である


「しかし、それでも戻ってきた。やはり怒りが収まらない子供達は、今度は置いてくるのではなく陰湿ないじめを始めた。しばらく続いたんだがな…ある日、村の子供の数人がすっかり消えちまったんだよ。」

「というと?」

「あぁ、近くの森のレーシェンの餌食になってやがった。といってもこれが分かったのは村人の半分が消えてから、だがな。」

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