23話 日本!いや江戸!(後編)
またもすっかり忘れてAPEXをしてた受験生ワイです。本当に申し訳ない(メタルマン博士並感)
散々自称23歳の刀オタクの話に付き合わされたが約束の8時となったのでどうにか逃げだした。
集合場所にはもう皆集まっていた。
「おーい!遅かったじゃないか」
「すいません、ちょっと…」
「いやいや構わねぇよ?なんてったってこいつらだって俺が声掛けなかったら今頃ここに居ないだろうしな」
「けっ…」
「むぅ…」
「ふぐぅ…」
「はぁ…」
なんとも自由なパーティーである。
「んで…ここ日本でなんのクエストをするか!決めたぜ!」
「は?」
「聞いてないけど」
「…」
「楽なので頼む」
「なんでしょう?」
「かの有名な妖刀ムラマサ探しだ!」
「俺はパスだな」
「私の出番じゃない?」
「…?」
「戦闘でなければ…」
「おぉ!ムラマサ!」
「なんだエル知ってるのか?」
「あぁ…えぇはい。刀に詳しい方に聞きました」
「なら話が早い…探そうぜ!」
「その前に宿ですかね」
「あっそうだった…」
「早とちりばっかりしやがる…」
「ご飯…」
「ははは!いい感じの所を見つけてあるぞ!」
「ラグダロさんありがとうございます」
「お…おう…こう面と向かって礼をされるのは久しぶりだな…」
「私はもう予約してる所があるからじゃあね…」
エレノアさんを除いた男5人で宿へ向かった。
「にしても刀なんてどうやって見つけるんだ?」
「実は討伐作戦に出たハンターにアポを取ってんだ…」
「所詮前に戦った事があるだけじゃないか」
「それでしたら聞きましたよ。なんでも1度ムラマサに斬られると相対位置が分かるとか…」
「そうなんだよ…つってもまぁかなり近付かないと分からないらしいがな」
「ふぅん…なるほどな」
「となるとやはりそのハンターを連れ回すって事ですか?」
「まぁそうなるが…そこはシーフにおまかせだな」
「うぅむ…エレノアが働いてくれるかねぇ」
「まぁ金さえ渡せば働くだろ」
「というか…見つけたとしてどうするんですか?」
「まぁ今の所は持ち主?宿主?が居ないとされているからこの…」
そういってシヴァさんが布を広げて見せた。
「封印の布で覆って持ち帰る」
「そんなので剣豪を殺人鬼にするという妖刀を抑えられるんですか?」
「理論上はそうだ…だが心配だから厳重体制でゲイルに持ってもらう」
「は?聞いてないぞ!?」
「言ってないからな」
「どうするんだ俺が呪われたら!」
「そんときゃエルに殺し」
「ふざけるな!」
「すまんすまん…封印の布があれば大丈夫らしい…まぁ万が一何かあったらアレだから1番攻撃力が低く、耐久力の高いお前に持ってもらうってだけだ」
「むぅ…不満だがまぁ良いだろう」
「てことでおやすみ!」
「おやすみ」
「おやすみなさい」
「……(食事中)」
「あぁ…おやすみ」
翌朝
「よぅし作戦は分かったな?」
「はいはい分かりましたよ」
東京から出て馬車に揺られている。
エレノアさんはさっきから何故か外をチラチラと窺っている。
(索敵をしているのか?魔法か?)
「エレノアさんは何をしているんですか?」
「魔法を使って索敵してるのよ」
「凄いですね!魔法かぁ…使ってみたいなぁ…」
「さすがに化け物でもレギンレイヴじゃ魔法は無理でしょうねぇ」
「ですよねぇ…」
(やっぱり魔法は難しいかぁ…脳内再生される例のアレもやってみるまでは「習得しました」とか言わないもんなぁ…)
「いやいやエル程の化け物ならワンチャンあるんじゃないか?」
「かもしれんな…ちょっと手ぇ貸してくれんか」
「はい、どうぞ」
ラグダロさんは手を掴み、なにやら詠唱を始めたようだ。
「彼の者の傷を癒せ」
怪我はしていない為か、特になにも起こらなかった
「どうだ?一応これが回復魔法じゃ、なにか感じたか?」
「なんだか温かくなったような気がしました」
「う〜む…なにかこう…体を何かが通ってくるような感覚は無かったか?」
「いいえ…特には…」
「じゃあ適正が無いんじゃねぇのか?まぁただでさえ化け物なのに魔法まで使えたらさすがに世の中不公平すぎるわな」
ゲイルさんが少し嘲笑うかのように言う。
「そうですかねぇ…魔法かぁ…使ってみたかったなぁ…」
「まぁレギンレイヴで魔法を使える方がおかしいんだがな…」
「あっ!反応があるわ!でもなんというか…不気味ね…生物か魔物で無ければ分からない魔法なのにはっきりと刀だと分かる…」
「まぁ妖刀だしな」
「まぁそうね…気にしても仕方ないわ、行きましょう」
しばらく森を進むと討伐作戦に参加していたというハンターが東京から出て初めて声を上げた。
「あっ!居ます!その茂みn」
「伏せて!」
「シュバッッッ!!」
ハンターの頭が目の前に転がって来た。
「ひっ…」
血の気が引いた。目の前で人が死ぬのはやはり慣れない。
「しっ…静かに…音に反応するようだわ…」
とエレノアさんが鈴(?)を何処かに投げつけながら静かに言った。
「パキッ」
「あっっ!?」
ラグダロさんが小枝を踏んでしまったようだ。(もう鈴の音はしない…これはまずい)
「ガァンッッ!!」
なんとか剣で受け止めたがムラマサが剣に刺さっている。剣が折れるのも時間の問題だろう。
「早く逃げて!」
ラグダロさんは無言でパーティーの(ムラマサから)後方へと逃げた。
やっとシヴァさん達が武器を手に取りムラマサと対面した。
「あー」
シヴァさんが大声を出したがムラマサは尚も自分の剣に刺さり、力を加えてくる。そもそもムラマサの宿主が分からない。茂みで隠れていて刀身しか見えないのだ。
シヴァさんがアイコンタクトでゲイルさんやシルバさん、エレノアさんと共に茂みの方へ攻撃をしかけた。
「ガサッ」
ゲイルさんのメイス、シヴァさんの三叉槍、エレノアさんの剣、全てが空を切った。
そこにシルバさんの風魔法が
「バサッ」
「宿主が居ない!?」
なんと刀が宙に浮いていて独自に動いているようだ。
「確かに探知魔法には引っかからなかったけど本当に刀だけだったなんて…」
「今はそれどころじゃない!早く刀を封じないと!」
「そうだな!おいエル!抑えといてくれよ!」
「はいもちろん!でもあと少しで剣が折れそうです!」
ゲイルさんが封印の布を持ち、思いっきりムラマサを掴んだ。
「ぐっ!?」
「どうした!ムラマサに乗っ取られるか!?」
「バカ違う!お前らも手伝え!この刀、馬鹿力だぞ!」
素早くシヴァさんとエレノアさんが封印の布の端を掴みグッと刀を押さえつけた。
「ふぅ…どうだ?」
(またフラグ立てやがったよこいつ!!)
シヴァさんがフラグを立ててしまった。
「早く封印の布を結べ!」
布でぐるぐる巻きにした刀を全体重で抑えながらゲイルさんが叫んだ。
「ふぅ…これで終わりだな…」
今にも張り裂けそうな位にギッチギチに梱包された。
「帰るか…」
シヴァさんがハンターのドッグタグを取りシルバさんに火属性魔法を頼んでいた。
一瞬で火葬されるハンターを見ていた。
(やはり死体が放置されるとアンデッドとかになるのだろうか…)
しかし今の状況でそれを言うのは憚られた。
「ありがとう、助かった。あのハンターのようになっていたかと思うと…」
「いえいえ…」
ラグダロさんに礼を言われた。
シヴァさんもさすがに人が死んだ以上ふざける事はできないようで目をギラギラさせながら馬車の周りを見張っていた。
無事東京に着いた。
「はい、クエストの報告ですね…その荷物は………っ!?」
ギルドの受付嬢が大急ぎで裏に走り
ギルドマスター(?)を連れてきた。
「あっ…」
「あっ…あの時の冒険者…まぁいいとして、ムラマサを捕まえ、いや持ってき…う〜ん…」
「そんなことどうでもいいでしょう!」
受付嬢がギルドマスターにツッコミを入れる。
「あぁすまない、とにかくありがとう。こちらで預かるよ」
「はい、どうぞ」
「あと…それから同行したCランクハンター1名が死亡した。これは彼のドッグタグだ」
「こちらでも確認している、残念だった…だが今はまずムラマサをどうにかせねばな…では国との兼ね合いがあるので私は…」
東京のギルドマスターは身長が低く刀を携えたあの刀オタクだった。
「まさか本当にムラマサを封じるとは…」