第1章 1-12 魔法と過去と懺悔と
主人公・扇がもつスキルとは
1ー12 魔法と過去と懺悔と
『そんじゃぁ、さっきおまえらに教えた{手のひら15cm上に30秒間火の玉サイズのトーチ}を魔方陣で発動してみてくれ。』
軍務大臣であるグレンさんによる魔法の講義で判明した魔法の改変方法を元に手を加えられた魔方陣を用いて、グレンさんの部下達が魔法を発動させることになった
その様子を見ながら、俺はひとりで隅っこであることを考えていた
この魔方陣の中にある文字は日本語と英語で作られていた、と言うことはこの魔方陣は日本人か日本語を読み書き出来る人物が作ったことになる
召喚魔方陣は帝国にあった文献を元に実行したのも含めると、過去に召喚された人物がいたのだろう
そんなかんじで考え事をしていると国王様がこっちに来ながら声をかけてきた
「オウギ殿、そんな場所で何をしているのじゃ?」
「いえ、魔方陣の文字のことでちょっと考えてました…あの文字は俺がいた世界の言語で書かれていたので、過去に召喚された人物が日本人だったんだなぁと」
俺がそう言うと国王様は目を丸くしたあとに真剣な顔で考えこんでから顔を上げてこちらをまっすぐ見た。その顔はいつもの国王としてではなく、人として覚悟を決めた雰囲気を持っていた
「なるほどのぅ、魔方陣を解析しただけでそこまでたどり着いてしまうとのぅ、あの事も伝えた方がいいのかもしれぬな。
グレン、少しオウギ殿と二人きりで話したいので、少し席を外すぞ。」
国王様がグレンさんにそう伝えるとグレンさんは国王様の顔を見て、少し考えるそぶりを見せた後
『了解したぜ!こっちで魔法改変の検証をするからしばらくはかかり切りになるだろうからゆっくりはなして来ると良いぜ~』
と言って部下の方を向いてしまった
グレンさん達とわかれた後、国王様と二人で近くの部屋に入り、国王様は防音との魔法を使ってからこちらを向いた
「これは国王のみしか知らぬ事でな…過去に召喚された者は初代国王でもあるのじゃ。名を≪マクレーン=G=ウィンストン≫といったそうじゃ。
当時はここも帝国領じゃったからの、召喚された他の勇者は魔王を倒すため向かったが、そやつは内政スキルを持っていたこともあり帝王の下に残り、国内の安定と生活の向上を担ったそうじゃ。」
名前からすると日本人ではなさそうだな…日本に訪れた人かもしれないが…
「そやつが当時は貴族しか使えなかった魔方陣を国民でも使えるように改変を行った事で生活の向上を成し遂げたのじゃが、帝王とこのような密約を交わし、この地に王国を建国し初代国王になったそうじゃ
【俺が改変した魔法は使いやすいようにしたが、同時に国民にとっての下克上を行いやすくなってしまった。
俺はそれを防ぐために国王になるが、科学と魔法を合わせたら確実にこの国…いや、この世界は滅ぶ。ソレは避けなければいけないから俺がいた痕跡や知らせた情報はこの世から抹消し、この地で俺が国王になって召喚魔方陣を悪用されないように隠蔽する。それがこの国を守るためにあいつらに魔王退治任せて俺がここに残ったのだからね。】
初代国王は国民と帝国の地位向上の代わりに犠牲者を減らすことにしたそうじゃ。そのため、歴代の国王は次期国王が即位したときにこの話をし、召喚魔方陣の危険性を受け継いできたのじゃ。
まぁ、その願いはワシの代で崩れ去ってしまったのじゃがな…」
あるいみこの人のおかげで、召喚された人が居なかったのが幸いか・・・
「ワシも最初は勇者召喚には初代国王のこともあるから反対していたのじゃがな…
ある理由が出来てしもうて、召喚を容認してしまったのじゃ。その召喚で本来は関係無かったオウギ殿が巻き込まれてしまった、オウギ殿の人生を台無しにしてしまった。なのにオウギ殿の知識をワシは求めてしまった。オウギ殿に対して本当であればワシは謝罪をせねばならぬのじゃ。
じゃから、ワシにできることは何でもしたいのじゃ。これは国王としての責務ではない。ワシ《カイゼル=フォン=レセトラス》という人としてオウギ殿の台無しにしてしまった人生を償わねばならぬのじゃ。本当に申し訳ないのじゃ。」
そういって、頭を下げた国王様《カイゼル=フォン=レセトラス》は国王と言うよりも、若い頃に侵した罪を後悔し、心の中に閉まったまま誰にも打ち明けられず、ずっと悔いて生きてきた一人の人間にしか見えなかった。
俺は召喚に巻き込まれたがソレもまた俺の人生だと割り切れたが、目の前のご老人はある理由で俺の人生を壊してしまったことを後悔し、自分の残りの人生を全て使ってでも業と贖罪を自分の肩に背負って生きていくつもりなのだ。
「国王様、いえ、ここでは≪カイゼルさん≫と呼ばせて頂きます。俺は別に人生を壊されたとは思っていません、この世界には確かに巻き込まれたことになりましたが、俺はソレもまた俺の人生なのだから誰かを責める気も誰かに復讐する気もありません。だから、その全てを≪カイゼルさん≫お一人で背負う必要はありませんよ。」
「じゃが『それでもなお後悔し続けるのであれば俺も一緒に背負いますよ』…!!!!」
「今までは≪カイゼルさん≫を含めた歴代国王が守ってきた誰にも話せなかったこの秘密を俺は知ることが出来た。なら、今からは俺も≪カイゼルさん≫と一緒に背負っていけば≪カイゼルさん≫が罪の重さを少しでも減らすことが出来ると思うんです。多分、初代国王様は後の国王が罪に耐えられなくなることをわかっていたから、自分で資料や文献を消失させ、魔方陣の悪用を封じるためにこの地で国王になる決意をしたんだと思います。国王になれば魔方陣自体を隠蔽し、可能であれば魔方陣を破棄させたかったのではないかなって。少なくとも俺が初代国王だったらそう考えますよ。
だから、これからはおれも≪カイゼルさん≫と一緒にこの秘密を墓場まで持って行きます。だから≪カイゼルさん≫も後悔を背負うのではなく、後悔ではなく秘密の共有者として人生を助け合いましょう、そっちの方がはるかに楽しめますよ。」
そう言うと、≪カイゼルさん≫は目を大きく丸くして頭を下げた、下から嗚咽がこぼれていたが俺は聞こえないふりをして≪カイゼルさん≫の背中にある雁字搦めに重なった罪という重しをほどくように背中をさすり続けた
どれくらいの時間が過ぎたかわからないが、≪カイゼルさん≫・・国王様は顔を上げたときには先ほどの後悔をした人間の顔ではなく、最初見たときの威厳のある顔に戻っていた
その顔も、どこか憑物が落ちたような顔だったのは、俺の見間違いではないだろうと思う
「すまぬな、今まではオウギ殿に迷惑をかけまいと自制出来ていたのじゃが、魔方陣の事で弱気になっていたようじゃ。
オウギ殿の言葉でどこか救われたような気がするのぅ。こんなに心が軽くなれたのは初めてじゃよ、改めて礼を言わせておくれ、ワシの心を救ってくれてありがとうなのじゃ」
「いえいえ、俺は思ったことを言っただけですからお気になさらず。≪カイゼルs≫…いえ、国王様が本気で償うって真摯に思っていたからこそ、ですよ。」
「≪カイゼル≫で構わぬよ、お主はワシにとって命の恩人なのじゃからな、そう呼んで欲しいのじゃよ」
「あー…では、誰もいないときだけで...流石に普段からそう呼んだら周りが勘違いしますって。」
国王様は不承不承ではあるがそれで了承させ、元の訓練所に戻ることになった
国王様の顔を見たグレンさんが目を丸くしてたのが印象深かったのはなぜだろう?
――――――――side:グレン―――――――
「・・・ゆっくりはなして来ると良いぜ~」
そういって俺は部下の方で魔法の検証を行っていたが、検証自体は部下達だけで出来るから特に俺は必要ないんだよな、だからオウギ殿と国王の話に加わろうとしたが国王である≪カイゼル≫の顔を見たら、加わることは無理そうだと思っちまった
なにせ国王の顔はまるで死地へ向かう事が決まり覚悟が決まった兵士の顔そっくりだったんだよな
流石にそんな二人に加わるのは辞めた方がいいだろうと送り出したんだ
これは前任者から聞いた話だが国王にしか伝わってない秘密があるらしい。どんな内容なのかは知らないが、多分召喚者に関することだろうな
まぁ、≪カイゼル≫は普段も国王としての責務もあるんだろうが、時々苦しそうな顔をして外を見つめている時があったからな
話を聞くことが出来るが、俺は…俺たちは大臣の前に部外者だ、話を聞いちまえば大臣としての仕事が出来なくなる恐れもあるから、知らん顔して見知らぬ振りをするしか出来ないのが心苦しいんだ
戻ってきた国王の顔は憑物が落ちた晴れ晴れした顔だったから、オウギ殿が重しを外してくれたんだろうが、いったいどんな魔法を使ったのやら、オウギ殿の世界では魔法は存在せず、物語の中だけだと言っていたが、俺たちからしたら、カイゼルの憑物を落としたオウギ殿の方が俺たち以上の魔法使いにしか見えねぇよ、まったく、オウギ殿に足を向けて寝れねぇなぁこりゃ
もしかしたらオウギ殿ならあいつの悩みも解決できるかもしれねぇ、あいつはあのスキルの関係で帝国に狙われていやがるからな…もしかしたらオウギ殿なら…って俺は思っちまうんだな…
俺がオウギ殿に期待を持つには異世界人という柵がないのもあるが、それ以上にオウギ殿が持つ雰囲気なら大丈夫という俺の勘だ。軍務大臣に就く奴は能力もそうだが≪危険察知≫を持つヤツが就く、状況を察知してすぐに決断しなきゃ、たくさんの部下を死なせてしまうからな、俺はそのほかに戦場に身を置いていたから≪勘≫も効く。
その勘が俺に伝えてくれるんだ。『ヤツはこの国を救ってくれる』ってな
だから、オウギ殿にならあるいは、って思えるんだ
実際戻ってきたカイゼルには憑物と重圧がきれいにぬぐい去られていたからな
――――だからよ、オウギ殿。頼む、あの方もカイゼル同様に救ってやってくれ――――
国王にとって、今回の召喚は初代との約束とある理由がせめぎ合う中で出した苦渋の決断だったのです。
ある理由はのちのち明らかにされますが、その結果主人公が召喚に巻き込まれてしまい、不安な夜を過ごすことになりました。
ですが、主人公はその不安すら受け入れ、国王にのしかかった罪という重しを払い去ってしまったのです。
国王からすれば主人公こそ勇者であって、他の3人が巻き込まれたしまったのではと考えているのかもしれませんね
次回は何事もなければ5/2(木曜)に更新出来たら良いなと思います
ヒロインが登場するのはいつになるかな…(遠い目)




