死神のお仕事事情
「私思ったのだけど、あなた死神をなにか勘違いしてる気がするのよ」
「勘違いって言われてもな。俺の中では魂の回収係みたいな印象しかないぞ」
2人でトマトパスタを口に運んでいたとき、テレビを見ながら急にラインディアは死神について語り始めた。
「そもそも、魂の回収って言っても勝手に刈っていいわけじゃないの」
「俺の魂は勝手に刈られたんだが」
「あなたのそれは、まあ事故としてよ。魂の回収はちゃんと業務化されているし、それ以外の仕事だってちゃんとしてるのよ」
「その事故ってかなり致命的な気がするんだが。まあいいや、それ以外にも仕事があるのか」
辰己にもすぎたことを延々と攻めるつもりはないし、魂も元に戻る可能性があるならばしばらくはらインディアと共に過ごすことになるだろう。そのせいもあってか、辰己は死神についてもう少し知っておこうと思った。
「まあ、仕事のほとんどは魂の回収だったりするのだけど、たまに不要に魂を刈ったり許可なく魂を刈る奴がいるから、その取締なんかは死神が担当してるのよ」
「魂の警察みたいだな。じゃあ、死神って相当な数いるんだ」
「各地区を担当できるくらいだからね。各国の町とか市に何人かついてるイメージで、大丈夫よ」
本当にしっかりと行政化されていて、正直なところ素直に感心した。
ここでふと疑問に感じたのが、人間のイメージでもうひとり魂を運ぶイメージのある存在だ。
「死神がいるってことは天使もいるのか?あいつらも魂を運んでるイメージがあるんだが」
「天使?あんな奴らただはた迷惑なだけよ。気まぐれに幸運ばら撒いたり、勝手に人の死期を伸ばしたりで、管理しているこっちの身にもなって欲しいくらいよ」
仲がいいとは思っていなかったが、予想以上にいい関係ではないらしい。
しかも、どうやらあまり触れてはいけない部分だったらしく、ラインディアの愚痴は止まらない。
「あいつらの幸運はほんと気まぐれで、生かしておいたら後々ほかの魂の迷惑になるってわかってる人ですら幸運ばらまくし、おかげで一国が独裁になって大量虐殺なんてしよう物なら、死神の管理責任とか言って追求してくるし、寿命をいじったのはそっちだって言っても天命は主に与えられしもの、とか言ってまともにとりあわないし、ほんとムカつくやつらよ」
よっぽど不満があったらしい。
そして、ラインディアがさらに不満を続けようとした時、屋根裏から天井を叩くような音が鳴った。この家に天井裏はあるが、いまの音は何かが倒れた感じではなく、直接天井裏から叩いたかのような音だった。
2人は顔を見合わせ、もう一度天井へと視線を向けてから首をかしげ、食事に戻りラインディアが天使に対する愚痴を再開しようとした時、もう一度天井が叩かれた。
「やっぱ誰かいるだろこれ!てか、天使の愚痴を言ってるこのタイミングとか、嫌な予感しかしねえ!」
「私もなんとなくそんな感じはするのだけど、とりあえずまあ」
そう言ってラインディアは服の裾から棒状の者を取り出すと、それを振り抜き刃を出現させた。
デスサイズってそう収納されていたのかと辰己が感心していると、ラインディアは天井に向かってデスサイズを振り抜いた。天井をすり抜けているデスサイズをなんどか往復させていると、天井の一箇所が開き何かが落ちてきた。
それは埃まみれで咳き込みながら、こちらに対して講義の視線をむけながら口を開いた。
「なんてことをするんですか!危うく私の胴体と下半身がおさらばするところだったのですよ!」