死神少女の空腹
とりあえずの処置としてラインディアは家に帰らせ、真島には適当に誤魔化しクラスメイトには質問すらさせずに乗り切った。元々友達づきあいもあまりない辰己は、ほとぼりが冷めるまで放っておけばほかの話題で塗り替えられるだろうと判断し、学校が終わるなりさっさと帰路に着いた。
今日はラインディアに押し入れを使わせることについて、いくつかルールを作らなければいけないと考えながら家の扉を開けると、そこには死神が倒れていた。
家に帰るなり、死神が倒れていたのだ。
死神って死ぬのか、いやさっきは痛みに悶えてたななどと考えながら近づくと、倒れた姿勢のまま顔だけを器用に持ち上げ、震えている手をこちらに向けてきた。
「お前な、玄関に倒れてたら邪魔だろうが。倒れるなら居間で倒れとけ」
「あんた、玄関に女の子が倒れてるのよ。もう少し違う対応があると思うのだけど」
「じゃあ一応聞いてやる。腹が減った以外の理由を答えろよ?」
廊下に倒れたままの死神少女は、何も言わずに代わりに腹部から情けない音が返ってきた。そのままプルプルと震えているあたり、悔しさか恥ずかしさを感じているのだろう。
「違うのよ……本当は昨日の夜には仕事を終わらせて帰るつもりだったから、手持ちなんて何もないのよ」
「わかった、悲しくなるからそれ以上言わなくていい」
話し合いの前にとりあえずは腹ごしらえかと冷蔵庫を開き、ふとラインディアの食事は何を用意すればいいのかと気になった。
「ラインディア、死神って何食べるんだ?」
「別にあなたたち普通の人間と変わらないわよ」
「リンゴばっかり食べてるわけじゃないんだな」
「あれは死神の中でもかなり変わり者だから……」
某死神は、現役の死神から見ても変わり者らしい。
それはそうと、普通に食事ができるというのならば、適当にあるものを用意すればいいだろうと乾燥パスタを取り出してお湯を沸かす。
トマト缶とチーズを用意している間に、ラインディアは這いずるように居間に移動していた。どうでもいいのだが、あの服はかなりホコリが目立つのではないだろうか。
そうこうしているうちにパスタが茹で上がり、簡単なトマトパスタを皿に盛って居間へと向かうと、別に興味ありませんよと言わんばかりにテレビを見ながらこちらをチラチラと伺っている死神の姿があった。