死神少女の来校(2)
「あの……辰己。彼女は一体誰なんだい?」
しまった、つい家にいる時のような態度で接してしまった。
彼女は死神としての立場とか、バレると実はまずいのではないのだろうか。
「あー、ラインディア。どこまで説明していいんだ?」
「説明って、あんたの同居人よ」
ラインディアの説明に、昼時の教室が静まり返る。
幸いすでに教室の中に入っているため外を飛んでいる姿は見られていないようだが、見た目だけは美少女の部類に入るラインディアがこんな爆弾発言を投下したのだ。教室内の興味は一気にこちらの会話に集中する。
「ラインディアよ、ちょっと外で話そうか」
「なによ、ただ魔力供給をしに来ただけでって……ちょっと、そんなに引っ張らないでよ!」
状況についていけない真島をその場に残して、辰己はラインディアの手を引いて教室を出た。そのまま、廊下にいる生徒の視線を感じつつ屋上へと繋がる階段を上がり、屋上の扉の前で立ち止まった。
「なによ、こんな人気のない場所まで連れてきて……はっ、まさか」
「そう、そのまさかだ。察しがよくて手間が省けるな」
何を勘違いしているのか頬を赤くしてわたわたとしているが、残念ながらそんな展開はない。笑顔のままラインディアの顔面を正面から掴み、頭蓋が軋む勢いで握りこむ。
「痛っ、ちょっと待って、死神だって痛みはあるんだって、ちょっとシャレになってないから!」
「とりあえず、3階の窓から入ってくる以外の選択肢はなかったのか」
「いや、その、あれよ。あなたに魔力供給しなくちゃと思って慌ててて」
「1日1回でいいなら、昨日の夜に貰ったから今日の夜じゃダメだったのか?」
「そのお、昨日の夜に供給した量が少なかったかなって……」
「今本当のことを言うなら、手を放そう」
「人間の学校に興味があったのよ!それだけです、これで満足!?」
辰己のため息と共に解放されたラインディアは、頭を抑えて呻きながらその場に座り込んでいる。魔力供給をしに来てくれたのならもう少し違う対応もあったのだが、よくよく考えたらその供給をしなきゃいけない原因もこの死神だと思うと不思議と胸は傷まない。
「お前な、死神だって周りに知られるのはまずいんじゃないのか?」
「すみません、考えなしの軽薄な行動でした」
この死神はうすうす気づいてはいたが、ポンコツなのかもしれない。
出会ってから2日目にして死神少女の本質に気づいてしまった辰己は、魂が定着するまでこの死神と過ごすのかと思うと、ラインディアとは違った頭痛に悩まされそうだった。