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喫茶店で働こう(1)

 まずはそれぞれの話を聞こうと、書類のようなものを2枚持ってきたマスターは、ついでにと小さなカップに入った菓子も持ってきた。席はマスターと辰己が正面に座り、その向かいにラインディアとアンジェが座っている状態である。


「まずは、自己紹介をしておきましょうか。私は木更津胡桃。見た目と声はこんなんだけれど、生物学上は女よ」


「私はライン・デア・トートよ。呼びづらいと思うからラインディアでいいわ」


「私はアンジェリカです。アンジェとお呼び下さい」


「ふむ、ではラインディアとアンジェ。初めに聞いておきたいのだけれど、あなたたちは喫茶店にどんなイメージを持っているのかしら?」


「喫茶店……そうね、率直な感想だけどケーキとか珈琲を飲むおしゃれな飲食店ってところかしら」


「私も大体そんな感じです」


「ふむ、そのあたりは大丈夫そうね」


 何かを書類にさらさらと書き込みながら、マスターは話を続ける。


「接客や料理はどの程度できるのかな。いや、未経験なら未経験で構わないのだけどね」


「料理ならそれなりにできるけど、喫茶店で出せるようなものかはわからないわよ」


「申し訳ありませんが、私はどちらも経験がございません……」


 意外なことに、ラインディアは料理の経験はあるらしい。

 逆にアンジェは料理が出来そうなイメージだったのだが、経験がないのもまた意外だった。


「ふむ、ならアンジェちゃんは基礎から研修をしましょう。ラインディアちゃんは、厨房で出来る料理を作ってみてくれるかな」


 頷いた2人は、アンジェは木更津と共に新人研修を、俺は手伝いとしてラインディアと共に厨房へと向かった。ちらりと様子を見てみると、木更津の言葉を繰り返しながらお辞儀をしているので、接客の練習でもしているのだろう。

 こちらはというと、ラインディアが保管されている食材や調味料を調べ、なにを作ろうかと考え込んでいた。


「なあラインディア、意地を張ってるなら今のうちだぞ?料理ができないならできないって……」


「失礼ね、今はなにを作ろうか考えてるだけよ。この材料ならクッキーでも焼けるかしら」


 死神が作るクッキーと聞くと、字面がとても危ない気がする。

 だが、死神としてのイメージカラーは気にしないのか、白いエプロンをつけたラインディアは、手際よく生地を作り成形していく。ながら作業でオーブンを温めたり、薄くバターを塗ってみたりと、普通に料理ができることが伝わる。

 辰己は手伝いと言いつつ卵の殻や、調理の途中に出たゴミを片付けたり皿洗い程度でクッキーが完成してしまった。


「まあ、ざっとこんな感じね」


「予想以上の手際の良さに、俺は驚いてるぞ」


「もう、そんなに疑うなら一つ食べてみればいいじゃない」


 そう言って手渡されたクッキーを口に運ぶと、軽い食感とふわりと広がるバターの香りが市販のクッキーよりも美味しいと感じた。得意げな顔をしているラインディアには少しイラっときたが、このクオリティの料理が出せるなら厨房を任せても問題ないだろう。

 ラインディアの実力もわかったところで厨房を出ると、そこには笑顔のアンジェと頭を抱えている木更津がいた。


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