面接開始
翌日、3人は辰巳の知り合いの店を尋ねるべく、商店街へと向かっていた。
まだ春先のため、桜が残っている木もありアンジェとラインディアは珍しそうに視線を動かしている。
「やっぱり下界って暖かいのね。春先の陽気で眠くなってしまうわ」
「ダメですよラインディア、これから私たちの知るところの面接に向かうのですから」
「そんな固く考えなくてもいいけどな。俺の従兄弟がやってる店だし、気楽にしててくれ」
すでにその従兄弟に電話をして向かうことを伝えた辰己は、両手に花とも言える状況で商店街へと続く道を歩いていく。日差しが暖かな往来を、死神と天使に挟まれ歩く青年というシュールな構図のまま、一行は商店街へとたどり着いた。
「ここがこの街唯一の商店街だ。それなりに人気はあるし、シャッターもほとんどしまってないぞ」
「シャッターが閉まってると、なにか悪いわけ?」
「そこの店が閉店してから、誰も店を開いてないってことだ」
「あぁ、理解したわ。過疎化ってやつね」
「下界もなかなか難しいのですね。天界にもシャッター街は見たことがありますが」
天界も世知辛い部分があるのかもしれないと思いつつ、目的の店の前につく。
そこはよくある雰囲気の喫茶店で、レンガ造りの壁が印象的だ。
辰己を先頭に扉をくぐると、軽やかなベルの音と共にコーヒーの香りが漂う。
「マスター、今朝電話した2人を連れてきたんだけど」
「やあ、久しぶりだね辰己。せっかくこっちに引っ越してきたのに、全然遊びに来てくれないんだもの」
3人を迎えてくれたのは、コーヒー豆を計りながら小分けにしている、中性的な見た目の人物だった。声もハスキーなため、非常に性別がわかりづらい。
「あら、話で聞いたよりも随分かわいいのね。黒髪の子がラインディアちゃんで、金髪の子がエンジェちゃんね」
2人とも緊張しているのか、軽く頷くだけで返すがそれに満足したように笑顔を浮かべたマスターは、手早く人数分のコーヒーを淹れテーブルについた。
「さあいらっしゃい、今からあなたたちの面接をはじめるわ」