これからの予定
「さて、ここにどうしても今のうちに話さなければいけないことがある」
食事が終わって人心地ついている居間で、辰己は真面目な顔で切り出した。
アンジェとラインディアはそれぞれの湯呑に口をつけたまま視線を向け、湯呑を置いてから辰己に向かって座り直す。
「明日は日曜だから、まあ家でのんびりしていてもいいだろう。けど、俺が学校に行っている間はどうするかだ」
「そんなの、私たちにだって予定くらいあるわよ」
「はい、先ほど辰己さんがお出かけしている間に、私たちで話し合いをしたのです」
「間違っても、うちの学校の生徒になるとか言うなよ?」
「違うわよ、なんでわざわざ拘束されに行かなきゃいけないのよ」
「私たち、資金が乏しいのでアルバイトをしようと思うのです」
「学校を監獄みたいに言うんじゃない。それと、アルバイトね」
腕を組んで考え込んだ辰己は、大丈夫だろうかとそれぞれに視線を向ける。
ラインディアは接客中に、気に食わない客に食ってかかりそうだし、アンジェはおそらくいろいろなところで騙されそうだ。
「資金に関しては俺が色々言えたもんじゃないけど、もう少し下界の常識を身につけてからでもいいんじゃないか?」
「その常識を身に付けるためにも、アルバイトはいいんじゃないかって思ったのよ」
確かに一理あるかも知れない。
しかし、そのためには仕事先に迷惑をかけるかもしれないし、何かあった時に連絡がくるのはおそらく俺の携帯だろう。どこかちょうどいいアルバイト先がないかと考えていると、一つだけ心当たりがあった。
「お前らの働きたいって気持ちは嬉しいが、なにかトラブルがあってからじゃ困るんだ」
「なによ、あんたにおんぶにだっこじゃ悪いからって働こうってのに、それを……」
「まあ落ち着け、だから何かあっても大丈夫なように、俺の知り合いに相談してみるよ」
辰己の言葉に言おうとしていたことを飲み込んだラインディアの代わりに、アンジェが口を開いた。
「その知り合いの方というのは、なにか私たちがお手伝いできそうなお仕事をなさっているのですか?」
「ああ、普通の商店だけど客もそれなりに入っていながらみんな常連の人だから、色々教えてもらうにはいい機会だし、なにより一年間暮らすんだったら地元に馴染んだほうがいい」
なるほどと納得している二人の天界人の反応を同意と取った辰己は、早速その知り合いに連絡をとり、快諾された旨を2人に伝える。
明日に早速時間が取れたらしいので面接のようなことをしてくれるらしく、明日その商店に3人で向かうことになった。