家主のいぬ間に
「ある程度片付いたし、ちょっと買い出しに行ってくるわ。適当なところで切り上げていいぞ」
辰己は普段気になっていた場所まで掃除し終わり、あとは舞ったチリやホコリを軽く拭き取るだけという作業を残して、食料や生活用品の買出しに出かけることにした。アンジェとラインディアは慣れないことをしたからか疲れきっており、背中を合わせて座り込んでいた。
辰己が外出し鍵を掛けるのを確認すると、2人の天界人は大きく息を吐いて全身を脱力させた。
「本当に大掃除を1日で終わらせてしまいましたね」
「あいつ、男のくせに細かすぎよ。隅から隅まで掃除しつくして」
「でも、私たちが住みやすいようにしてくれたんですよね」
「まあね、そこに関してはありがたいけど」
二人が住みやすいように押入れの中は整理され、天井裏にも押し入れにしまってあったスタンドライトも設置した。二人がよく知る人間であれば、ここまで唐突に居着いた居候に良くしてくれる人間はそういない。
それは、単純に辰己の人の良さの表れでもあり、面倒見のよさでもあった。
「それに、料理もとても美味しいですし……食費とか入れたほうがいいですよね」
「それは当然でしょ。私は一応任務扱いだから給料はでるし、その一部をあいつに渡すつもりよ」
「私は……堕天しているので、生活費は頂けないんですよねえ」
「天使のほうが給料いいんだから、少しくらい貯蓄はあるでしょ。そっから出しなさいよ」
「そうですね、しばらくはそこからだそうと思います。けど、一年間は多分持たないですね」
「それがさ、下界にはバイトってのがあるらしいじゃない」
「やっぱり気になっていましたか。私も気になっていたのですよ」
そのまま金策の話をしたり、辰己の話をしている間に2人は眠りこけてしまい、2人が目を覚ましたのは、辰己が晩御飯を作り終えいい香りが漂い始めた頃だった。