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大掃除(1)

 本日は土曜日ということで、急に増えた住人たちと状況と住居環境を整理することになった。

 まずはそれぞれの住み分けだが、押し入れはすでにラインディアが占拠しており、エンジェも屋根裏というのが妥当な配置になりそうだ。そのため、それぞれの場所を掃除して、最低限の住居環境を整えなければならない。


「ということで、今日はお前らに部屋の掃除を手伝ってもらうぞ。ついでに、普段できないような場所まで大掃除をしようと思う」


「わかったわ、それなら早く掃除の道具を貸しなさいよ」


「天井裏のホコリには困っていましたので、とてもありがたいのです」


 それぞれ掃除に対して、やる気はあるようで良かった。

 もしここで掃除を拒否しようものなら、昼食と夕食はとても質素なものにしようと思っていたが、居候としての自覚くらいはあるらしい。

 それぞれに掃除用具を手に持ち、自分が担当する場所の掃除へと向かった。


「アンジェはとりあえず、天井裏のホコリを一通りまとめてくれ。ライトはいるか?」


「お心遣い感謝致します、明かりでしたらこれがありますので」


 そう言って天井裏へと向かったアンジェは、天使の輪に触れるとその輪が光り始めた。

 そのまま周囲を照らしつつ、天井裏へと消えていった。


「天使の輪っかって便利なんだな。さて、ラインディアは押入れの掃除をするとして、1回中身を全部出そうか」


「それはいいけど、あんた変なモンしまってないでしょうね」


「変なものって……ああ、そのへんのものは出てきたら中身は見ないで俺に渡してくれ」


「渡してくれって、やっぱりあるんじゃない!不潔よ!」


「天使に言われるならまだしも、まさか死神に不潔と言われる日が来るとは」


 まだ出会ってからほとんど経っていないが、ラインディアの性格は俺の知っている死神のイメージとは、大きく違っているらしい。アンジェの穏やかで控えめな性格は、わりとイメージに近いのだけど。


「なによ、私の顔になんかついてる?」


「いや、俺の中の死神のイメージはあてにならないなと」


「どんなイメージよ」


「こう……なんだ、陰気か狂ってるかサディストで、死期が近くなった人間を弄ぶような」


「よりによってひどい方のイメージね。まあ、私たちのイメージを正しく伝える文献があるわけじゃないし、仕方ないのかもしれないけど」


 そう言いながら押入れを開け放ち、中に入っていた毛布や布団などを引きずり出す。

 奥に押し込まれていたダンボール等も手前の方に押し出し、それを辰己が受け取りながら話を続ける。


「実際のところ、死神っていうのは真面目なやつが多いわよ。悪く言えば融通がきかないって言うのかもしれないけど」


「じゃあ、今回の件はかなり気にしてるのか」


 そう聞かれたラインディアは動きを止め、気まずそうに辰己を見る。

 今の聞き方は少し意地が悪かったなと、辰己もダンボールを置きながら背を向けた。


「今の聞き方は俺が悪かったな。別に死んだわけでもないし、そんなに気にしないでくれって言いたかったんだが」


「実質殺されかけたのに、あんたって甘いのね」


 それからしばらくは、お互いに背を向けたまま掃除を続けていた。

 なんとなく、顔を向き合わせて会話をするのがむず痒かったのだ。


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