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森の爺さんはレティの友達です。

 よろしくお願いします。

 葉っぱが黒いからか、今までより薄暗い森の中を相変わらず、ヒュンヒュンとライシェラが切り開いていく。

 

 「そう言えば、ビエラヤさん。この森での危険な魔物とか、教えて頂いてもよろしいですか?」


 チコリが訪ねると、ビエラヤが一瞬面倒くさそうな顔をする。

 けど、チコリは気付いてないかも、種族が違うと表情って判りにくいよね。


 「もちろんです。まず、黒の森と一口に言いましても、いくつかの層に分けることが出来ます。その層によって住み着いている生き物が違うので、周囲の危険も変わります。この辺りならば灰水の部族が住処にしていましたので、詳しくご説明出来ます・・・」


 面倒くさそうだった割に、しゃべり続けるビエラヤ。


 「・・・などが危険です。さらに最近では灰オークも見かけるようになりました。ヤツらはあまりゴブリンを相手にしませんが、戦いになると手が付けられません。他にも一見、木に見えるトレ・・・」


 その後もビエラヤの黒の森の危ない場所は相手の話が続いた。



 「レティシア」


 ビエラヤの話を聞きながらしばらく進んだ時、ライシェラが道を作るのをやめて、立ち止まりレティに声をかける。


 「どうした?」


 「みられてる。きづくのおくれた」


 僕たちは立ち止まって周囲を見回すけど、木々に囲まれた薄暗い森の中が続いているようにしか見えない。 


 「アペ・フチ。今日は多いな」


 すると、今まで誰も居ない様に見えていた木陰から、ぬっと大きな影が出てくる。

 ライシェラが腰を低くして、すでに構えている。

 チコリは杖を手にして、いつでも魔法を使える体勢だ。

 ビエラヤ達は目を見開いて驚いているみたいだ。

 レティはいつも通りだ、特に警戒もしてない。


 「ニタイエカシ。今日は毛皮はいらないよ。それより、随分浅いところにいるね」


 出て来たのは、背中を丸めた大きな人だ。

 背中を丸めてもレティの倍以上の背丈がある。

 苔の生えた緑のローブを着て、背丈と同じぐらい大きな杖をついて歩いている。

 顔はヒゲに覆われていてよくわからない。


 「いい匂いに誘われてきた。アエプフラだ」


 「これは、アタイの連れだ。勘弁してくれよ」


 レティが珍しく困ったような言い方をする。


 「スー・・・。ピリカカムはそうは言ってない」


 大きく息を吸い込んだ後、弾んだ声で言った。


 「レティシア、こいつきらい。さいしょがかんじん」


 ライシェラが珍しく、相手の事を嫌いと言った。

 鉈をチコリに返して、構えている。


 「おいおい・・・、はぁ。ライシェラこいつは、アタイの知り合いだ、殺すなよ。ニタイエカシもな。トクイェとして頼む」


 レティが珍しく、人にお願いをしたけど、もう二人とも聞いてないみたいだ。

 ライシェラが本気の咆哮ほうこうをする。

 お腹の奥に響いて全身が冷たくなるような声だ。


 「ヒィ・・・」


 後ろか悲鳴が聞こえた気がした。

 チコリも青ざめている。


 「ふはっはっは、威勢がいいなピリカカ・・・」


 最後まで言い終わる前に、ライシェラが跳び上がり、前屈みの相手のあごを殴り上げる。

 ライシェラの方が全然小さいのに、相手は空を見上げながら後ろに倒れる。

 ライシェラは倒れた相手のひたいに乗りひたすら顔を殴り始める。


 「チコリ!ビエラヤ!ぼぅっとしてないでもっと下がるよ」


 そう言って、僕を背負子ごと掴んで大きく跳び退く。


 「でっですが、ライシェラさんが一方的な様に見えますが・・・」


 慌てて追いかけてきたチコリが、まだ少し青ざめながら聞いてくる。


 「あいつは、トロールだよ。チコリも聞いたことあるだろ?」


 「森の隠者と言われる?残念ながらギルドには少しの目撃情報があるだけで、詳しい能力などはわかりません」


 「そっか、随分偉そうな名前がついてるんだね。まぁ、能力は力が強い事と驚異的な再生力だ。他は個人差があるけどね。再生力に関しては細切れにしてもほっときゃ戻るぐらいさ」


 「・・・じゃくてんは?」


 いつの間にかレティの隣にいたライシェラが、僕の頭の上に手を置きながら尋ねる。


 「おや?もう音を上げたのかいライシェラ?」


 「レティシアのいじめっこ」


 「自分で始めたんだ、頑張んな」


 「ピリカカム・・・。もう終わりか?」


 倒れていたトロールがゆっくりと起き上がる。

 目や鼻など顔の上半分がボコボコにへこんでいるけど、まるで下から盛り上がってくるように、段々治っていく。

 ライシェラが跳び出し、また戦い始める。

 足を引き裂き、倒れた所で顔や首、胸などいろんな場所を殴り始める。


 「レティシア様、加勢しなくてもよいのですか?あの様な恐ろしい魔物」


 ビエラヤが魔狼に乗って、こちらへ来た。

 今まで動けなかったみたいだ。


 「ビエラヤも知らないのかい?」


 「残念ながら、あれは黒の森でも最も奥に居る魔物だと聞いたことがあるだけです。攻撃しなければ、襲われることはないと言われていました」


 「まぁ、ゴブリン達とはあまり接点がないかもね」


 「ピリカカム。お前に壊されたお陰で、若返ったようだ」


 そういうと、今まで倒れてされるがままだった、トロールが起き上がる。

 丸まっていた背中も真っ直ぐになって、レティの3倍近い背丈になった。


 「さぁて、ではこちらからリムセ・ニタイ」


 そう言って肩をゴキゴキっと回し、起きる時に拾い上げた杖の先で地面を叩く。

 すると、周囲の木々が動き始め、枝が伸びてライシェラに襲い掛かる。

 それは一本ではなく、ライシェラがかわした先の近くの木がどんどん攻撃してくる。


 「ユプケ・ニヌムラク・アイ」


 枝だけでなく、地面に落ちた木の実がライシェラ目掛けて飛んでくる。


 「ハム・アイ・ニナ・アイ・・・」


 トロールが、地面をコンコンと叩きながら何か言うたびに、周囲のいろんなものがライシェラ目掛けて攻撃してくる。

 ライシェラはどんどん逃げ場所が無くなっていく。


 「うーん、こりゃ詰んだかもね」


 「まさか、これほどの魔法を使えるなんて、冒険者が出会ったら、逃げるしかないですね」


 「!?これが魔法なのですか?ワの使えるモノとはあまりにも・・・」


 ビエラヤが驚いてチコリに尋ねる。


 「魔法も色々あるからね。ライシェラも使えりゃ、戦いようもあるんだろうけどね」


 答えたのはレティだ。


 「これほどの、攻撃をしのぎつつ反撃出来る魔術師・・・」


 僕の周りでは、ライシェラが負けるみたいな話になっている。


 「・・・がんばれ、ライシェラ。負げないで・・・」


 「ふふん、よゆう・・・」


 小さく漏れた僕の言葉に、ライシェラが答えた様な気がした。

 読んで頂きありがとうございます。

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