戻ってきました。
よろしくお願いします。
「ワは灰水の部族、魔術師ビエラヤです」
そう言って、フードを取った人は、灰色の肌というより、白い肌に赤い瞳をしていた。
「へぇ、珍しいゴブリンもいたもんだ。でもあんたは名前があるんだ?」
「ビエラヤは部族の言葉で白という意味です。よくそう呼ばれていたので、名の様なものです」
なんだろう、この人今まであった人達の中で一番、綺麗だ。
そう思っていると、その人がこちらを見る。
少し恥ずかしくなってしまう。
「でも、コブンさんのおかげで助かりました。ほんとは私達は死をも覚悟していたんです」
「ほーう、そりゃわからなかった」
ビエラヤは楽しそうにクスクス笑って。
「私達が帰らなければ、部族は里を捨てる手筈でした。でも、レティシア様がゴブリンを連れていたので、対話する方向に切り替えたのです」
「ふーん・・・」
「はなしおわった?いくよ」
ライシェラがそう言って、預けていた鉈をチコリから受け取り振り回し始めた。
鉈は草木を伐る道具だから、武器じゃないって考えがライシェラの中にはあるみたい。
命を奪うなら、爪と牙があるって言っていた。
僕にはわからない、こだわりがあるみたい。
また、森の奥へ進み始めた。
順番は、レティの後にビエラヤ達が付いてくる形だ。
「それにしても、レティシア様はどうやって、あの広間を焼き払ったのですか?たしか岩亀虫が群生してましたよね?」
「ん?あぁ、虫はよく燃えるからね。火の魔法で簡単だろ?」
「まぁ、素晴らしいですね。一カ所だけ草木が生き残った場所がありましたが、防御の魔法をつかわれたのですか?」
「障壁、知らないのか?」
「残念ながら、灰水の部族には魔術師はワしかいませんでした。誰かに教を乞う事は出来ませんでした」
「あ、そう」
「もし機会があれば、どなたかに師事したいと常々思ってはいるのですが、なかなか・・・」
僕のすぐ後ろで二人が楽しそうに話している。
やっぱり、魔法を使えるから、気が合うのかもしれない。
「そういえば、レティシア様とコブンさんは、どうやってお知り合いに?」
そう言えば、レティと出会ったのは森の中だった。
ずいぶん前の事の様に思える。
そんな事を考えながら、なにげなく周囲を見回していると、なんとなく見覚えがある気がした。
僕は、街の中だとゴチャゴチャしていて、場所を覚えるのが苦手だけど、森の中の地形はなんとなく覚えることが出来る。
「・・・それなら!・・・」
「レティ」
僕は話の邪魔して悪いかなっと思ったけど、レティも見覚えがあるか聞いてみたかった。
「どうした?コブン」
「こご、見覚えない?」
レティは周囲の見た後。
「森の中だろ?なんかあった?」
そうだった、レティは迷子だった。
「ちょっど寄り道してもいい?」
「ん?あぁ。ライシェラ!ちょっと待って、コブンが寄り道したいって!チコリもいいか?」
「はい、構いません」
ライシェラが、引き返してくれる。
「どうした?」
「たぶん、ごっち」
僕は、ライシェラが作っていた道をそれて、草をかき分けながら進む。
やっぱりそうだ、ここで鳥に襲われて・・・。
あっちにレティが居て・・・。
あそこの先に・・・。
僕が外に出た時より、草もだいぶ茂っていて、わかりにくかったけど、漕ぐ様に進んだ先に洞窟があった。
「ここは?」
「僕の生まれた場所だと思う」
「・・・そっか」
ライシェラが、少し鼻を動かした後レティの方を見る。
「・・・レティシア」
「コブンはここで待ってろ」
そう言って、ライシェラとレティが洞窟の中へ入っていく。
僕は、周囲を見回す、草が生い茂っていて、一見わからなかったけど、近くに沢山花が咲いている場所があった、よく見ると土に手を入れられた跡があるので、畑だったのかもしれない。
花を片手で持てるくらい摘んで、洞窟まで戻る。
ちょうどレティとライシェラが出てきたところだった。
奥の深さまでは知らないけど、意外と深かったのかもしれない。
「コブン、中に入るか?」
少しだけど、レティの服から焦げたような臭いがした。
僕は首を振って。
「大丈夫、ここで」
洞窟の入り口に、摘んできた花を手向けて、顔も覚えていない兄弟たちに手を合わせた。
「皆ありがとう」
ライシェラに頭をポンポンっとされ、チコリは、いつの間にか摘んでいた花を手向けてくれた。
レティは最後にチラッと洞窟を見た後、じゃあ行くかって背中をバチっと叩かれた。
それから僕たちはまた、ライシェラが作っていた道に戻って歩き始める。
「・・・コブンさんの故郷だったの?」
少し進んだ時に、ビエラヤが聞いてきた。
「うん、あとレティに会っだ場所」
「あー、そうだっけ?」
「レティ忘れた?」
「いや!そうじゃないけど、アタイは魔力枯渇で意識朦朧としてたし、覚えてろって方が無理だろ?」
「そっが、そうだね」
「・・・」
そうして、僕は故郷って言うほどの思い入れのない、けど大切な人と出会えた場所に別れを告げた。
読んで頂きありがとうございました。




