古いドワーフ
短いですが、よろしくお願いします。
ワシは久々に頬が緩むのを感じていた。
昔に別れた友が、どこかで生きていたかも知れないと、わかったからだ。
もちろん、今も生きているかはわからんが、それは重要ではない。
どの道もう2度と出会うことはないのだ。
それでも流浪の身で、空の下で死んだのでは無く、何処ぞに住み着き、石と共に死んだのであれば、それで良いのだ。
我ら土から生まれたドワーフが、空の下で死ぬほど不幸なことも無い。
土に生まれた者は土に帰らねばならぬからな。
随分、昔の話だ。
それこそ、この坑道を塞ぐと決めた頃の話だ。
当時、友が作業していた坑道の天土を、掘り抜いてしまった。
その崩落で死者はでなかったが、全ての者が空を見てしまった。
ワシ等の国には、空を見た者は、空に魂を囚われるとして、追放する決まりがあった。
当然、ワシの友も含めた数十人のドワーフが2度と国に戻れぬ身となった。
その者たちがどうなったかは、ワシ等に知るすべはない。
だが、最近ではめっきり使われなくなった古いドワーフの言葉を話す者が現れた。
しかも言った言葉が。
「ラフィク・サラーマ・サィリム」
本来の発音とは少し違うが、ワシが友にかけた最後の言葉。
友の旅の無事を祈る言葉であり、友に旅の無事を知らせる言葉でもある。
ドワーフならば誰もが知っている昔話に出てくる言葉だし、必ずしも友と直接関係がある訳ではないのかもしれぬ。
だが、そんな事実を確かめるより、友が老い先短いワシに無事を知らせてくれたと思う方が良いじゃろう。
事故のあの時、本来坑道にいるべきはワシじゃった。
それが、深酒をしたワシを心配して友が変わってくれたのだ。
ずっと後悔しておった。
それが少しだが、勝手な思い込みかもしれんが、救われた気がしたのだ。
だから、ドワーフは旅のドワーフを助けるという、古い盟約の事は言い訳にすぎん。
さて、悪ガキどもを集めて叱ってやらねばな。
坑道を抜けたワシは、他に悪ガキどもの集まりそうな場所へ向かう。
ドワーフの口に壁は作れぬから、いずれ話は広まろうが、出来る限りの口止めもしてやろう。
それから、だいぶ時が過ぎたころ、ワシの家に城の兵士が来た。
事情を聞きたいとな。
ワシに出来るのはここまでじゃろうな。
そう思いながら城へ向かった。
読んで頂きありがとうございます。
レティシアさんと別れた後のドワーフ爺ちゃんのお話でした。




