王国騎士団・北方教導隊 その後3
よろしくお願いします。
風が、相手に流れていると言うことは、魔狼に騎上していたと仮定すると、匂いで気取られている可能性があるかも知れない。
しかも向こうもこちら側が視界に入ったから、隠れたのだとしたら、伏兵の可能性もある。
さらに、こちら側は相手の情報を何も持たないまま、近付いている。
頭の痛くなる状況だ。
・・・ワーグに草陰から奇襲されると、混乱に陥る可能性が高く、被害がより増えるだろう。
・・・ならば、如何するべきか。
「さっ参謀役どの!」
舌打ちしたい気持ちをグッと堪える。
まだ考えがまとまっていないのに・・・。
少し呼吸して、気持ちを切り替える。
目の良い奴が呼んだって事は、急いだほうがいい、出来ることをやっていくしかない。
小走りに駆け寄って訪ねる。
「どうした?何か見たか?」
「にっ二百歩ほどの距離に何かの陰です!」
「・・・近いな」
「ひっ!ごっごめんなさいぃ」
俺は馬上の奴の反応で、自分が顔をしかめてしまったのに気付く。
クソッ!自分を殴り飛ばしたい気持ちになるが、今はその時ではない。
「なにをあやまる!誇れ!いい働きをした!すまないが俺はこちらで指揮をとる。この馬で本隊に戻って隊長に報告しろ。あまり大声でするなよ、最後に俺が撤退を進言していたと伝えろ」
俺がごまかすために、無理やり笑顔を作り、そいつの尻をバシバシ叩いて口早に指示を出す。
「あっ!いた!って、えっ!?そっそんな?」
「いいから、行け!事は一刻を争う。状況が理解できない訳じゃないだろ?」
俺は喋りながら、馬を落ち着かせ向きを変えて、最後に頼むぞっと相棒の首筋を二回叩く。
別に、あいつが弱いからとか、自分の馬を少しでも安全な場所にとかそんな理由ではない。
必要かつ効率の為だ。
「よし、先行隊、歩調を緩めず清聴。150歩ほどの距離に敵が潜伏している可能性がある、向こうはこちらが気付いたことを知らないかもしれない。相手の奇襲に乗じて反撃する。狩猟班は弓の使用を一時許可する。しかし、俺の指示を待てよ。各員、警戒を密にして敵襲撃に備えろ」
そこからの一歩一歩がヤケに長く感じた。
100歩ほど進んだ所で、剣の柄に手をかけ、盾を持ち直す。
あと数歩で、相手の有効射程だろう。
もし相手がゴブリンで弓を持っていると仮定したら話だが、ゴブリンは背が小さいので、短弓等しか扱えないらしい。
さらに数歩進んだ所で、草がガサガサ揺れている。
わざわざこちらを警戒させようというのか?
「止まれ、抜剣」
腰下ほどの高さの草むらから現れたのは、
俺たちの、胸ほどの背丈の飛べない鳥だ。
それに追われるようにゴブリン達が5匹こちらに走ってく現れる。
「狩猟班、鳥を仕留めろ。ゴブリンには当てるな、各員ゴブリンを生け捕りにする。殴打のみで対応しろ」
そう言って、俺も剣を鞘に戻し、鞘を外して、鍔にかける革の紐で剣を封印する。
これは、簡単に抜剣できるが、ある程度鞘で殴っても鞘が外れたりはしない。
本来は儀礼等の際に、剣を封印するためのものだ。
ゴブリン5匹は簡単に捕らえる事が出来た。
練度も低く、10人程度で囲んで終わりだった。
鳥に関しても、狩猟班がすぐに仕留めた。
王国騎士団内では、飛び道具を軽視する風潮がある。
俺からすれば愚かな事だが、騎士は剣と盾で馬に乗って戦ってこそって考えだ。
当然、弓兵部隊もあるが、それは漏れなく平民からの募集と決まっている。
教導隊の狩猟班もこの隊では、数少ない平民だ。
その名の通り、食糧の現地調達の為の狩猟のみに用いることが暗黙の決まりになっている。
だが、俺のように被害を最小限に抑えようと考えれば、弓という武器の有用性を無視はできない。
だからこそ、隊長に頼んで狩猟班は俺の近くに置いている。
俺の任されている、先行隊は口が堅いのしかいないし、どちらかといえば癖が強くて他の隊員と馴染めなかった者が多い。
だから、弓をどう使おうと気にしていない。
だが、俺は隊長に報告する立場なので、敵に対しては弓をむやみには使えない、矢傷ってのは一目でわかる。
今回は鳥だったから、狩猟の一環です。で通ると判断した。
そんな事を考えている間に、ゴブリンは5匹縛り上げ、鳥の死体も近くに運んできた。
あの冒険者達みたいに、この場で捌くような事はできない。
あんなに手際よくは出来ないし、安全な場所でなければ血等の痕跡で、他の魔物を呼び寄せる危険もあるからだ。
すぐに本隊が合流してきた。
何故か涙目の目の良い奴が馬でこちら駆けてくるが、俺はそれを手で制し、後に続いていた隊長に、実行報告をする。
「ゴブリンを生け捕りにしたのか?」
「はい、このゴブリンは、遠くから騎乗していた者達とは別だと判断しました。生け捕ることで、別働隊ならば相手の規模を・・・」
その時、周囲が暗くなる。
太陽に雲がかかった時とは、全然暗さが違う。
空を見上げて言葉を失う。
巨大なワイバーンがゆっくりと俺たちの目の前に降り立つ。
先ほどの影の原因だ。
周囲にも何匹もワイバーンを従えている。
俺の想定を吹っ飛ばす、最悪の事態だ。
全身が紫の鱗で覆われたこの巨大なワイバーンは・・・。
「ヒュムの一団、これより先は我の塒がある。それ以上の侵入は敵対行動と見なす」
喋っただけなのに、まるで腹を殴られたようなズシンッと響く声だ。
緊張でブワッと汗が噴き出す。
グレートライオンの咆哮なんて目じゃない圧力だ。
そうだ、俺は閃くものがあり、何度も浅く呼吸を繰り返し、冷静な思考を呼び覚ます。
これは間違いない、超越種だ。
他の生物とは一線を画す生物の王だ。
俺は手工に仕込んであるナイフを取り出し、肩に刺す。
グレートライオンの時も一定以上の痛みで、極度の恐怖による緊張を緩和できた。
「・・・言葉も持たぬか、そのゴブリン達を置いて去れ」
「おっお待ちいただきたい!」
俺は嫌がる体に鞭打って、超越種の前に進み出る。
その視線がこちらに向くだけで、さらなる恐怖が襲ってくる。
俺はナイフを叩き、さらに痛みを引き出す。
「願わくは!交渉致したく存じます!!」
言った!言っちまったよ!俺、死にたいのか!?
ほっときゃ帰ったかもしれなかったじゃん!?
途端、周囲を飛び回っていた、ワイバーン達が俺たちを取り囲むように、ズシンズシンッと降りてくる。
出てきたワイバーンはクルトさんの方です。
大きなマンションサイズですね。
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