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起きたら地形が変わっていました。 前編

三日に一回とか目指してみましたが、無理でした。

そんなに早く書けませんでした。


 よろしくお願いします。

 僕は目を覚ました。

 まだ辺りは暗いけど、少しだけ青く色がつきはじめている。

 レティの腕がガッシリと、僕に巻き付いていた。

 僕は起こさないように、ゆっくりと腕を動かして、何とか抜け出す。

 そして、静かにハンモックからおりる。

 ・・・というより落ちた。

 しかも顔から。

 ちょっと痛い。


 良かった、ハンモックは少し揺れたけど、レティはまだ眠っている。

 背伸びして、僕が抜けた隙間に毛皮をかけ直す。

 レティが朝は寒いって言ってたからだ。

 僕は寒くないので、ゴブリンは感覚が鈍いのかもしれない。


 屋根代わりの大きな葉っぱから出ると、雨は上がっていた。

 名残は地面が少し湿ってるくらいだ。

 まだ辺りは真っ暗だが、僕は暗くても見えるので特に気にならない。

 でもあれ?寝る前は、もっと空が良く見えた気がしたんだけど

なんか広場が狭くなった気がする。

 少し不思議に思ったけど、そんな事よりも、キラキラの数がとても増えてる。

 近くのキラキラを見てみる。

 僕の顔位の大きな葉っぱの上に、一滴の水がキラキラしていた。


 僕が手を近づけると、小石みたく固まった。

 『森の朝露あさつゆ』と言うらしい。

 そんなのがあちこちにある。

 僕は夢中で採取する、昨日は採れなかった物が色々採れた。

 また、ボロボロの袋が膨らんできた。

 ちなみに、ボロボロの袋いっぱいに入っていた羽毛は、寝る前に毛皮の袋に入っていた布と合成すると、まくらになった。

 今はレティの頭の下だ。


 そんなことを思いながら採取を続けていると、ベチャッと足が水溜みずたまりを踏む。

 その近くのキラキラは、今までとは全然違っていた。

 触れる瞬間パァッと光った気がしたのだ。

 手に入ったのは、樹液の時みたいに何かの容器に入った液体だ。

 『幻獣の血』と言うらしい。

 血?

 そういえば、いつの間にか手が濡れている。


 僕は、暗くても周囲の形は見える。

 けどそれは、なんと言うか、白と黒みたいな見え方で、色はほとんどわからない。

 空を見上げる。

 あれ?こんな所に大きな壁なんてあったかな?

 ひらけた場所だったような?

 キラキラを探して、下ばかり見て走っていたから、気づかなかった。

 そう言えば、レティの寝ている場所ももう見えない。

 大きな壁の様だけど、もう少し進めば、なだらかになっている場所もあるみたいだ。

 なんか一晩で丘か小山でも、できたみたい。


 僕はキラキラを探しながら、壁と森の木々の間を進む。

 しばらく行くと、壁側に風が吹き出る穴を見つけた。

 穴は僕より全然大きくて、ゴーッ、ゴーッ、って風が吹き抜ける。

 なんだろう、穴があると入って見たくなるのは、僕がゴブリンだからなのかな?

 僕は、風の止まった時に、サッと穴の中に入ってみる。

 すると、グワァっと強い風が吹いて、あれ?って思っている内に、後ろの木にベチッてぶつかる。

 僕はたまらず、身をよじらせる。

 うぅ、背中が痛い。


 少しの間そうしていると、痛みがやわらいだ。

 はぁっと一人ため息を吐いて立ち上がる。

 そして、起き上がって穴の方を見る。

 その時、はじめて気づく、とても大きな顔だ。

 なぜわかったのか?

 吹き飛ばされて離れた事で、初めて全体が見えたのだ。

 風が吹く穴は、鼻だった。

 そして、僕を大きな黄色い目がジッと見ていたからだ。

 なぜか、どらごん?という言葉が浮かんだ。

 

 『なんだゴブリン?』


 『お、おはよう・・・ございます。お休み中、すみません』


 取り合えず、勝手に鼻の中に入った事を謝っておこう。

 レティにするように話しかけてしまい改めて声に出す。


 「ボバギョウゴ・・・」


 『耳障りだ、思念を飛ばせるならばそうしてくれ』


 声はすぐに遮られてしまった。


 『シネン?これ?』


 結構、離れてるのに伝わるんだろうか?


 『そうだ、それで伝わる』


 『じゃあ、改めて鼻の中に勝手に入って、ごめんなさい』


 僕は頭を下げる。


 『気にするな。・・・それにしても我の最後の話し相手がゴブリンとはな。フフッ』


 頭の中に響く声に合わせて、低いグルゥグルゥって音が聞こえる。


 『え?最後?』


 僕は気になった言葉を、尋ねていた。


 『あぁ、そうだ。もうすぐ我は死ぬ。ひどく凶暴な輩と戦ってしまってな』


 穏やかな声で答えてくれた。 


 『ケガしたの?・・・さっき血採れた。あなたの?』


 思い出して手を見てみれば、明るくなった僕の手は真っ赤に染まっていた。


 『そうかもしれぬ。我はエヌー・・・いや。我が名はティアム・マトナ・ターラッサ・エヌー・エッシュ。そなたは特別にターラと呼んでよい、我の最後を看取る者よ』


 ターラさんに最後を看取る者って言われて、胸をギュッて掴まれたような、気持ちになった。


 『ケガは治せないの?』


 だからなのか、そう訊ねずにはいれなかった。


 『無理だろう。先ほど血の事を言っていたが、すでに我がどの様な状態なのかもわからぬ。ねぐらに帰る事も出来ず、ここで力尽きたのだ。からだももう動かせぬ・・・』


 『そんな・・・』


 ターラさんの声は静かだったけど、僕はとても悲しくなった。


 『後はここで死を待つのみだ、この全身の痛みに耐えながらな。フフッ、だからかもしれぬな誰かと話したくなったのは・・・』


 気のせいかもしれないけど、ターラさんの声が少し小さくなった気がする。

 僕はそんなのダメだって思った。


 ボロボロの袋から、先ほどの血を取り出し、集中して調べる。

 色々なモノが次々と頭の中に浮かぶ。

 そのほとんどが、自分でもよくわからないモノだ。

 今までの木の実とかと違って浮かんでくるモノの数が多すぎる。

 思わずクラッとしてしまった。

 それでも、今は倒れてる場合じゃない。

 沢山浮かぶものから、『治せる方法、治せる方法』って探していく。


 『コブン、大丈夫か?鼻から血が出ているぞ』


 ターラが何か言った気がしたが、よくわからなかった。

 それよりも見つけた。

 『幻獣の血、幻獣の涙、幻獣の鱗、黄色い木の実、輝く石、虹色の花、巨木の葉』を合わせると『不思議な実』が出来る・・・気がした。

 凄い数が必要だけど、たぶんこれなら治るはず。


 『ターラ・・・さん、・・・涙と鱗、頂戴』


 『ターラでよい、今の我とコブンは対等な存在だ。しかし、鱗は好きにして良いが、涙など泣けと言われても困るな・・・』


 実は、他の素材は昨日と今日、森の中を歩き回った時に採れたモノだ。

 きっと探している時に、今作れるものを考えていたからだと思う。


 黄色い木の実は、レティが食べた果物の盛り合わせに使ったのと同じのだ。

 

 輝く石は、朝ハンモックから落ちた時、近くにキラキラがあって、そこから採れた石だ。

 ただの黒い石なんだけど、叩くと光る。

 

 虹色の花は、ハンモックを作ってから広場に来るまでの途中にあったキラキラで、元は赤い花だった。

 僕が触ると乾燥した状態で採れた、光に当てると色々な色になる。

 

 巨木の葉は、今朝採れた。

 キラキラの時は、ただの黄ばんだ落ち葉だった。

 今見てみると、葉っぱに9つの模様か文字みたいなのが、浮かび上がっている。


 僕は、袋の中の素材を確認しながら、ターラの方へ歩いていき、そんな事を思い出していた。


 『ありがとう、ターラ。大丈夫、キラキラ見えるから採れる。少し目を開けてて』


 ターラの顔の前まで来て、お礼を言って説明する。


 『ふむ?キラキラ?』


 『ごめんね、ちょっと顔に登るね』


 『ハハ、好きにしてよい。今さらゴブリンに登られたぐらいでは、何も感じたりはしない』


 僕は、謝ってからターラの顔によじ登り、目の近くのキラキラに触れる。

 小さな容器に入った『幻獣の涙』が採れた。


 僕はそのまま丘のようなターラの躰を這い回る。

 背中や翼などを駆けまわりキラキラを探す。

 いくつか、皮や爪などが取れる。

 しかし、なかなか望む鱗が採れない。


 『なっ!?待て待て!コブンその様なところにってコラ』


 ターラからくすぐったいのか、非難するような声が聞こえた気もしたが、それほど怒ってない様な気がしたので、キラキラに触れる。

 それは、真っ黒なターラの体の色と違って、光の加減で銀色に輝く鱗だった。


 『何という事を。コブンそれは、竜の力の源と・・・力が抜ける。ここまでか・・・』


 僕は七つの素材を合成する。

 今までで一番強い光が周囲を包む。

 眩しすぎて目を瞑ってしまった程だ。


 光が収まると、いつの間にか手の中に不思議な実があった。

 その実で、鱗が取れた場所に触れる。

 すると、実は溶け込む様に消える。


 「グルルゥギャァアァァー、グガガアァァ」

 『なっなんだ!?この激痛は!!焼ける!!?』


 ターラが急に暴れ始めた。

 僕は振り落とされて、地面に転がる。

 四つん這いになりながらも、なんとか森の中へ逃げ込み、木の後に隠れる。


 でも僕からしたら巨木でも、ターラからすれば、そうではないようで。

 ターラの尻尾の一振りで、周囲の木が全て薙ぎ払われる。

 横から木が倒れてきて、慌てて広場に戻る。

 後ろを振り返れば、僕が隠れていた木は、根っこごと、バキッと横に倒れている。

 もちろん倒れたのは、その1本だけじゃない。

 尻尾の一振りで、それまで森だった場所が倒木の山になっていた。

 ・・・あれかな、鱗取って怒っちゃたのかな。


 「グゥルガガァー!」


 ターラが一際、大きく叫ぶ。

 びりびりと体に響き、痺れる。


 『うっさいわー!』


 そしてレティの大きな声も頭に響く。

 でもそのおかげか、体の痺れる感覚が無くなった。

 レティはこんなに離れていても、思念を飛ばせるんだ。

 僕はレティが寝ていた方へ駆ける。

 早く逃げないと、危ない。

 すると思わず自分の目を、疑ってしまう光景が飛び込んでくる。

 朝日を背にして人が、いや、レティが飛んでいる。

 何もない空中に浮いている。


 すると、まるでそこに床でもあるかのように、グッと屈んで、次の瞬間消える。

 ズズゥンって音と共に地面が揺れる。

 ターラの尻尾が地面を叩いたんだ。

 そして、大きな体がよろめく。

 信じられないけど、レティがいつの間にかターラを殴りつけていた。

 そしてもっと信じられない事に、山の様に大きなターラがレティによってっている。

 アリに人が持ち上げられたと聞いて、信じられるだろうか?

 今の僕の目の前の光景は、まさにそれだった。

 読んで頂きありがとうございます。


 2017年8月15日に修正しました。

 今回は倍近い量になってしまったので、前編と後編に分けています。

 修正内容は、主に描写を細かくした事です。

 大筋は変わってないはずですが、消した文面も多く結構手を入れました。

 作者としては読みやすくなっていることを、切に願うばかりです。


 よろしくお願いします。

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