新天地、草原という場所。
ない脳を振り絞ってひねり出してる、本編と違い。
視点の違う話は、新しく考えることが少ないので、いくぶん書きやすいです。
はい、そうです。
筆が進んだことに対する言い訳です。
作者には毎日更新は基本的に無理です。
灰色から、逃げるように移動を始めたオラ達だったが、考えが甘かったとすぐに痛感する。
1000もの人を移動させるには、森は危険な場所すぎた。
隠れようがない大移動は、様々な獣にとって格好の餌だ。
毎日、数十人が居なくなった。
ついてこれなくなった者、襲われた者、理由は様々だが、どんどんその数は減っていった。
それに比例して、群れのオラに対する信頼が薄れていくのがヒシヒシと感じられた。
やっと、森を抜け草原に出た時には、その数は3割ほど減っていた。
だがついに、ついに来たか!そう思った。
これで、全てが良くなる。
そう信じていた。
だが違った。
森では食べるものに困る事はほとんどなかった。
木に様々な実や葉がなっている。
地面からはキノコや虫、何でもある。
腹が減れば採って食べればいい。
だが、草原には草しかない。
どこに食べられるものがあるのか、それを探すことから始めねばならない。
さらには、上から襲ってくる大きな鳥や竜から身を隠す場所もほとんどない。
またオラへの不信が募っていくのを感じた。
鳥への対処は、オラ達の緑の肌を活かして、草の濃い場所に隠れやり過ごす方法を見つけた。
食べ物は、草を食べ、時には乾いた木の根や、土を掘り返して虫を食べた。
しかし、草原にも危険な獣は沢山いたのだ。
これが最大の誤算だった。
森ほどではないが、少しづつ群れの数は減っていく。
安全な場所が必要だった。
そうして草原を何日も何日も彷徨い続けた。
また、同胞が減った。
じきオラに着いてくる者は居なくなる。
ここまでもったのは、弟が皆をまとめ、愚直にオラを信じてくれたからだ。
そんなある夜、オラは不思議な夢をみた。
光を背負った人が、オラの前に現れた。
その光は翼の様にも見えた。
光が眩しすぎて、姿はわからない。
目が覚めてオラは、確信した。
これで救われると、この窮地から抜け出せる。
オラは、皆を連れてその場所を目指す。
あった、あの村だ!
踊り出さんばかりの歓喜を何とか抑える。
しかし、それと同時に焦ってもいた。
お告げにあった夕方はもうすぐだ。
だからかもしれない、オラはすぐ村を攻める様に言った。
もちろん、勝てるのはわかっていた、お告げで住処が手に入ると言われたんだ。
それでも、いつもならよく相手を調べ、隙をついて事にあたっただろう。
森で相手を見た事が無いので、どの様な生き物なのかわからない。
だから、なおさら慎重になったはずだ。
だが実際は、夕日に後押しされるように、同胞が駆けだした。
最初は上手くいっていると思った。
簡単に柵を越え村に侵入する。
にわかに村が騒がしくなった様な気がするが、オラのいる場所までは届かない。
だが今更慌てたってもう遅い、何の抵抗もなくここまで近づけた。
後は一気に畳みかけるだけだ。
そう思っていた。
ところが、オラの居る場所の近くに、村の上空から何かが墜ちてくる。
それは恐ろしい速さだったのに、地面にぶつかった様な衝撃はなかった。
それの落ちた場所が騒がしい。
とても嫌な予感がする、あっちには弟がいる。
オラは急いで駆けだした。
現場に着くと弟が赤い奴に、抑え込まれている。
やばい!そう考えた時には、体が火の玉を投げつけていた。
当たった!そう思った。
森の中でも、この火の玉にまともに当たってひるまなかった奴はいない。
ところが、赤い奴は避けも防ぎもしない。
そして、腕から真っ黒な炎が吹き上がると、黒い炎の狼が現れる。
その熱と、全身がビリビリとしびれる様な感覚は、自分の隣に死が近づいている証拠だ。
周囲の視線が恐怖に濁り、オラに集まる。
オラはその時に理解する、こいつは群れのボスを探しているんだと、だから優しい弟がこいつを睨みつけているんだと。
オラは名乗って前に出る。
すると、赤い奴は黒い炎を消す。
それだけで、すぐ隣にいた死の神が遠ざかったのを感じる。
周囲から無意識だろう、ため息が聞こえた、もしかしたらオラの息だったかもしれない。
まだ死なない、その安心感がそうさせたのだ。
赤色がオラにこっちに来いと合図をする。
恐怖でいう事をきかない足を叱咤して、なんとか前に出る。
赤色が何か聞いてきた。
答えると、弟を放し、オラの首を掴んできた。
まともに回らない頭で、なんとか思いつく言葉を叫ぶ。
赤色が同胞を下げろと言ってきた。
もちろん、オラに逆らうつもりはない、言われたとおりに指示を出す。
そして、逃げろと言われた。
どこに逃げろというのか、今までだって彷徨い続けて、どこに行けばいいのかもわからない。
だが赤色は強い奴が来る、みたいなことを言った。
ミナミというのはわからなかったが、ここにじっとしていては強い奴に見つかってしまうようだ。
赤色は傍らの小さいのと何かよくわからない事を話した後、来た時のように飛び去った。
オラは周囲の重苦しい空気の中、群れを動かす準備をする。
傷つき戻って来た同胞を癒せるだけ癒し、意識を失った。
気が付くと明るくなっていた。
結局、群れに被害だけだし、住処を得られなかったことで、群れから抜ける者が少なからず出た。
残ったのは小さいのも入れて350ぐらいだろうか?
それでも300以上残ってくれたのは、弟が大きいのをまとめてくれたからだ。
オラは鼻のいい同胞を集めて、赤色の後を追う。
予感があったのだ。
あの赤色こそ、住処へ導く者だと。
日が真上に登った頃。
臭いを辿っていた者達が、様々な臭いに紛れてわからなくなったと言ってきた。
オラは少し速度を落としながら遠くに目を凝らす。
かなり遠くに、石の壁が見える。
そこにヒュム達が列を作っている、あそこに入ったのかもしれない。
オラは3人を偵察に出し、他の者達を草影に潜ませることにした。
ところが、この3人が敵を連れて戻って来た。
頭に角があり、大きなそいつは、素早く力も強かった。
小さい同胞では被害が増すばかりだ。
すぐに弟達で囲むように戦わせる。
しかし、オラの火の玉は避けられ、弟たちはたった1人のそいつに苦戦している。
オラはすぐに弟たちを癒す事に専念し、敵を疲れさせるように戦う事を指示する。
だが、こいつは恐ろしくタフだった。
傷をすぐに癒せるのはオラしかいない。
段々と回復が間に合わなくなり、弟たちも抑えきれなくなったころ。
さらにもう1人現れる。
もうダメだと思った。
しかし、そいつは角の敵と戦い始めた。
頭の上に大きな耳があるそいつは、弟と同じか小さいぐらいなのに、とても素早く、恐ろしく力も強かった。
オラ達が束になっても、押されていた相手に、余裕すら感じる戦いだった。
最初はその速さで、相手をほんろうする。
常に相手の死角に移動して、体に触れるのだ。
次に手四つで組合、力比べをする。
右手と左手を握り合い、ギリギリと押し込んでいく。
ここまで見せられれば、耳の方が手加減しているのがわかる。
角の方はその事に怒り、近くにいた同胞を投げつけようとする。
しかし、耳の方はそれを先回りして角の攻撃を受け止める。
そんなのを3回も見せられれば、頭の悪い同胞でも、耳の方がオラ達を守るために戦ってるんだとわかる。
そして、耳の方は様々な技を使い、投げ飛ばしたり、締め上げたりと戦いの幅がとにかく広い。
そのあまりの華麗な技に周囲はどんどん引き込まれる。
オラも、弟たちを癒しながらその圧倒的な強さと、美に心動かされる。
気付けば同胞の誰もが逃げる事も忘れ、耳の方は当然として、さっきまで襲ってきた角の方さえも応援していた。
昨日、赤色と一緒にいた、小さいのが薬を持ってきてくれた。
オラにまで使ってくれて、荒い呼吸に少し余裕ができた。
そして改めて、角と耳の戦いをみて気付いた。
耳の方は自分の動きを確かめているのだと、自分の体の動かし方や、力の強さ、出来る事と出来ない事、そういった諸々を確かめながら戦っていたのだ。
普通に考えれば、あり得ない話だが、オラも不思議な力を手に入れた時は色々な事を試した。
その時の感覚に似ている気がするのだ。
じゃあ、なぜそんな力の差がある闘いに、見せられるのか。
耳の圧倒的な強さに惹かれるのもあるだろう。
でも、最大の理由は、一方的では無いからだ。
耳の方が1発殴れば、次は角の方が殴る。
耳はかわせるはずなのに、あえて殴られるのだ。
角もこんな不利な状況、逃げ出せばいいのに死力を尽くして闘っているのは、きっと何か通じるモノがあるんだと思う。
闘いは角が膝を屈して終わった。
オラは、その歓声に乗じて進み出て、同胞に耳が新しいボスだと伝える。
同胞の歓声が一層大きくなる。
耳がオラを見て、街に近づくなと言った。
オラは、あなたがオラ達のボスになってくれるなら、どんな命令にも従うと伝えた。
新しいボスはうなずいてくれた。
オラは、自分の肩が軽くなった気がした。
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