冒険者ココナお嬢さま
すみません、レティシアさんと、コブンの出番がありません。
何回か他の人の視点のお話を書きたいと思っています。
今回は、作者的にあまり活躍させれ無かった。
ココナが、レティシアさんと出会う少し前までのお話です。
興味が無い方はスルーして頂いても、本編にはほぼ影響ありません。
それでは、もしよかったら、読んで頂ければ幸いです。
私は小さいときから何かに不自由した、という経験が無い。
もちろん、貴族の生まれということはある。
たしかに、欲しいと思うものは何でも手に入った。
しかしそれ以上に、何かに強く惹かれたことが無かったのだ、魔法に出会うまでは。
変わり者の父が気まぐれに招いた魔法使いは、王国の外れにある街から来た。
その男は、私達の前で花火の魔法を披露した。
今思えば、初級の火の魔法のアレンジだ。
ほんと、子供だまし。
魔法の才能がある人なら誰でも使える、そんな魔法だ。
ただし、魔法には属性の相性の様なものがあるため、火と相性が悪い人は使えない。
でも、そのお陰で魔法を知ることが出来た。
その流れ者の魔法使いには感謝している。
それから私は、様々な魔法の書物を集めて学んだ。
魔法使いの教師を招いたりもした。
しかし、それだけでは満足できずに、田舎街のハルシュレックの学園に入学した。
その街で私は運命の出会いをする。
それは入学間もない頃、市場にで買い物に出かけたときだ。
突如、街中に魔狼が現れたのだ。
ワーグというのは危険な魔物で、ベテランの冒険者でなくては1対1では戦えない相手だ。
街の警備隊では相手にならない。
そのワーグはとても大きく、四つ足の癖に私を見下ろす程だった。
当然、私も慌てて逃げようとしたが、それがいけなかったのか私の方に駆けだしてきたのだ。
あ、やばい!噛み付かれる。
私の頭を丸呑みできそうな口が迫る。
そう思ったときだった。
「騒がしいと思ったら、何で街中にこんなのが野放しなのよ?」
周囲がパニックな中、その声はどこまでも冷静で、場違いだった。
猛り狂うワーグの前に立ち、飛びかかってきた牙をかわし、首元に触れる。
それだけだった。
ワーグは動かなくなり、隣の屋台の果物を押し潰して横に倒れる。
「あぁ、オヤジさん悪いわね」
そう言って中指で軽くワーグの頭を弾くと、そこから体中にヒビが入り、ボフッと弾ける。
それは、とても細かい氷の粒になり、風で飛んでいってしまう。
周囲は大喝采だ。
「さすが、チコリちゃん!」
「ラティキエさんの娘だけあるわ」
「魔法ってのはすごいな!?」
「あなた、大丈夫?立てる?」
そう言って私の手を引いて立たせてくれた。
私より背は小さいのに、その手は力強かった。
その時、私がどんな返事をしたかは、覚えていない。
今思い出しても、嬉しさと、恥ずかしさで顔が熱くなる。
あの後色々調べてみたけど、チコリさんが使った魔法は、今でもよくわからない。
たぶん、上級魔法を複数使ったオリジナルだと思う。
後で知ったことだけど、チコリさんはたった1年で4年分の単位を取得して卒業したそうだ。
そりゃそうだろう。
学園のどの講師より優れている人が学生で居る意味はない。
学長は色々手を尽くして講師として、招こうとしたらしいけど、全てを断り今は冒険者用の道具屋を営んでいるそうだ。
彼女と接する機会があるとすれば、その道具屋に通うことと、実技試験で難しい依頼を受けることだ。
当然、私はそのお店へ通う事にした。
月の猫屋。
様々な薬の素材や薬品、冒険者が使いそうな道具や魔道具なんかも置いている。
魔道具は私でも、ホイホイ買える値段じゃないけど、商品の入れ替わりは早く、行くたびに新しい商品が置いてある。
でも、可愛い小物や綺麗な装飾品とかが置いているわけじゃないので、その店に入るという事は、冒険者として活動しているか、薬の調合ができるか、治療院に勤めている人など非常に限られる。
ちなみに、薬の調合には特殊な免許が必要なので、誰にでも売ってくれるわけではない。
治療院に勤めている場合は、そこの制服を着ている必要がある。
そのため普通の人が月の猫屋に入ると、冒険者として活動している事が前提になる場合が多い。
「いらっしゃいませ、あら?見ない顔ね?新人さん?」
「あの、えっと・・しん、じんですか?」
「あぁ、冒険者の人じゃないのね?ごめんなさいね。この店は冒険者関係の商品が多いから勘違いしたわ」
「あ!いえ!そんな!実は先日の御礼をしたいと思って、伺ったんです」
「御礼?何かあったかしら?」
「あの、ワーグが街の中で暴れた時・・・」
「あぁ、お礼なんていいのに、気にしないで偶々店の近くだっただけよ」
「えっと、これ少ないですが・・・」
「いらないわ、持って帰って。近所の人達からも受け取ってないのに、あなただけから受け取ったら面倒な事になるわ。悪いけど、気持ちだけ頂いておくわ」
「えっと、その・・・」
「それじゃ、早く帰った方がいいわよ。この店はガラの悪い冒険者も来るから、あなたみたいな子は関わらない方がいいわ」
「ぁ、その、はぃ・・・」
「もう来ないでね。変に絡まれても困るから」
ハンマーで頭をぶん殴られた様な気がした。
ろくにお礼も言えずに、年下の子に気遣われて追い出されたのだ。
もう来ないでね。その言葉を何度も反芻しながら、寮に戻った。
それから数日、1人の男子が入学してきた。
中途入学するということは、通常の入試より難しい試験に受かったということだ。
その人は、どこか不思議な魅力があった。
そして、常識が無かった。
入学して数日、冒険者になると言い始めた。
学園の生徒が冒険者になるのは、全くあり得ない事ではないが、入学したてでと言うのはあり得ない。
まだ、大した知識も技術も無い学生では、一般人と大差ないからだ。
当然、講師から最低でも2年になるまで待つように言われる。
しかしサトウ・イサムという中途入学生は、それでめげる様な人では無かった。
街中の危険では無い依頼を選び、ホントに冒険者をはじめたのだ。
もちろんすぐに私も参加した。
最初に冒険者ギルドへ行った時の緊張が今でも懐かしい。
イサムはバカだからずっとはしゃいでいたけど。
こうして、堂々と月の猫屋へ通う事が出来るようになったのだ。
月の猫屋は、10回行くと9回はチコリさんと会える。
しかし、たまに居るラティキエさんはとても危険だ。
あの人の目に見つめられるだけで、色々な事がどうでもよくなってしまうのだ。
頭の中に靄がかかって、思考力が低下する感じだ。
だから、話すときは決して目を見てはいけない。
「あらぁ?可愛い子ね。道に迷ったの?」
「ぃぇ・・・。ぁの・・チコリさんは?」
何回か冒険者ギルドへ出入りして、荒くれ者と言ってもおかしく無い人たちの世界を垣間見た私でも、ラティキエさんと話すときは緊張でまともに話せなくなる。
「あら、あの子なら買い出しよ。偶には店の外に出して息抜きさせないとね」
「ぁ!そっそれでは!失礼します!」
そう言って最初の時は逃げだした。
あれ以上話していると、危険な気がしたのだ。
次会った時は。
「あら、ココナちゃん。いらっしゃい、最近よく利用してくれてありがとうー」
「え!?あっあの、どっどうして、わっわた、私の名・・・」
「もちろん知ってるわ。最近ギルドの依頼頑張ってるみたいね。早く門の外でも活躍できればいいわね」
「あ!ギルドの人から・・・」
「えぇ、すっかり話題になってたわよ」
「ぃぇ、そんな・・・」
「あぁ!ごめんなさいね。、チコリはまだしばらく戻らないわ」
「あ、そうなんですね」
「・・・いつもチコリと仲良くしてくれてありがとう。あの子あまり年の近い知り合いがいなかったから喜んでたわ」
「え!?ぁ、そっそんな・・・」
たぶん、これはラティキエさんが気を使ってくれたのだ。
チコリさんが私に対して、お客さん以上の何かを感じているとは思えない。
それでも、舞い上がったけど。
だから、最後のラティキエさんの言葉はよく考えず聞き流してしまった。
「あぁ、ココナちゃんのお父さんにもよろしくね」
「あ、はい。・・・失礼します」
さすがに、学園でも一部の人しか知らない私の出自を、ラティキエさん知っているとは思えないので、たぶん社交辞令だと思う。
こうして、ラティキエさんとは、直ぐに打ち解けられたけど、チコリさんとは、こんな簡単では無かった。
「あら、いらっしゃい。そう、冒険者になったのね。頑張ってね」
こんな感じで、決して冷たくは無いけど、プライベートな話になりにくい感じだ。
なので、商品のことを色々と質問してみたりとか、親しくなる方々を模索中だ。
2年になる頃には、冒険者としてもまずまずの知名度を得ていた。
伊達にひたすら、用水路の掃除やゴミさらい等、街の何でも屋として頑張って来たわけでは無い。
私とイサムで始まったこのパーティーも、今では4人になり、装備も整ってきた。
さらに、地下水路の大ネズミ退治の時、一緒になったミネバという冒険者の人も依頼があれば一緒に行動してくれる。
そして、ついに門の外で初めての依頼を・・・っといきたかったが、私たちには一つ大きな欠点があった。
イサムはごみを集めて買った。ゴミの剣・・・じゃない、鉄の剣を武器に軽い革の鎧を着ている。
ちなみに、ゴミ集めの依頼しかしてない時から、真っ先にこれを買った。
最初に剣を下げて用水路のゴミ集めに来た時は、殴ろうかと思ったほどだ・・・いや、実際殴ったんだった。
そして、どこからかイサムが勧誘してきた、マシスとケシア。
双子の彼女たちは弓を使う。
その腕前は素晴らしく、百発百中とまではいかないが、狙ったところに当てれるだけでも私はすごいと思う。
実家が猟師をしていると言っていた。
彼女たちは実家から持ってきた弓と、猟の時着ているという、要所を革で補強した服を着ている。
最近依頼を手伝ってくれるようになった、ミネバさんは剣と盾を使う戦士だ。
革鎧を着て戦う様は、堂に入っていて付け焼刃のイサムとはえらい違いだ。
最も、イサムも暇さえあればミネバさんに剣を習っているみたいで、最近少しは様になってきた。
そして私は当然、魔法使い。
でも、チコリさんに憧れる私としては、魔法使いを名乗るのは恥ずかしいのだけれど。
魔法の発動を補助する、魔術師の杖と、ブランド店のアンジュリーナのローブを着ている。
残念ながら、アンジュリーナ本人のハンドメイドではない。
アンジュリーナとは私が、チコリさんの次に憧れる・・・これは長くなるので、またの機会にする。
とにかく私たちが外で活動するには、回復役を任せられる人がいないことが、大きな欠点だった。
もちろん、冒険者の多くが、必ず回復役を用意する訳ではないけど、その場合受けれる依頼の内容は限られる。
特に、ハルシュレックには教会が無いので、回復役は人気がある。
回復役というのは。
回復魔法を習得した魔術師。これは特殊な術者に師事する必要がある、残念ながらハルシュレックの学園には教えれる講師がいない。
治療の神秘を使える教会の神官。治療術との違いがいまいちわからないが、治療の神秘と言わないと彼らは怒るらしい。ハルシュレックには教会がないので彼らと出会う事が無い。
治療術を治めた僧院の僧侶。ハルシュレックで探すとしたら、基本的に彼らの事になる。その為とても人気がある。
精霊魔法を使えるエルフ。ハルシュレックでもたまに見かけることがあるらしいが、彼らが依頼に協力してくれるのは非常に稀。
祈祷師・・・占い師ならよく見かけるが、少なくとも私は出会った事が無い。
と、長くなったけど、手っ取り早く見つけるには、僧侶しか選択肢が無いのだ。
数日、イサムと僧院やギルドで募集してみたが、依頼を一緒に受けてくれる人は見つからなかった。
2年になってしばらくしてから、ギルドの紹介で依頼を一緒に受けてくれる僧侶にやっと出会う事が出来た。
名前はラポラ、今までにも1人であちこちのパーティーに参加しているらしい。
年齢はたぶん私達と同じぐらいだと思う。
ほんわかした雰囲気のおっとりした人だった。
私達が馬車で隣町の調査に行くと聞くと、なぜか驚いていた。
ついに私もチコリさんの様な魔術師になるチャンスが巡ってきたのだ。
出発前にチコリさんにその事を話すと。
「そう、外は危険も多いから気をつけてね」
「戻ってきたら、また買い物に来ますね」
「なら、このアイテムを特別にあげるわ。常客に死なれちゃ困るもの」
「これは?」
「使えば周囲に煙幕を出して1度だけ魔物から逃げることが出来るわ。すぐに煙りが充満するわけじゃ無いから、風が強い場所や、奇襲と空飛ぶ魔物には効果が薄いけどね。頑張ってね」
「ありがとうございます!」
まさか、依頼の村に着く前にそれを使うことになるとは思わなかったけど。
私達が来たおかげか、オーク達を追い払うことが出来たため、イサムとミネバさんが負傷したけど、最初の依頼は直ぐに解決することができた。
読んで頂きありがとうございます。
すみません、ゴブリンな作者があまり書いたことの無い、小説っぽいことを書くとこんな感じになってしまいました。
前の話でブクマが減ってしまったので、作者なりに猛省し、丁寧に書いてみたつもりです。
そこ求めてないよって意見もあるかと思いますが、もし楽しんで頂けたら、これに勝る喜びはありません。




