冒険者達と合流しました。
外で鳥が鳴いています。
誰がどう見ても朝です。
僕たちは荷物を持って、他の人達を追う。
ライシェラは、トカゲ達との連戦で、回復してない彼らの護衛をしてくれている。
幸い彼らはすぐに見つかった。
でも、ライシェラとラポラは、5匹の魔狼と対峙していた。
後にイサム達が居るため、踏み込めず、威嚇して、近寄れないようにしてるみたいだ。
ラポラは・・・、彼女なりに頑張って威嚇している。
イサム達は、諦めるように、うなだれて地面に座り込んでいる。戦える様子ではない。
「あなた達!武器を持ちなさい!冒険者ならば、死ぬその瞬間まで争いなさい!」
「・・チコリさん?ご無事だったんですね!?」
「今は目の前の敵に集中!話は後よ!」
「・・ですが」
「ミネバ!あなたがワーグの一匹を抑えるのよ。・・・ミネバ?聞いてるの?」
しかし、ミネバさんに反応はない。
ボーっと突っ立って、空を見つめている。
「毒でももらったの?」
「さっき、お前には失望したって、僕の胸に手をかざして、・・そしたら、ピンク・・、ピンクの玉みたいのが見えて・・。そう思ったら、突然、彼女から光が溢れて・・・そしたら、それから・・」
「あなた、天使に見限られたのね。もしくは、私達を警戒したのか。その脱力感はギフトを失った副作用みたいなものよ。・・・そう、ココナ達は魅了が解けて気が抜けてるのね」
「・・・えっと、それは?」
「いいから!まず武器を持つ!!ミネバが、使えないならアナタが気張りなさい。ほら!早く立て!!ココナ!魔力が枯渇しそうなら、瞑想して回復に努めなさい、そのくらい、習ってるはずよ!」
「はっはい」
「マシス!ケシア!ひらけた場所での、ワーグの機動力はとても危険よ。後ろに回られないよう牽制なさい!この勝負!あなた達2人にかかってるわよ!」
「・・やる」
「・・・了解」
「やれやれ、チコリはマジメだな。ライシェラ、補助してやってくれ、2匹くらいなら、倒してもいい」
「れてぃしあ、そのひつようは、ない。そのにひき、ひとみに、きょうふが、ある。もう、たたかえない」
そう言ってライシェラが、2匹のワーグを指さす。
その2匹は、チコリを見て戦意をなくしたみたいだ。
後退り、警戒しながら距離を取っている。
他のワーグも、流石に3匹では厳しいと思ったのか、後ろに下がりはじめる。
「なんだチコリ?ワーグに嫌われるようなことでもしたのか?」
「わかりません。・・心当たりはありませんが、この人数を恐れたのかも知れません」
ワーグ達は、ある程度距離を取った後、背を見せて走り去る。
最初に逃げた2匹のワーグは、後ろに振り向く一瞬、僕を見た気がした。
たぶん、気のせいだとは思うけど。
「あなた達!街に着くまでは、気を引き締めなさい。気持ちの整理はその後よ!野外では、帰り道こそ危険なものよ!」
「「「はい」」」
「装備を確認して、出発するわよ」
「ミッミネバは?」
彼女を見ると、ライシェラが、ヒョイッと肩に担ぎ上げる。
ミネバは女性だけど大柄で、革鎧を着て武装しているのに、全く重さを感じさせない。
「えっと、ライシェラさん、大丈夫?」
「?もんだい、ない。しゅっぱつ、できる」
それから僕たちは草原を進み、何とか街に戻れたのは、辺りが赤くなりはじめた頃だ。
ミネバや、荷物をココナの屋敷に送り届け彼らと別れる。
3人で1番近くの門から出て、少し歩いた時に、流れてくれる風を吸い込みながら、ライシェラが言った。
「たぶん、さっきのワーグが着いてきている」
「また、そのパターンか?なんだ、人数が減るの待ってたのか?なら、他のヒュムを襲うか?・・・はぁ、ほっときたいけど、ゴブリン達が喰われても目覚めが悪いしな」
『レティ、もしかしたら、知ってるワーグかも?』
「あれ?そうなの?じゃあ、行ってみるか。ライシェラどっちに居る?」
「こっ・・」
ライシェラが、指さした瞬間、僕たちを抱えて一気に飛び上がる。
すぐに、ワーグ達の目の前に降り立つ。
突然、目の前に現れた僕たちに、ワーグ達は後退り、唸って威嚇してくる。
僕はフードを外して前に出る。
すると、2匹のワーグが、チラッとレティとライシェラを見た後に前に出てくる。
やっぱり、見覚えがある。
不思議なことだけど、ゴブリンはワーグの表情や感情が、何となくわかるみたいだ。
僕が手をあげて、前に出ると頭を下げて撫でさせてくれた。
『森に帰ったんじゃなかったの?』
ワーグ達が悲しそうな顔をする。
『そっか、他の人達みたく、森から追い出されたのか』
いつの間にか他のワーグ達も地面に伏して、戦う意志はもうないみたいだ。
全部で8匹のワーグも連れて行くことになった。
3匹増えているのは、子供のワーグが居たためだ。
さっきはどこかに、隠れていたんだと思う。
彼女達の背中に乗せてもらって、焦げた大地に向かう。
そこに着くと、紫のワイバーンさんと、それよりずっと小さい竜がいた。
ワーグ達は最初、近づくのをためらったけど、僕が大丈夫だよって、背中を摩ると、紫のワイバーンさんの所まで連れて来てくれた。
「コブン殿、お待ちしておりました」
そう言って頭を下げる。
「オゾクナッデ、ゴメンナザイ」
「とんでもない、我々が早く着いただけです。それよりも、この飛竜を紹介させてください」
そう言って、5匹の飛竜を翼腕で示す。
その飛竜さんたちは、レティを乗せて飛べるくらい大きくて、ワイバーンさん達のように硬い鱗ではなく、殆どの部分が羽毛のような毛に覆われている。
「この者達は、我が父、クラーゲルトからの使者です。我々に連絡をつけたいときや、移動手段としてお使い下さい。御用の際はこの角笛を吹いて頂ければ、すぐに駆け付けます」
紹介された飛竜の一体が進み出て、頭を下げる。
その口に咥えられていた、角笛を渡してくれる。
「普段は交代で、コブン殿の近くに控えております。しかし、申し訳ないのですが、この者達は夜目が利きません。光の無い所では、行動が制限されます。それと、よく飛ぶ者を選んだため、言葉は理解しますが、喋ることはできません。ご不便を感じるかもしれませんが、ご容赦ください」
「アリガドウ、ゴザイマズ」
「礼には及びません。あと、ゴブリンたちの住処についてなのですが、彼らはどれほどの数でしょうか?あぁ、それとコブン殿の住処についても、もしよければ、お教えください。彼らの新居と近い方がなにかとよいですよね?」
僕は詳しい数がわからなかったので、ライシェラを見る。
ライシェラはキョトンと首をかしげた後、何か思いついたように、口に指を当て、ピーッと口笛を鳴らす。
黒い大地の端の草むらから、大きいゴブリンさん達を先頭に次々と出てくる。
そして、ある程度の距離で止まり、頭骨を被った元ボスのゴブリンさんだけ前に出る。
「なんだべ?ライシェラざま」
ライシェラが、僕の方をみる。
「ビナザンガ、ギンズウ、ボジゲデボジギ」
「ワジガガ、ザンビギヂングダイダ」
「ガゴワーグザンボ、ズムドゴダギ、ギッジョゴネガギデギグ?」
「オラダヂバ、モンダギネ、ダダライシェラザバジダイダ、ライシェラザバギルバジョ、オラダヂギルバジョダ」
何となく周りに着いていけない、って感じの空気が流れてる。
「レティ!」
少し離れたところで、木の実を食べていたレティを呼ぶ。
一瞬で跳んでくる。
「どうしたコブン?」
『元ボスさんが、ライシェラが居るところが、自分達の居る場所だってどうしよう?』
「ライシェラ、ゴブリン達は、ライシェラがいないと、どこも行きたくないとさ、どうする?」
「・・・わかった、じゃあ、ごぶりんたちと、すみか、つくる」
「そうかい。だってさ、コブン」
僕がうなずいて、紫ワイバーンさんを見ると。
「ふむ、状況はある程度、理解しました」
出てきた人達を見回しながら言った。
「1人、速く飛ぶ者をライシェラ殿用に、ご用意しましょう。そうすれば、コブン殿の住処と往復する事も容易なはずです。」
「ずいぶん気前がいいね?」
「レティシア殿、それだけ我が父が、エヌエシュ様を気にかけているとご理解下さい。ワタクシも一度お会いしただけですが、気高く美しい素晴らしい方です」
「そうかい、もしまた会えたら、よろしく伝えとくよ」
「おぉ!それは何にも勝る朗報です。よろしくお願い致します」
紫ワイバーンさんが、頭を下げる。
「そろそろ、日が沈みますね。それでは、我々は一度帰ります。明日には移動を始めれるよう、準備しておきます」
そうして、ワイバーンさん達が居なくなると、他の人達が、近づいてきた。
レティが、皆にこれまでの経緯を、説明してくれるらしい。
だからと、僕はまた厨房にこもることになった。
レティにお酒を与えないように、皆にお願いしておく。
毒トカゲの肉は、柔らかくて、毒の無い部位を少しだけ採っておいた。
あまり時間がなかったからだ。
チコリには討伐の証明のために、舌先を集めるように頼まれていた。
それは簡単に集まったし、もうラポラ達に渡してある。
でも、舌は根元が美味しい、何となくそんな気がしたのだ。
ちなみに毒トカゲは、毒を鼻の近くにある穴から出してるらしく、口内に毒は無かった。
今日の一品は、トカゲのタンシチューと、タンの炙り焼きネギのような草添えだ。
レティが、なんか難しいことを喋りはじめたっぽい。でも、ココまでは聞こえないし、今は鍋を振るっているから聞いてる余裕も無い。
ライシェラはスープの皿を持って、口に流し込んでいる。
熱くないのだろうか?
グワッと口をぬぐう仕草が男前だ。
牛の人は今日もいるのか・・・、他の人達の反応を見るに、用心棒のようなポジションに落ち着いたらしい。
ワーグ達はすぐに打ち解けた、今も宴会に飽きた、子供達の相手をしてくれている。やっぱりゴブリンってワーグと仲良くなりやすいのかもしれない。
でもおかげで、僕は休まる暇が無い、でも昨日ほどテンパっていないのは、慣れってヤツなんだろうか?
ちなみに、僕の作った物は他の人達にも人気があるみたいだ。
女の人に熱心に作り方を聞かれたりもした。お願いだから、そう言うのは、宴会が終わった後にして欲しい。
宴会も落ち着いた頃、厨房を抜け出して夜風に当たった。
いつの間にか隣にライシェラが座っていた。
「・・・ヨガッタノ?」
何となく、そんな言葉が出た。
「・・・ごぶりん、たち、きらいではない」
「・・ゾッカ、アリガドウ」
「こら!コブン!これを料理するのだぁ!」
そう言って現れたレティは、また酔っていた。
そして、手に持っているのは、何かの膜?
「美味しそうだから、引き剥がしちゃった!あはは」
・・・これは、いいんだろうか?でも今更、返せないし、もう傷は治したしな。
僕は受け取って、集中する。
『レティこれ、少しもらっていい?』
「えー?ダメー!」
僕はその素材で、酔い覚ましのスープを作る。
ちなみにその素材はプルップルで、口の中でとろける感じだった。
レティとライシェラに好評だった。
少し余った素材を、間違って袋の中に落としてしまった。
次の日、日の出の少し前に、僕たちはイサム達と合流するために、街に向かった。
読んで頂きありがとうございます。




