大っきなワイバーンと会いました。
読んで頂き、ありがとうございます。
チコリめがけて、大きいワイバーンが襲いかかる。
大きな翼腕を前に突き出し、押し潰そうと迫った。
チコリはその腕に氷の槍を飛ばす。
しかし、硬い青紫の鱗に阻まれ槍は砕け散る。
チコリは横に飛び退き、なんとかその一撃をかわす。
大きいワイバーンは、翼を畳むと腕の所だけ青紫色だ。
「待ちなさいよ!気が早いわね。あなた達、探し物をしてるって言ってたわね?協力するわ!」
「その答えも簡単だ。ヒュムに手伝ってもらう必要はない」
「あら?それは私の方が、はやく見つけられるから、かしら?」
「・・・なんだと?」
「私の方が小さくて、細かな場所まで探せるもの。そうは思わない?」
「・・・そうは思わない!我々がヒュムより劣る所があるなど!ありえない!それが答えだ!!」
そう言って、ガガガガッと音を鳴らす。
すると喉元が、紫色に輝く。
吐き出されたのは、雷のブレスだ。
辺りがバリバリバリッて音と光に包まれる。
視界が戻ったとき、チコリは立っていた。
しかし、強烈なブレスに押し出されたのか、地面には足を引きずった様な跡が残っている。
チコリの手には、今日の朝から背中に背負っていた、大きな杖が握られていた。
それを地面にトンッと突き立てる。
「その話している合間に、ちょいちょい攻撃してくるのは、なんなのよ?最後まで話を聞きなさいよ。じゃあ、勝負しましょ!その探し物をどちらが先に見つけるかよ!」
「・・・いいだろう、受けてやろう。だが、飛べぬヒュムでは、勝負になるまい?」
「そんな心配は無用よ!それより、探し物の詳細を教えなさいよ!」
「・・・昨夜、この辺りにドラゴンが、現れたはずだ。その方を探している、何か手がかりでもいいのだがな」
「なによそれ?何でそんなことわかるのよ?」
「その方の魔力の残滓を感じたからだ。その場にも行ってきた。その大地は黒く焦げていたが、あの方の痕跡を確かに感じた」
「・・・そういえば、街中で新しい超越種が出たって噂があったわね」
「・・・なんだと?それは・・」
チコリとワイバーンが話し始めた後ろに、巨大なものが墜ちてくる。
雷のワイバーンの3倍はある。
あまりに大きな体が墜ちたために、地面が激しく揺れたほどだ。
「ハーッハッハッハッ!どうした!そんな図体してんだ!!まだまだこれからだろ!?」
そして、上機嫌のレティがその上に降りてくる。
「父上!?おのれ!下等な虫が!!」
4匹のワイバーンが、レティに向かって飛び上がる。
「なんだい。チコリとは飽きて、アタイと遊びたいのかい?いいよ、遊ぼうか!」
レティが両手から炎を出して、また飛び上がる。
僕はチコリに駆け寄る。
チコリはさっきまでと違って、体を杖で支えて息を切らせている。
「チコリ、ダイジォブ?」
「はぁ、はぁ、なんとか、時間稼ぎは、はぁ、出来た、みたいね。私の、力では、ワイバーン、4匹は、無理だもの。炎の、ブレスなら、余裕、あったけど、雷は、きつかった、わ。虚勢が、やっとよ」
僕は野良グレープを使って魔力も回復できる薬を作る。
それをチコリに渡す。
「やめよ、エヌエシュ様は、その魔女に屠られたようだ、もう戦う意味などないのだ」
空気がビリビリと震えて、体が強張る様な声は、たぶん墜ちてきた、とても大っきワイバーンのものだと思う。
レティの周りを飛んで戦っていた4匹のワイバーンの攻撃が止まる。
「だから!そのエヌなんたらなんて、知らないって言ってるだろ!?」
「微かだが、確かにお主の体から、あの方の魔力を感じる。この期に及んで虚言を弄する必要はない。我は、我はただ一目、老いて死ぬ前に、あの方にお会いしたかった。・・・ただそれだけなのだ」
「超越種がそんな簡単に、くたばる訳ないだろ」
エヌエシュ?・・・なんとなく似てる。
「アナタの合成は、ほんと強力ね。あの状態から、薬1つで回復とか、ある意味恐怖よ」
「レティ!レディ!」
僕は声を出して呼びかけるが、ずっと高い所にいるので声が届かない。
「どうしたの?」
「チコリ、レティノ、トゴロマデ、ドベル?」
「え!?えぇ、魔力も戻ったし、行けるとは思うけど・・」
「オネガイ!ヅレデッテ」
「・・・はぁ、しょうがないわね」
「・・・それで?やる気がないなら、アタイらは帰るけど?」
「無論だ。こんな老体に、これ以上戦う力はない」
「ふーん、じゃあな」
レティが、背を向けると、4匹のワイバーンが、一斉に襲いかかる。
「じゃが、こうも思うのだ。森の縛めより抜け出した、我の敬愛する、エヌエシュ様を害したゴミを、みすみす逃しても良いものかとな!!例え我が滅びようと!生かしては帰さぬ!!」
巨大なワイバーンが、倒れていた上体を起こし、大きく仰け反る。
ガーンガーンガーンっと、巨大な鐘の音がどこからともなく響く。
レティは、巨大なワイバーンに向かおうとするが、4匹のワイバーンが捨て身で阻止する。
巨大なワイバーンの喉元が、真っ白に輝き始める。
肌が粟立つ、とても良くない感じだ。
レティの所まで、間に合いそうにない。
僕は、ナイフを取り出し、自分の服の袖を切る。
それと、炭のように黒く固まった爪を取り出し、合成する。
「チコリ!ゴレニ、マリョグ、コメデ!イヂバンハデナ、マホウ、ツガッデ!」
チコリは、何も言わずに受け取り、呪文を唱え出す。
途端に、周囲の空気が青く輝き始め凍り出す。
チコリからボッと冷気が吹き出したかと思うと、手から氷雪が吹き出す。
それは、すぐにドラゴンの形になる。
昨日のレティの時ほど大きくは無いけど、ターラに似てる。
そのドラゴンは、レティ達の方まで昇っていく。
そして周囲を凍らせ、粒子となって消える。
「おぉ、これは!?エヌエシュ様の魔力?」
鐘の音は止んでいた。
チコリは力を使いすぎたのか、地面に降りて、また肩で息をしている。
「チコリの魔法か?どういう事だ?」
そこに、レティが降りてきた。
ワイバーン達は呆然と周囲に散らばる雪を見回している。
『レティ、たぶんエヌエシュってターラの事。昨日の花火の魔法を、追ってきたんだと思う』
「え?あれ?そうなの?」
「魔女よ。どういう事だ?今の魔法はなんだ?エヌエシュ様から奪った力か?」
4匹のワイバーンが降りてきて、巨大なワイバーンを護るように構える。
「ちがうさ。ターラッサとは、やり合ったこともあるけどな、今はコブンの友達だし・・・」
「まさか!なぜその名を知っている!?友だと!?ヒュムとあの方が?」
「ちがう、コブンはゴブリンだ」
僕は、フードを外し、前に出て頭を下げる。
「ありえん!!また虚言を弄するか!!」
「ホントの事だ」
「生きる時が違い過ぎる。お主とて、虫と友となったと言われて、信じられようか?」
僕はいつも首から下げている、ターラから貰った御守りを取り出す。
「ゴレ、モラッダ、オマモリ」
「・・・なんだ?それは?・・・!!」
ジッと見つめ、突然、巨大なワイバーンが頭を垂れ、4匹のワイバーンがそれにならう。
「知らぬ事とはいえ、エヌエシュ様と、親しい方に牙を向けてしまった事、深くお詫び致します」
「なんだ?突然?」
「コブン殿、この無礼をお許し頂けるならば、どの様なことも致します。何か我々に出来ることは御座いますか?」
「ナンモ・・・ア!」
その時とても、いい案が浮かんだ。
『レティ、草原で会った人達のことお願いしてもいいかな?』
レティがグッと親指を立てる。
僕は巨大なワイバーンさんの頭に近づく。
一瞬、3匹のワイバーンさんが動こうとしたけど、大きなワイバーンさんが翼を広げて止める。
僕は巨大なワイバーンさんの鼻先に触れる。
『ワイバーンさん、聞こえますか?』
『はい、聞こえます。コブン殿は、思念を使われるのですね』
『ごめんなさい、僕の言葉が聞き取りにくいって、よく言われるから』
『いえ、大丈夫です。お気遣い頂き、ありがとうございます。我々竜種もホントは、こちらの方が話しやすいのです。ただ、ヒュム等に劣ると、思われるのも癪なので、無理をしているんです』
『実は、ワイバーンさんにお願いがあって』
『なんでしょう?』
『あ、でもその前に右の翼を、出してください』
『・・・お気づきでしたか、お恥ずかしい』
そう言うと、右の翼を前に出してくれる。
僕は鼻先に触れているので、腕のカーテンで覆い隠すような状態だ。
そのカーテンは所々黒く焦げて、裂けたり大きく穴が開いている場所まである。
『僕こそ、レティがごめんなさい』
僕は今作れる、一番強い回復薬を作る。
それを翼の傷に振りかけていく。
『おぉ!?ありがとうございます。もう痛みもありません』
そう言って、翼を広げたり、たたんだりする。
『よかった』
『ワタクシは、リンヴルム・クラーゲルトと申します。エヌエシュ様はよく、クルトと呼んで下さいました。ぜひその様にお呼びください』
クルトさんの思念の声は、今までと違い、とても穏やかで優しい感じだった。
老体なんて言っていたけど、とてもそんな風には聞こえない。
『はい、クルトさん。じつは、知り合いの、ゴブリンの人達が、新しい住処を探していて。できれば、クルトさんに、彼らが住めそうな場所を、紹介してもらえないかと、思うんです』
『・・・なるほど、わかりました。お任せください』
『ありがとうございます!』
『お礼など、やめて下さい。では、今から参りますか?どうぞ我らの背をお使いください』
『あ、実はヒュムの人達と、行かないといけないところがあって』
『なるほど、わかりました。ではその間に、その場所を探しておきます。後ほど連絡をつけるための、使いの者を送ります』
『今日の夕方ごろには、紫のワイバーンさんが言っていた、黒く焦げた場所に居ると思います』
『わかりました』
僕はクルトさんから離れてレティの方に戻る。
「話はついたのかい?」
僕がレティに返事をする前に、クルトさんと、他のワイバーンさん達が翼を広げる。
飛び立つ前に、軽く目礼してくれた。
「サガシデ、クレルッテ」
「そうかい、じゃあ帰るか」
「チコリ、ダイジョブ?」
「えぇ、だいぶ、落ち着いて来たわ。にしても、どういうこと?」
「ボグノ、トモダチト、シリガイダッタノ」
「余計に意味がわからないわよ!」
「コブン!?アタイのトカゲが!トカゲのお肉が!?食べ散らかされてるぞ!!」
「・・あー、えっと、それは」
チコリが、動揺して視線を彷徨わせる。
「レティ、オイジソウナ、バショ。モウ、トッデアル」
「えっ!?」
チコリが振り返る。
「あ、そうなの?」
「ドグアルカラ、タベルバショ、スグナイ」
「あー、そっか、確かにな。さて、ライシェラは、どこまで逃がしたか」
チコリが屈んで、小声で聞いてくる。
「コブン、いつの間に、お肉なんて取っておいたの?」
「チコリガ、トカゲノ、シタサキ、アツメデ、イッタドキ、ツイデニ」
「そう、ありがとう。今のは、ワイバーンの雷ブレスより、焦ったわ」
次の更新は、登場人物の整理も含めて、紹介などしたいと思っております。
コブンが興味を持たないところを、少し書いてみようと思います。
ただ、今まで読んで下さった、皆様のイメージを崩す恐れもあるので、スルーして頂いても、何ら問題はございません。
よろしくお願いいたします。




