毒トカゲを退治に行きます。
あぁ、もう夜が明けてしまう。
次の日、レティは他の人達に、この黒く焦げた場所から、離れるように言っていた。
地面が露出しているので、ゴブリンの緑の肌が目立つからだと思う。
僕たちは門を飛び越え、昨日別れた屋敷に向かう。
街は昨日より、どこか緊張した雰囲気があった。
昨日の夜に、新しい超越種が現れたそうだ。
・・・そうなんだ。
屋敷に着くと、少し待つように言われ、一室に通される。
レティは、まだ時間がかかるなら、持っていく荷物を預かると言った。
今日は馬車では無くて、歩いて移動する予定だからだ。
僕たちが持っている背嚢や背負子に、荷物を入れないといけない。
冒険者の人達が持つのは、武器や防具と、戦闘に必要な道具や消耗品だ。
その他の必要な物が僕らの担当だけど、待っている間に沢山の物が運ばれてきた。
鍋やロープ等に始まり、簡易テント等大型のものまで、ずいぶんある。
レティは、それらを見てポイポイッと選り分けていく。
半分以下になった。
それらを3つに分ける。
レティとライシェラは、万が一の時に戦う可能性があるので、少なめに。荷物持ちのメインは僕だ。
戦いには参加できないから、これ位はってレティに言った。
それに、レティと契約した影響か、僕は子供の割に体力や、持久力があるみたいで、荷物を運ぶのは得意だ。
そうして、準備が終わった頃、チコリがきた。
「おはようございます。レティシア様、ライシェラさん、コブン・・。ってなんですか!?この荷物は」
「あぁ、いらないのは避けといた。アイツら迷宮か何かに潜る気なのか?」
「ホントにアホなのか、もしくは、嫌がらせなのかも知れません。ここまで愚かとは・・・」
レティが壁をコンコンっと叩いた後、呪文を唱える。
すると廊下の足音や、窓の外でさえずる鳥たちの声が聞こえなくなる。
「それよりチコリ、昨日、教会の魔女狩りが来たぞ」
「え!?この街にですか?」
「たぶん、パーティの中に天使と加護かギフト持ちがいる」
「・・・なら、イサムが魅了か何かを、持っているかも知れません。あまり強くないのでわかりませんが、屋敷の女達がずいぶん騒いでいました」
「まぁ、その程度の魅了なら、大したギフトじゃないな。深く関わる気も無いし、アタイから何かはしないが、ラティキエの土産にでもするか?」
「・・・私からも特には。もう母も一時期ほど熱心に、略奪を集めているわけでは無いので。それより、魔女狩りの事を聞いてもいいですか?」
「たぶん、ソロの近接特化型だな。アタイの障壁を砕いていたから、それ系の加護持ちだろ。チコリといい勝負しそうな感じだな」
「うげ、なら出会わないよう気をつけま・・・」
僕が、荷物を詰めながら、そんな話を聞き流していると、コンコンコンっとドアが叩かれる。
途端に外の音が戻ってくる。
「レティキエさん、おはようございます。入ってもいいですか?」
たぶん、ラポラの声だ。
「開いてるよ」
「おはようございます。皆さんってこの荷物はなんですか!?」
「・・・その反応はもうやったわよ。それより、準備は出来たの?」
「あ、はい!もう出発できるみたいです」
「じゃあ、トカゲに会いに行くか」
街から、さらに1日ほど進むと、王都があるらしい。
でも、今日はそこまで行かずに、街道を逸れて進む。
街を出て歩き始めて約半日、ゴツゴツした岩が転がっている場所に出た。
茶色い地面が露出していて、それに同化するように茶色い大きなトカゲが何匹もいる。
奥を見ると、水が湧き出していて、ちょっとした池の様になっている。
依頼主は、あの水を街道の中継地に、利用したいそうだ。
そのため、邪魔で危険なトカゲの駆除が、依頼されたらしい。
なぜ近い王都では無く、ハルシュレックで依頼したのかには、利権だなんだって、ヒュムの難しい事情が絡んでるらしい。
ラポラが、色々説明してくれてたけど、よくわからなかった。
レティは、近くの見通しの良い岩の上に陣取ると、あぐらをかいて、観戦モードだ。
チコリもそれに習うように岩の上で、両手を組んでいる。
ライシェラと僕は、近くの大きい木の上に避難した。
まぁ、ライシェラは木の実が、食べたかっただけかも知れない。
僕は背負子を木の上でおろして幹に軽く縛り付ける。
キラキラではないけど、木の上で、まとまって色付いている実を採ってライシェラに投げる。
僕も自分の分を採って食べてみる。
少し酸味があるけど、甘い木の実だ。
すると強い視線を感じる。
もちろんレティからだ、僕は1番美味しそうなのを2つ採ってレティに投げる。
片方はチコリにって指さすが、もう木の実しか見ちゃいない。
たまたまこちらを見たチコリに、近くにある色がよさげなのを採って投げる。
受け取った表情は、ホントあんたは緊張感無いのね、って感じだろうか?
その時、レティが僕を睨んできた。
そんな目で見たってキラキラじゃないんだから、そこまで美味しくないのはしょうがないじゃない。
良い訳じゃないけど、色の良い美味しそうなのを、もう何個かレティに投げた。
僕らがそんなやりとりをしてる横では、戦いが始まった。
前衛のイサムとミネバが、先に前に出る。
トカゲは横になっている状態で、イサム達と同じぐらいの高さだ。
そんな大きなトカゲは肌が硬いようで、2人の武器はあまり効いていないみたいだ。
でも、双子の弓使いマシスとケシアが、息の合ったサポートで、トカゲの目や喉などの硬くない場所を攻撃する。
怒ったトカゲは、毒液を吹き出して反撃するも、ラポラがすぐに癒していく。
そして、とどめはココナの魔法だ。
そうやって順調に倒していった。
・・・のは最初の3匹位まで。
うまく岩陰に誘い出して、戦っていたけれど、巣の横で騒いでいたら、誰だって様子を見に来る。
2匹のトカゲと同時に戦うことになり、イサムとミネバが1匹ずつ受け持つ形で、何とか連携を持続させる。
しかし、数が増えるということは、当然ダメージも増えるので、ラポラの手が回らなくなりはじめる。
さらには、トカゲを引きつける人が減った分、トカゲは弓の双子にも攻撃するようになる。
双子もかわしながら戦うが、その分、弓を射る機会が減り戦闘が長引く。
色々ぎりぎりっぽいけど、ほっといていいのだろうか?
レティを見てみると、あくびをしている。
ライシェラはそもそも興味がないらしく、見ていない。
チコリは頭に手をやって、首を振っている。あぁーあって感じだろうか?
最近少しヒュムの表情が、わかるようになってきたかもしれない?チコリがわかりやすいだけかな?
って、やっと1匹倒したけど、さらに2匹増えて、3匹を相手にしている。
巣穴の奥はわからないけど、見えるだけであと3匹はいる。
ココナも魔法を、無理して連発しているのか、息が上がっている。
これは、無理なんじゃないだろうか?
イサムが2匹を相手にしようとしたが、全然無理そうだ。
あ、イサムのとこの1匹が、双子の方に行った。
横からの体当たりをまともに受けて、一人が気絶したっぽい。
ちなみにどっちかはわからない、双子って見分けがつかないんだ。ケシアかな?
「マシス!クソ!」
違ったっぽい。そこでチコリが動いた。
「あなたたち、ホントにオークを退けたの?」
言いながら、マシスを気絶させたトカゲの横に飛び降り、触れる。
それだけでトカゲは動かなくなる。だんだん体が白く凍り付く。
「まぁ、それはどうでもいいけど・・・。まず巣を襲うのよ?複数を同時に相手にするのは当然でしょ?そのことを想定しないでどうするの?」
そう言いながら、イサムの剣に嚙みついていたトカゲに、氷の槍を飛ばす。
槍はトカゲの頭に突き刺さり、剣を放してドサッと崩れ落ちる。
「イサム、早くミネバをフォローして立て直しなさい。あと4匹きっちり片しなさい」
「クックソ!」
気絶したマシスも、ラポラのおかげで戦線に復帰した。
「まずは、お礼でしょうよ。まぁいいけど」
チコリがまた岩の上に戻る。
「なんだ?手貸しちゃったの?」
レティがニヤニヤしながら聞く。
「はい、一応彼らの安全も仕事の内なので」
「まじめだねぇ、チコリは」
そこからは、なんとか立て直し、残り4匹を倒した。
みんな肩で息をしているが、もう一匹ぐらいならいけそうだ。
そう思ったのが、よくなかったのかもしれない。
巣穴の奥から今までのトカゲより倍ぐらいありそうな、大トカゲが出てくる。
「チコリ!」
レティが少しあせったような声で、呼びかけた。
「わかっています!あなた達!すぐに逃げなさい!危険よ!!」
「大丈夫ですよチコリさん!さっきは不覚を取りましたが、もう一匹ぐらい行けます!」
「何を愚かな事を!監督役の私が危険だと判断したのよ!はやく逃げなさい!!」
「みんな、さっきのミスを取り返そう!行くぞ」
そう言って、イサムが大トカゲに駆けだす。
「愚かな!!」
チコリもあわてて後を追おうとする。
イサムの攻撃が大トカゲに当たる直前、辺りが暗くなる。
次の瞬間、大トカゲは、体を掴みあげられ、上空に投げられる。
大トカゲよりさらに巨大な何かが2匹、左右から大トカゲを掴んで、引きちぎり口に咥える。
真下に居たイサムに、トカゲの残りが降り注ぎ赤く染める。
イサムはそれを呆然と見つめていたが、生暖かいそれに、我に返り後ずさる。
「ヒッヒィ」
最初に大トカゲを投げ上げた1匹が、イサムの前に降り立ち、ググッと頭を引くとカッカッと音を鳴らす。すると喉元が赤く輝く。
やばいそう思った瞬間にはそれが放たれる。
火炎のブレスだ。
イサムにそれがあたる直前に、ミネバが前に出て、盾を構える。
盾は光り輝き、炎を左右に割った。
そんなミネバの背中にはうっすら光の翼が生えていた。
ブレスが終わると、ミネバとイサムを囲むように左右から、大トカゲを咥えた2匹が降り立つ。
2匹は頭をいったん上にあげ、咥えているモノの向きを整え、丸呑みにしてしまう。
「ワイバーンが、なぜこんな場所に!?」
「その答えは簡単だ。天使を宿すメスよ」
そう言ったのは、すでに降り立った3匹とは別の、さらに一回り大きなワイバーンだ。
それがゆったりとブレスを吐いたワイバーンの後ろに降り立つ。
「探し物だよ」
「なぜ我々を襲う!?」
「あぁ、その答えも簡単だ。若いのはただ食事をしただけだ。丸々太ったトカゲを見かけたのでね」
「ならば!もう用はないな!?」
「クックック」
グッグッグっと4匹のワイバーンが喉を鳴らす、笑っているのかもしれない。
「その答えも簡単だ。食べたのは2人だけだ、数が合わないと思わないか?俺は思うよ?」
最初に降りた3匹がカッカッと喉を鳴らし始める。
「何を遊んでいるの!?早く逃げなさい!死にたいの?」
3匹のワイバーンのブレスをチコリの障壁が阻む。
「こっこしが・・」
イサムが引きつった声で答える。
「ラポラ!ココナ!ミネバとイサムに肩を貸して!少しでも遠くに逃げなさい!」
「えっ!?ケシアとマシスは?」
ラポラが今更、周囲を見回している。
僕はチコリに頼まれた事を終えて、木の上に戻る。
「とっくに逃げたわよ!当然でしょ!!もたもたしないで!早くなさい!!」
「あっ!はっはい!!」
「おや?食事の邪魔をするなんて、ひどいじゃないか?」
「後ろに私たちが、倒したトカゲがあるわ。あなた達に提供するから見逃して欲しいの」
「なるほど、なるほど」
大きいワイバーンが頭をクイッと示すと、3匹が岩陰のトカゲを取りに行く。
翼の前足を折りたたんで地面に着き、走り方はゴリラに似ているかもしれない。
3本の指でトカゲをガッチリと掴み、大きいワイバーンの方に投げる。
「その答えも簡単だ。落ちているトカゲの死体をどうするかは自由だ。ヒュムを見逃す理由にはならない。そう思わないか?」
度々ゴリラが出てきますが、作者はゴリラが好きです。
ワイバーン・ドラゴン。
様々な資料があり、皆様のイメージも様々だと思うのですが、作者の中では。
前足が翼状のモノをワイバーン。
前足と背中の翼が両方存在するものを、ドラゴンと区別しています。
読んで頂きありがとうございます。




