白い服の人と会いました。
すみません、遅くなりました。
次の日、朝早くに広場に集まった。
ちなみに昨日は一番安い宿に泊まった。
魚は塩焼きに、鳥は宿屋で売ってもらった野菜と、ローストにして3人でガツガツ食べた。
合流して挨拶を済ませ、すぐに出発した。
昨日は少しもめたけど、特に雰囲気が変わったわけではなかった。
僕が外でキラキラを採るのも、止められたリはしなかった。
ラポラは昨日の食材が美味しかったと、レティやライシェラにお礼を言っていた。
村長さんの奥さんに調理してもらったそうだ。
食事の後、散々せめてもう2~3日ゆっくりしてくれと、頼まれたらしい。
村も襲われたばかりで不安なんだと思う。と言っていた。
ちなみに、ラポラはゆっくりしようと言ったが、イサム達が頷かなかったそうだ。
今日は、昨日の雨が嘘のように、雲1つ無い天気で、草原の草木も生き生きして見える。
その日は特に何事も無く、昼を少し過ぎたぐらいに次の街に着いた。
その街は、立派な壁に囲まれていて、大きな門があった。
門では、色々調べるみたいだ。
警戒の人も多い。
門に着く少し前にライシェラが戻ってきた。
今日は手ぶらだった。ボウズだったみたいだ。
次は僕たちの番が来たんだけど、御者台へ移動したココナが、何か話すとすんなり通された。
門の人はみんな、他の通行人を待たせて、僕たちの馬車が見えなくなるまで、ビシッと胸に手を当てていた。
なにかの挨拶かも知れない。
この街はとても人が多くて、賑やかだ。
ハルシュレックの市場に似ているかも知れない。
そんな、人の多い場所を通り過ぎ、大きな家がいくつ建っている所に来た。
馬車はそこで一番大きな屋敷に入っていく。
ココナはここの娘なんだそうだ。
僕たちはレティが堅苦しそうだって嫌がったので、明日の集合場所を決め、屋敷に入る前に降りた。
今は市場に向かっている。
「れてぃしあ、すこし、はなしたい、ことある」
普段、自分から話さないライシェラが、珍しくレティに話しかけた。
「どうした?改まって」
「・・つけられてる、ばしゃ、おりてから」
ライシェラが頭を動かさず、後ろを意識しながら言った。
「さすが、鼻が利くね。じゃあこの街の時告げの塔にでもいくか」
言い終わる前に、僕たちは屋根の上に居た。
もちろん、レティが捕まえて飛んだのだ。
そして、屋根伝いにピョンピョンと跳んで、この辺りで突き出した屋根に降りる。
そこは周囲の屋根より頭一つ飛び出していて、そこそこの広さがある。
ライシェラが、何回か深呼吸してから、話す。だいぶ高い所に慣れてきているのかもしれない。
「・・・けさから、きのうの、ごぶりん、たちが、ついてきている」
「あれ?なんでだ?アタイ、南はやめとけって言ったよね?言わなかったっけ?」
「りゆうは、わからない。ばしゃが、みえない、ところから、においを、たどっている」
レティは、額の辺りに手を当てて、じっと今日移動してきた方をみつめる。
僕もやってみたけど、何も見えない。
「・・・300ぐらいか?ってなんかこの流れ、またアタイ達のせいにされるんじゃない?」
「だれか、くる」
僕たちの見てた方向とは反対側から、白い服の女の人が飛んでくる。
「魔女というのは、アナタですね?」
降り立つとスカートの裾を治しながら聞いてくる。
「ライシェラ、あのゴブリン達に、これ以上この街に近づかない様に伝えてくれ。あ、ついでに理由も聞いてきて」
「わかった」
ライシェラは屋根伝いに跳びながら駆けていく。
飛んできた人は、それを気にも留めずこちらに向かってくる。
「ふむ、無視ですか?ワタシの感では大当たりですが、アナタが魔女であっても、なくても、特にやることは変わりませんし、問題はありません。外れてもその時は、神への尊い犠牲になった。と言うだけのことです」
「じゃあコブン、アタイらは宿探して飯の用意だな」
「いや、無視すんな!」
無視されてた人が飛び掛かってくる。
ラポラと似たような棍棒を持っているけど、こっちの方がトゲトゲがついてて痛そうだ。
それをレティの顔めがけて振り下ろす。
「オラァ!」
レティは避けもせず、それを顔で受ける。
でも顔に当たる少し前で、ガンッと何かに阻まれる。
僕には棍棒が当たる瞬間に、レティの周りに光の壁が波打ったように見えた。
「かったい障壁。だがアタリか」
レティはキョロキョロと周囲を見回している。
「ここらは教会が、あまりうるさくないと思ってたけどね?」
「ふん!ワタシは魔女狩り専門。どんな場所にでも行くわ。教会すら無い、クズ共の巣でもね!」
女の人が腰のポーチから、小瓶を取り出して武器にふりかける。
すると、武器のから白い煙のような光が立ち上る。
「ちなみに、なんでアタイ達の事がわかったんだい?」
女の人が武器を脇構えて一気に距離を詰める。
下からフルスイングで、レティのお腹を狙う。
レティは今回も特に構えずに周りを見回していたけど、先程の光の壁がバリンッと砕けて直撃する。
レティが、横に大きく吹っ飛ぶ。
「愚かな魔女らしい。自分の魔力を過信して、ろくに警戒もしないからそうなる」
「グハッ、はぁはぁ、痛いじゃないのさ。なんだいそりゃ?アタイの障壁を壊すなんて、まさか!加護持ちか!?」
「お前らゴミが!知る必要は無い」
そう言って、倒れているレティのお腹を棍棒で振り抜く。
レティは転がって、僕の近くまで、吹っ飛ばされる。
僕は袋から回復薬を取り出そうとすると、女の人が血のついた武器をこっちに向けて、歩いてくる。
「動かないで下さいね、そこの子供。さっきの女性もそうでしたが、邪魔しないなら構いはしません。だが、そうでないなら、お前から潰します」
「はん!子供相手に、そんな凄むなよ。お里が知れるぜ?」
レティが、お腹を押さえながら立ち上がる。
「どんなに息巻いたって、フラフラではね。大人しく寝てた方がいいですよ。まぁ、苦しませてから殺しますが。ワタシが楽でいい」
「随分、余裕じゃないのさ?さっき、アタイが魔女かって聞いてたね。こないだ、アタイは天使の邪魔してね。ゴブリン操ってたヤツなんだけど・・。アンタもその口かい?ゴブリンみたいに操ら・・・」
「黙れクズが!」
女の人がまたレティに棍棒を振り下ろす。
レティは足元がふらつくみたいで、避けれずに頭を庇うように腕を前に出す。
そこに棍棒のトゲが容赦なく突き刺さる。
「ぐぁ!」
レティは叫びながらも相手に体当たりして、押し倒そうとする。
しかし、女の人は押し込んでくるレティの、赤くなったお腹に足を当てて、押し出すように蹴り飛ばす。
「くぁ、あんた、さっきから戦い方がエグいな。弱った場所ばっか狙って、痛いったらないよ」
「・・当然です。魔女に苦しみを与え、悔いさせるのがワタシの役目、改める必要はありませんがね」
「悔い改める?・・そういえば、その服装、王都の教会で見たかもな?なんだっけ?あの寂れた教会?たしか?潰された派閥の・・・」
女の人が、レティの顔めがけて棍棒を横殴りにする。
レティはかわそうと後に反るが、間に合わず横に吹き飛ぶ。
「・・・そういえばアナタ障壁しか、魔法を使ってませんね。それにさっきから挑発して、わざと距離を取って話しかけてくる。・・時間稼ぎ。・・・いや、情報収集が目的ですか?」
「・・・ばれちまったね。上手いこと喰らってやったのにさ」
倒れ込んでいた、レティが立ち上がる。
なんの痛みも感じていない様な、しっかりとした足取りだ。
「さっきから手応えはあるのに、余裕が透けて見えましたからね」
「・・察しが良いね。さじ加減を間違ったか。でも、知りたいことはだいたい分かったから、アタイは失礼するよ」
『コブン、目瞑って』
「させると、お思いですか?」
女の人がまた突撃してくる。
レティが彼女の眼前で、手を打ち鳴らす。
すると閃光が辺りを包み込む。
「クッ!なんの!!」
視界が戻ると僕はレティに襟を捕まれて屋根の上を移動していた。
後ろには、だいぶ小さくなった、さっきの女の人が棍棒を振り回しているのがかすかに見えた。
『あの人いいの?』
『あぁ、しばらくはアタイを殴って楽しんでるだろうさ、幻相手にね』
『知り合い?』
『まさか、昨日のゴブリンみたく天使に煽られたんだろ?』
『珍しい。戦わない』
『あいつら、殺すと恨みだなんだって、しつこいんだ。そのくせ死ぬまで諦めない。魔法を使えばやたら対策を講じて、対応してくる。ほっといて、逃げるのが一番いいのさ』
『そっか、傷は大丈夫?』
『ん?あぁ、ちょっとした演出、まぁ痛いのは確かだけどね』
しばらく飛んで、トンッとレティが着地する。そこは門の外だった。
周囲を見渡すと誰もいない、広い草原が広がっている。
僕は袋から素材を出して、回復薬を合成してレティに渡す。
「ん?あぁ、ありがと。さて、ライシェラはどこ行ったかな」
レティがまたキョロキョロ見回している。
ちなみに、草はレティの膝ぐらいまでの高さがある。
僕が少し屈めば、すっぽり埋まってしまうほどだ。
「お、あれかな?」
また、襟を捕まれ跳び上がる。
着いた場所では、ライシェラがゴリラの体に牛の頭をつけた様な魔物と戦っていた。
大きさは、ライシェラの倍ぐらいある。
その二人の周囲を、ゴブリン達が一定の距離を空けて、ぐるりと取り囲み、やいのやいのと応援している。
ライシェラも殺すというよりは、力を見せつける様な戦い方だ。
服に仕込まれた、爪も使ていないし、なにより、虎になっていない。
レティは腕を組んでニヤニヤしている。
観戦を決め込むようだ。
僕は周りのゴブリン達をみる。みんな熱心にライシェラを応援して、女神だとかティアマト様だとか言っている。
その中に昨日のボスの人を見つける。
近くには何匹もの大きいゴブリン達が、倒れて血を流している。
僕は袋から回復薬を作りながら、駆けよる。
傷ついた大きい人達はなんとか助かった。
ボスの人が魔力の枯渇寸前まで治療していたおかげだと思う。
治療が終わった頃には、ライシェラの勝負もついていた。
最後には牛頭の魔物がライシェラの前に跪いていた。
どうやら、ライシェラが新しいゴブリン達のボスになったみたいだ。
その夜は、ゴブリン達と宴会になった。
レティが言うには、どの道街には泊まれなかったし、丁度いいだろって事らしい。
ライシェラを中心に、何故か牛頭の人まで一緒で、飲め食え、騒げだ。
もちろん、僕にその雰囲気を楽しんでいる余裕はない。
レティが、ゴブリンの飯はまずいから、コブンが作れと言ったからだ。
そんなに沢山は合成できないので、次々運ばれてくる食材を味見したり、女の人達に料理方法を聞きながら、ガンガン作る。
もちろん、ここは草原なので、石を組んで作った、複数の簡易かまどでの料理だ。
何かの肉をぶつ切りにしたものや、大きいミミズだったのかもしれないもの、イナゴの様な虫や、低木の根、野菜じゃなくて、草などなんでも。炒めたり、焼いたり、蒸したり、和えたり。
動きを止める暇がない。
もちろん、手伝ってくれる人も沢山いるけど、全然間に合わない。
人数が多いのも、もちろんだけど、牛と虎と魔女が喰いまくるからだ。
作って運ばれた料理が、一瞬鍋に視線をやっただけで、無くなっているのは、さすがにどうかと思う。
笑顔で親指グッてやられても・・・、しょうがないなぁもう。
そんな訳で、余計な事を考えている暇がなく、宴会が進んでいく。
最初の賑わいも、いくらか落ち着いてきたころ、炊事場でないところで、炎が上がった。
それは、光の筋を残しながら空に飛び上がり、パーンッと弾けた。
花火だ。
もちろん、レティの魔法だ。
やたら笑いながら次々打ち上げている。
街からは見えないと思うけど、さすがに危険じゃないかと思って、レティを止めに行く。
「わかった!じゃあ、これ最後!あ!そうだコブン、爪持ってたよね?ね?あれかしてぇ?」
レティはお酒臭かった。
たぶん、レティの言っているのは、ライシェラの服の素材にも使われているモノだ。
僕は端材になった、手の平サイズの爪の欠片を、レティに渡す。
もちろん、最後だよと念を押す。
「だーいじょぶ!さいごさいご・・・」
そう言いながら、ブツブツと呪文を唱え始め、踊りだす。
それは、たぶんエルフさんのやっていたのと同じだ。
ってレティがこんなに長く詠唱しているのも、踊るのも初めて見る。
あれ?花火だよねこれ?
途端に、レティの体から炎が吹き上がり、それは上空で巨大なドラゴンになる。
その姿は燃え上がっているが、ターラそっくりだ。
ドラゴンは空を昼間の様に照らしながら旋回し、夜空の雲を押しのけて上昇、ドガーンッと爆散、そこからさらに小さい鳥が沢山現れ、地上に降り注ぎつつ、また爆発。最後は沢山の流星が現れ地面に降り注ぎ消えた。
その爆心地では、衝撃波と熱風を周囲にまき散らし、緑の大地が、黒い不毛の地になっていた。
「あはは、ごめん、コブンやりすぎちゃった」
笑ってごまかしながら、炭のように黒く固まった爪を返してくる。
『皆の被害を確認しよう』
「あーっとそうだな。一応、地面に被害が出る様な術式にはしてないんだけどな」
宴会の席に戻ると、みんながこっちに向かって平伏していた。
「あー、もう夜も遅いし寝るか」
レティがすっかり、月夜になった空を見上げながら言った。
戦闘シーンって違いが出すのが難しいですね。段々同じような展開になってしまいます。




