草原を進みます。
色々、遅くなりました。
今後も不定期更新でいきます。
たぶん毎日は自分には難しいので。
僕たちは草原を進む。
馬車はあるけど、馬を走らせたら、馬が疲れちゃうので歩いている。
皆は馬車に乗ってるけど、僕とライシェラは外だ。
レティとチコリは、さっき見たときは本を読んでいた。
僕はキラキラを探しながら進んでる。
ライシェラは・・・。近くにいないから、どこかへ狩りに行ったみたい。
森と違って草原は、キラキラが少ない。
種類も植物より虫とかが、見つかりやすい。
半日ぐらい進んだところで、大きな川に出た。
橋が架かっていて、その横の道から河原へ降りていける様にもなっていた。
「いったん、ここで休まないか?」
御者をしていたイサムの案で、休憩になった。
馬車を脇道の邪魔になら所に移動させて休む。
みんな体を伸ばしたり、茂みへ行ったりしている。
ライシェラはどっかに行ったままだ。
僕は川にあるキラキラを取りに行く。
・・・魚が捕れた。
光っているところに手を突っ込んで取り出すだけだ。
釣り竿も何も使ってないのに、ビチビチはねる魚が手に入っていた。
キラキラ凄いな。
他にもないか見回してみると、近くにもキラキラがあった、全部で3匹捕れた。
ナイフを取り出し、しめて血抜きする、鱗を取って、背開きする。
馬車に戻るとライシェラが、僕ぐらいの大きな鳥を捕って戻っていた。
魚は木の枝と紐で馬車の幌に吊し、鳥を捌く。
こちらも血抜きして、下処理が大変な内臓はあきらめる。
川で、熱を取る。
出発するそうなので、続きは馬車の中でする。
同乗者の何人かは、距離を取った。
一人は御者台へ移動したが、何も言わなかった。
「ねぇ、コブン?レティシア様って、外でいっつもこんな感じなの?」
それから幾らか進んだ頃に、レティが本を読むのを辞めて、うずくまって昼寝をはじめた。
それを見計らってチコリが、また小声で聞いてきた。
「ゾウカモ。ナンデ?」
「前のレティシア様なら、あんな無礼を許しはしないわ。言い終わる前に消し炭よ。なのに気にした風も無く、穏やかな感じだから驚いたの」
「レティ、アンマリ。オコダナイ」
「・・・前は、一瞬で全てを火の海にしちゃうような、そんな方だったのよ?」
「ゾウナノ?」
「えぇ、まえに店で・・・」
「敵だ!皆!用意して!」
イサムの声だ。
みんなで、外に出る。
そこにいたのは・・・何もいない。
けど、彼は指さす。
僕の爪より小さい、ずっと遠くのゴブリン達を。
「あんな遠くのゴブリンを、わざわざ倒しに行くのかい?」
レティは、あきれたように聞いた。
「確かに、ゴブリンは弱いが、増えれば被害が出ることもある。駆除すべきだ」
「そうかい、まぁ、頑張りな」
「・・わたしは、反対です。この辺りは、泥濘でいるので、馬車をここに置いていく必要があります。その間に、馬車が襲われるかもしれません。そんな危険を冒すより、先を急ぎませんか?村人に報告して警戒してもらう方が・・」
「ラポラ・・。これは、この近隣の村のためなのよ?ゴブリン達が増えすぎれば危険なことは、アナタもわかるでしょう?」
「・・・そうですが!」
「わかったよ。ラポラの意見も、一理ある。じゃあ、君とチコリさんはここに残ってくれ。ぼくたちだけで行ってくる。もしなにかあればすぐ戻ってくるから、すこしだけ馬車をまもってくれ」
そうして彼等は駆けていく。
「コブンは馬車に戻ってな」
僕は馬車で待つことにする。
僕は別にゴブリンだから、助けてほしいとか、人間だから、殺されて当然なんて思ってない。
もし、お互いが争わずにいられるなら、その方がいいとは思うけど・・・。
でもなぜか。なぜか、洞窟の中で横たわる兄弟達の姿と、誰かに言われた、裏切り者って言葉を思い出した。
また馬車が揺れて顔を上げる。
考えるつもりで寝てたのかも知れない。
いつの間にか彼等は戻ってきていた。
緑の耳の切れ端を持って笑っている。
「やっぱり、たいしたことなかったな!」
「そりゃそうよ、ゴブリンなんて、雑魚だもの」
「まぁ、ちょっとした小遣い稼ぎだな」
「よゆう」
「よゆう」
何となく見ていられなくて、空を見上げれば雨が降りそうな雲だ。
「あんた達、空を見なさい」
「・・・なんですか?チコリさん」
「雲の流れが速いわ。そしてあっちの黒い雲は雨を持っているわよ」
「そうかも知れませんね。皆、出発しよう。」
馬車はまた動き出した。
雨が降り始める少し前にライシェラが、戻ってきた。
ひょいっと荷台に飛び乗り僕の横に座る。
僕の前にウサギを置いた。
まだ温かい。
・・・僕だって何も思わないで、このウサギを捌くんだから同じ事だ。そう思うことにした。
鞄から防水の革袋を取り出す。
これは、水とかを入れておける袋だ。
羊の内臓で作った。
ウサギを吊して、血抜きをする。
うまく、下の袋に落ちるようセットする。
あとは、皮を剥いで、お肉にする。
後ろ足はレティとライシェラの分かな。
「あなた、なんか凄い慣れてるのね」
「何となく、やり方わかる」
「そう?その割に手際が良いわ」
吊された魚と肉を見ながらチコリに言われた。
その日の夕方前に村に着いた。
村は簡単な柵に囲まれていて、少し物々しい。
冒険者だと伝えるとすぐに通された。
僕たちは街の広場で、一旦馬車を止め打ち合わせをした。
今日は一度解散して、明日の朝また集合しよう。
そう話していると、村長さんの使いって人がきた。
門番から聞いて、相談したいことがあるそうだ。
「じゃあ、出来ることの無いアタイ達は行くよ。また明日」
レティはそう言ってさっさと行ってしまう。
もちろん、ライシェラと僕もついて行く。
『レティいいの?』
「チコリが、いればまず問題はないよ。それより飯を食べよう!肉と魚!」
『うん、だから、肉も魚も馬車の中だよ?いいの?』
「・・・え?全然良くないよ!?早く食べたいから別れたのに!?」
広場に戻っても、もう馬車は無かった。
「はぁ、しゃあない」
レティは、ライシェラの腰を、僕の襟を掴んで一気に飛び上がる。
雨がフードに当たって、ドダダダダッてなってる。
次いでくる一瞬の浮遊感と、その後のグッとお腹の中が、持ち上げられるような感覚。
ライシェラは毛を逆立てて硬直している。
レティは下をキョロキョロ見て馬車を探してる。
僕は恐いので遠くを見る。
そして見つけてしまう、黒い雲のすき間から指す夕日に照らされた黒い影を。
それは十や二十なんて数ではなく、もっと沢山の黒いなにかだ。
真っ直ぐにこの村を目指すそれは、きっと良いことでは無い。
『レティ!』
吹き上げる風に消されないよう思念を送り、黒い何かを指さす。
「やれやれ、やなもの見つけたね。コブン、どうする?アタイは見なかったことにしてもいいよ?」
レティの言いたいことが分からず顔を見上げる。
『村が襲われるよ?』
「あぁ、だが人の村だ。襲ってくるのはたぶんゴブリンだよ。人に義理立てする理由もないだろ?」
『・・・そっか、どうしたらいんだろう?』
「好きにすると良いよ。アタイは別に人がどうなってもいいしね」
『・・・僕は、弱いから、弱い方を助けてあげたいのかも』
「ふーん?アタイにはちょっとわからない感覚だね。ただねコブン?あのゴブリン達を止めようと思ったら、きっと指揮している強い魔物を倒さないといけない。でもそうしたら、今度は統制が無くなったゴブリン達は、弱い魔物に逆戻りだ。彼らが狩られる側さ、その相手が人か、他の魔物かはわからないけどね。それでもいんだね?」
そうなのか、たしかに普通のゴブリンは人より弱いから、強いリーダーが必要だって前に聞いた気がする。彼らからしてみたら、たしかに僕は裏切り者なんだ。
「まぁ、小難しいこと言ったけど、やりたいようにやるってのも手だね。アタイは普段そうしてるし」
『・・・まずは、ゴブリン達の偉い人に会ってみたい』
「いいよ、付き合うよ」
レティが体を丸めると、横に向かって一気に足を伸ばす。
すると、壁でも蹴ったように勢いよく加速する。
どんどん落ちている気がする。でも風でまともに前が見えない。
あまりの空気に押し込まれる様な感覚に意識が遠くなる。
すると体が、またフワッと浮いたようになる。
気付くとそこは、レティと同じぐらいの大きなゴブリン達に囲まれていた。
「なんだ!おまえだ!?」
ゴブリンが聞いてくる。
他のゴブリンは「ぞらからきだ!?」「てきだのか?」と話し合っている。
僕より、発音が上手だ。
レティが、ライシェラと僕を下ろして一歩踏み出すと、みんな一斉に僕たちに武器を向ける。
ライシェラは何とか立ち直り、体勢を低くして身構える。手から服に仕込まれた爪が現れる。
牙を見せて、グルルルゥっと威嚇している。見た目に反して、低い音だ。
レティはそれを手で制して、話しかける。
「ホブゴブリンか?お前達の大将と話に来た。ここらへんだろ?見通しも良いし、指示の出しやすい場所ったらな」
「ふざげるな!」
この中で一番大きい人が斬りかかってくる。
レティは相手の剣を握る手に、片手でそえるだけで受け止める。
途端、相手は動けなくなる。
「話に来たと言ったろ?力を示して欲しいのか?」
そう言いながら、どんどん相手を押し込む。
相手は剣に反対の手を当てて押し返そうとするが、ビクともしない。
ついに片膝を着いてしまう。
すると横合いから火の玉が飛んでくる。
ライシェラが飛び出そうとするが、またそれを手で制する。
レティに当たる。っと思った瞬間、何事も無かったかのように、火の玉がかき消える。
「アタイと魔法で勝負するなら、この位はやりな」
レティの空いた手から黒い炎が吹き出して、そこから黒犬が現れる。
その肌にまとわりつく様な、禍々しい熱気に、ゴブリンだけでなくライシェラまでもが後ずさる。
「わがった!やめだげれ。オラがボズだ」
先程の火の玉が飛んできた方から1人のゴブリンがあらわれる。
頭に山羊の頭骨を被っていて、顔はわからない。
レティは炎を消して、その人に手招きする。
その人は恐る恐る近づいてくる。
「お前達はなぜ、ヒュムの村を襲っている?」
「オラだちにも、住むばじょは、必要だ。森がらねげてきて、ほがにいぐとこがね」
「あの村を襲って如何する?あそこは寂れた村だが、王都へ通じる官道の宿場だ、そんなとこを襲えば軍が動くぞ?」
「そうなのげ!?でっでも、おづげがあったんだ。今日のゆうびと、ともにあのむらざ、おぞえば、すみが手にばいり、ずぐわれるって」
「・・・お告げだと?何を見た?詳しく話せ」
余裕のあったレティの態度が一変する。
抑えていた、剣の人を押しやり、山羊の骨のゴブリンの首を掴む。
「ヒィ!きっげさの夢で、はっはねの女があらはれで・・・」
「・・・天使か、まぁいい。今すぐ襲っている奴らを引かせろ、それとじきにこの周辺で討伐が行われる。出来るだけ遠くに逃げろ」
そう言って、ゴブリンを解放する。
「コブン、こいつらは操られただけだ」
「にっにげるってどこへ?」
解放されたゴブリンが他のゴブリンに指示をだしながら、すがるようにレティに、にじり寄る。
「知らん。でも南はやめとけ、下手すると討伐隊と鉢合わせる」
『レティ?どういうこと?』
「こいつらは、天使の試練か何かに利用されたんだ」
『試練?』
「あぁ、今あの村にいる誰かに、加護か贈物持ちがいるんだろ。そいつに適度な試練を与えて、その力を育てるのさ」
『そうなんだ?』
「取りあえず、離れるよ。あいつら、どっから見てるかわからないからね。変に目をつけられても面倒だ」
僕たちはまた飛んで広場へ戻る。
下には、柵を越えて侵入したゴブリン達が、村から逃げ出しているところだった。
村のあちこちに緑と肌色の人が倒れている。
もちろん、もう動いていない。
僕は彼らをけしかけた天使を、好きになれないと思った。
レティは空から見た時、一番大きかった建物の方へ向かう。
途中で、一緒に旅した面々が肩で息をしながら立っていた。
近くにはいくつもの死体が横たわっている。
僕たちを新手と思ったのか、武器を向けてくる。
レティは気にせず、その場で唯一余裕のあるチコリをじっと見つめる。
チコリは少しすると一瞬、目を見開き疲れている彼らを見る。
たぶん、念話だ。レティは僕より思念が強いから、チコリは念話できるのかな?
僕はその間に後ろの大きな建物の近くに止めてある馬車へ行く。
ライシェラが付いてきてくれて、馬車の幌に吊るしてあった肉を取ってくれた。
「ライシェラ、コノオニグ、カレダニ、ワダシテイイ?」
僕は兎を指して聞いてみる。
「わたしは、かまわない」
もちろん、レティには聞かない。答えはわかりきっているからだ。
僕はライシェラから兎と、魚の開き2枚を受け取り、離れた場所で屈みこんでるラポラに持っていく。
「ラボラ、ミンナデ、ダベデ、ツガレダ?ゲンキダズ」
ラポラは疲れているみたいだけど、それより魔力が枯渇しているみたいだ。
血の気が引いて、意識が朦朧として心ここにあらずって感じだ。
僕はついでに野良グレープも一房渡し、一粒をラポラの口に押し込む。
前に誰かが魔力を回復するって言っていたからだ。
ラポラの目に少し力が戻り、それを受け取ったすぐ後に、また視界がぐるぐる回った。
横腹に衝撃があったので、きっとまた蹴られたんだ。
そう思って、上手く地面に着地しようとして失敗する。
頭から落ちちゃった。ブベッて感じだ。
「こいつ!ゴブリンだぞ!!」
そういったのは、たしかミネバって言った。冒険者の女の人だ。
ラポラ以外の人達が武器を構える。
弓の双子はいつでも撃てる感じだ。
「ゴブリン達にやられて、気が立ってるのかもしれないけどな?アタイの僕蹴ることないだろ?」
レティはその間に入るように移動して、話しかける。
「待ちなさい!そのゴブリンの腕にギルド認可の証があるでしょう。彼はギルドが使役する事を認めた魔物よ。知らないわけではないでしょう?」
チコリがすぐにやめるよう告げる。
「だが、こいつがゴブリン共を導いたのかも!」
「たしかに」
「たしかに、よく馬車の周りをウロチョロしていた」
「ゴブリン達が攻めてきたのだって、こいつらと別れたすぐ後だった」
「ミネバ!あなた冒険者でしょう?ギルドを疑う様な発言!看過できるものではないわよ!場合によっては実力で黙らせるわ」
チコリが指を鳴らすと、彼らをぐるりと取り囲むように氷の槍が出現する。
「みんな待ってくれ!僕たちが争っても意味はない!それより明日に備えよう」
イサムが止めに入って彼らも武器を治める。
チコリが作った槍も地面に落ちて砕ける。
「アタイの僕に謝罪はなしかい?」
レティがそう聞いてもミネバはフンッと鼻を鳴らしただけで、みんな大きな家の方に行ってしまった。
「ゴブリンさん、大丈夫ですか?いま魔力が枯渇寸前で、癒せなくて」
「ダイジョブ、ゾレ、アゲル、ミンナデ、ダベデ」
「コブン!?あんなのにせっかくのお肉と魚あげちゃうの!?あり得ないでしょ?」
「オナガヘル、イライラズル。タベレバ、ナボル」
「じゃあアタイの、このがっかり感はどうするの!?」
「レティニ、ドッデオギ、ヅクル」
「・・・コブンはすぐそうやって誤魔化す!美味しくないと許さないんだからな!」
「チコリハ?ドウズル?」
「・・あなた凄いわね。私は彼らの監視だもの、一緒にはいかないわ」
「ジャア、チコリニボ」
「・・・これは?野良グレープ!?あんたサラッとこういうもの出すのね。場合によっては争いの種になる木の実よ」
「ゾレ、マリョグ、ガイフグ」
「ありがとう、ありがたく使わせてもらうわ」
「コブン!行くぞ!飯だ」
僕はラポラとチコリに手を振って、レティとライシェラの後を追う。
読んで頂きありがとうございます。




