草原へ行く用意をします。
帰ってくると、家の前に服を着た虎が居た。
ピリッとした服装のアージとにらみ合っている。
「なぁに、やってんだよ?」
「あら!コブンちゃん!お帰りなさい。レティシアちゃんもこんにちは、今、乙女の清い決闘中よ!邪魔しな・・・」
「グルルルゥゥッ」
アージに最後まで言わせず、虎が一気に加速して距離を詰める。
アージは慌てず、虎との間に土の壁を作り出す。
虎は壁を体当たりで壊す。するとさらに壁が出来ている。
今度は一気に横っ飛びで壁をやり過ごす、するとそこにさらに壁が現れる。
しかもその壁は虎の方に倒れてくる。
虎は少し後に飛んでやり過ごそうとするが、その地面が突然消えて落とし穴になる。
虎は、すぐに察して倒れてくる壁を足場に、もっと後へ跳び上がる。
「あら!驚いたわ。あの体勢から避けれるものな・・グベッ」
「おい、ぉ~ぃ?アタイの家の前で楽しそうな事してるね?アタイを抜きにね。どうせやるなら混ぜてよ」
レティはアージの頭を、地面に押し付けて話しかける。
「だ、だからこれはけっと・・ブッ」
グリグリした。
「仲間外れか?ん?アタイの家なのに?まさかね」
「じょっ冗談よ!ちょっとふざけただけよ」
「それでなんだよ?また服でも持ってきたのか?」
アージは起き上がって、土をパンパンほろう。
「もちろん、コブンちゃんに会いに来たのよ。それで?虎を飼ってるなんて聞いてないわよ?どうしたの?しかもコブンちゃんの服まで着て」
「ライシェラだ。森で拾ってきた」
「まぁ!・・・レティシアちゃん王国とケンカする気?その時は言ってね。コブンちゃん預かるから」
虎がライシェラになって、レティの隣に行く。
「てきと、おもった。おそった、すまない」
「ぅわーぉ?これは、珍しい。はね?・・・ワービーストではないわよね?虎に変身できちゃうんだもの」
「さぁな?我が家の肉調達担当責任者だ」
「・・・・・ちょっと待って、・・・ちょっと考えさせて」
アージが真剣な表情で、ライシェラを見つめて動かなくなる。
「・・・よーしよしよし、そうね!そうよね」
一人でブツブツ言っていて結構怖い。
「ライシェラ、ちょっと付き合ってやんな」
「わかった」
レティはさっさと家に入ってしまう。
僕も二人を置いて中に入る。
「よし!いいわ!レティシアちゃん!ってあら?」
僕がコーヒーを入れて戻ると、丁度アージが動き始めた。
『レティ、中は入ったよ』
「そう、レティシアちゃん!ちょっといったん帰るわ!また来るから」
「アージ、ライシェラに冒険者できるような。服作ってくれよ」
レティが二階の窓を開けて話しかける。
「そういう事は、もうちょっと早く言いなさいよ!でもいいわ。久々にコブンちゃんの服以外で、創作意欲が湧いてきたわ」
「おー、じゃあ、明日の朝までによろしく」
「なんなのよ!その無茶ぶりは!じゃあ、今日は泊めてよね」
「一階好きに使えよ」
「なら、すぐまた来るわ」
そう言って、アージは帰った。
急いでいるからか、珍しく蜘蛛を呼び出して跳んで行った。
僕は家に戻って、アージに入れた分のコーヒーを飲む。
その後、倉庫に行って、明日持っていく背負子を準備する。
ついでに、革と買ってきた魔力布でレティとライシェラ用の背嚢も合成する。
その後、外の畑で土いじりをしていると、アージが戻って来た。
何体かマネキンも連れてきている。
それぞれ色々な布や、カバンを持っている。
アージのマネキンは、木のゴーレムのキルシェさんやビルネさんに似ているけど、アージが居なくなると動けないらしい。
根本的に違うのよって、前にアージが言っていた。
「コブンちゃん、またお邪魔するわね」
僕は手を洗って家に入ると、アージが居間のテーブルに色々道具を広げていた。
『おかえり、アージ』
「おかえりだなんて!?もういっそ住んじゃおうかしら!!」
「住むなよ。細かい事は任せるから、性能重視な」
レティが降りてきて、片手に持っていた袋を机に置く。
シャラっと袋の中から、少し高い金属の音がした。
「もう、相変わらずレティシアちゃんはせっかちね。まずは彼女の採寸ね。虎の時に違和感があるようじゃ、困るから両方したいわ」
「・・彼女?」
「もう!ライシェラちゃんよ!女の子よ?知らなかったの?」
レティが僕を見る。
僕も首を横に振る。
そんなこともわかるのか、アージちょっとすごいな。
「はぁ、まぁいいわ。ライシェラちゃん協力してもらえるかしら?あ!っと、虎になったり人になったりって簡単にできるの?時間制限あったりする?」
ライシェラがレティの方を見る。
「こいつは裁縫バカだが、裏表はない。悪い様にはしないと思うけど、ライシェラが信用できないなら無理に付き合う必要はないよ」
「なによバカって!天才よ!」
「紙一重っていうだろ?」
「もう!失礼ね」
「わかった。すがた、かえるのは、かんたん。でも、なんどもは、むり」
「そう、わかったわ。じゃあ今の姿で採寸して、後で一度だけ虎になってもらってもいい?」
「わかった」
「ありがとう、その時に筋肉の付き方も調べたいから、あちこち触ってもいいかしら?決してやましい気持ちでないと誓うわ」
「わかった、いい」
「じゃあ、はじめましょ。あとでライシェラちゃんの好きな格好とかも教えて頂戴。色々試したいの」
『アージ、後でいいから、この背嚢に、なんか魔法つけて?』
「あら!コブンちゃんのお願いならいますぐやるわ!・・・って!?この革、初めて見るわ」
『友達からもらったの』
「コブンちゃん?この革まだあるかしら?もしよかったら使わせてもらってもいい?丈夫だけど、すごく加工しやすいみたいだし」
『わかった、持ってくる』
「あ、ちなみにこの背嚢には、どんな付与つければいいかしら?」
「ゾレ、レティ、ド、ダイジェラ・・ライジェラ、ノ」
「そう、レティシアちゃんとライシェラちゃんはリクエストある?」
「ない」
「わたしも、ない」
「そう、じゃあ適当に付けるわ。重量軽減あたりでいいかしらね」
アージは、作業が始まると真剣で、マネキンたちとせわしなく動き回っている。
声も掛けづらいので晩御飯までは放っておいた。
ライシェラが鳥を捕ってきてくれたので、水炊き風鳥の鍋にする。
「コブンちゃん!はい!あーん」
「こっちも食べごろよ。あ!か・ん・せ・つ・・・」
こんな感じで、アージがやたらからんできた。
せっかくすごいなって思い始めたのに、色々台無しだ。
「うっは!やっぱ鍋はうまいな!この鳥から・・・」
レティはいつも通り、難しい話をしていた。
「とり、おいしい」
ライシェラはフォークの使い方を覚えた。
その後もアージは、下でずっと作業を続けて、僕らが起きてくるまで服を作っていた。
読んで頂きありがとうございます。
アージに、夜食を持っていこうかと思いましたが、カットしました。




