ラティキエが来ました。
夜中書いてたら、夜が明けてました。
「あら、コブンちゃん、ごきげんよう」
その日の午前中。
僕が土ゴーレムさん達と、家の前の草むしりをしている時。
ラティキエが馬に乗ってやってきた。
その馬は大きくて黒い。
たてがみは力強く波打っていて、足先もふさふさだ。
そして頭に透明な角が二本生えて、体にも透明な紫色の紋様が浮かんでいる。
毛並みも綺麗で光を反射して輝いている。
ラティキエは、いつもその馬で来る。
両足を揃えて横乗りで座って、鞍もそれ用の鞍らしい。
ドレスをはためかせて、駆けてくる様はとてもかっこいい。
「オハヨ、ラテキエ」
僕はあいさつをして、汚れをほろって家の中へ。
木ゴーレムのキルシェさんとビルネさんを呼ぶ。
馬の後ろに積んでいるお土産を降ろしてもらうためだ。
前に土ゴーレムにお願いした時は、荷物が重すぎて潰れてしまった。
二人はすぐに出てきてくれたので、荷物の事をお願いする。
僕は二階に上がってレティに声を掛けた。
『レティ、ラティキエが来たよ』
「ん?あいよ」
僕が外に戻った時には、馬はラティキエが降りやすいように、ゆっくりと座っているところだった。
ラティキエが降りた後。少し待ってもらって、キルシェさんとビルネさんが、馬の両側に取り付けていた木箱を降ろす。
2人で片方の荷物を持って運んでいる。
「突然ごめんなさいね。レティシアは、いるかしら?」
僕が答える前にレティが降りてくる、窓から。
「お互い、突然じゃなかった事なんてないだろ?」
家に入ろうとしていたラティキエの後ろに、着地してそう言った。
・・・なぜ階段を使わなかったのかは謎だ。
ゴブリンには計り知れない、魔女同士のルールでもあるのかもしれない。
「あら、様式美よ」
「って、たいした距離じゃないのに、態々(わざわざ)あんな馬で来るなよ」
「あの子のためよ。たまには私と一緒に、お散歩したいみたいなの」
「散歩に入るのか?この距離で」
「ふ・れ・あ・い・が!大事なのよ」
「そんなもんかね。それで、どうした?なんか仕事か?まだポーションの納期には早いだろ?」
「いいえ、別件よ冒険者ギルドからあなた宛てに招集が来てたわ」
ラティキエが一通の手紙を谷間から取り出す。
「なんで、ラティキエのとこにいくんだよ?」
「他に連絡の取りようがなかったみたいよ?ほら、前にコブンちゃん登録した時、店の名前で保証したじゃない?それでみたい」
レティは手紙を受け取り、便箋を取り出し、目を通す
「なんて書いてあるのかしら?」
「読んだんだろ」
「えぇ、もちろん」
ラティキエは笑顔で楽しそうだ。
なんとなく、話が長くなりそうな気がしたので、軒下にある水桶で手を洗う。
土と草の汁を丁寧に落としていく。
「どうするの?コブンちゃんと一緒に一つ依頼をこなすんでしょ?面倒なら私が手をまわしてあげましょうか?」
「そこまでギルドに顔が利くんだ?」
そんな会話を聞きながら、台所へ向かう。
水瓶からやかんに水を入れ、台所の石の板におく。
これは前にレティにお願いして作ってもらった、加熱用の魔道具の改良版だ。
ラティキエが前来た時に、片手間でやってくれた。
魔法が使えない僕にも扱える優れものだ。
次に、街から買ってきたお茶の葉と用意する。
ラティキエが好きなのは紅茶だ、このティーセットも、ラティキエが持ってきたものらしい。
色々、入れ方に決まりがあるみたいだけど、僕はよく知らないので適当だ。
お湯が沸くまで間があるので、玄関の様子を見に行く。
「あら、そう?あぁ、それとこれはついでなんだけど、虎避けの香を少し多めにお願いできるかしら?急ぎじゃないから、次に来た時でいいわ」
「何だよ。結構、吹っかけてるんだろ?そんなに売れるのか?」
「さぁ?ギルドからのまとまった注文、って事しかわからないわ」
「ふーん。実際は?」
「何か大規模な森狩りでもやるみたいよ。最近、この森周辺の魔物の強さが跳ね上がって、危険が増してるのも関係が・・・」
お湯が沸騰したころ、お土産を運び終わったビルネさんが来て用意を手伝ってくれた。
ビルネさんはお茶を入れるのが上手だ。
紅茶を入れる難しい作法を任せて、二人を呼びに行く。
「・・さてね、アタイがラティキエより詳しい事なんてある訳ないだろ」
「またそうやって!まぁいいわ。私もあまり深入りするつもりは無いし、ただ冒険者がまた沢山死んじゃ・・・」
「オヂャ、ハイッタ」
僕は相変わらず玄関で話し込む二人を呼んだ。
「あら、そんなに長居するつもりはなかったのに、じゃあせっかくだから、一杯だけ頂こうかしら」
その後、僕は外の草むしりの続きをした。
ラティキエは昼前に帰っていった。
お土産には魔法がかかっているので、レティしか開けられないけど、中身はほとんどが食品で、少しだけレティの薬関係の素材だ。
お肉と干し魚も入っていたので、もう少し虎の人にはゆっくりしてもらえそうだ。
受けた傷は、レティの良い薬を使ったら綺麗に治った。
あとは、体力の回復だけだ。
本人は大丈夫だと言っていたけど、失った血を補うためにもきちんと食事をして、しっかり回復するべきだと思う。
あまり薬に頼りすぎるのは、なんとなく良くない気がするし。
「コブン、冒険者ギルドに行くよ」
「ワカッタ」
その日の午後に、レティに言われて用意する。
と言っても、食糧は買わなくていいので、外用に着替えるだけだ。
「わたし、どうする?」
「トラッ子は留守番だな。ってそいえば名前ないのか?」
「・・・なまえ、ない」
「あそ、じゃ、ライシェラな。留守番よろしく。今日中には戻るよ」
「らいしぇら・・。わかった、いってらっしゃい」
そんなやりとりを聞いた後、外に出ると襟を捕まれ飛び上がった。
もちろん、僕は何か言う暇なんてなかった。
読んで頂きありがとうございます。




