大きな森の木の下です。
今回は人によっては、嫌悪感を伴う可能性がある描写が含まれます。
自己責任でお読みください。
立ち上がったと思った先輩さんが、うずくまり苦しそうにむせている。
僕は背中を軽く叩きながらさすってみる。
「ジ、シンゴギュウ」
「は、は、はぁ、はぁ、はぁ~、はぁ~。あ、ありがとう。ゴブリンくん」
その間にもカサカサッて音は次第に大きくなり、それが姿を現す。
森の中で会った虎よりも大きな黒い虫だ。
それが木のあちこちから湧き出るように現れ、白くなっていた木々を黒く覆っていく。
「ひっ!?なっなんだ?このデカイ木喰い虫は!?それにこの数は!?」
「いいね!探す手間が省けた!」
「お!おいおい!こっこんなのとやる気か!?無理だろ!?どう見ても無理だ!」
レティは全然聞いてないみたいだ。
両手から炎が噴き出して辺りを明るくしていく。
「そぉだよ。そぉこなくちゃな!今思えば、最近食べることばっかりで、全然遊んでなかったよな!」
『レティここで、火使ったら木燃えちゃわない?』
「ん?あー、じゃあ、回復はコブンの担当な!」
そう言ってレティより大きな虫を殴る。それは吹っ飛びもせず一瞬で燃え上がり消し炭になって消滅する。残ったのは塵の様な灰だけだ。
虫達はレティを敵と認識したようでざわめき、ギィギィと鳴りながら襲いかかる。
四方八方から襲いかかる虫を、レティは僕の目で追えない速さで殴り飛ばしていく。
レティに殴られた虫は、周囲の仲間を何匹も巻き込みながら一瞬で灰になっていく。
端から見たら放射状に炎が貫いているようだ。
その炎の余波が5本の巨木ではない木に当たってズズンっと凄い音が鳴っている。
「あれ?あーあぁ、マナが多いからかぁ?加減が面倒だなぁ」
そんな鼻歌交じりの弾んだ声が聞こえる。
「・・・こっこれは、まっ幻か?おらぁ、まだ牢の中であの魔女の悪夢をみてるのか?」
僕は牢屋の中で採れた、木の枝を合成する。
『生命の樹の木剣』を手に入れた。
あまり長くない、木の剣が出来た。
木の結晶とか主な素材は同じ場所にあった。
僕はそれを呆然としている、先輩さんに握らせる。
「ゴジンヨウ、ズガッテ」
「え!?こっこれは?」
エルフが持ったからか、ボワッと剣から緑色の光が溢れる。
その光に反応するように近くの虫が集まってきた。
近付きすぎた虫を先輩さんが、無雑作に斬りつける。
「え?あれ?」
本人も意識せずに斬ったみたいだ。
木剣なのに、すっぱりと切れていて、虫の大きさからすれば大した傷口じゃないのに、ドサッと倒れた。
さらに傷口から、何かの芽が発芽し、あっという間に苔のような植物に覆われていく。
あれ?何あの剣。
先輩さんと僕の、なにこれ?怖くない?って視線がぶつかる。
お互いに小刻みに首を振って、え!?自分じゃないよ!そっちのせいでしょ?って訴える。
しかし、虫達はそんな無実な二人が気に障ったらしく、ギギギギ鳴きながら先輩さんへ向かっていく。
でもこれで、先輩さんも自分を守ることが出来るはずだ。
なんとなく、僕のせいで襲われている気がしなくもないけど、きっときのせいだ。
僕は近くにあるキラキラを集めて、野良グレープを取り出す。
エルフの秘薬、エルフの秘薬って念じながら集中する。
何となく素材がわかる。しかも思ったより簡単に合成できそうだ。
それより、精霊の妙薬の方が、素材が追加で必要だけど効きそうだ。
こっちでいいか、素材も足りてるし。
『深緑の霊薬』を手に入れた。
ん?なんか思っていたのと違う気がする。
出来上がった薬はポーションの様な瓶ではなく、抱えるほどの瓢箪の器に入っていた。
じっと観察するが、効果がわからない。
試しに一口、含んでみて、ブゥーッてなる。
お酒だった。
こぼれ落ちた足元から、ググッと芽が出てきて、花が咲いた。
さっきもそうだったけど、植物が急に成長するのはかなり、怖い。
でも、とりあえずこれで、薬は効くのがわかった。
次は何処にまくかだけど、やっぱり白くなってる木だよね。
遠いな。
先ず手頃なのは、今居る木だけど、何処がいいか。
そんなことを思いながら見回していると、先輩さんが視界に入る。
彼の前に苔の山が出来て、僕に虫が来ない様に立ち回ってくれているみたいだ。
先輩エルフさんはいい人だった。
そんな事を思っている時に、今までのキラキラとは全然違う青っぽい光が見えた。
今いる木の根よりだいぶ下の方で、強いて言うならギラギラだ。
行ってみたいが、僕だけじゃむりだ。
レティを探してみると、一面覆うように居た虫の数が、半分以下になって木の白い部分が、だいぶ見えるようになっている。
「レティ!」
僕は試しに大声で呼んでみる。
ホントはあまり目立つことはしない方がいい気がするけど、僕の思念は弱すぎて相手が見えないとほぼ届かないからだ。
「おう!コブンどうした?」
幸いレティは近くに居たみたいで、大きく跳躍して飛んでくる。
しかも、空中から僕の後ろに迫っていた虫に、手首を払って、指の間からドドドッて赤いの飛ばして降りてきた。
『木の回復薬できた』
「お!そっか、アタイもそろそろ飽きてきたから一気に行いくか」
レティが何かを持ち上げるように両手を掲げると、赤い炎の鳥と黒い炎の犬が現れる。
すると周囲の空気が揺らめき鳥と犬が段々大きくなる。
まるで蜃気楼のように周囲の景色がゆがむ。
「なっなんてことだ!周囲のマナを喰らっているのか!?」
すると今まで木の影だと思っていた地面がうごめき始める。
そして、僕たちのいる場所から一番遠い巨木が動いた。
それは巨木から宿木がはがれる様に鎌首をもたげた。
巨大なムカデの様な蟲だった。
その大きさはエルフの街である、5本の巨木をグルッと取り囲めるほどで、ターラより大きい。
「クックックっクック!来たか!ボス登場ってか!!」
「いやいやいやいや!むりむりむりむり!!にっにげよ!こっそり!きっとバレないから!」
先輩さんの興奮に答えるように、ガシガシガシガシっとムカデが多すぎる足を震わせ、威嚇音の様な物を出す。
そして口を開けて突進してくる。
「ぃよっしゃ!楽しませておくれよ!」
レティが炎の鳥と犬を投げつける様に飛ばす。
赤い鳥は進むほどに大きさを増して、ムカデの頭の半分ぐらいのサイズでムカデの口に飲み込まれる。
黒い犬は少し遅れて地面を駆け、犬の後ろを追いかける様に黒い炎の波が立った。
すっかり小さく感じる木喰い虫達を、黒い波が飲み込み焼き尽くしていく。
しかし、それもムカデの腹の辺りでペチッて感じで波と共に潰されてしまう。
まるで余裕だと言わんばかりに、ムカデはゆっくりと近づいてくる。
「ね!ほらね!?無理でしょう!!そりゃそうでしょ!?」
レティは飛び上がり、ムカデに向かって拳を振り上げ殴りつける。
信じられないが、ムカデの頭がのけぞり、そのまま後ろに倒れこむ。
そして、地面に着く前に全身が消し炭になって消滅した。
ムカデの腹から出てくるように鳥と犬が現れ消える。
「・・・ぇ?・・え?」
周囲が静かになった。
ムカデのせいで舞い上がった虫たちの灰が深々(しんしん)と降り積もるだけだ。
そこへ、レティが不機嫌そうに降りてくる。
『どうしたの?』
「ありえないだろ!?あんな見掛け倒しってありか!?」
『ムカデだから火と相性悪かったんじゃない?』
「クッ!そうか、そこまで考えてなかったな。・・・って元々!雑魚を焼き払う為に出した火だしな!あいつに使う予定じゃなかったんだからな!」
『そうだね。レティそれより、木の薬使おう?』
「あっと、そうだな。焼き払ったまんまで文句言われても面倒だしな。ほら!先輩、行くぞ」
そう言ってさっさと歩きだす。
「ぇっと・・え?」
『レティ、そっちじゃない』
僕はスタスタと違う方に進むレティを追いかけた。
皆様、コブンは子供です。異世界でどうかはわかりませんが。今現在、日本では飲酒は二十歳になってからです。
誤解のないようにお願いいたします。




