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エルフの森へ向かいます。

 その日も歩き続ける。

 僕は相変わらず、近くにキラキラがあれば採って食べたり、袋にしまったりしている。

 途中何度か休息を挟み、太陽が真上に差し掛かった頃、それは来た。


 たぶん、ずっと僕らを追ってきていたんだと思う。

 最初に気付いたのはレティか大きいエルフさんだ。


 「ランデロ殿、何か後ろから来ます」


 耳に手を当てながら告げるエルフさん。


 「わかりました。みんな警戒態勢だ。後ろから何か追ってきている。後衛とお嬢さん達はこちらへ・・・」


 「アタイも手伝おうか?」


 レティがにやにやしながら言う。


 「フン、ゴブリンと無手の女に何ができる!」


 「そうかい、まぁ頑張って」


 「邪魔にならないよう隅にでも隠れて居ろ」


 そうして、全員がバタバタと装備や配置を整えていく。

 そんな中に、森からぬっと出てきたのは黒と黄色の縞模様しまもようの毛皮の獣だ。

 しかもとても大きい、四つ足で立っているのにヒュムの誰より背が高い。


 『レティあれって、攻撃しちゃダメなやつじゃない?』 


 『・・・1番のハズレだね』


 『こういう時、冒険者って如何しているの?』


 僕とレティがのんきに話している横で冒険者の人達はお互いを励ましあってる。


 「いいか、落ち着いて対処すれば何とかなる」

 「大丈夫です、いざとなればボクの魔法で足止めぐらい余裕です」

 「がっがんばります」

 「・・了解」

 「・・・」


 剣の人、杖の人、ラポラと、今までほとんど喋ってない弓の人と盾の人だ。盾の人は最後にガツンッと盾を打ち鳴らしただけだ。

 

 その間に虎はこちらの戦力を値踏みするように、距離を取って時計回りにゆっくりと歩く。


 『まぁ、普通は逃げるのが一般的だね』


 『へぇ、どうやって?』 


 『虎避けの香ってのがあってね。それを使うと虎がしばらく寄ってこれなくなるのさ』


 『そうなんだ、使わないって事は持ってないのかな?』


 『まぁ、安くないしね、森で虎に会うなんて滅多にないし』


 『あ、虎が来るみたい』


 虎が一気に距離を詰めて襲いかかってくる。

 最初に狙われたのは小さいエルフだ、剣の人をすり抜けるようにかわして後衛に迫る。

 すると地面から緑色の光溢れて虎の足に絡みつき拘束する。


 『これって、何処まで戦って良いんだろう?やってダメな事とかあるのかな?』


 『毛皮を傷つけたり、外見にわかるようなケガを負わせるのもダメだね』


 『そっか、難しいね』


 虎は緑色の光を引きちぎるようにして、今度は杖の人に迫る。

 誰が魔法を使ったのかわかるのかもしれない。


 『虎にはすぐ切れちゃうんだね?魔法』


 『相手の意思が術者より強いと効きにくくなることもあるね』


 杖の人と虎との間に今まで一度もしゃべっていない大きな盾の人が割り込み押し返そうとする。


 『どうしよう?助けてあげないの?』


 『え?なんで?隠れてろって言われたじゃん?』


 『あー、まぁそうだよね。邪魔になったら悪いものね』


 盾の人も押し返そうとしたが、体格差はいかんともできず、弾き飛ばされる。

 虎はそのまま杖の人に迫り、もう少しで爪が届くという瞬間に、ラポラが棍棒を虎の鼻先に叩きつける。


 「みなさん目を閉じて!!」


 ラポラがいい終わるかどうかのタイミングで、棍棒の先端から眩い光が弾ける。


 『目がチカチカする。・・ラポラすごいね』


 「バカか!こんな全体の状態異常に力なんて使うな!ラポラは回復と強化だけしてくれればいいんだ!」


 「はぃ、ごめんなさい~」 


 でも怒られてる、哀れラポラ。


 『アタイはいい判断だと思ったけどね』


 虎は警戒して距離をとる。


 『眩しいのが苦手なのかな?』


 『虎からしたら視力を一瞬でも奪われるのは怖いんじゃない?もし失明すれば生きてはいけないし』


 それから虎は今までのように一気に後衛を狙わず、剣と盾の人をジワジワ潰す事にしたようだ。

 その間も時折視線はラポラを捉えている。

 この中で1番危険だと警戒してるみたいだ。

 それに対してラポラは。


 「あわわ、今癒します」


 ・・・気づいてないかも知れない。バタバタと癒やしの魔法とか強化とかしている。

 剣の人と盾の人が交互に威嚇して、攻撃を分散させるも、虎の強すぎる力に盾もへこみ革の鎧も傷だらけだ。

 ケガはラポラが、癒しているが間に合わず、杖の人の魔法もあまり足止めになっていない。

 弓の人は足元や顔近くに射て、注意を逸らそうとするがあまり上手くいかず、今ではアイテムを消費して回復などの補助に回っている。

 虎は自分の優勢がわかっているのか深追いせず、着実に冒険者達へのダメージを蓄積させていく。

 それでも、攻撃できない劣勢の中、皆頑張っていた。


 「精霊の御名において、かの者をうたかたの闇にいざなへ。ヒュプノス」


 今まで目を瞑ってシャンシャンっとステップを踏んだり、クルックルッて回っていた大きいエルフさんが、何かした。

 彼女の周りから青色の光が飛び立ったかと思ったら虎の周囲を飛び回り虎はクラクラッとした後その場に倒れる。


 『今のは魔法?』


 『精霊魔法って言われてるね。アタイ達が使うのとは別物だけど魔法の一種だよ』


 『そうなんだ?』


 「お待たせして申し訳ない。少し精霊が騒がしくて」


 「いえ、助かりました。あれは寝ているだけですよね?皆はやく移動しよう」


 『凄かったね』


 『アタイも対処できるとは思わなかったよ。すこし見くびっていたかもね』



 「もう直ぐエルフの森ですが、我々の街までそこから少しかかります。今日中に着くことは難しいので、そろそろ休みませんか?」


 虎との出会いからだいぶ歩いた後、大きいエルフさんがそう言った。

 また野営の準備になった。

 昨夜と違い、虎の追跡を警戒して簡易の結界を作ったらしい。

 レティの結界と違ってとても居心地が悪い、体がだるく風邪をひいた様な感じだ。

 あと、剣の人が作った兎の鍋にレティがとても不機嫌になった。

 それを気にしてか、ラポラがこっそりレティと僕にも少しわけてくれた。

 鍋を食べたレティが衝撃を受けていた。

 やっぱりちゃんと血抜きしないといけないよね。

 レティが残した分は僕が食べた。

 その後、皆が寝た頃に落ち込んでいるレティにラポラがパンを持ってきてくれた。「今日はわたしが見張りなので大丈夫です。ホントは昨日も・・・」ラポラが優しかったので僕の合成したスープとジャムをわけてあげた。

 なぜか泣きながら食べていた。



 次の日、また森の中を何時間か進んだころ、エルフの二人が大きな木に触れて、何かを唱え始める。

 残念ながら、聞き取れなくて意味はわからなかった。

 

 詠唱が終わると、目の前の木に人が通れる程のうろが出来ていた。

 そのうろは反対側に突き抜けてトンネル状になっている。

 二人はそこに躊躇ためらい無く入っていく。

 

 僕たちもあとに続いたが、うろの反対側から出た森は一変していた。


 木々はとても大きくて、空が完全に見えない。

 高さもどのぐらいあるかわからない程だ。

 辺りも日がほとんど差さないためか薄暗い。

 冒険者たちも戸惑っているようだ。

 すると大きいエルフさんが、呪文を唱えながらクルンクルンっと2回転する。

 最後に両手を上に広げると手から光の粒が飛び出し、複数の光が皆の周りをフヨフヨと飛び始め、辺りが明るくなる。


 『これも精霊魔法?』


 『あぁ、この光っているのが精霊だね』


 何故か、僕の周りにだけはこなかった。


 『コブン、ここからはキラキラは取らない方がいい。エルフがうるさいからね』


 『わかった』


 エルフの二人はどんどん先へ行き、1本の巨大な木の根元で待っていた。


 「ここから上に行きます。踏み外すと危険ですのでゆっくり、確実に進んで下さい。」

 

 そう言ってまた何か唱えると、木の幹に階段状の枝が浮かび上がる。幻か何かかも知れない。

 それはずっと続き、らせん階段のようになっている。

 正直、僕は背が低いので登りの階段は苦手だ。

 それにこの木は一段が僕の膝ぐらいの高さがある。でも遅れないよう、頑張ってレティの後を追う。

 黙々と登り、怖くて時折見える真下が見れなくなった頃、木の葉の屋根に着いた。

 木の枝と葉っぱが密集しており、先に進めない。

 エルフさんが枝の1本に触れると、枝がざわざわと動き、木の葉の壁に穴が開く。


 木の屋根の上は更に森になっていた。

 下は木の葉の絨毯で草原のようになっていて、上は空が木の葉の隙間から時折見え、柔らかな日射しが辺りを照らしている。


 「ここは、この木の真ん中ぐらいになります。一見、地面ように見えるかも知れませんが、足場がしっかりしてないところもありますので我々に着いてきて下さい」


 さっきまで、皆の周りを飛んでいた光は今度は僕たちの足許に集まる。

 まるで、道を示しているようだ。 

 そこからは階段の木を離れ、枝伝いに次の木、また次の木へと移動していく。

 レティ以外のヒュムはおっかなびっくり進んでいる。

 理由は、エルフが踏んでもしならない枝がヒュムが踏むとしなることがあるからだ。嫌なギギギギって音が鳴るのだ。

 いくつかの木を渡った時に、つり橋が見えてきた。

 そのつり橋はとても長くツタを何本も複雑に編んで作られている。

 谷を渡れるように架けたみたいだ。

 当然下を見てしまう。

 つり橋の下には雲が立ち込め、その隙間から木々の頭が見えた。下にも森が広がっているみたいだった。

 そのつり橋をラポラが渡れなかったため、魔法で寝かされて盾の人に荷物みたいに担がれていた。

 その時はラポラが羨ましかったが、つり橋を渡っているうちに高い場所にも慣れてきた・・・様な気がする。

 でもこの事はレティには内緒だ。


 『そういえば、レティ今日は他の皆も疲れてないね?』


 『・・・エルフの森は疲れにくいんだよ、理由は知らないけど。精霊が多いせいかな?』


 それからさらに木の上を移動し続け、しばらくしたころ街が見えてきた。

 大きな5本の木に足場を作り、枝のあちこちに家が建っている。

 5本の中の一番大きな木の上方から水が溢れ出し、木で作られた水路を伝い他の大きな木へ運ばれている。

 下を見れば七色の水面が見える。

 ・・・エルフの街はとても幻想的な所だった。

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