今日、冒険者が来た。
「そういえばコブン、最近タケノコにハマってて忘れてたけど、街に行こうって話だったよな?」
レティが最後のタケノコの味噌汁が入っていたお椀を置いて、思い出したように聞いてきた。
『門の所まで行った』
「そうだよ!アージのせいで忘れてたよ。あいつ結局何したかったのかわかんないし」
『服届けた、言ってた』
「ん?そんなこと言ってた?アージから服を預かってるか?」
レティはゴーレムさんを見て聞いた。ゴーレムさんはクローゼットの方へ歩いて行った。
ゴーレムさんは喋れないけど、言葉は伝わる。
『ねぇレティ?ゴーレムさんに名前つけないの?』
「ん?必要?じゃあ、キルシェとビルネな」
レティがそういうと服を持ってきてくれたゴーレムさん達はお辞儀した。
「あ、ホントだ。なんだ、もう出来てたのか・・・ってなんか多いな」
沢山ある小さい服の1着から、手紙が落ちた。
「・・・」
『なんて書いてあるの?』
「創作意欲の赴くままに作った。アージなりの愛情表現だと。代金はいらないから、着てる姿を見せて欲しいとさ」
『フリフリが多いね。・・・キグルミまである』
「好きなの着て、街に行こ」
僕は作務衣の様なデザインの服にローブを羽織る。
「コブン、今日はあまり買わないから背負子はいらないよ。ギルドで登録と今晩の食材を買うだけにしよう」
「ワガッタ」
先日、赤毛の凶暴な女が来てから我々ハルシュレック西門警備員は、冒険者ギルドに要請を出し彼女の安全保証が可能な人員を頼んだが、今日まで派遣されることはなかった。
当初、大口の依頼があり若手の冒険者が居ないため難しいという話だったからだが、なんとか都合をつけてくれたようだ。
「うぃーっす、しくよろぉ」
「はっ!本日、班長が休日のため私が代理でごあいさ・・・」
「あぁー、いいよ。そういう堅苦しいのは、それよりここ女の子いないのぉ?」
そして、派遣されてきた冒険者は鼻にガーゼを当てて非常に軽い感じの方だった。
もしかすると、私と同じかそれより若いかもしれない。
傷のついた使い込んだ様子が窺える革鎧を着込み、柄のすり減った剣を腰に差し、首から冒険者のギルド証を下げている。
この街は周囲に危険な魔物が多く潜むため、それらを駆除してくれる冒険者への信頼は非常に厚い。
街中の警ら隊ですら、彼らの帯剣は認めている。
「あ、いたぁー。でも、ごめぇん俺の好みじゃないやぁ」
しかし、最近ではそれを利用して、ガラの悪い若者も出てきているという。
冒険者ギルドは基本的に来るものを拒まないと聞く。
理由は簡単で、彼らの死亡率が非常に高いからだ。
だからこそ、モンスターを駆除できるなら誰でも構わないという方針らしい。
もちろん、街内での犯罪などは厳しい処罰があ・・・。
「それで?どったのぉ?こんな門の警備なんかに呼んじゃってさぁ?」
「は!実は先日、ゴブリンを使役したという女冒険者が来まして、その安全の保証をおねが・・・」
「ぶっは!ゴブリン使役とかどんな雑魚だよ!?マジうけるぅ。ゴブリンなんて使い道ねぇじゃん」
「はっはぁ?そうなのですか?」
「だっておまえ、ゴブリン仲間になったからって何に使うのよ?石でもなげさせるか?」
「えーっと、たしかその女は荷物を載せるような、木枠を持たせていましたが・・・」
「あぁ、なるほど、でもやっぱありえねぇわ!俺ら持ってる荷物たら、大金みたいなもんよ!そんなのゴブリンなんかに持たせられないっしょ?」
「はぁ、なるほど」
「そーだよ!やっぱ俺らが使役するなら!かっけぇフォレストタイガーとかかなぁ!」
「はぁ、ですがたとえモンスターでも虎などの使役は王族のみの特権となっておりますが・・・」
「え、あっ、そうなの?」
「はい、職種柄その手のことは学びますので、間違いありません」
「あはっ!冗談だってぇ、門番君を試したのさぁ。俺だって知ってるよぉ」
「あ、そうでしたか・・・」
「なぁに?心配?」
「はい。あっいえ!消して冒険者様の実力を疑うわけではないのですが!非常に好戦的と言いますか、危険な人物の様な気がしたので・・・」
「だいじょぶ、だいじょぶ。俺これでもゴブリンの巣の一つや二つ討伐したことあっから!もう100匹はいる様な大きな巣だったけどぉ、俺らのパーティでちょちょいってねぇ。俺!ギルドじゃ期待の新星っていわ・・・」
「なんだ、ギルドはまだそんな事やってるのか?進歩のない・・・」
ぶわっと全身に嫌な汗が噴き出した。
いつのまにか赤毛の女冒険者がすぐ近くに立っていた、人が来る気配などは一切なかったのに。
傍らには例のゴブリンらしき姿もある、今日は以前と違いきちんと服を着てフード付きローブを深くかぶっているので一見ただの子供のようにも見える。
「あぁ!なんだよお前!ってめっちゃハクいじゃん!特に体が・・・」
驚いて冒険者を見つめてしまう。
たしかに、女の外見は美しいかもしれない。だが、そんな気安い感じに接することなどできるだろうか。
今日は前と違い普段着というより、冒険者らしい動きやすそうな服装だし体の線も前よりわかりやすい。
今も傍らのローブを見つめて何やら思案気だが、武器も一見所持してなさそうだからパッと見たら危険な人物には見えないかもしれない。しかし、私は彼女の両手から燃え上がったあの禍々しい炎を忘れることなど出来ない。
そしてその剣呑な雰囲気は、近寄りがたいなんてレベルのモノではない。
私は緊張して体を動かす事すらままならないが、冒険者ともなればこの程度へでもないという事か。
「ねぇねぇ、おねぇさん!これから街の中みて歩くのぉ?俺が護衛してあげよっか?俺じつ・・・」
・・・ナンパかよ!って胸見過ぎだろ!そこに話しかけんな!
「ぼっ冒険者様!こっこ、この・・・」
「あぁ?何だよ、わかってるよ!ごっめぇん、俺今仕事中でさ?終わったら一緒にどう?最近街中も物騒らし・・・」
「いっいえ!そうでは無く!こっこの方が!!先程話した冒険者ギルドで保証をお願いしたい方になります!」
「・・・マジかよ」
冒険者の顔色が急に変わり目を見開く、改めて警戒しているのかも知れない。そう彼女は一見、危険にはみえな・・・と急に笑顔になった。
「これで依頼クリアじゃね!よっしゃ、仕事終わったわ。おねぇさん一緒に・・・」
「ぼっ冒険者様!その、使役している魔物の確認を・・・」
私は慌てて止めるが、とても不機嫌そうにこちらを睨んでくる。
「あぁ!?・・はぁ、なんだっけ?ゴブリンだっけ?」
そう言って彼女の傍らにいた小さいローブを足で軽く押しやる。
アっと言う声と共にフードが少し開け緑色の肌が覗く、その途端全身に鳥肌が立つ、一気に周囲の温度が下がった気がする。
体が緊張で硬直する中、女を確認するとスッと目が細められた、それだけで恐怖で息が出来なくなる。
「こんなちっこいの、ガキのゴブリンだろ?危険なんてないない。んじゃそういう事で!行きましょ!おねぇさん」
「・・・なんだこいつは?アタイに話しかけていたのか?」
冷え切った声音の女は、一瞬ゴブリンを見てつぶやいた。
「・・・街を案内?ふぅん、じゃあ行っていいんだな?」
その冷たい眼差しがこちらを捕らえる。
「ハッハヒィ!」
私はその時、何とか声を出せた自分をほめてやりたい。
彼らの姿が見えなくなってから、同僚が私のそばに寄ってきた。
「よかったのか?」
私は、今なお強張っている体を、深呼吸で何とか落ち着ける。
「・・・わからないが、冒険者が認めた以上我々から何か言うのも難しい、依頼している立場だし。・・・しかし、班長がいらっしゃったらどうされたか」
「・・・そうだな」
ちょっと視点を変えた話が続くかもしれませんが、よかったらお付き合いください。
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