森の二日目
更新が遅くなりました。
よろしくお願いします。
準備も終わり、出発するころには、森の中も少し明るくなっていた。
この辺りから、少しずつ木の背丈が高くなってくる様だ。
先行しているチコリさんとは未だ出会えず、彼女の作った道は続いている。
しかもいつの間にか、一定間隔で目印まで付いている。
その事に最初に気付いたのは、やはり双子だ。
道の横に紐で石が吊されていたのだ。
最初は意図がわからなかった。
これだけ分かり易い道を作っといて今更目印なんてと紅雀人達は笑っていた。
ところが、双子がさっきから同じぐらいの間隔で吊されていると発見した。
例えそれがある程度であったとしても、こんな森の中で距離を測れるのはすごい事だ。
それこそ、その為の魔道具でも無いと出来ることでは無い。
ちなみに、月の猫屋ではラティキエさんが作った、そういう道具も見たことはあるが、馬車に取り付けて使う物だし、ある程度平坦な道でないと正確に計るのは難しいと言っていた。
しかも、双子は吊された石の裏側が虫の殻のようになっていて、傷がつけられているのも見つける。
傷は縦に四本、それに交わるように横に1本。
さらのその隣に縦に2本。
数だ、しかも誰が見てもわかり、見易いようにしてある。
ここは広場から7つ目の目印って事なんだろう。
その日の昼頃だろうか、突然私たちの目の前に飛び出す魔物がいた。
魔狼だ。
周囲の音が遠ざかり、手足が震え、指先から冷たくなっていくような気がする。
落ち着け!落ち着け!小刻みに深くゆっくりと呼吸する。
魔術師は、常に、冷静に。
状況を分析し、最善の方法を模索する。
その為には、恐怖なんかに、呑まれる訳にはいかない!
私は魔術師!
あの時の、無力な私じゃない!!
周囲の音が戻ってくる。
手足の震えは止まらなかったので、杖を握りしめて誤魔化す。
私達は、先頭に大きな斧を持った革鎧の戦士イニクス。
次が、片手で扱える棍棒と小さい盾を持った僧侶のアルルス。
その後ろが私達で、一応周囲の警戒していた双子と荷物を持ってるイサム。
後ろにアンジュリーナのローブと大きめの杖を持ったポルフィ。
殿が紅雀のリーダー、全身鎧に、剣と盾を持ったエリュテーだ。
対する相手は、大きな魔狼が2匹。
草原で襲ってきた奴等より全然大きい・・・。
目線が大柄のイニクスと同じぐらいの高さだ。
チコリさんを思い出し、もう一度ギュッと杖を握る。
「・・・ポルフィ!魔狼の雄が群れるなんてありなのか?」
低く唸る魔狼に対峙しながら、イニクスは背中から斧を取り出し腰を落とす。
アルルスも棍棒を抜いている。
「・・・魔狼の雄は縄張り意識が強いし、大きさに見合うだけ食べる・・・」
「要するにどういう事だ!?」
「あり得ない。誰かに操られている可能性あり」
「さらに、飼い主が追加ってか?エリュテーどうする?」
「やっちゃいましょ。1、3で、早めにお願いねー。イサム君達、申し訳ないけど周囲の警戒だけはしておいて、追加で来ても初撃は逃げれるように」
そう言って、鞘から剣を抜く。
「はぁー!こっち見なさい!!」
全身に鎧を着ているとは思えない速さで、警戒している魔狼へ駆けて行く。
そして、片方の魔狼の鼻先を盾で殴りつける。
「キャンッ」
殴られた魔狼は声だけは可愛げな悲鳴をあげて横を向いたが、怒りの形相でエリュテーを睨み付けより低い声で唸る。
その横から隣の魔狼がエリュテーに噛みつこうと牙をむく。
「雑魚が!お前の相手はオレだ」
エリュテーに噛みつく前に、イニクスが斧を魔狼の首元に振り下ろす。
しかし、その攻撃は空を切る。
「おいおい、なんだ!?いまいちやる気が感じられないな?どういう事だ?」
「いっきに来ないってぇことはぁ、なにか考えがあるんじゃん?」
「・・・我が名は氷結!すべてを凍てつ・・・!?クッ!!」
いつの間にか詠唱していたポルフィの横の木陰から、突然同じ大きさの魔狼が飛び出す。
その突撃をアルルスが、ポルフィを押し出すようにして退かし、盾で勢いを逸らしながら後方へ吹き飛ぶ。
「おいおいおい、ちょっとこいつは、きつくないか?」
「・・・応援を待ってたのか」
アルルスを吹き飛ばした魔狼とは別に、さらに2体、私達の来た道を塞ぐ様に現れる。
全部で5匹まさに挟み撃ちだ。
「イサム!荷物を置いて、加勢するわよ!時間稼ぎ位は・・・」
荷物には食料ぐらいで、貴重品は入ってないのは事前に聞いている。
「待てココ・・・」
イニクスが何か言おうとしたが、最後まで聞こえなかった。
なぜなら、私達の周囲に突然、遠吠えがこだましたからだ。
それも一方からではない、四方八方を取り囲んでいるとでも言うように、とにかくあちこちからだ。
私達を囲んでいた魔狼たちにも予想外だったのか、しきりに周囲を見回し鼻を動かしている。
「いってぇ、クソ!犬ッコロ!潰す!」
立ち直り一人、まだ状況が掴めていないアルルスが怒鳴る。
「まって、アルルス」
「あぁん!エリュテー!?なんでとめ・・・え?」
その時、森から現れたのは、また魔狼の群れだ。
しかし、今度の魔狼は5匹の魔狼より小さい、きっと雌だ。
その代わり、その数は40~50はいそうな程だ。
そしてそれを率いる一頭だけ大きな魔狼は灰色だ。
黄色や茶色い毛並みが多い魔狼のなかでは珍しい色だ。
しかもその周囲を守るように進んでくる魔狼も黒い毛並みのモノが何頭かいた。
ワウッ、そう灰色の魔狼が一声鳴くと、周囲の魔狼が一斉に襲い掛かってくる。
しかも、武器を構える私達を無視するように、逃げ出そうとした大きい5匹に群がって行く。
数の暴力とはこういう事を言うのだろう。
そんな感じだった。
数分後には我が身かもしれない状況をどこかそんな風に見ていた。
しかし、灰色の魔狼は、ある程度私達から離れた場所で、地面に座って、じっとこちらを見つめ始めた。
その後、まるで行けとでも言うように、私達が進んでいた方を見る。
「・・・ポルフィ?どう思うかな」
「わからない。けど他の魔狼が手間取っている間に逃げ出すべき、このままここに居ても食べられるだけ」
「・・・だね。よし、皆荷物まとめてとんずらしよ。刺激しない様そぉっと離れよ」
結局他の魔狼たちも、こちらには襲ってこなかった。
理由はわからないけど、ポルフィが言うには、縄張りに侵入してきた雄を退治する事以外は、興味がなかったから助かったのかもしれないと言っていた。
なんにしても、私達はまた先に進む事になった。
少しでも離れたいためか、皆の足が少し早くなったのは気のせいではない。
読んで頂きありがとうございます。
最近、熱いためか中々筆が進みません。
すこしペースが落ちるかもしれませんがご容赦ください。




