採取を覚えました。
初投稿です。
よろしくお願いします。
気が付いたら洞窟の中だった。
僕は兄弟達の体の下から這い出す。
周囲には動かなくなった、子供ゴブリンが無雑作に転がっている。
全てが僕の兄弟達だ。
部屋の中は、様々な嫌な臭いに満ちている。
速くここから離れた方がいい、そう思った。
子供達が隠れていた部屋から出ても、洞窟がずっと続いていた。
耳を澄ませば、微かに右の側から風の気配がする。
たぶん、壁沿いに進めば外に出られると思う。
途中、倒れている大人達を何人も見つけた。
僕の周りには光るモノが何も無いけど、何故か見える。
色は判りにくいんだけど、壁や床、倒れた人達の形はわかった。
でも、まだ動ける人は、一人も居なかった。
そして何故かみんな、左耳が切り落とされている。
僕は手を合わせてか、大人の体を調べた。
『ボロ布』を手に入れた。
『ボロボロ袋』を手に入れた。
『錆びたナイフ』を手に入れた。
布は腰に巻いて、そこに袋とナイフを差し込んだ。
そこからさらに進み、なんとか洞窟から抜け出した。
外は洞窟よりは明るかった。
でも大きな木々が、空からの光のほとんどを遮り、薄暗い。
地面は、草や落ち葉で覆われて地面が見えない。
背の高い木々の何処かから、小鳥たちのさえずりも聞こえてくる。
そう、洞窟の外は、深い森の中だった。
穴の周囲は大人達が出入りしたためか、背の低い草が生えている程度だ。
でも、少し進めば草の高さは僕の肩ぐらいになる。
さらに奥に行けば、完全に僕の姿は隠れてしまうと思う。
外に来たまでは、よかったけど、ここから如何しよう。
僕は周囲を見回す、洞窟でも思ったけど、僕の目はこの薄暗い場所でも色々なモノが、よく見えるみたいだ。
木のずっと高いところを走り回るリスや、コンコンコンッと木を叩く鳥、樹液に集まる小さな虫達まで様々のな生き物が見える。
さらに地面を覆う草や、森の木々のいくつかが、キラキラ輝いて見える・・・ような気がする。
僕は一番近くにあったキラキラへ歩み寄る。
周りの木々は見上げても一番上の枝がわからない程なのに、その木は僕の背の丈よりも少し高い位だ。
でも葉っぱも多くて、幹も意外と立派だった。
その葉っぱを掻き分けると、薄っすら光って見える木の実が、1つだけあった。
『赤い木の実』を手に入れた。
僕の拳くらいの大きさの木の実だ。
スンスンっと鼻を鳴らして、臭いを嗅いでみる。
木の実の臭いは、悪くない。
ほのかな甘味を感じるような、爽やかな匂いだ。
思い切って食べてみた。
食感はシャクシャクしていて、味は少し甘酸っぱい。
だが噛めば噛むほど、果汁が溢れてきて、喉の渇きを潤してくれた。
不思議なことだけど、お腹の底から力が湧いてくるような気がして、少し元気になった・・・かもしれない。
今まで食べた事の無い味で、美味しかった。
だから、もっとキラキラを探すことにした。
5つめの木の実を採ったとき。
『森の小リンゴ』を手に入れた。
最初に食べた赤い木の実の名前が、なんとなくわかった気がした。
改めて、木の実をよく見てみる。
(森の低木から採取出来る木の実、青い木の実と黄色い木の実と合わせると『森の恵み盛り合わせ』ができる)気がした。
何だろう?よく分からないけど、美味しそうなモノが出来るのはわかった。
青い木の実は、さっき一つ見つけた。
キラキラしたツタの木を調べた時に、採れた。
ひと房に小さい実が沢山ついていて、種が少し気になる。
でも一粒、プツッと口の中で潰すと果汁が溢れ、口の中に甘味が広がる。
皮は少し渋みがあるけど、僕は気にしないで食べてしまった。
ただ、種はガリッと潰すと、舌が少しシビれるので、ペッてした。
・・・今思えば、食べないで取っておけば良かったかな?
でもまた直ぐに採れるよね?・・・きっと。
僕はそんな事を思いながら、黄色い実を探した。
・・・でも、なかなか見つからなかった。
袋とお腹が、だいぶ膨らんできた頃、やっと採れた。
つい嬉しくて声を上げそうになった。
「・・・・・・」
でも、僕のとんがった耳には、僕じゃない声が聞こえた。
もちろん、小鳥の声でもない。
そういえば、いつの間にか小鳥達の声が聞こえない。
・・・どうしよう?
・・・考えてみたけど、僕一人じゃどうしていいか、わからなかった。
でも、相談する相手なんていない。
こっそり近づけば気付かれないかな?・・・うん、たぶん大丈夫。
音を立てない様に気を付けながら、声の方へ近づく。
すると人間が居た。
なぜか嬉しい様な、怖い様な、不思議な気持ちになった。
でも体は怖いと思ったのか、なんとなく隠れてしまう。
距離があってよく聞き取れないけど、食べるものがなくなったから寄こせって事みたいだ。
・・・えっと、ああ言うのなんて言うんだっけ?・・・追い剥ぎだっけ?
あ、戦いはじめた、1対4だ。
1人の人は素手なのに、4人の人達は血の付いた武器を持っている。
でもあれ?食べ物寄こせって言ってたのは素手の人だった気がするけど?
襲われているのは、武器の人達なのかな?・・・よくわからないな。
ジッと見てると、互角みたいだ。・・・独りの人がそれだけ強いってこと?
でも、フラフラしてるように見えるけど、服も土で汚れてるし。
あ、素手の人が転んだ隙に、武器の4人が逃げて行っちゃった。
素手は転んだまま起き上がらない。・・・寝ちゃった?
・・・しばらくしても起き上がらないので、近づいてみる。
ボロボロだけど息はあるみたいだ。
でも手は震えているし、具合が悪そうだ。
「・・・はら・・へ・・た・・・・」
なんか言った気がしたけど、よく聞き取れなかった。
近くにあった大きな袋を調べてみる。
毛皮しか入ってない。
病気なら自分の薬を持ってると思ったけど、薬どころか食べられそうな物は何もない。
僕は3色の木の実を袋から取り出した。
・・・やっとそろったけど、困って人を放っておけないよね。
手の平の上の木の実に、合わされって念じた。
そうすればいいのは、見つめてたらなんとなくわかった。
『森の恵みのラプソディ』を手に入れた。
少し光ったかと思ったら、手に乗っていた3つの木の実は、大きな木の皿になっていた。
その木の皿には、色とりどりの果物が沢山乗っていて、花の形や鳥の形に切ってある。
使ったのは3種類なのに、見るからに果物の種類が多い。
赤色、橙色、黄色、緑、青、紫、に白、色とりどりの果物に生ハムみたいのまである、みるからに超豪華だ。
・・・思わず涎が出そうになったが、グッと堪えて、人間に持って行く。
ここに来るまでに、木の実を食べといてよかった、じゃなきゃつまみ食いしたかもしれない。
そろそろと人間に近づいて、動かないのを確認する。
ソッと横に木の皿を置いて、バッと走って距離を取り、木の後ろに隠れる。
・・・動かない。
・・・足元に石を投げてみた、パサッと草に石が隠れる。
・・・動かない。
・・・もう少し近くに石を投げてみた、靴に当たって、コツンッと落ちる。
・・・動かない。
・・・近づいて顔を覗き込むと息はしているみたいだ。
盛り合わせの一番上に乗ってる、サクラ色の小さい双子の実を、ゆっくりと口に持って行く。
それが口に触れたとたん、クワッと目が開いて首を掴まれた。
手に噛みつく勢いで木の実が食べられた。
さらに横に置いてあった『森の恵みラプソディ』を凄い勢いで自分の口へ持っていく。
その間、僕の首は掴んだままなので片手でだ。
「うっま!うっは?なんだこれ!?うますぎる!生き返るような!!魔力まで回復したのか?」
花や鳥の果物がどんどん口の中に消えていく。
僕は怖くて硬直したままだ。
喉は苦しくないけど、少しでも動けばキュッて絞めてくる。
木皿の上をあらかた綺麗にして、ふぅって一息ついた後、人間がギロッと、こっちを見た。
それだけで、怖くて体が震える。
「お前、なんだ?さっきパッと光ったの見てたぞ。ただのゴブリンじゃないよな?」
怖くてカラカラになった喉からか、なんとか声を絞り出す。
「・・・ぼっぼくは・・・」
読んでいただきありがとうございます。
2017年8月9日17時ごろに修正しました。
主に読みやすい様にと、曖昧だった描写をわかりやすくしています。
ご容赦ください。
よろしくお願いします。