「異変そして開始」
「オルタナティブ・ブレイク」序章
「異変そして開始」
クエストを無事に終え、街に戻ってきた。
俺は武装強化に必要な強化資材と資金が揃った為、武器屋へ脚を向けていた。
街は沢山の人で賑わっている。
街の中ではプレイヤーはシステム的に保護され
「圏内」状態となるので機体の展開は出来ない。
さらに機体を纏っている時以外は武装は扱えず、
持てるアイテムは強化等の資材、資金、回復アイテムのみとなっている。
街の中で機体を纏う事が出来るのは対人デュエルの時のみとなっている。
少し歩いていると武器屋が見えてくる。
俺は扉を開け、店内へと入る。
店内は多くのプレイヤーでひしめき合っていた。
□ □ □
このゲームの武装は大きく分けて2種類ある。
それは「通常武装」と「特殊武装」だ。
まず「通常武装」から、通常武装は実剣、実弾を用いる武装である。
通常武装の種類は大きく「剣」「槍」「銃」の
3種類に分けられる。
剣はさらに長剣類と短剣類に分けられ
長剣の種類はロングソード・バスタードソード・ツーハンデットソード・レイピア。
短剣はダガー・トレンチナイフ。
槍はランス・トライデント・グレイブ。
銃は拳銃(オートマチック、二丁持ち可能)・ライフル(ボルトアクション、フルオート)・散弾銃・サブマシンガンとなっている。
次に「特殊武装」について。
特殊武装は機体のエネルギーを消費して使う武装である。
レーザーソード・ビームライフル・ビームグレイブなどがある。
特殊武装には防御用の装備があり、
「核防御壁」と言う。特殊武装での攻撃のダメージを軽減出来る装備である。
だがこれらの特殊武装は、強力だが消費するエネルギーが多いので、多用は出来なくなっている。
□ □ □
店内に入った俺は奥のカウンターの方へ歩いて行く
「いらっしゃいませ。武装をお求めですか?それとも強化でしょうか?」
カウンターに立っていた男の店員のNPCが近づいて来た俺に話しかける。
「今日は武装の強化をお願いに来ました」
俺は装備武装画面を開き、店員に見せながらそう言った。
「分かりました。それではどの武装を強化しますか?」
俺は装備武装スロットのロングソードを指しながら
「このロングソードを1段階強化でお願いします」
強化には機体と武装の2種類がある。
機体強化は機体の耐久値・装甲値・運動値・エネルギーの4種類を強化出来る。
武装強化は剣は攻撃力を、銃器類は攻撃力・射程・弾数を強化出来る。
強化するには資材と資金が必要だ。このゲームの強化資材は単純に鉄材・銅・スチール・カーボンナノ繊維・プラスティックの5種類となっている。
そして資金。このゲームの通貨は「オーラム」という。
強化に必要な資金が無ければ、資材はあっても強化出来ない。
強化した値を「強化値」と言い、10段階で表される。これは機体・武装ともに共通している。
1段階強化するごとに、強化値に10%追加される。
10%で、+1強化した性能にプラスされる。
例えば、機体の耐久値3を1段階強化する。
そうすると1段階強化だから
10%で+1耐久値に足され、耐久値3から耐久値4にアップするという事だ。
数分後、強化が完了したロングソードをスロットに収納して、俺は武器屋を出た。
ここまではまだ楽しいゲームだった。
ここから少しずつ「異変」が起こる。
□ □ □
武装強化を終え、次は何をしようと考えていた俺は
一度宿屋に戻り、またクエストでもするかと思い
宿屋に戻ってきた。
借りている1室に戻り、ベットに座ってメニューウィンドウを開いた時、俺は自分が着ている服の感じが違い、違和感に気がついた。
俺は自分の手を見て驚いた。
今、俺の手を覆っているのは黒い特殊素材の布。
「…………何で今、真装服になってるんだ?場所は街の中なのに……」
何故か今、自分が着ている服が真装服になっているのだ。
このゲームでは、フィールドにいる時と街の中にいる時でプレイヤーは服装の設定が出来る。
フィールドでは常に真装服だが、街の中ではショップで買った洋服か真装服かのどちらかに設定出来るようになっている。
俺は確かにさっきまで武器屋にいて、まだその時は街のショップで購入した洋服だったはずだ。
これはちょっとしたバグだろう。すぐに治ると思い
またメニューウィンドウに視線を落とそうとした時――
「おい!機体の武装が初期武装になっているぞ!」
外からそんな声が聞こえてきた。
「あれ?」「おかしいな」「ただのバグでしょ」
外では他のプレイヤー達が色々言っているのが聞こえる。
右のメニュータブに落とそうとした視線を俺は
左の機体シルエットの方へと移す。
俺は目を見張った。
機体の武装は主武装が2つ、副武装が1つ装備する事が出来る。
だが機体の武装スロットを見ると、副武装は無く、主武装が初期武装のロングソード1本だけになっていた。
(これは本当にただのバグなんだろうか……)
俺は武装スロットを見ながらそう思った。
そして、それは唐突に開始する。
□ □ □
困惑している俺に1通のメールが来た。
差出人は「運営」
題名は「お知らせ」
俺はメールを開き、内容を読む。
題名「お知らせ」
「皆様にお知らせが御座います。今現在ゲーム内で様々なバグと思われる現象が発生していますが、それらはバグでは無く仕様となっています。プレイヤーの皆様は今現在からこのゲームからログアウトする事は不可能となります。脱出するにはあるルールが御座います。下記に表記してあるので必ずお読み下さい。」
ルール
1.プレイヤーの皆様はログアウトする事が出来ず、仮にログアウト出来たとしても、皆様がログインの際に入った筐体は全て運び出され、今現在は孤島のとある施設に設置してあります。この孤島からの脱出は厳重なシステム警備があり、不可能です。
2.脱出方法はこのゲームに存在する7体のボスを全て討伐する事または生存者が1パーティ(6人以内)になる事の2つとなっています。
3.プレイヤーの皆様の機体・武装の強化値、初期武装以外の武装、所持金、資材、回復アイテム等はすべてリセットされ初期状態に戻ります。
4.このゲームで死亡した場合。蘇生はせず、皆様が現実で頭に被っているヘルメットに致死量の電気が流れ死亡します。(対人・対モンスター等)
5.既存のギルド機能はそのままの状態であり、新たにギルドを作る事も可能です。
6.今後、アップデート等は予定通り実行されます。
7.その他のシステム(圏内保護システム等)も変更は御座いません。
それでは、プレイヤーの皆様。頑張って下さい。
メールを読み終えた時、俺は頭が真っ白になっていた。
外には俺と同じようにメールを読み終えたプレイヤー達がいる。
「嘘だろ……なぁ嘘なんだろ?嘘だって言ってくれよ!」
「出せよ!ここから早く出してくれよ!」
「嫌ぁぁぁ!出して!お願いだからぁぁぁ!」
悲鳴、懇願、絶叫、罵声。
無数の叫び声が街中に響き渡った。
外から聞こえる叫び声を聞きながら、俺も死について
考えてしまう。
死ぬ。そう思うと、心の底から恐怖が湧いてくる。手足が震え、顔からは血の気が引いている。
俺は、その場からしばらく動けなかった。
恐怖と戦いながら、俺は頭の中で必死に考えた。
どうすれば生き残れるかを。
装備はリセットされ初期状態。所持品無し。
所持金も初期金額。
脱出するには、7体のボスを討伐するか、生存者が6名になるかの2つ。
俺は……生き残る。そう決めた。生き残って7体のボスを全て倒すしか無い。それがこのゲームから脱出する為の条件だから。
そう決めると俺は震える脚に力を込め、何とかベットから立ち上がり、宿屋を出て街の外を目指し歩いた。
現実でも1人のように俺はこの世界でも1人だ。
頼れる仲間など誰1人いない。
1人で考え、恐怖と戦い、行動するしか無い。
俺は街の外―フィールドに出た。まだ他のプレイヤーは混乱しているのか、あまり姿が見えない。
「接続、展開」
機体を展開し、纏うと、背中の翼と脚のブースターを全開にして俺は飛び立つ。
この世界で生き残る為に俺は行動を開始する。
序章はこの話で終了です。次回のお話からは第1章に入ります。
第1章も勿論書き進めているのですが、私が4月から忙しくなるのでどこまで更新出来るか分かりません。ですが頑張りますのでよろしくお願いします。