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「激突!影の剣と小星の剣!前編」

「オルタナティブ・ブレイク」第1章

「激突!影の剣と小星の剣!前編」


□ □ □


―6月15日午前6時30分


フード付きの外套を羽織り、≪スカイレイ≫の街を朝早く出た影が3つあった。フードを深くかぶり、斜め下を向いて歩いている。


足早に歩き、道をどんどん進んでゆく。時折左右や後ろなど周囲を確認もしていた。まるで誰にも見つからないようにしなければいけないように。


歩いていくと開けた道から少しずつ森の方へと近づいていく3つの影はそのまま森の道へと進んでゆく。森の中は開いた道などと違い、モンスターが出現しやすい。森などの奥地やダンジョンなどはモンスターにとっても、プレイヤーにとっても奇襲を仕掛けやすい場所であるのだ。


だが、今はモンスターにも、特にプレイヤーに見つからないようにしなければならないのだ。だからこそ注意深く周囲の確認をしている。


またしばらく進んでから、周囲の確認をして大丈夫だと思い歩きだそうとしたとき―


横の草むらの中から息を潜めていたランドウルフが3頭飛び出して来た。その中のリーダーと思われるランドウルフが1番近くにいたプレイヤーに襲いかかる。鋭いツメで引き裂こうと前脚を掲げ、振り下ろし羽織っている外套ごと引き裂き―


だが、血は流れなかった。襲い掛かってきたランドウルフのツメは掲げられた右手の漆黒の装甲によって防がれていた。仕留め損ねたランドウルフが後方に跳ぼうとするが、それよりも早く剣の刃がランドウルフの首を飛ばした。


リーダーを失った他のランドウルフは劣勢と判断し、その場から離脱しようとするがリーダーを斬り倒したプレイヤーの後ろから2発の弾丸が撤退するランドウルフ達を撃ち抜いた。


ランドウルフが消滅したのを確認し、他のモンスターに気づかれていないかを警戒しながらリーダーを斬り倒したプレイヤーが後ろにいた2人の方へと歩いて近づく。


「葵、瑠華、2人とも大丈夫ですか?」


零椰は右手の装甲を解除しながら後ろにいた2人に聞いた。


「えぇ、あたしは大丈夫よ。零椰がランドウルフに気づかないフリをしておびき出そうって言ったからびっくりしたけどそれで、近くに潜んでいるのが分かったから」


零椰と同じく真核装機(ネオリアクター)を部分展開して、ライフルを使った葵が返事をする。


ランドウルフとの間の距離が遠く、今回は何も出来なかった瑠華も返事をした。


「あたしも全然分かりませんでした……同じセイバーを使うプレイヤーとして、あたしも索敵の能力を上げなくてはって思いました。それにしても零椰の索敵の能力は高いですね」


「いや、別に俺もそんなに高い訳じゃ無いよ。今回もたまたま気づいただけですし」


「でもあたし達が気づかなかったのに、今までの経験からの直感みたいなものなの?」


「えっと、確かに今までの経験からのというものもありますけど、大体は真核装機(ネオリアクター)の索敵レーダーを使っているからですね」


真核装機(ネオリアクター)には全てのタイプに共通して機体に搭載されている機能があり、その中の機能の1つとして付いているのが索敵用レーダーである。この索敵用レーダーは機体を展開していなくても待機状態でも使えるようになっている。


零椰は右腕に装着している待機状態の真核装機(ネオリアクター)の索敵用レーダーを展開し、もう一度周囲の確認をする事にした。


索敵用レーダーを起動すると、目の前にレーダー画面が表示される。その画面の中心に自分自身を表す緑色の光点があり、その周りに他のプレイヤーがいたら青色の光点で示されるようになっている。自分との間を示す円は全部で3つある。円の間隔は5kmずつであり、15kmまで周囲の索敵が可能になっている。


零椰はレーダー画面を見て今の戦闘が周りのモンスターに気づかれてないかを確認し、気づかれてなく近くにモンスターがいない事を確認してレーダー画面を閉じて2人に声を掛けた。


「周囲の確認が出来ました。今の戦闘は周りには気づかれていないようなので2人とも行きましょう」




□ □ □


今、零椰と葵、そして瑠華の3人は≪チヤの村≫へと向かっている。まだ零椰が影剣(シャドウセイヴァー)である事を知っているのは3大勢力の幹部だけであるが、3大勢力それぞれの調査が進めば他のギルドやプレイヤーに情報が漏れてしまうのも時間の問題であると判断した零椰は葵、瑠華の2人と一緒にあまりプレイヤーに知られておらず、プレイヤーの近寄らない≪チヤの村≫へと向かっているのであった。


先程のランドウルフ以外、モンスターに出会う事無く、もう少しで≪チヤの村≫に到着出来る所だった。とある事が起こった。


その事に最初に気づいたのは葵だ。場所的には≪チヤの村≫の入り口付近にもう少しで到着するという所である。


「ねぇ、2人とも村の入り口の所に誰かいない?」


村の方を指さしながら葵が零椰と瑠華にそう言ってきた。


≪チヤの村≫へ行く時に通る森は霧がうっすらと掛かっており視界が悪い。この道を通る時はモンスターなどからの不意打ちなどに注意しながら行かなければならない。この霧はこのような森や山などに見られる現象である。


「確かに……本当によく見ないと分かりませんが……うっすらと誰かが立っているのは見えますね……」


「あたしには見えないんですが……村の入り口に誰かいるんですか……?」


「霧が掛かっているから俺もかろうじて見えている程度なんですが……この距離で霧も掛かっているのにその先にいる人影が見える葵はかなり目が良いんですね。俺もそのくらい目が良いともっと戦略が広がるんですが」


「べ、別にあたしだってそんなに目が良い訳じゃ無いわよ……零椰だってそんなに悪く無いでしょ……」


その後も少しの間、零椰は葵を褒めているのであった。葵は迷惑そうにしながら内心結構嬉しく思っていた。そんな様子を瑠華は少し羨ましそうに見ているのであった。



□ □ □


その後、瑠華が葵に先程見た人影が誰か分からないかを聞いてみた。


「葵さん、さっき見た人影が誰かは分かりませんか?」


「人影は見えたけど誰かまでは流石に……」


「誰かが分かれば対処が考えれますが……分からなければ無理ですからね」


零椰も誰かを考えていたようだが誰かはやはり分からないようだった。


それからもう少し歩き、遂に≪チヤの村≫の入り口に到着した時だった。3人に緊張が走った。何故か?それは先程葵が見た人影だったからだ。そこにいた人物とは―


「やぁ、待っていたよ。神崎葵さん、優木瑠華さん、そして綿月零椰君、いや―影剣(シャドウセイヴァー)


葵と瑠華の顔に驚きが走る。だが零椰の顔には少し緊張はあるが、驚きは走らず、相手を鋭く睨んでいる。


「やはり零椰君、君は驚かないか」


自らの秘密をいきなり言い当てられても動揺せずに零椰は毅然と相手に言い返す。


「えぇ、この情報を今現在知っているのは限られていますからね。あなたが来てもおかしくないとは思っていましたよ」


「噂通りだな、やはり俺は君という力が欲しいよ。おっと、自己紹介がまだだったね。零椰君はもう分かっているとは思うが、後ろの2人はまだ分かっていないようだからね。俺の名前は剣崎(けんざき)朔夜(さくや)。ギルド≪小星(アスタ)(ブレイド)≫のギルドマスターだ」


□ □ □


「…………」


今、零椰達3人と剣崎がいるのは≪チヤの村≫の中にあるカフェである。零椰、葵、瑠華が座り、その向かい側に剣崎が座っている。

何故カフェにいるかと言うと―


「最古参のギルドマスターが俺達に何の用ですか?」


「ふむ、そうだな……立ち話もなんだ村の中のカフェにでも入って話をしないか?別に今ここで戦おうなんて思ってはいないさ。どうだい?」


「……………………分かりました。ただし、あなたが何か怪しい動きを見せたりしたら俺は容赦はしません」


「そうか。ならば村の中へ入ろうじゃないか」


そうして今現在に至るという事である。


≪チヤの村≫の入り口で遭遇したのは何とあの3大勢力の中で最大にして最古参のギルド≪小星(アスタ)(ブレイド)≫のギルドマスター剣崎朔夜。


剣崎は「オルタナティブ・ブレイク」稼働開始時からの最古参のプレイヤーの1人にして今尚、最強のプレイヤーとして活躍している人物だ。その実力から他のプレイヤーからは「生きる伝説」と呼ばれている。


「…………」


零椰達は村の中に入ってからずっと警戒を解かずに注意深く周囲を確認したりしている。カフェにいる今も剣崎が何をしても良いようにと身構えている。


対する剣崎は零椰達に対して警戒などせず、カフェで今はゆったりと座り、コーヒーを飲んでいる。


カタリ 剣崎が飲んでいるコーヒーのカップをソーサーに置いた音が静かなカフェの店内に鳴り響く。それを合図にしたかのように剣崎が口を開いた。


「さて、俺がどうしてこうやって君たちの所にやって来たかと言うと俺は君たち3人に興味があるからだ。特に零椰君、君にはとても興味を持ってね」


「つまり、勧誘って事ですが」


零椰は警戒しているからか言い方がかなり冷たい。


剣崎は頷きながら


「その通りだ。君達3人には俺のギルドに所属して欲しいと思っている。早く言いに来ないと他の2つのギルドに先を越されるといけないからね。こうして俺が来た訳だ。どうかな、俺のギルドに入ってくれないかい?」


「俺はお断りします。どこかのギルドに所属するなんて性に合いませんから」


「……あたしも零椰と同じです。あたしは零椰達とどこまで行けるかを確かめたいので」


「あたしは、零椰さん達2人に会って、それまで絶望しか感じなかったこのゲームで初めて楽しいって感じられたからだからあたしはこの2人について行こうと決めました」


3人それぞれの答えを聞いた剣崎はまるで分かっていたように零椰にまた話しかけてきた。


「零椰君、ならば1つ手合わせ願いたい。いや、これは勧誘には関係ない。どうだろうか?」


「…………」


「……零椰」


葵が心配そうに零椰の方を見る。瑠華も零椰の方を見ている。


「……俺がもし勝っても負けても彼女達には何も危害などはありませんよね?」


「あぁ、君にも彼女達2人にも何もしない事を今ここで誓おう」


「…………分かりました。その手合わせ受けましょう」


「そうか、良かった。ならば手合わせの詳細はこの紙に書いてある。見ておいてくれ」


そう言いながら剣崎は懐から1枚の紙を取り出し、テーブルに置いた。


「……分かりました」


零椰はテーブルに置かれた紙を受け取る。


「俺の用は以上だ。では失礼するよ。おっとここは俺の奢りだ」


最後に代金を支払い剣崎は去って行った。


「相手はあの生きる伝説か……」


零椰はコーヒーをひと口飲んでからそう言った。


「本当に大丈夫なの?零椰」


葵が零椰に聞いてくる。


「そうですよ零椰さん。相手は最古参のギルドマスターですよ!」


瑠華もそう言ってくる。零椰は剣崎から渡された紙に目を通してから葵と瑠華の2人の方に紙を向けながら


「今回の相手はあの最古参のギルドマスターです。だから2人の力を貸して貰えませんか?俺1人じゃ対策を練れないのでお願い出来ますか?」


2人は笑いかけて零椰に頷いた。そして3人はカフェでそのまま話し合いを始めた。手合わせは2日後。


―そして零椰達は剣崎の力を思い知る事になる……。


皆様お久しぶりです。作者です。今回もまたかなり更新が遅くなり申し訳ありません<(_ _)> 夏休みは色々と用事があり、忙しく中々書けませんでした。次の更新も休み明けにテストがあるのでまた遅くなってしまいます。出来るだけ早く更新をするように頑張ります……。

さて、今回のお話は零椰達が遂に3大勢力のギルドに接触します。手合わせを受けた零椰は一体どんな戦いをするのか……。ではまた次回をお楽しみに!

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