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ムーン・ライト  作者: 武池 柾斗
第四章 悪霊使い編
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第四十五話 圭市防衛①

 同日。

 月の出を迎える直前。退魔師残党の十七名は圭市の防衛準備を完了させていた。男女二人一組でそれぞれの位置につき、悪霊の襲撃から圭市の住民を守れるように備えている。


 昨日の対策会議の通り、北部には四組、南部には三組が配置されていた。中央部には柳田秀と水谷紗夜が待機し、圭市全域の遊撃を行う柳川友子は未来橋の街灯にもたれかかって立っている。


 残党の退魔師たちは、不可視の状態で決戦の時を待った。

 あと少し経てば最悪の霊能力者による市民の虐殺が始まるのというのに、街の様子はいつもの日曜日と変わらなかった。


 太陽がほとんど沈んで薄暗い中、街灯やビルの明かりが街を照らす。家族連れや学生グループ、休日出勤のサラリーマンなどがその中を行き交う。幹線道路から脇の細い道まで自動車があらゆるところを走っている。主要道路の中央には路面電車が走り、さまざまな人を乗せて揺れていた。


 やがて、東の空から金色に光る禍々しい満月が姿を現した。

 それと同時に、圭市のいたるところから悪霊が出没する。人型のように形が定まっているのもいれば、変幻自在に姿を変えるものもいる。だが、形は違っても、悪霊には共通点がある。黒い霧のような霊体と、赤く光る二つの目。自分が何者だったのかも忘れ、穢れを溜め込み続けた彼らは、霊力を求めて街中へ侵攻を開始した。

 悪霊が出現した直後、リーダーの柳田秀は霊力によるテレパシー能力で退魔師たちに指示を出した。


「皆さん、悪霊を迎撃してください!」


 彼の言葉を受け、圭市に散らばっていた少年少女たちは一斉に動き出した。北側の四組、南側の三組が担当区域での戦闘を開始し、中央区域の柳田秀と水谷紗夜もビルの屋上から飛び出し、悪霊の浄化に向かった。


 戦闘開始直後の柳川友子は待機を続けていた。彼女は、援護の要請が入ってから初めて戦闘に加わることになっている。

 柳川友子としては、遊撃を行うことなく、悪霊たちの親玉である山坂宗一と月影さくらを捜すことに専念したかった。

 しかし、月の出からわずか十分で、柳川友子の頭に仲間の声が届いた。


「友子! 南西区域の援護をお願い!」

「わかった! 今行く!」


 柳川友子は即答し、舌打ちをしながら飛び上がった。彼女は神速で空を翔け、一分も経たないうちに南東区域にたどり着く。霊力で作り出したナイフを右手に持ち、視界に入った悪霊の霊点を的確に突いて霊力を削り落としていく。


 悪霊が黒い霧を噴出しながら動きを止める。柳川友子が通った後には動いている悪霊は存在せず、彼女の速さと正確さを物語っていた。

 柳川友子は悪霊を無力化しながら、南西区域の退魔師のもとへと向かった。だが、悠長に話している暇など無いので、彼女はすれ違いざまに、


「十体削った!」


 とだけ言い、次の悪霊を攻撃しに行った。

 そのとき、柳川友子に別のペアからの要請が入った。


「今度は東!?」


 そのペアからの言葉を受け取り、彼女は戦況の悪化を悟った。今夜は満月で、悪霊の霊力が通常の何倍にも跳ね上がる。さらに数も多い。これでは山坂宗一と月影さくらを探すどころか、圭市全域の遊撃すらままならない。仲間の援護だけで時間が過ぎてしまう。


 柳川友子は飛行中に歯ぎしりをした。

 そこに、柳田秀からの伝達が入った。


「友子さん、東区域は中央と北東の二組で援護します。友子さんは西方面の遊撃をお願いします!」


 リーダーからの指示で冷静さを取り戻した柳川友子は、そのまま南西区域の援護を続行した。周囲の悪霊の動きを封じた後、彼女は西区域と北西区域、中央区域へ向かった。




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